プロローグ
「これ? あたし、頼んでないんだけど!」
藍澤亜里佐が怒鳴る。
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
西ヶ谷真歩が必死に謝る。
「謝っても無駄!」
「金、返せよ」
見てられない。
私は本を読んでいる。
うるさい。
「あのさ、静かにしてくれない?」
私は思い切って言った。だって、藍澤さん、怖いんだもん。
「あ゛?」
藍澤さんはため息を吐き「はいはい。分かったよ。おい、西ヶ谷来い」と言った。
「は、はいっ」
あ、言い忘れてた。私は久山亜悠だ。
次の日、私の机は落書きでいっぱいだった。
その上には花瓶が置いてあった。
「はーいみなさん聞いてくださぁーい!」
藍澤さんが手を叩きながら言う。
「久山亜悠は○にましたぁ〜!」
「とぉ〜っても悲しいですよねぇ〜」
「で・す・が!」
「久山亜悠がいなくなったおかげで──」
「二年A組は藍澤亜里佐のものだーっ!」
金重賢人が拍手をしながら叫ぶ。
「うえーい!」
今度はクラス全員が叫んだ。
何故全員叫ぶって?
だって逆らったら終わりだもん。
藍澤亜里佐
「なぁ、お前、さっき柿谷くんと喋ってただろ?
会話禁止って言ったよな?」
「いや、その、塾の課題の話をしてただけ……」
「あ゛?」
私の髪の毛を引っ張る。
「痛いっ!」
「藍澤? 何やってるんだ?」
「あ! 柿谷くん♡どうしたのぉ?」
「いや、二人で何してるのかなーって思って」
「ちょっと久山さんの髪が絡まっちゃってぇー」
「やろっか?」
「いや、だいじょうぶ!」
柿谷くんと会話をする時は口調が変わる。マジでウケる。
「何こっち見つめてるんだよ」
「……」
「なんか言えよ!」
「はい」
小曽根亜由加
廣橋優女
八木沼衿菜
脇田詩緒理
「自分の名前嫌いなんだけど」
「何でぇー? ゆめは自分の名前気に入ってるよぉー? 女の子らしくて好きなのぉー」
「久山さんと名前被ってるから?」
「そう! マジでだるいー」
「“あんな”ってどうかなぁー?」
「それいいね! 私、ニックネームあんなにする!」
その会話が聞こえてくる。しかもわざとらしい大声。
西ヶ谷真歩
西ヶ谷真歩は私を騙したやつ。
泣いてるのも、いじめられているのも、全て“嘘”だったんだ。演技してたんだ。
金重賢人
こいつはおつかいを頼む親みたいなやつだ。
父かよ。まあ、親にはしたくない。
名前の通り結構金持ちだ。
この七人は一生許さない。
私の人生を狂わせたから。
変になった