EP21 ストレンジャー イン ザ ダーク
こんばんは!
お読みいただきありがとうございます。
翌日の放課後。
緑川綾乃から辻獅堂にグループSNSで連絡が入った。
〈今日のセッション、急用のため欠席します〉
獅堂は夏川美穂に
「ごめん。今日のセッションは自習だ。みんなに伝えておいてくれ」
と言い残し、教室から急いで飛び出す。
「辻くん!」
と呼ぶ美穂だが、獅堂は振り向きもしなかった。
獅堂は教室を出てから再び、綾乃の動きをマークしていた。
彼女は予想通り華道室に向かっていた。
途中で生徒会長の大泉裕一郎と落ち合い、周囲を気にしながら、中に入る。
獅堂は華道室に仕込んでいた盗聴器の音声をONにした。
「なんだ、話って」
と大泉が聞くと、綾乃が切り出した。
「6組のことは、私にすべてお任せください。あなたのお手をわずらわせはしません」
大泉は少し上ずった声で言う。
「ああ、綾乃を信用して、任せているよ。でも君に呼び出されて言われるようなこと、あっただろうか?」
綾乃は澄み切った声で言う。
「隠さなくてもわかっております。私は大泉会長のすべてを理解していますから」
「綾乃、私は何も隠していないぞ」
「学園の秩序のため、1年6組の調和のため、私は何をすべきかが分かっております。すべては大泉会長のご意思のままに実行いたします。ご安心くださいませ」
「綾乃、いったい何を?」
「大丈夫ですよ。結果を楽しみにお待ち下さい。では、失礼いたします」
「おい、綾乃…」
ドアを静かに開けて出ていく音。
携帯電話をかける音。
相手が出ると、大泉が話し出す。
「ああ、大泉だ。君に頼みたいことがある。緑川綾乃のことだ」
相手の返事を待って大泉が続ける。
「今の彼女は何をするか読めない。しばらくマークしてくれ。少しでも変わったところがあったら報告してほしい」
大泉は電話を切る。
辻獅堂の帰り道。
駅から自宅までは徒歩15分ほどだ。
繁華街の雑踏から離れると、電灯がまばらで、通行量も極めて少ないエリアがある。
事件はそんな一角で起こった。
時間は夜8時を回っていた。
獅堂を待ち伏せていた4人組の男が、背後から一斉に飛びかかる。
バランスを崩して前のめりになり、うつぶせに倒れる獅堂。
男たちが一斉にのしかかる。
凶器は持っていなかったが、男たちは戦い慣れていた。
上半身を抑えた2人が、獅堂の後頭部や顔を、執拗に殴り続ける。
残りのメンバーが、背中や下半身を蹴りまくる。
今回は明らかに素人ではない。
獅堂は脳震盪を起こしていた。
一人の男が言う。
「夏川美穂を助けただろう。だからこんな目に遭うんだ」
男は獅堂を思い切り殴る。
その顔が激しく左右に振動する。
男が言い捨てる。
「もう夏川美穂に構うな。でなきゃ、また同じ目に遭うぜ」
獅堂はそのまま路上で意識を失った。
再び意識を取り戻したのは見知らぬ中年男性の
「大丈夫か?」
という呼びかけだった。
中年男性は犬の散歩の途中だったようで、白い中型犬も獅堂の様子を心配そうに覗き込んでいる。
「すみません。大丈夫です。ありがとうございます」
と発音してみたものの、口の中は切れて頬が腫れまくっていて、ちゃんと発音できているかが、まるでわからない。
「いや、君、ひどい顔してるよ。救急車を呼ばなくていいの?」
「大丈夫です! 大したことありません」
痛む全身を引きずりながら体を起こす。
体は痛みだらけで鉛のように重いが、なんとか立ち上がった。
そこから両足を引きずるように家まで帰った。
どうやって帰ったか、ほとんど覚えていない。
マンションのドアを開けて、玄関に入ったところで、再び気を失った。
また明日、お会いしましょう!




