EP25 追跡
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辻獅堂に石橋奈緒が声をかけてきた。
「話があるの。中庭まで付き合ってくれない?」
「わかった」
獅堂はイスから立ち上がる。
並んで歩く獅堂は彼女の顔を見る。
唇には艶やかに光るピンクのルージュが引かれている。
胸元が開いた白いワンピース。豊かなバストのふくらみがクッキリ浮かび上がる。
豊かなバストのふくらみがクッキリ浮かび上がる
甘い香水の香りが漂ってくる。
対する自分はジーンズにグレーのパーカー。
なんだか不釣り合いだ。
中庭に着くと、奈緒はかしこまった表情で獅堂と向かい合った。
「あの、辻くん」
彼女は切り出した。
「この2週間、勉強を教えてくれてありがとう。すごくためになって、私は変わることができた。自信も生まれた」
獅堂は黙って彼女の話を聞く。
奈緒が続ける。
「すべて辻くんのおかげ。感謝している」
獅堂はゆっくり首を振る。
奈緒は獅堂の目をまっすぐに見て訴えかける。
「私はいつしか、いつも辻くんのこと考えるようになったの」
獅堂は彼女を見る。
奈緒が続ける。
「勉強会だけでなくて、いつも一緒にいたい。私は辻くんの彼女になりたい」
獅堂は一度、うつむき、数秒、そのまま沈黙した。
そして口を開く。
「石橋さんは俺にとっても大切な存在だ。勉強会の仲間で、明るくて性格も良くて、いまや数学では校内ナンバーワンの誇れるクラスメイトだ」
奈緒がうなずく。
獅堂が続ける。
「でも俺は今、彼女とか作るつもりはない」
それを聞いた奈緒の目に涙が浮かぶ。
獅堂は続ける。
「女の子をそんな風に見られない。彼氏とか彼女とか今の俺には理解できない。付き合うとかもわからない」
泣きに入っていた奈緒の目が、一瞬にして丸くなった。
涙も止まってしまったようだ。
奈緒が大きなため息をついて、腕組みをする。
そして、呆れたように言う。
「断られても粘ろうと思ったけど、なんだか無駄だったみたいね」
獅堂は黙ったまま、彼女を見る。
奈緒が続ける。
「いいわ。今回はフラれてあげる。でも私、諦めないから。辻くんがその気になるのを待つ。勉強会でもずっと一緒にいる。また挑戦するから、覚悟してて!」
そう言い捨てて、奈緒は小走りに去っていく。
その背中を見ながら、獅堂は深いため息をついた。
帰り際、校門を出ようとする獅堂。
するとそこに、ウィンドウにスモークを貼った黒い高級車が横づけしていた。
車の脇で、縦じまの黒スーツを着た男が一人。
誰かを待ち構えているようだ。
獅堂はスマホでタクシーを呼び、少し離れたところで待機した。
車のウィンドウを少し開けて様子を見守る。
校舎から緑川綾乃が出てきた。
デニム地のロングスカートに、クリーム色のカーディガン。
長い髪を後ろでまとめた上品ないでたち。
彼女の姿を見ると、スーツの男も動く。
綾乃が校門を出たところで、行く手を阻むように立ちはだかった。
綾乃の大きな瞳が少し吊り上がったように見える。
二言、三言ほど会話を交わす。
男の動きが変わった。
強引に綾乃の体を抱えるように腕を回す。
そのまま拉致されるように車に押し込まれる。
車はタイヤの音をきしませながら急発進した。
「あの黒い車に続いて走ってください」
獅堂はタクシー運転手に告げた。
引き続きどうぞ、よろしくお願いします。




