EP17 インディビジュアリスト
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その日の放課後から、夏川美穂と辻獅堂の勉強会が始まった。
まずは美穂の苦手な数学から。
獅堂が言う。
「嫌いな科目って思うかもしれないが、答えが決まっているから、点数は一番取りやすいんだ。わかる部分だけでいいから、確実にものにしろ。数字は確実に上がる」
まずは基礎の基礎から始める。
序盤の問題で確実に点数を積み上げるためだ。
公式を覚えさせ、それに合った例題を解かせる。
「こんなに簡単に解けるの? 超おもしろ〜い!」
美穂が満面の笑顔を見せる。
物覚えが早い。
もともと能力が高いのだろう。
昼休み、放課後と、勉強会は続いた。
やがて彼女は、問題文を思考パターンに落とし込み、正解へのルートを選択していけるようになっていった。
4月の最終週の月曜の朝。
シューズボックスを開けると、またしても手紙が入っていた。
獅堂は思わず顔をしかめ、右手で額を額を抑える。
今度は無地の白い封筒入りだ。
決闘状にも見える。
中の便せんを取り出すと、
〈相談があります。本日の昼休み、理科準備室に来てね 富樫由美〉
担任教師からだった。
胸に手を当て大きく息を吐き出す獅堂。
しかし、すぐさま首を捻る。
「何で普通に呼び出さないんだよ…」
理科準備室はそんなに広くない。
しかも人体標本などが置かれ、椅子は二脚しか置いてない。
密談の雰囲気が漂う。
担任教師の富樫由美は先に来ていた。
珍しくピンク色のスーツを着て、首元には花をかたどったリボンをつけている。
いつもはグレーの落ち着いたスーツなのだが。
獅堂は言う。
「見慣れない服だな」
すると由美は、
「そう。今日は辻くんとお話できると思って、気分が上がっちゃって、オシャレしてきちゃった」
と茶髪ゆるふわパーマを指に巻きつけながら笑顔で答える。
まるで少女のように首を傾げながら、彼女が言う。
「辻くん、担任教師に呼びつけられたのに、そんなこと聞いてくるなんて、余裕あるわぁ。さすが小テスト学年順位、5番の男の子ね」
「そんな情報も入ってるのか」
「フフフ」
「それに…なんだよ、あの手紙。呼び出しなら、普通にホームルームで連絡すれば良いだろ?」
「それが、普通の相談じゃないんだな〜」
「えっ!?」
「ひとつは、あなた自身のこと。もうひとつは、このクラスのこと」
「はぁ…」
「どちらから聞きたい?」
「もちろん俺のことだ。クラスのことなんて、どうでもいい」
「ためらいもなく、よくそんな自己中なこと、言えるわね」
「人とうまくやっていけるなんて、思ってないからね」
「ふうん…」
由美は、悪戯っぽい目で、獅堂を見る。
「なんだよ!」
獅堂は突っかかる。
「まあ、いいわ。本題に入りましょうか」
次回は夕方の予定です。
引き続きよろしくお願いします!




