EP31 呉越同舟
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ライオンマスクの仮面をとり、体育館のトレーニングルームに向かう辻獅堂。
晴天の部活練習時間中には誰も来ない。
選手たちが来るのは練習前か練習後だ。
いろいろと使える穴場。
獅堂はここでジャージからジャケット&ジーンズに着替える。
体育館を出ると渡り廊下には廊下には夕闇が迫っていた。
薄暗い1年6組の教室に戻り、通学用のリュックを手に取る。
そのとき、すすり泣きの声が聞こえて来た。
その声を目でたどると、教室の後方に人影が見える。
女生徒が体育座りにしゃがみ込んで、泣いている。
近づいていくと、緑川綾乃だった。
ひざを立てたスカートの奥。
白いショーツがあらわになっているが、気にする様子もない。
ひざの上に両腕を載せ、そこに顔を突っ伏している。
獅堂が、綾乃の前で足のつま先を立ててしゃがみ、言う。
「大丈夫か?」
綾乃は何も言わない。
変わらず、すすり泣いている。
獅堂は綾乃の頭に手の平を当てて、
「また襲われたんだな…」
と語りかける。
綾乃は、顔を伏せたまま、
「怖いの」
と消えそうな声で言う。
「心配するな。俺がいるから」
すると綾乃は、
「辻くん…」
と言いながら、しがみついてきた。
獅堂は黙って綾乃を胸の中に受け止め、肩を抱く。
しかし表情は真顔のままだ。
綾乃は赤子のように声を上げて泣く。
数分、そのまま時間が過ぎる。
綾乃の号泣が治まると、獅堂は綾乃の肩を持ち、自分の胸から離して向き合う。
そして言う。
「何があったか、話してみろ」
綾乃は今日あったことを正直に打ち明けた。
それを獅堂は黙って聞く。
綾乃が全てを話し終えると、獅堂が言う。
「緑川、俺と組まないか?」
「えっ!?」
と赤くなった目を見開く綾乃。
「俺がお前を守ってやる。だから緑川も俺のやっていることに協力しろ」
「協力って?」
「勉強会のメンバーが退学にならないよう教えてやってくれ」
「さっきの男たちはそれをするなと脅してきたのよ」
「大丈夫だ。これからの勉強会は目立たないようにこっそりやる。続いていることは誰にもわからない」
綾乃は獅堂の目の奥を探るように見つめる。
獅堂はかまわず続ける。
「それと緑川は大泉裕一郎に協力しているだろう。俺はあいつのことが信用できない」
綾乃の目の色が変わる。
そして獅堂を睨みつけながら言う。
「あなたに大泉会長の何がわかるのよ!」
「何もわからない。だから信用ならんのだ」
獅堂が言う。
「それに緑川こそ、大泉のことがわかっているのか?」
綾乃が黙り込んだ。
さっき三角だった目が、落ちつかず泳いでいる。
獅堂が言う。
「都合よく使われているだけじゃないのか?」
「それは違う……」
綾乃は言うものの、声は弱々しい。
獅堂が言う。
「大泉は緑川を守ってなんかくれないぞ」
綾乃が悔しそうに獅堂を再び睨む。
獅堂が言う。
「俺に協力してくれれば、緑川のことを守り抜いて見せる」
綾乃の目から怒りの色が消えていく。
彼女は目を閉じる。
「ほんとに?」
小さな声で彩乃がつぶやく。
「ああ、誓うよ」
彩乃は目を開いた。
その瞳には小さな輝きが浮かんでいる。
「わかったわ。辻くんに協力する」
綾乃は獅堂の目をみつめた。
引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします。




