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第1話 日記 · 旋律のイーファ

「勇者姫兵リィンエルド」として七織千都世 名義でpixivにあげていた作品の改題·修正版です。


日常で 何かが変わる その一歩目。

小さなきっかけかもしれません。

大きな後悔をするかもしれません。

ただ、確かなことは、少しづつ進んでいること。


悔いを残した昨日と決別しなくてもいい、

悩みを丸ごと抱えて 歩いてみよう。


鈴音の歩みを見ていただけたら幸いです。

挿絵(By みてみん)

アクセサリーショップ・ギャラリーシアーシャ·~Saoirse~

店主・風深かざみ 鈴音りぃんの日記


1月28日


中途半端な開始ではあるけれど、今日から帳簿とは別に日記でもつけてみようと思う。

今までつけなかったのは余裕がなかったからと言いたいけど、そういうのは言い訳だ。

自分の今の気持ち、不安とかが後で指針になるかもしれない。

後で読み返したら、案外他人のような気持になるかもしれない。

走り書きでも残しておこうと思う。


この3週間について、

正直なところ、退屈はしない程度だと思っていた。

おばあちゃんのこのお店は子供の頃からずっと見ていたし、なんだかとても緩やかな時間が流れているというイメージだった。

もちろん、商売なんだからそんな生易しいことはないって覚悟だってしていた。

やってみなければ見えないことはたくさんあるだろう。

そういうノウハウはこれから積んでいくしかないし、現に刺激として毎日の活力にもなっていた。

学校の実習で学んだなんて思ってもいない。

思っていたことと違う、なんて当たり前だ。

一から自分で始めたお店ではないのだし、流れに乗っているだけで苦労を知らないなんて言われるかもしれないし、実際はそうなんだとも思う。

ましてや16歳で店主だなんて、誰が信じるだろうか。

一人で全部やっているなんて思っていない。

いろんな人の支えでようやく立っている状態だ。


「好きにやってみなさい」

おばあちゃんはそういって30年以上も一人で守り続けたこのお店を私に譲った。

おばあちゃんがずっと石と会話し続けたおばあちゃんだけの特別な魔法のお城だ。

うれしいというより重みと責任を感じるのは誰でもそうだと思う。

同じようにできるなんて思っていない。

工房の工具だって半分も使い方を知らないのだ。

それでも胸が躍った。

無責任だろうか?

楽観的だろうか?

もちろん今この『ギャラリーシアーシャ』に立つ以上、自分にできることは精一杯するつもりだ。

同じ市内とはいえ実家を出てお店に住んだのも、少しでも自分を奮い立たせたいから。

誰のため?

このお店を譲ってくれたおばあちゃん?

支えてくれたお母さんやお父さん、お爺ちゃん?

それもあるけど、そんな優等生じみたことよりももっとミニマムなものが私の行動原理なのだと思う。


あらためて店内を見渡す。

ショウウインドウに並べた商品は、おばあちゃんが創って送ってくれたもの。

私が見繕って輸入したもの。

そして、ほんのすみっこに、今日初めて並べた、私が創った石たち。

いつか売れるのだろうか。




2月6日


今日は本当に驚いた!

いつも通りにお店を開けて、ネット注文の午前便を送り出して、また発注書をチェックして。

そこまではいつもと同じ。

最初のお客さんがこんなこと言った、

「旋律のイーファの作品はありますか?」

旋律のイーファ?

イーファおばあちゃんにそんな二つ名があったの?

っていうか、そのお客さんはどうみても20歳代の男性で、おばあちゃんの知り合いにも見えないのだけど。

函月市の港区ガイドを片手にしているから常連でもなさそう。

ネットでいつも注文してくれる人でもないみたい。

おばあちゃんの作品を見せて、一通り眺めて「お手ごろなのがいい」というので、贈り物ですか?と聞いてみた。

そしたら「イーファの作品を記念に買いたいんだ」だって。

記念って、おばあちゃんどこでそんな有名人になったんだよ!


それがはじまり。

それからそんなお客さんが何人もいらっしゃったんです。

たしかにおばあちゃんは子供の頃から私のあこがれだったし、このお店だっておばあちゃんが若いころからやっている、どんな人脈があるかなんて詳しくは聞いていない。

でもそんなに有名人だったかな。

私だって子供の頃から何度もお店には来ていたけど、そういうお客さんには一度もあったことがない。


それでさっきネットで調べてみた。

「旋律のイーファ」

もうびっくり!


動画サイトにあったそれは、まさにおばあちゃん!

それも若いころの。

たぶん20歳にもなっていないんだと思う。

今の私と同じくらいじゃないかな。

でも間違いなくおばあちゃんだ。

だって、あの「技」、私の知る限りおばあちゃんしか使えないのだし。

それに、動画の背景も、古いけど間違いなくこの函月市の街並みだった。

湾内のイサナ灯台も見える。

あのにぎやかさは開港祭だと思う。

動画の中の少女・イーファはまるで異国人形のような ドレスを着飾り、集まった人々の前で自分より大きな月鯨の結晶石を横に立っていた。

うちに代々伝わる原石だ。

月鯨遺跡の一部なのだろうが、どういう経緯かでうちにある。

ここから削り出しているので当然ながら今うちにあるものよりは大きい。

イーファは一礼し、片手に持った弦楽器の弓のような工具で結晶石に触れた。

おばあちゃんのオリジナル工具『くじらのひげ』だ。

結晶石の周囲をくるくると、まるで踊るように舞い、『くじらのひげ』で結晶石に触れる。

まるで力を込めているようには見えないその弓で、弦楽器を弾くように月鯨の結晶石を削り出すのだ。

そのたびに結晶石が共鳴し音色を奏でる。


この月鯨石を加工するには音で削らなければならない。

普通の工具で削ったり切り取ったりしても、数分で不透明な砂岩化してしまう。

微細な振動を与えることで結晶質を維持しながら切り取らなければいけないのだ。

その技術はほんの一部の人しか知らない。

だから加工された月鯨石が鉱石市場に出回ることがほとんどない。

かといって希少価値があるわけでもなく、ごくまれに持ち運べるサイズの石が出回るに過ぎない。

見た目は奇麗でも、二束三文とは言わないが鉱石価値は低く見積もられる。


そして削り出すための弓『くじらのひげ』はやはり月鯨の結晶石で作られた工具だ。

こんな形の工具はたぶん世界中で他に誰も持っていないだろう。

削り取られた結晶石は、鉱物なのにまるで新体操のリボンのように舞い上がり、陽光を受けて七色に輝いてイーファのまわりに羽衣のように舞い続ける。

結晶石同士の共振が薄く削られたそれを、まるで叩かれたドラムの上の豆のように宙に浮かばせている。

イーファの軽やかな動きとともに、幻想的な空間を作り出していた。


知らない人から見たらそれはマジックにでも見えるだろう。

開港祭だし、トリックのある大道芸と思った人がほとんどだろう。

でも、おばあちゃんが月鯨の結晶石を削るときはこの「技」をつかうのだ。

別に秘密ではないのだけど、人前で見せることは少なかったし、こんな動画が残っているなんて私も知らなかった。

それにこんな若いころからもうあの技が完成していたなんてことに驚きだ。

削り出しが終わりイーファは深々と一礼する。

イーファの周りには結晶石の羽衣が幾重にも重なり、まるで華の中のお姫様のようだった。

拍手喝采が沸き起こった。

ちょっとはにかむ少女イーファ。

そこに歩み寄る一人の長身の青年。

間違い無い、竣介おじいちゃんだ。

動画はそこで終わっていた。


おばあちゃんは函月市に留学で訪れ、交易商・葵家の息子であるおじいちゃん、葵竣介と出会った。

その後、祖国のアイルランドで二人は再会して結婚、私のお母さんを生んだ。

それから日本に来てお店を始めた。

この動画はたぶん留学中、おじいちゃんと出会ったばかりの頃なのだと思う。


案の定、というべきか、ものすごいコメント数がついている。

称賛であったり、合成やトリックだろう、という懐疑的なもの、映画の一場面では?というものもあれば、アイドルPVみたいだ、なんてコメントもある。

たしかにおばあちゃんは美人だ。

この映像だって本当に美少女だと思う。


動画は数日前に投稿されたらしく、ものすごい閲覧数。

もうちょっと検索してみたら、その後おばあちゃんがアクセサリーショップを経営していることまで調べられていて、動画ともリンクされていた。

よく調べたものだと感心する。

古い函月市の商店街ガイドまでアップされていて、そこに『ギャラリーシアーシャ~Saoirse~』が載っている。

しっかりと「店主 イーファ葵」と書かれていた。

それを見た人たちが来たわけか。

いや、だからって何十年も前の美少女に会いに来るか。


売り上げになるのはうれしいし、おばあちゃんの作品が多くの人に手に取ってもらえるのはうれしい。

もちろん、本当に必要な人の手元に届いてほしいけれど。

願わくば、記念としてではなく、自分や、大切な人を飾るために身に着けていてほしい。

石は人で輝いて、人を輝かせるのだから。


そして、いつか私の作品も。




2月17日


今日もやっぱり「旋律のイーファ」目当てのお客さんは絶えなかった。

お店の前で記念撮影なんてもう慣れたけど、売り上げはというと、そこまで伸びているわけではないのが実情。

中には、お店の前で「旋律のイーファ」を真似する人まで。

すっかり観光名所だ。

よく、テレビで紹介されて本来のお客さんが離れてしまったなんて話があるけど、なんとなくわかる。

たまにいらっしゃるおばあちゃんの常連さんも、「今日はにぎやかだね」って言ってた。

いつも午後の時間はお客さんがほとんど来ないから、訪れてくれた人に紅茶をお出ししているのだけれど、ここ数日は紅茶を入れるスキがない、なんて日もある。

これって贅沢かな。




2月22日


大変だ!

私の作ったペンダントが売れてしまった!

いや、売れていいのだけど。

まさか月鯨石が売れるなんて!

月鯨石は、鉱石ランクは低いけれど、見た目は決して悪いわけでも安っぽいわけでもない。

ただ、ほかの石と並べば必ず皆の目は月鯨石以外に向くのだ。

どういう理屈かわからないけど、路傍の石のようなステルス効果でもあるかのように。


ショウウインドウを覗き込んだその人は、いつも通りイーファ目当てのお客さんかと思っていた。

ずいぶん長いこと私の作った月鯨石のペンダントを見ている。

とりあえずはウインドウ越しに営業スマイル。

むこうも笑顔を返してくれた。

「よかったら、中にもいろいろありますよ」

そのお客さん、お店に入るなりこう言ったんです。

「あの、ペンダント見せてくれませんか?」

何かの間違いだと思った。

「あれは月鯨石ですけど、イーファの作品ではないですよ」

男性はきょとんとした。

「イーファ?あ、ごめん、俺ブランドとかに疎くて」

あれ?旋律のイーファ目当てじゃない?

「贈り物ですか?」

「いや、なんとなくなんだけどね、昔見た石の色に似ていて、それで少し気になって、やっぱ似合わないかな?こういうのは。」

男性は自分の風体におどける様なしぐさをして見せた。

別に身に着けるのに男女関係なくデザインしたつもりだったし、使う人それぞれの世界があるのだから、そんなことは気にしていなかった。

「よく、コーディネイト次第で自分の個性をいくらでも惹き立てられます、なんてアドバイスがありますよね、それも一理あります、けれど見た目の工夫ではなく、お持ちになる方のお気持ち次第で石はいかようにも変化するんですよ。」

石を身近に感じてもらえたなら石だって喜ぶのだ。

だって大事な相棒だもの。

でも、こうして石を見ているのだから何か用途があるのだろうと思い聞いてみた。

「ご用途はデート用ですか?」

またも男性はきょとんとした。

「用途なんて考えていなかったな、正直こういったものは買ったこと無くて、ちょっと持ってみてもいいかなって思ってさ」

あれ、ずいぶん熱心に眺めていたように見えたのだけれど。

それにしても目に留まったのが私の作品?それも月鯨石を?

おばあちゃんの作品ではなく私の作品を見ていたなんて事も信じられなかった。

それに「持ってみたい」という動機に動揺してしまう。

目的がなくとも少しの興味から持てば石は応える。

その人の気持ちを映す鏡であり相棒となるのだ。

雨上がりに連れ出せば気持ちを弾ませてくれる。

寒い夜には星明りをあつめてくれる。

踏み出すべき時には光をエールに変える。

この人はまるでそのことを知っているみたいだ。


彼が指名した私の作品をケースから出して台に置いた。

「どうぞお手にとってご覧ください、それとせっかくですからほかの作品もご覧になってください。いまお茶を淹れますね」

手を動かしながら問いかけた。

「もしかして、函月は初めてですか? 湾のイサナ灯台には行かれましたか?」

「まだ着いたばかりで、これからなんだ」

彼はやはり函月に初めて訪れたそうだ。

仕事で来たばかりで午後の空き時間を利用して港地区の散策をしていたと。

明日、所属する研究チームの発表があり、そこでの評価で今後の活動が決まるそうだ。

認可されればしばらくは函月に通うことになると。

「願掛けみたいなものかな、アスリートがお守りとして持つみたいに、自分の研究も上手くいくようにね」

やっぱりそうなんだ。

「石はいつでも味方になってくれます。」

「そう言ってもらえると心強いね」

「うまくいくといいですね。函月はいいところたくさんありますから、」

「月鯨遺跡、ここの遺跡は灯台になっているんだね。」

世界中にある月鯨石の遺跡は、たいていはあまり注目されずに、歴史的価値もなく放置されている。

だけどこの函月市の湾にある月鯨遺跡は、昔から灯台として利用されていた。

世界中でも例がないそうだ。

函月で採れる月鯨石を、交易商人だった葵家のおじいちゃんは持っていた。

誰も欲しがらないその月鯨石に、おばあちゃんは魔法をかけたのだ。


紅茶を淹れて彼の前に置いた。

もしかして待たせすぎて気が変わってしまっただろうか。

やっぱりこっちがいい、なんておばあちゃんの作品を選ぶかもしれない。

それでも私の作品を初めて手に取ってもらえたのだし、なにか感じてもらえるだろうか。

月鯨の結晶石は人を惹き付けないと言われている。

鉱石ランクだって低い。

だからおばあちゃんはそれを逆手にとって好きに創っていた。

おばあちゃんの手にかかれば月鯨石は魅力的な宝石に生まれ変わるのだ。

私はおばあちゃんに憧れて始めたけれど、おばあちゃんの生み出す作品が大好きだった。

おばあちゃんは自分の手で何の変哲もない月鯨の結晶石を宝石へと昇華させた。

それは私にとって本物の魔法だった。

私もいつかそうなりたいと願った。

そしてはじめた。


ふと思い出した。

自分がこのペンダントに込めたテーマ。

「これ、『はじまり』って意味があるんです」

彼が微笑んだ。

「そりゃ俺にちょうどいい、初めて来た街で、新しいものを身に着けて、これから始めることの後押しになる、いい記念になりそうだ。それに……、」

「それに?」

「巡り会わせに感謝しているよ、疑問が確信に変わった。明日はいい日になる」

彼の笑顔が自信に満ちていた。

そうだ、私がおばあちゃんのお店を継ぎたいと思った理由を思い出した。

おばあちゃんは人が笑顔になる手助けをしていたのだ。

それを自分もしてみたかった。

大好きな石を通じて。


これが、あの人との出会いだった。




3月13日


午後3時、ポットに火を入れる。今日は来るだろうか、なんて考えてしまった。

ティーカップはお客さんの数だけ用意するけど、この灯を入れたのはあの笑顔が見たいから。

ポットの音に集中していればドアの前で立ち止まる足音に一喜一憂することもないのだけど。

いつもなら湯気の形が次の作品へのアイデアになるのに、今日はあの人の笑顔が浮かぶ。

汽笛はまるで嘲笑うみたいに思考に割り込む。

お湯とともに小さな勇気がわいてきた。

あの人に見せたい世界をカタチにしよう。





「ほほえみティースプーン」


キミの持つスプーンの中の私

ほほゆるめすぎなのは

前髪思い通りだから?

昨夜の夢が今叶っているから?

思いがけないツーショットに

柱時計の小鳥が茶化す


だめだめ ミルク入れすぎ

回るリーフと私の鼓動

競走なんてしないでよ


もしも涙あふれたら

ティーソーサーで受け止めて

もしも笑顔こぼれたら

ティーソーサーで受け止めて


ご注文は以上でお揃いですか?

いいえ これからそろえるの

照れて開くお天気サイト

明日の空より教えてほしい一年後

だって今日は内緒の記念日


キミの手の中つつまれた

午後の陽 透ける白いティーカップ

わたしのドレスにかわりますように



◇第1話 日記 · 旋律のイーファ · おわり◇



♪人物紹介♪


風深かざみ 鈴音りぃん・女・現時点で16歳

アイリッシュ系クオーター。金髪ロングをポニーテールにしている。

祖母 イーファ・葵から引き継がれたアクセサリーショップ「ギャラリーシアーシャ~Saoirse~」を経営。

祖母の制作した小物、輸入アンティーク小物、自作アクセを販売している。

店舗は小さくネット販売が中心。祖母の人脈から常連客が多く売り上げ自体は悪くない。

大学院を卒業している。

すぐに悩んでしまう性格に多少なりコンプレックスを持っている。



御影みかげ 星琉せいる・男・現時点で23歳

気象関連の研究をしている。

月鯨遺跡の地質調査に立ち会うために函月市を訪れる。

鈴音の小物づくりに対する情熱やスタンスに触れて感心し、気に入る。

彼女を見守っていたいと考えている。

遺跡の地質調査に幾度か立ち会うなかで、過去の気候変動データから遺跡の存在について疑問を抱いていた。



☆イーファ・葵(いーふぁ・あおい 旧姓ローナン)

鈴音の祖母。

アイルランド人。

日本に留学中に鈴音の祖父・葵竣介と出会っている。

ローナン家にも結晶石が伝わっており、結晶石のペンダントを持っていたのが葵俊介と出会うきっかけであった。

アイルランドに来て再会した竣介と結婚し、鈴音の母にあたる紗々を生み育てる。

紗々が高校の時に竣介の仕事の都合により一家で再来日した。

一人で趣味のアクセサリーショップ「ギャラリーシアーシャ~Saoirse~」を経営していた。

店の名前は娘の紗々からとっている。

現在は店を鈴音に委ね、竣介と共にアイルランドに住んでいる。

月鯨の結晶石の工具により、結晶石を切り出す技術を持っている。

その様子は、まるで踊りながら奏でるようであり、薄く切り出された結晶石がリボンのように舞い輝くことと、結晶の共鳴による旋律が、知らない人間がみれば、パフォーマンスと思われていた。

若いころのその姿が記録された映像が現在になってネット動画に投稿され「旋律のイーファ」として話題を呼ぶことになる。

ネット上の評判も大道芸や見世物奇術であると思われているが、結晶石に関心を示すものにとってはそれが一般には伝わらない技術であるとささやかれた。

鈴音は子供のころから祖母のその「技」に憧れるも同じことができるとは思っていない。

鈴音が子供の頃、結晶石から造られた工具を譲っている。



▽舞台、用語など△


☆函月市の月鯨遺跡・イサナ灯台(はこつきし つきくじらいせき いさなとうだい)


鈴音の住む港町・函月市の湾内に浮かぶ小島にある結晶遺跡。

過去の地権者によって周囲を城砦化されている。

遺跡のほとんどが地下に埋もれている。

当時の地権者は地下遺構の存在も利用方法も知ることはなかった。

幾世代かに於いてつつましやかに守られており、政治的、宗教的な利用はされていなかった。

さほど珍しくもないものを道楽的に祀っている程度の認識であった。

世界中でも結晶遺跡をこのように祀る例はなく、本来は奇岩として放置される程度である。

近代に入り遺跡の頂上をライトアップされ灯台として利用されている。

函月市の人々からは「イサナ灯台」または「灯台」と呼ばれている。



☆月鯨石、結晶遺跡


有史前より世界中に分布されている巨大な結晶体構造物。

結晶質であるが、崩壊や、削り取ると不透明の砂岩化するため、貴金属的利用価値はない。

存在する場所も年代も不定であり、海洋生物や鳥類を模した形にも見えるが人工物であるか疑問視されている。

地殻変動や発掘により現れることもあるがそれほど珍しくはない。

クリスタル状であることから目を引くが、出土した地域の生活、文化や宗教感などには多少の影響を与えている程度であり、それ自体に希少価値を持たれておらず、信仰対象などにもなっていない。

歴史的には古く登場しているがそれ自体が中心として扱われることはなかった。

所有に対する争いなどが起きるということもない。

いつの時代においても「どこにでもある奇岩」程度の認識である。

現在は新たに出土した場合も、地質調査が行われ年代特定がされた後は、観光資源として公開される程度である。

近年になり、特定周波数の音に共鳴することが判明した。

それを利用した特殊波長切断機により結晶体のまま切り出すことが可能になった。

また、同質のクリスタルの刃により切断、加工が可能となる。

音波共振、振動派増幅値が測定不可であり、一部では兵器転用が懸念され技術規制が行われようとしている。

葵家、ローナン家には結晶石が伝わっており世代を経て装飾具や工具となっていた。



☆くじらのひげ


イーファが月鯨石から造った工具。

弦楽器の弓のようであり、糸鋸のようでもある。

結晶石に触れると共振しカンナように薄く「削り出す」ことができる。


「日記1」 読んでいただきありがとうございます。


これから鈴音の物語が始まります。

ちょっとつらいこともありますが、前向きに生きていく子です。


もしご興味がありましたら しばらくお付き合いくださると幸いです。


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