ブランコ
疲れたからちょっと休もう
そう思って帰り道いつも素通りしていた公園のベンチに座る
夏はようやく落ち着きを見せ始めた
僕も落ち着かせるように大きく息を吐く
目の前に見えるのは誰にも使われていないブランコ
昼には誰かがそこで遊んでいたのだろうか
今ではただそこに存在する置物でしかない
二つの席が並んで遊んでくれるのを待っている
明日か明後日かはたまた1週間以上待つことになるのかもしれない
そもそもこの公園にはどれくらいの人が来るのだろうか
それすらもわからない
仕方ないな
立ち上がって空いた席の片方に座る
来てくれて嬉しいのかギシギシと音を立てる
小学生以来か?いや中学生の時にも乗った気がする
そんなことを思いながら漕いでみることにした
色々なことを思い出す
ブランコ漕ぎながら靴を飛ばしてより遠く飛ばした方が勝ち
ブランコから飛び降りてより遠くに飛べた方の勝ち
1人は座って1人は立っての2人乗り
楽しい良い思い出
懐かしいな
ただ漕いでいると少し気持ち悪くなってきた
もう若くないのかと思いながらブランコを止める
もう一つ空いた方も座ってあげよう
こちらも喜んでいるみたいだ
そして考える
僕は何になりたいのだろうか
ただ惰性で仕事をして何になるんだろうか
漠然とした不安がいつも抜けない
本当は楽しいことがしたい
毎日心から笑いたい
あの頃のようなワクワクする瞬間がほしい
したいことは沢山あったし今でもある
何かと理由をつけて諦めてきたし見てみぬふりをしてきた
もっと正直に
他人の言葉よりも自分自身を
今からでも遅くはないのかな
声に出してみる
暖かい風が頬を撫でる
それと同時に横の空いた席から返事が聞こえたような気がした