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ゴブリン襲撃の真相


「ところで、ドラゴンが暴れてるってどういうこと?」

「そ、それが・・・」


農夫の説明によると、ゴブリンたちが現れた森の奥から咆哮が聞こえ、冒険者の1人の気配探知にとんでもなく巨大な気配を探知したらしい。

それでその気配を探ろうと使い魔を飛ばした所、そこに中型の竜種が酷く暴れていたらしく、ゴブリンたちはそれから逃げるように村に来た可能性が高いっていう見識のようだ。


「確かこの辺りに生息してる子の中に暴れるような子はいなかったはずなんだけど・・・」

「それよりも急いでくだせえ・・・!いつドラゴンが村に襲ってくるか・・・!!」

「・・・そうね。とりあえずその暴れてる子は私に任せて。冒険者たちにはゴブリンの対処に集中するように指示して。」

「は、はい・・・!」


農夫2人は慌てた様子で家から出ていき、残されたフィリオラと夜澄は後を追うように外へ出ていく。


「・・・当然のように後を付いてくるのね。」

「当たり前でしょう?ドラゴンが暴れているんですよ?愛でに行かねば!(愛でに行かねば!)」

「あなた、たぶん心の声と実際に言ってる事真逆に・・・いや、なってないわねこれ。」


小さくため息をついた後、目を瞑ると背中から薄い光が広がり、それは翼の形を成すとそれを大きく羽ばたかせ、淡いピンク色の美しい両翼を顕現させた。

繊細な鱗模様に目を奪われるほどとても鮮やかで、とても神秘的で、その美しい翼に夜澄は目を離せなくなっていた。

というよりも・・・


「こ、これがあの時よく見れなかった翼・・・!一枚一枚が発光しているかのようにはっきりとした鱗、無駄のない造形の翼骨格、よく見る西洋のドラゴンに似た翼膜ではなく・・・これは、長く薄い翼鱗が何枚も重なり、まるで鳥類のように何枚も重なっている・・・。まるで天使の羽の様だ・・・。明らかに飛行能力としての機能は一切ないはずなのに、この両翼であの姿で飛んでいた・・・となると・・・」

「あのう、ヨスミ・・・?翼部分は結構、繊細だから・・・んっ、そろそろ触らないでほしいのだけれど・・・あんっ・・・。」


気が付けば、フィリオラの翼を触診しながら恍惚とした表情で早口の様にブツブツと呟いている夜澄の姿にドン引きしつつも、その触り方がとても優しく真摯なため、気持ちよかったのか、度々フィリオラの方から甘い声が聞こえてきた。


「やはりそうか。あの子たちのように翼の部分は性感帯に近いほどの繊細な部位・・・ぶふっ!?」


気が付けば、フィリオラがいつの間にか顕現させた尾の一撃が頭に決まり、何回転かした後に地面を抉りながら軽く吹き飛ばされた。


「す、すまない・・・」

「ったくもう。それで、聞くまでもないけどヨスミも行くんでしょ?」

「もちろんだ。新たなドラゴンの出会いを見逃す手などない!」

「・・・そう。なら行くわよ。ほら、大人しくしてて。」


そういうと、フィリオラの尾が夜澄の身体を巻き付けると、


「あ、私の尾をあんな風に触ったら落とすからね?」

「・・・チッ」

「舌打ちした・・・?!」


まるで夜澄がやろうとしていたことを先読みするかのように先制され、不満げな表情を浮かべながら腕組みをして、大人しくされるがままに巻き付けさせた。


「それじゃあ、行くわよ。舌を嚙まないようにね!」


そういうと、両翼を軽く羽ばたかせ、宙に浮くと一気に空へと飛翔した。


「うおおおおおおおお!?!?!?」


その勢いはまるで絶叫マシンに乗ったかのようにGが体全体にかかり、一瞬意識が飛びそうになるが前世でアナスタシアたちに乗せてもらった時の経験から何とか持ちこたえることができた。


一気に空へ飛び上がってからは、目的地の方向へ向けて飛行していく。


空から見える景色は、何度見ても美しい。

アナスタシアたちとより高度へ飛んでいた時に見た、雲の海に浮かぶ満月の大きな月が今でも記憶の思い出に焼き付いている。


それからは一刻も経たないうちに黒煙が立ち上がる村が見えていた。

よく目を凝らすと、緑色の小柄な小鬼たちが冒険者らしき身なりをした者らと戦っている光景が見える。


数はゴブリンたちが有利ではあるが、冒険者たちの技量が良いのか、そこまで苦戦している様子は見られなかった。


双剣使いに、槍使い、弓使いに魔法使い、大楯使いに・・・神官か。

6人パーティー編成で、バランスは悪くはないが・・・。


「村人たちの避難誘導とゴブリンの迎撃に割いている人員の選別のミス、そしてゴブリンの対処のもたつき・・・。パーティーを組んでまだ浅いせいか、練度も低い。まあ問題はないだろうけど、非効率なために、消耗も早いだろうな・・・。」

「ヨスミ~、見えてきたわよ~!」


っとと、あんな奴らの事はどうでもいいとして・・・。


遠くで聞こえていた地響きと咆哮が徐々に大きくなっていく。

そして大きな爆発音と共に、木々が吹き飛び、その合間で見えた斧のような尾のシルエットが見えた。


「あの子は、斧尾竜(アクスドラゴン)ね。好戦的な子ではあったけど、あんなに暴れることはなかったのに。」

「・・・フィリオラ、斧尾竜を頼むよ。僕は暴れる原因となった元を対処してくる。」

「え?ヨスミ?・・・あれ、どこいったの?」


巻き付けられていたフィリオラの尾から抜け、地上へと”移動”していた。


すぐ目の前に、あまり目立ちにくいような服装を身に付けている男たち・・・、盗賊というべきか。

計16人ほどの小団体が、深く傷ついた小さな竜に鉄製の首輪を付け、それを連れ去るための檻に無理やり入れようとしていた。


「くそ、もたもたするな!この母竜がすぐそこまで来ていやがる!死にたくなければさっさと作業を終わらせろ!」

「しかしお頭ぁ!こいつをこれ以上痛めつけたら死んじやいやすぜぇ!?」

「ちいっ・・・、それでも無理やり檻の中に入れろぉ!」

「その子をどうするつもりだ?」

「ああ?んなもん、売り飛ばすに決まってんだろう!こんな幼竜を殺して素材にしても全く金になんねえからな!幼竜の内に厳しく調教すれば兵器としても使えるし、なんなら大きくなって殺せば素材も・・・ん?」


仲間ではない声が傍に聞こえて咄嗟に答えてしまったが、横を見ると見知らぬ男が立っていた。

まるで怒りに燃えた赫く光る真紅の瞳が、彼の表情をより一層恐ろしく表現している。

蛇に睨まれた蛙のように指一本動かすことができず、全身を走る悪寒と絶望に冷や汗がまるで滝のように流れている。


(こいつぁ・・・一体、誰だ・・・?それに、この殺気は・・・!? この目ぇ・・・普通じゃねえ・・・!?)


身体中が震えだし、立っているだけで精いっぱいな状態に陥っていた。


(ダメだ・・・殺される・・・!)

「た、頼むぅ・・・命、だけは・・・」

「・・・命乞い、か。今までこんなことをしてきたお前たちは自分たちがこうなる覚悟はしていなかったのか?」

「ひ、ひぃっ・・・!? あ、足を洗う・・・!もうこんなことはしねえ・・・!」

「この規模でこんなことをするぐらいなら、アジトもあるんだろう?」

「あ?ああ・・・ああ!もちろん、ある!その場所も教える・・・!な、なんならアジトで捕えてる他のモノもてめえ・・・いや、あなた様に捧げる・・・!だから・・・!」

「・・・その中にドラゴンもいるのか?」

「ああ!いる!先日捕えた珍しいドラゴンの幼体がいるんだ!白くて綺麗でよ!調教の際は綺麗な声を上げて鳴くんだ!聞いていて心地いいから、きっと・・・がはっ・・・」


ふと気が付くと、盗賊の口から血が溢れ出し、上手く呼吸が出来ないのか苦しそうに呻いている。

一体何が起きたのか理解できずに怒りに満ちた夜澄に握られた心臓のような物体が目に入った。


「・・・もういい、耳障りだ。」


男はそのまま手に持っていた物体を握り潰す。

白目を剥き、そのまま膝から崩れ落ちて絶命した。


他の盗賊たちも恐怖で動けずにいたが、目の前で起きた光景に一体何が起きたのか理解できずにいた。

だが、他の盗賊たちも同様に次々と口から血を吐き、次々と倒れていく。


「やはり人間は醜いな・・・、生きる価値もないクズ共の集まりなんて、滅びればいい・・・。」


夜澄は深呼吸し、気分を整えると気持ちを整理する。


初めて・・・ではないが、人を殺すことに躊躇いはなかった。

クズを殺したからか、罪悪感とかそういう感情も何も感じない。


前世で死ぬ間際に発動させた機構の反動できっと死人も大量に出たと思う。

だが、間接的に人を殺したことと実際にこの手で人を殺したことの差は大きいモノだと思ってはいたけど、それでさえもこうも何も感じないとなると僕は、とっくの昔に優里以外の人間には見切りをつけてしまっていたのかもしれないな。


「・・・あっ」


アジトの場所を聞く前に殺しちまった・・・。

 

~ 今回現れたモンスター ~


魔物:斧尾竜(アクスドラゴン)

脅威度:Aランク

生態:森林の奥地に生息されているドラゴン種。四足歩行で、見た目はアンキロサウルスに近い。

体長は20Mから最大で50mとされており、翼は生えてはいるが退化している代わりに斧のような形状で尖っており、また尾先も同じように斧のような形状で、一振りで巨大な大木でさえ簡単に切り倒すことができるほどの脅威を持つ。

また人語を解するほどの知能を有しており、その戦い方も一筋縄ではいかない。


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