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EP2 四つ葉のクローバーを見つけるために、三つ葉のクローバーを踏みにじってはいけない

こんにちは、瀬戸隆平です。

また会えてうれしいです。

よろしければお気軽にご感想、評価、ブックマークをいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。

 話は再び、一週間前の朝にさかのぼる。

 

 4月5日、東光学園の入学式。

 学校には制服がなく、校則もほとんどない。

 辻獅堂(しどう)は部屋のクローゼットから無難な普段着をチョイスする。

 グレーのパーカーとジーンズ。


 獅堂は自分が変わり者なのを自覚している。

 発言もいちいち、ひねくれたことをしゃべってしまう。

 中学のクラスメートからは「変人」とか「宇宙人」とか呼ばれた。

 皆、楽しそうに獅堂をイジってきたが、獅堂はうまく返せない。

 そこでまた笑いが起きていた。

 獅堂も苦笑いを浮かべていたが、内心では深いため息をついていた。

 だからこそ、新しい学校での生活は不安だった。

〈いきなりイジメにあってしまうかもしれない〉

 そのためにも悪目立ちをしない服装を選んだ。


 海沿いを走る通学電車は乗客で満員だ。

「間もなく六等星駅、六等星駅、お出口は左側です」

 アナウンスが流れる。

 東光学園の最寄り駅だ。

 車内の人波の流れに変化が起き始める。


 車両の中ほどにいた獅堂も出口に向かおうとする。

 だが、その前に何者かが割って入ってきた。

 獅堂を乱暴に押しのける。

 身長は190㎝はあろうという長身、紫色の短髪をスパイキーに逆立てている。

 上下とも高そうな白のスーツを着ている。

 切れ長の吊り目、耳にはピアス、薄い唇。

 売れっ子ホストのような容貌だ。

 だが、肌つやを見る限り年齢は獅堂と同じくらいだろう。


 長身男はそのまま乗客を力任せに付き飛ばしながら降車ドアに向かう。

 ドア近くにはベビーカーを引く若い母親がいた。

 通せんぼをされた男の目はさらに吊り上がる。

 男は大きな舌打ちをする。

 しかし接近に気づかない母親は、そのまま立ちふさがっている。

 

 長身男はベビーカーを蹴り上げた。

 横倒しになり、赤ちゃんが泣き出す。

 悲鳴を上げる母親。

 しかし長身男は意にも介さず、横倒しのベビーカーを長い脚でまたいで進む。

 そのままドアの前に仁王立ちした。

 乗客はその男から距離をとって、遠巻きに見ている。


 駅に到着してドアが開く。

 倒れたベビーカーのもとに、駆け寄ってきた若い女性がいる。

 ピンクでセミロングの髪。

 それが夏川美穂だった。

 彼女はホームの駅員に叫んだ。

「ベビーカーが倒れてます。ドアを閉めないでもらえますか?」

 それを聞いた駅員はすぐさま近くの電車停止ボタンを押す。

 そして駆け寄ってくる。

「どうして倒れたんです?」

 近くの別の乗客が言う。

「大きな男がベビーカーを蹴り倒したんだ!」

 駅員が聞く。

「その人はどこに?」

 思わず獅堂も男を指さして声を上げていた。

「あそこに歩いている白いスーツの人です」

「わかりました!」

 駅員は駆け出して、長身男に追いつくと、その手首をつかむ。

 男は何か叫んで振り払おうとするが、駅員は放さない。

 やがてもう一人の駅員が駆け寄り、男を囲み、駅の事務室に連れていく。


 一方のドア付近。

「大丈夫ですか?」

 夏川美穂は素早く幼児を抱き上げ、母親に渡す。

 そしてベビーカーも立て直す。


「ありがとうございます」

 母親はお礼を言う。

 美穂は笑顔を浮かべながら、母親にたずねる。

「いえいえ、それよりお子様、お怪我はありませんか?」

 母親が言う。

「ええ、おかげさまで。この子もすぐに泣き止みました」

「よかったです。じゃあ、私、この駅で降りますので」

 美穂は、幼児に笑顔を向けて、手を振りながら入学式へ向かう。


 獅堂も後を追うように駅を出る。

 六等星駅から東光学園への通学路は5分ほどだ。


 その左側から何かがハイスピードで迫ってきた。

 振り返るとスケートボードだ。

 オレンジ色のスーツ姿の女の子。

 獅堂を追い越して、まっすぐ学園に向かっていった。

 おそらく東光学園に向かう生徒だろう。


 すると今度は右側から大きな風圧が獅堂の顔を叩いてきた。

 電動式のキックボードだった。

 乗っているのは青いスーツの高校生風の男。

 やはり学園の生徒に間違いないだろう。


 学校に入っていくと、グレーの袴に、黒い着物を着た男が歩いていた。

 足元は下駄。

 完全に侍だ。

 校門に入っていく。

 彼も学園生のようだ。

 

 獅堂は思い出した。

 校則は存在しないが、学校からのお願い事項が少数だけ存在していた。

 その中に、

〈※下駄は木製で底にゴム製のカバーがついた製品を使用ください〉

 との記述があった。

 学校からの軽い冗談かと思っていた獅堂。

 実際にその下駄を、目の当たりにするとは思わなかった。


 校門の前で犬を散歩させている黒いスーツの若い女性。

「おはようございます」

 と獅堂に声をかけてくる。

 近隣の住人かと思っていたが、そのまま校門に入っていく。

 彼女も新入生のようだ。


 制服もない、校則もない。

 自由を謳歌しているというと聞こえはいい。

 しかし獅堂は、学園の風景に違和感しか感じていない。

〈こんな学校で、うまくやっていけるのだろうか〉

 獅堂は茶色の髪をかき上げつつ、頭を掻いた。

いかがでしたか?

お楽しみいただけましたら、

お気軽にご感想、評価、ブックマークいただけましたらうれしいです。

明日、お昼過ぎごろ、また投稿しますね。

引き続きよろしくお願いします。

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