EP5 山川の浅き瀬にこそあだ波は立て
おはようございます!
瀬戸隆平です。
月曜の朝からお付き合いいただきありがとうございます!
今週もなんとか乗り切っていきましょう!
4月6日、入学式の翌日。
辻獅堂が教室に入ると、2人の生徒をめぐり、騒ぎが起きていた。
一人は椅子に座っている長身で紫の髪を逆立てた男。
縦縞の黒スーツに派手な赤シャツを着ている。
もう一人は飾り気のない短髪、ふっくらとした顔と体型の男子生徒。
白のセーターにグレーの格子柄のスラックス。
机をはさみ、紫の髪の生徒の前に立ち、何かを一生懸命に訴えている。
獅堂は紫の髪の男に見覚えがあった。
昨日、電車でベビーカーを蹴り倒した白いスーツの男だ。
駅員に捕まり、昨日の入学式には出られなかったのだろう。
紫の髪の男は長い脚を投げ出すように組み、その右足の先端は机の角に乗っかっている。
右手はスマホを握り、視線は画面を見たままだ。
向かいに立つ生徒は無視され続けている。
それでも彼は話しかける。
「あのさ、さっきも言ったけど、そこ、僕の席なんだよ」
身長175㎝ほど、自然に微笑んでいるような一重の細い目、団子鼻。
体型が丸みを帯びていることもあり優しい印象だ。
大きめの声を上げても、威圧的な印象は与えない。
ようやく紫の髪の男の目が上に動いた。
目の前の男子生徒を睨みつけて言う。
「俺が座りたい席が、俺の席だ。おまえは空いてるところにでも座ってろ!」
白セーターの生徒は微笑みの表情を変えない。
「わかったよ」
と言って、こう続ける。
「僕の名前は小寺孝雄。これから、よろしく。君の名前は?」
「おまえに名乗る必要はない」
そう言われても小寺の優しい表情は変わらない。
彼は穏やかに、こう返す。
「わかったよ。でも本当は知っているんだ。君の名前。東大島鷹志くんだろ。東大島グループ会長の四男だよね」
東大島は大きな舌打ちをした。
そして言う。
「そうかもしれんな」
「じゃあ、よろしくね」
小寺はゆっくりと去っていく。
東大島は投げ出した足を乱暴に組み替えた。
机に足先が当たり大きな音が教室に響く。
教室の生徒たちが怯える。
クラス中の注目を集める東大島の険しい顔。
しかしその表情は突然、だらしなくゆるんだ。
東大島は立ち上がり、ゆっくりと左前方に歩き出す。
そこには、ブロンド金髪の女子生徒が座っていた。
青い大きな瞳、抜けるような色白の肌。
東大島は彼女の目の前に立つと、
「君は留学生だね。どこの国?」
彼女はちらりと東大島を見るが、すぐに目をそらしながら、
「Russian」
と答える。
東大島は立て続けに聞く。
「名前は?」
彼女は目も合わさずに、
「ソフィア・カーリン」
と言い捨てる。
それでも東大島は食い下がる。
「SNSの連絡先IDを交換しよう。日本の美味しい食事をご馳走するから」
そこに、つかつかと黒髪の女子生徒が寄って来た。
青のチャイナ風ニット服にタイトスカート。
大きな声で言い放つ。
「教室でナンパするな。あんた、女の敵!」
獅堂は、その顔にも見覚えがあった。
そう、今朝、痴漢を駅員に突き出していた女性だ。
アジア系で身長162㎝ほど。間違いない。
「なんだと! 邪魔すんじゃねえ!!」
東大島が彼女を睨みつける。
そのとき、教室のドアが開く音がした。
担任の富樫由美だった。
「昨日、スキップしたオリエンテーションを始めますね。みなさん席についてください」
東大島は大きな舌打ちをして、引き下がった。
黒髪の女性は、去り際にソフィアに話しかけた。
「私も留学生。中国人で名前はメイチェン・シア。女の敵はやっつけるよ!」
ソフィアは思わずメイチェンに抱きつく。
メイチェンは優しくソフィアの頭をなでると、スマートに自分の席に戻る。
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