EP29 代償
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5月18日。
5月第4週、第一月曜の朝。
月に一度の重大発表の日だ。
この日も前月同様、生徒たちは学年掲示板の前に集まっていた。
小テスト、各クラスごとの平均点が貼り出されている。
今月は大変動が起きた。
6組による5組への下剋上である。
先月までのテスト平均点は5組が6組を20点ほど上回っていた。
しかし今回は逆となった。
5組:666点
6組:690点
点数差が逆転、その差が「20」を超えたことで、ルールが発動した。
来月より両クラスの序列は入れ替わる。
点数の下にはこう記述されていた。
〈6月1日より、5組は「6組待遇」、6組は「5組待遇」とする〉
これにより教室など学校設備のレベルが変更される。
それとともに毎月、所属クラスごとに与えられる【SCORE】の数字も変動する。
これが各生徒のランキングに大きな影響を与える。
この張り紙を腕組みしながら仁王立ちで見ている生徒がいた。
5組のクラス委員・平手大樹だ。
190㎝、短めの銀髪をきっちりとまとめている。
高く細い鼻筋、大人びた目、フチなし眼鏡。
端正な顔が苦虫をかみつぶしたようにゆがんでいる。
いつものように取り巻きの金髪とスキンヘッドがそばに付いている。
金髪男が言う。
「まずいですね」
平手が言う。
「ああ。クラス逆転となると俺たち5組が数多く退学に追い込まれる可能性がある。早々に手を打たないと」
スキンヘッド男が言う。
「6組は勉強会みたいなものを開いて成績を底上げしているようです」
平手が聞く。
「誰が主催しているかわかるか?」
スキンヘッドが言う。
「クラス委員の緑川綾乃でしょう」
平手が眼鏡の奥を光らせて言う。
「よし。そこを突いて揺さぶっていこう」
「この前、退学させそこねた夏川美穂も、その集まりに参加して点数をアップさせています」
平手は歯ぎしりして言う。
「そこもきっちり潰していかないとな」
金髪男が言う。
「あの辻獅堂って奴はどうします?」
平手が言う。
「この前、大きなポイントを使って夏川美穂を救ったばかりだ。2回目はしばらく無理だろう。どうせヤツにはポイント譲渡ぐらいしかできないさ。それに地味なくせにやたらケンカが強かったから、変に触って怒らせるのも得策じゃない。泳がせておけ」
「承知です」
金髪男が頭を下げる。
放課後。
この日は1年のクラス委員を集めた学年委員会が開かれていた。
それも終了した17時過ぎ。
最後に部屋を出た綾乃が一人、廊下を歩いている。
ほとんどの生徒が16時には帰宅の途、あるいは部活に出る。
学校の廊下もほとんど人通りがない。
綾乃は突然、脚に大きな痛みを感じた。
大きな悲鳴が上がる。
そのまま、体が動かない。
黒いフェイスマスクをした男たち4人が彼女を取り囲む。
しびれた体を抱えられるように、視聴覚室へと連れ込まれた。
綾乃を襲ったのはスタンガンだった。
電気ショックによって体が麻痺して動かなくなる。
床に仰向けにされた姿勢で囲まれた。
4人とも刃物を持っている。
すべて、綾乃の体の各部分に押し当てられた。
顔、腕、胸、脚。
すべての部分に冷たく鋭利な恐ろしい感触が当たる。
「動くと傷が残っちまうぜ」
脅しをかける男。
「どうしてこんなことをされるか、わかるか?」
綾乃は青ざめた顔で震えながら、小さく
「え…」
と発音する。
男が言う。
「怖くて『いいえ』も言えないようだな」
男が続ける。
「夏川綾乃に勉強を教えているだろう。余計なことをするな。陸上バカは、バカのままでいいんだ」
綾乃の目から涙がこぼれる。
男が続ける。
「そして他の生徒もだ。石橋奈緒、白石久美、近藤亜紀。すべて成績のいいお前が教えているんだろう」
「う…」
綾乃の声は、声にならない。
「刃物を当てられながらでは話せないか。余計なことをすれば、身の危険に合う。一生の破滅につながるのだ。お前は利口だから、わかっただろう。今回は脅しだが、また同じことをすれば、俺たちはまた来て、本当にお前の体に傷を刻む」
「…った…」
綾乃の小さな声に男は。
「どうやら、わかったと同意してもらえたようだな。勘弁してやろう。しかし次は執行猶予はないからな」
刃物が収められた。
綾乃はぐったりとして、小さく、うなずいた。
男が言う。
「それと、粗相した後始末は、ちゃんと自分でやっておきな」
男たちは笑い声を上げながら去る。
綾乃は下半身の濡れた感触に気が付いた。
恐怖のあまり彼女は失禁していた。
体の麻痺もあったのだろう。
スカートのしたが水たまりになっている。
屈辱のあまり綾乃の顔は真っ赤に染まる。
雑巾を手に綾乃は自分の液体を拭き、水洗いする。
大粒の涙が止まらなかった。
引き続きどうぞ、よろしくお願いいたします!




