このエルフ、距離感というものを知りません!
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今回の作品は、騎士団で将来を期待される青年・アルトと、団のマスコット的存在であるエルフ少女・リィナの物語です。
リィナは、公の場では大人っぽく落ち着いた振る舞いを見せますが、二人きりになると距離感ゼロで甘えてくる……そんなちょっと不思議で可愛い一面を持っています。
過去には困難な経験もありましたが、アルトとの出会いで心を開き、二人の信頼と絆が描かれるハートフルなお話です。
どうぞ、二人のやり取りを楽しんでいただければ幸いです。
早朝の訓練場は淡い霜で覆われ、空気は凛と張りつめていた。
18歳のアルトは、若手ながら剣技と人柄で団員たちの信頼を集める青年だ。今日も訓練生たちに基本動作を教えながら、その一つ一つを丁寧に確認している。
「アルト様、今日もよろしくお願いします」
整った身なりの少女――リィナ――が、軽やかな足取りで近づいてきた。騎士団のマスコットとして団員たちの士気を高める役割を持つ彼女。
公の場では大人っぽく落ち着いた振る舞いだが、アルトだけが知る秘密がある――二人きりのときに見せる甘えん坊な一面だ。
「おはよう、リィナ。今日も元気そうだね」
「はい、アルト様。皆さんの士気を高めるのが私の役目ですから」
その瞳には、公では見せない柔らかい光が宿っていた。
アルトは心の奥で密かに笑った。今日も二人きりの時間が来ることを、どこかで待っている自分に気づきながら。
訓練中、リィナは団員たちに向かって声をかける。
「皆さん、焦らず一歩ずつ進んでください」
アルトは感心する。公の場では誰に対しても大人っぽく、礼儀正しい。
しかし、二人きりになると、距離感ゼロで甘えることも知っている。あの時の救出以来、彼女は自分だけを信頼しているのだ。
団員たちの士気を上げるその声には、自然と温かさが混じり、周囲も穏やかな笑みを浮かべる。アルトはそんなリィナを眺めながら、胸が少し熱くなるのを感じた。
1年前、リィナの故郷のエルフ村は人間の過激集団に襲撃され、彼女は捕らえられ、奴隷として連れ去られた。
食事も睡眠も制限され、心身ともに追い詰められた日々。孤独と恐怖の中で、誰にも頼れないことを痛感した。
アルト率いる騎士団が現れ、危険を顧みずリィナを救出した。毅然とした態度で彼女を守るアルトの姿。
その瞬間、リィナの胸には確かな安心感が芽生えた。
「この人だけは、私を守ってくれる――信じていい」
以来、二人きりになるとリィナは無防備に甘えるようになった。
公の場で見せる大人っぽい振る舞いとのギャップは、アルトの心を常にくすぐる。
訓練後、片付けが終わると二人は静かな中庭に残った。
「……今日は、二人きりですね」
リィナは微笑み、アルトを見上げる。瞳には「触れてほしい」と無言で訴える光が宿る。肩や腕に手を置いてほしそうに体を近づける。
アルトは一瞬戸惑った。「そ、そういう目で見られると……」
「アルト様、気づかないふりはできませんよ」
過去の救出体験を思い出すと、この距離感はただの甘えではなく、信頼の証だとアルトは理解する。胸の奥がじんわりと温かくなる。
城の中庭で、二人は静かに時間を過ごす。
リィナは膝を軽くアルトに寄せ、触れてほしそうに手を差し出す。アルトは顔を赤らめながらも、そっと手を取る。
「君……どうしてこんなに甘えるんだ……」
「だって、アルト様だけには素直でいたいんです」
アルトは息をつき、混乱と温かさを同時に感じる。「……そ、それなら、俺も、君のことを守りたいと思う」
リィナの目が輝き、微笑む。「はいっ!」
翌日、二人は城壁で夕日を眺める。
リィナは体を少し寄せ、触れてほしそうにアルトを見つめる。
「アルト様、これからもそばにいてくれますか?」
「もちろんだ。君の無邪気さに振り回されるのも悪くない」
過去の恐怖から救われた信頼、二人きりで見せる甘えた姿。
無邪気さと大人っぽさを併せ持つリィナと、真面目な青年アルトの関係は確実に深まっていた。
読んでくださってありがとうございます!
リィナが二人きりで甘える理由には、過去の救出体験があります。
公では大人っぽく、二人きりでは距離感ゼロな彼女と、アルトの微妙なやり取りを楽しんでいただければ嬉しいです。
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