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第5話 転生ライフ2日目

 異世界に来て二日目の朝が来た。

 カーテンを開け、陽の光を浴びる。気持ちのいい朝日が差し込み……うっっ、浄化されてしまううう。

 俺の異世界生活もここまでか、ぐふっ。


「何馬鹿なことしてるの、吸血鬼(ヴァンパイア)じゃあるまいしそんな程度じゃ死なないでしょう」

「酷いこと言うなよアリス、本当に死んだら悲しいだろ? 」

「じゃああなたはどうやってここまで来たのよ」

「ぐう」


 くだらないやりとりを終えて俺は一階に向かった。

 キッチンではバーバさんが朝食の準備をしている。邪魔するのも悪いので、俺は窓際にある一人がけの椅子に座り少し待つことにした。

 ぐつぐつと音を立てている鉄鍋の中には色とりどりの野菜が浮かんでいて、見ているだけでおなかがすいてくる。食事するスキルとかないかな、まあこれからゆっくり探していけばいいか。

 なんて思いながら眺めていると、どこか懐かしい光景の中に違和感を覚えた。

 鍋が大きすぎる、横に用意されているパンも山積みだ。

 屍兵種(アンデッド)が食事を必要としないことは認識しているだろうし、一体誰が……


 その時、玄関のドアが勢いよく開き、数人の小さな鬼人種(オーガ)が走りながら入ってきた。


「バーさんおはよう! 今日は何作ってんの? 」

「いい匂い! もしかしてワイルドボアのスープかな」

「おはようございます 何か手伝うことはありますか? 」


 キッチンへと向かっていった子供たちが矢継ぎ早に話しかけている。

 そうしている間にも新たな子供たちが宿に入ってきた。

 なるほど、この子たちのために料理を作っていたのか、それにしてもどこからやってきたんだろう。

 数分後、子供たちの協力もあって、朝食の準備は驚くほど速く終わった。


「「「「いただきまーす!」」」」


 目の前に積まれたパンの山から一つを手に取り、まだ湯気が立っているスープにつけ、そのまま口へと放り込む。そんな子供たちの姿を見ておなかもぐうの音が出そうになる。それは違うか。

 なんてボケ考えていると、子供たちの視線がこちらに集まっているのに気付いた。

 部屋の端で首のない人がこっちを見つめている。立派な怪異です、怖がらせてごめんね。

 バーバさんが立ち上がりこちらへ近づいてきた。お、追い出さないで!!


「あんた、そんなとこにいないでこっちに来な。食事はしないだろうけど、あんたの話も聞かせておくれ」


 意外だった。こんな姿だからてっきり怖がられるものだと思っていたけど、異世界の認識はどうやら違うらしい。お言葉に甘えて子供たちが食事しているテーブルへと座り直す。


「鎧さんって屍兵種(アンデッド)ってやつなの? 」

「どうして頭がないの~? 」

「今日のスープも美味しいですね」

「バーバさん、おかわり! 」


 質問と会話が飛び交うにぎやかな食卓、子供たちが楽しそうにしているのを見るとこちらまで嬉しい気分になってくる。よし、お兄さんがなんでも答えちゃうぞ。


「そうだよ~、お兄さんはデュラハンのヴァル。頭は生まれたときから無いんだよ~」

「口がないのに声が聞こえる!変なの!! 」

「俺屍兵種(アンデッド)見るのはじめて」


 子供たちの疑問に答えていると、バーバさんが何やら言いたそうにこちらを見ている。

 視線を子供たちからバーバさんに移すと、ゆっくりとその口を開いた。


「あんた、今日は何かやることはあるかい。キビのやつ、いつ帰ってくるかわからないだろう」


 用事がどうとか言ってどこかへ行ってしまったのを思い出す。

 王様はまだいないと言っていたし、いるとしても一人で会いに行くものでもない。

 知らない街にただ一人置かれた異世界人、当然何をするべきかもわからない。


「何も決まってない、というより何をしたらいいかもわかっていないんだ」


 バーバさんはしばらく黙り込み、何かを思いついたように顔を上げる。


「そうだ、それならこの子達の面倒を見てほしい。近くの孤児院にいる子たちでね、みんな人間との戦争で親をなくしてる。普段はシスターが世話をしてくれているんだけど、最近物騒でね。なんだか変な魔獣が増えてるそうじゃないか」

「出会ったばかりの、見ず知らずの化け物にそんな子たちを預けていいのか? 」

「キビが連れてきたからね、あの子は人を見る目がある。それにあんたは悪いやつじゃないだろう? あたしの勘がそう言ってるのさ」


 信じてくれるのはありがたいが、お人好しがすぎるのは心配になるな。

 ただ、目的が出来るのは嬉しいことだ。この世界について知るいい機会にもなるだろう。


「ありがとう、俺にできることなら任せてくれ。よろしく頼む」

「こっちこそ助かるよ。あんたたち、朝ごはんが終わったらこの街のことを案内してあげな」

「「はーい」」


 そうして子供たちは食事を終え、手分けして片づけをしている。

 俺は定位置の窓際に戻り、これからのことを考える。

 まずは子供たちにこの街を案内してもらう。キビが帰ってきたら王様に会いに行く。

 よし、しばらくの目的ははっきりしたな。


 そのあとはどうする?

 世界を救うとか、魔王を倒すなんて目的を与えられたわけでもなく異世界に来てしまった。何なら俺は魔王側の存在だろう。もしかしたら俺と同じように転生した勇者と戦うことになるのか?

 ふと、異世界で最初に目にした美しい光景を思い出した。

 この世界にはどんな形をしているのだろうか、それを見に行くのも面白そうだ。

 食べなくても死なない体になったみたいだし、旅をするにはぴったりかもしれない。

 まだ見ぬ景色を楽しみに、子供たちの片付けが終わるのを待っていた。





旅って楽しいですよね。友達がいないのでいつも一人旅になるんですけど。

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