表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/517

人はいつの時代も快適さを求める際、どこまでも追及する節がある。

修正)神精樹 → 精霊樹

ムシュフシュ → 竜騎馬


「なるほどね、あのおじいちゃんの精霊樹(こども)の様子がおかしいと。」


レイラとハルネと合流するまで、フィリオラにこれまでの経緯を説明していた。


「あら、フィー様も来て下さるの?」

「ええ。古霊樹は私の古い友人の1人でもあるの。最近、連絡が取れなかったから顔を見せにいこうかなって。」


そこへレイラとハルネの2人がやってきて、無事全員と合流することができた。

アリスとシロルティアはカーインデルトの観光をするといって町へと繰り出しているそうだ。


まあ、転移窓で位置は捕捉してるし、何かあれば連絡も取れるよう準備はしてある。


「馬車を用意しましたわ。これに乗っていきますわよ!」


真っ黒で豪華な装飾が施された、装甲車のような馬車がやってきた。


「戦闘用の馬車で、魔物や賊からの襲撃にも余裕で耐えられるように材質は黒い森で取れる木材はまるで黒鉱石のように固いんですの。火にも強くてそう簡単に炎上することもありませんわ。」

「黒鉱石並みか・・・。見るからにとても重装甲なようで重そうだが、これを馬は引けるのか?」

「いえ。一般の馬で引く場合は10匹ほど用意してやっと動くほどの重量級となります。」


くっそ重いわ・・・。

装甲車というよりは戦車じゃねえのこれ・・・


「なのでこの馬車を引く馬は、戦闘用も兼ねた竜騎馬(ドラゴンナイトホース)という馬・・・あっ」

「・・・・・ほう、竜騎馬とな。」

「はあ・・・。」


そこまで言ってハルネは何かを察し、ヨスミの方を見るとその目は尋常じゃないほどまでに興味と期待、願望が詰まりに詰まった熱い視線を向けたと思ったら一気にハルネへと詰め寄った。


「して、その竜騎馬はどこにいる?どこにいる?ねえ、どこにいるの?!」

「え、えと・・・多分もうすぐやってくる、かと・・・」

「そういえば竜に関する話になると暴走するタイプでしたわ・・・。」


フィリオラとレイラはどこか遠い目をしてヨスミの事を見ていた。

その後、背後から聞こえてきた蹄の音に、ヨスミはゆっくりと振り向く。


そこには、竜の頭と尾を持つ全長3mほどの巨体を持つ馬のような竜が姿を現した。

その甲殻はまるで騎士の鎧の様に銀色に染まっており、その容姿は竜騎士と言わんばかりに凛々しいものだった。


尾の先についている長い甲殻は鋭く尖っており、それを右太ももの甲殻と甲殻の隙間に差し込んでおり、まるで帯剣しているかのように見える。


「ふぉおおおおおおおおお・・・!?!?」

「この竜騎馬という魔物はあの馬車・・・、【竜車】を引く為に契約している魔物の一種ですの。」

「ってことはあれを操るのは従魔契約者(テイマー)ってことか?」

「はい。あの竜車を引く御者は主に竜騎馬と契約を交わした従魔契約者になりますわ。ただ今回はハルネが契約している竜騎馬を連れて参りましたの。」


竜騎馬はハルネの姿を見つけると、蹄を鳴らしながら近づき、顔をハルネへと近づける。

よしよし、と頭を下げた竜騎馬の顎辺りを摩る。


「本来、ヴァレンタイン家の者ならば、竜騎馬と契約することが可能ですわ。ハルネはとある理由があって、あの竜騎馬と契約を交わすことが出来ましたわ。」

「なるほどね。テイマーじゃなくてもヴァレンタイン家に関係ある人は従魔契約(テイム)できることがあると。それにしても、すごく立派で最高にカッコいいな。」

「今日はよろしくね、ナイティア。」

「グルゥウ・・・。」

「・・・とても大切にしているのね。」


ハルネとナイティアと名付けられている竜騎馬との触れ合いを見て、フィリオラがぼそっと呟く。


「ええ。私にとって家族みたいな子なんです。ナイティアには随分と助けられてきましたから。」

「グルウッ」

「ふふ、微笑ましいわね。これからも大事にしてあげなさいな。」

「もちろんです。この子は私の弟同然なんですから。」


とても仲良さそうにしていてくっそ羨ましい・・・。

でもあの竜に関しては初見だな・・・、王道ファンタジー生物には登場していないから、たぶんこの世界固有のオリジナルな幻想体ってことになる。


竜騎馬・・・か。

後で僕直伝のドラゴン図鑑に書き込んでおこう。


「それじゃあ向かいましょう。黒い森へ。」

「ナイティア、今日はよろしくね。」

「グルウっ!」


ハルネはナイティアを連れて前方へと向かい、僕は竜車の扉を開けるとレイラの手を取り、エスコートする。


嬉しそうにヨスミの手を取って、竜車の中へと入っていき、フィリオラにも手を差し出す。


「あら、ありがとうヨスミ。それじゃあ遠慮なく。」


フィリオラもヨスミの手を取って竜車の中へと入っていった。

最後になったヨスミも再度ナイティアを見て、その姿を目に焼き付けた後、竜車の中へと入っていく。


椅子部分に備え付けられたクッションはとても柔らかく、座っていることが全然苦にならぬほど座り心地は素晴らしかった。


「ほー、すごく柔らかいんだな。」

「そうねー。このまま寝ても問題ないほど座り心地が良いわ~・・・。」

「うふふ。本来、この竜車は、敵陣に突っ込むことも想定されてて、尚且つ敵の攻撃を一気に引き受ける役割もあるので激しく揺れますの。そのために耐衝撃吸収の魔法陣が組み込まれているといっても限度がありますわ。それで外に出ていざ戦うとなったときに、お尻や足をやられていたーでは話になりませんから、それを解消するためにこのように内装にもかなり気を配っておりますの。」

「なるほどなー・・・。」

『皆さま、準備は大丈夫でしょうか?』


突然、竜車の天井に備え付けられている魔石のような魔道具のところからハルネの声が聞こえてきた。


「ええ、大丈夫ですわ。出発してくださいまし。」

『かしこまりました。』

「なるほど、天井に備え付けられているそれで外にいるハルネと連絡が取れるのか。」

「ええ。風魔法と水魔法をかけ合わせて細工したヴァレンタイン家でのみ作られた特別な魔道具ですの。欠点としては会話できる距離が最大5m以内ってところですわ。そしてこれは会話だけではありませんの。」


そういって、天井に付けられている魔道具に魔力を流すと、左右のドアに外の映像がまるでシアターを流しているかのように映し出される。


「さすがにガラスを取り入れると防御面に致命的な弱点となっているため、この竜車には窓は備え付けられておりませんけど、先ほどの魔道具に水属性の魔力を流し込むと、このように外の光景を移してくれるんですのよ。さっきの会話をするためには水ではなく風属性の魔力を込めると近くの魔道具が共鳴して会話できるようになりますわ。」


なんとも今の時代には便利な魔道具だな・・・。


確かにこの世界には防弾ガラスなんて代物はないし、戦闘に用いられる馬車として運用する際は、ガラスの付いた窓は致命的な弱点となる。


窓に向けて魔法や何かしらの武器を投擲されたら、それだけで中にいる者を攻撃できるようになってしまう。


最初見た時、窓が付いていなかったから窮屈そうだなと思ってはいたが、こういった機能が備え付けられているなら十分運用できるというものだ。


一体どのような原理で外の映像を移したり、近くに居る人物と通信できるようになるのかは気になるが、そこは僕の得意分野ではない。


それにしても、外の映像を見る限りだと景色が動いているということは移動しているってことなんだろうけど、それにしたって竜車が伝わる振動が全然伝わってこない。


つまり、全然()()()()のだ。

本来、中世の馬車の乗り心地は最悪なものだと聞く。


整備されていない道を歩く為、小さな石や凸凹道に車輪がダイレクトに影響を受け、酷い揺れに襲われるのが鉄板だ。


さっきレイラは対衝撃吸収の魔法陣を組んだ~と言っていたが、それの影響か?


「この竜車は全然揺れないんだな。」

「一昔前の馬車は、それはとても酷く揺れていたと聞きましたわ。十数年前に、とある魔道具に精通している人物が、あまりにも酷い馬車の揺れに耐えきれなくなり、耐衝撃吸収の魔法陣を組み込んだ魔道具の開発に成功し、それが普及するようになり、馬車の酷い揺れは抑えられたと聞きましたわ。まあ、この竜車に関してはその耐衝撃吸収の魔法陣を魔道具ではなく、この竜車事態に刻まれているから、いわばこの竜車事態が一種の魔道具と言っても過言ではありませんわね。」


馬車に関してどこまでも本気過ぎる・・・。



~ 今回現れたモンスター ~


挿絵(By みてみん)


竜種:竜騎馬”ドラゴンナイトホース”

脅威度:S~Dランク

生態:全身がまるで騎士の鎧のような見た目の甲殻を纏う竜と馬を掛け合わした魔物。

その鎧の強度は鋼鉄製に近く、大抵の物理攻撃を防ぐことができる。

が、やはり鎧の宿命というべきか、打撃属性の攻撃には弱く、打撃に寄る衝撃が直に響く為、剣で斬りつけるよりかはダメージを与えられるだろう。

尾の先はまるで剣のように伸びており、普段は右後ろ足の甲殻の隙間に差し込んでおり、戦闘時には尾剣を抜いて応戦する。

その立ち振る舞いから【竜騎士】と称されており、また竜騎馬事態の性格は騎士道精神に乗っ取っているかのようで、基本的に自分よりも弱い存在には慈悲を与え、自分より強き存在には命を賭して立ち向かう。

ランクの変動がある理由としては竜騎馬の好物が鉱石で、自分が食している鉱石の種類によって自らの甲殻を形成する材質が変わるという特殊な性質がある。

過去にアダマンタイト鉱石を好物にしていた竜騎馬がおり、その全身を覆う鎧はオリハルコン鉱石で出来た鎧殻で出来ていたため、誰も手を出すことができず、初めてSランクではないUランクという特異個体(ユニーク)として認められた個体が存在する。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ