EP20 ニューカマー
お疲れ様です!
お読みいただいて、まことにありがとうございます!
〈セッション〉がしばらく続いた日々。
放課後、その輪にクラス委員の緑川綾乃が声をかけて来た。
「ちょっといいかしら」
澄ました微笑みを浮かべている。
辻獅堂はため息をついて、
「ああ」
と気のない返事をする。
綾乃が言う。
「いつもクラスの女の子に〈セッション〉で勉強を教えてくれてありがとう」
綾乃の言い方の「女の子」に妙に力がこもっていたが、獅堂はあえてそれに触れず、無難に答える。
「どういたしまして」
「調子はどうかしら?」
「教えているというより、みんな勝手にここで勉強してるだけだよ」
綾乃は首を振る。
「いえいえ、辻君は先生よりわかりやすいと評判よ」
「それはどうも」
「どのくらい成績は伸びそうかしら?」
獅堂は綾乃の目を見返し、こう尋ねる。
「何のためにそんなことを聞く?」
綾乃はクールな微笑みを崩さず、こう答える。
「応援しているのよ。みんなで進級したいから」
「なるほど」
獅堂は顎をなでながら言い、こう続ける。
「成果はボチボチ、というところだな」
綾乃が言う。
「で、相談なんだけど、私もこの〈セッション〉に入れてもらえないかしら。古文や漢文、現国はみんなにも教えられると思う」
獅堂は腕組みする。
ここで断る人間はいないだろう。
みんなに聞いても、クラス委員の参加にNGを出す者などいない。
だけど美穂や奈緒の表情を見れば、内心、抵抗を感じているのが見て取れる。
獅堂は他の女子に聞く。
「みんな、どうだろう?」
石橋奈緒が言う。
「歓迎します。一緒にやろうね、綾乃さん」
しかしその笑顔は若干引きつっている。
他の女子も笑顔でうなずいているが、本心からではなさそうだ。
「僕も一緒に入れてくれないかな」
とそのとき、声をかけてきた者がいた。
タカさんこと、小寺孝雄だった。
「足手まといになるかもしれないけど、一生懸命にがんばるよ」
と穏やかな笑顔をうかべて言う。
女生徒たちの緊張した表情は一気に和らいだ。
小寺を囲んで、女生徒のおしゃべりに花が咲く。
獅堂は安堵の息をついた。
セッションのメンバーとなった綾乃。
彼女が目を丸くしたのは、夏川美穂の成長だった。
これまで0点に近い一桁だった数学が7~8割、得点できるようになっている。
そのほかの科目も急上昇が始まっている。
「すごいね、夏川さん」
綾乃が言うと、
「すべて辻君のおかげなの」
と花が咲いたような笑顔で答える美穂。
小寺もこれまでは本気を出していなかったようだ。
話したり、一緒に問題を解くと、かなりの潜在能力を持っていることがわかった。
今日また、お会いしましょう!




