やはり情報収集は大事、古事記にもそう書かれてる。
古霊樹・・・。
樹木に関する種族は魔物か精霊かのどっちか。
あの時、千里眼で見た際に魔物では何も見えなかった。
もしやと思って精霊種で見てみたら案の上何もなかった広場の中心地に現れた巨木・・・。
でも、レイラは大聖霊って言ってたよね?
精霊なら人間と敵対関係を結んでいるようなイメージは付きにくいんだけど・・・。
まさか精霊が珍しいから、貴族が乱獲でもしたとか?
そもそもレイラは名前を知ってるってことは、古霊樹に関する詳しい情報を持ってるってことか。
「古霊樹を知っているのか?」
「もちろんですわ!古霊樹様はこの土地を守りし大精霊様ですの。御父様がこの地を治めるにあたって真っ先に挨拶に行き、契約を交わすほどのお方だったはずですわ。古霊樹様もお父様を認め、加護を与えてくださったとお話してくれましたの。でも普段は決してたどり着くことのできないように、古霊樹様の周辺には幻惑魔法が掛かっているはずなのに・・・。他に何か情報はありませんですの?」
「僕の視界で見えたたものから得られる情報は少ない・・・。ただ、どうにも様子がおかしいんだ・・・。」
となるともしかして・・・
まさか、どうにかして古霊樹の元までたどり着いたあいつらは古霊樹の苗木を殺して帰ってきたって事か?
だがそうなるとあいつらがただで済むはずがない。
あんなに近い位置にいる苗木だけを殺して帰るなんて芸当は不可能だ。
そもそも、あんな頭の悪そうなやつらが大精霊なんて呼ばれている古霊樹が張っている幻惑魔法を突破できるとは到底思えん・・・。
となるとあいつ等の武器破壊に関しては本当に石か何か堅い物質で何度も叩き、ああいう風に武器を故意に破壊したのだろう。
その目的はレイラの幼馴染であるアナベラが作った武器ってところも引っかかる。
きっとレイラならばあの騒ぎに介入して色々と難癖とか付けられ、町の外に連れ出されていた可能性が高い。
現に僕が止めようとしなければ、あの中に入ろうとしていたからな。
つまりこの騒ぎは昨日あの男が言っていた騒ぎを起こしてレイラを拉致する算段の1つだ。
問題は僕が昨晩、男どもを襲撃してレイラの身代わりを奪った事。
それをアイツらが知っているかどうかはわからない・・・。
『黒き森には魔樹の存在は認められなかったよ。だからあいつらが言っているのは言いがかりであり、あの武器はアイツらが故意に破壊した結果だ。』
「そんな・・・!あたしの武器をあんな風に扱うなんて・・・!!でもどうしてそんなことがわかったの?」
『・・・ちょうど僕の知り合いがその森に潜っていてね。魔樹がいた痕跡とかを調べてもらったんだ。間違いないよ。それと、あいつ等には”身代わりは逃げ出したよ”と言ってみるといい。それで反応したら黒だから。』
「・・・どこの誰かは知らないけど、この恩は絶対に忘れないから。」
「さっきからてめぇは誰とペチャクチャ喋ってよぉ、なめてんのかぁ!?」
とアナベラの胸倉を掴もうと手を伸ばした時、その手を掴むとそのまま背負い投げるかのように投げ飛ばした。
突然の事に反応が遅れ、受け身も取れずに壁へ叩き付けられ、その衝撃で目を回した。
「なっ!?お、おいてめぇ!よくも・・・」
「あんたたちが向かった黒い森には魔樹はいないみたいね!」
「は、はあ?!で、でたらめ言ってんじゃねぇよ!」
「そ、そうだ・・・!俺たちは確かにその森で魔樹と戦ったんだよ!」
多少なりと動揺はしているようだ。
多分、言い返さないだろうと踏んで強めの口調で押せばいけると思ったんだろう。
それにこれはあくまで騒ぎを起こしてレイラを呼び出すためだけに騒ぎを起こしているためであって、深くは考えていない可能性がある。
「よく見ると、あんたたちの体や装備に傷なんてついてないのも不思議ね。切り傷や、魔樹の木破片が刺さっててもおかしくはないはずなのに、戦闘後に来たくせに随分と綺麗じゃない。」
「そ、それは・・・」
「・・・そ、そうだ。破損した装備は全て捨てて予備の装備を着ているだけだ!」
「・・・・はあ。」
黒いローブの人物は何やらため息をついたような気がした。
多分アイツは奴らと仲間じゃないのだろう。
ただの監視役か、連れ去るための魔法要因か・・・。
「それにあんたたち、どうやら身代わりは逃げていなくなったみたいよ?」
「・・・・・はあ!?」
今度はため息じゃなく、驚愕のデカいため息をついた。
明らかに他の奴よりも一番動揺している。
「・・・ビンゴ。」
「あなた・・・?」
つまり、アイツがレイラを連れ去る計画に関わっている人物の1人ってわけだ。
周りのあいつ等は、この店で騒ぎを起こせば報酬をやる~とか言われたんだろう。
「身代わり?てめぇは何をいってんだ?俺たちはただこの店で騒ぎを起こせって・・・」
「おいばかっ!」
「・・・あっ」
「ほう・・・、あたしの店で騒ぎを起こせなんていい度胸じゃない・・・。」
文字通り頭の悪い連中なようだ。
とりあえず、状況はアナベラが逆転したところで僕がやるべきは・・・。
「・・・ちっ、ここはひとまずあの女を代わりに連れて・・・あれ?」
黒いローブの男がアナベラに向けて魔法を放とうとした時、気が付くとそこには誰もいなかった。
「ど、どこに行った・・・?!」
「お、おい!後はどうすりゃあいいんだよ?!」
「あの女は突然いなくなったし・・・兄貴は投げ飛ばされるし・・・一体何をすれば・・・」
「なら僕の相手をしてもらうよ。」
一瞬の瞬きの後、アナベラのいた位置には先ほどまでいなかった見知らぬ男が腕を組み立っていた。
その直後に足の甲に楔のような細長いモノが突き刺さっていることに気付き、激痛に襲われ悲鳴が上がる。
「え?あ、い、いでぇぇぇぇええええ!?」
「な、なんだよぉこれはよぉ・・・・ぐあああああ・・・・!!」
「ば、ばかなぁ・・・一体これはなんだ・・・?!一体いつ私の足にこのようなモノが刺さったのだ・・・!?」
「衛兵がもうすぐでここに来る。それまで大人しくしてもらうよ。もし暴れようってものなら、足が一生使い物にならなくなることを覚悟したらいい。」
まあ動くこともままならないから、そんな余裕もないはずだろうけど。
冒険者の男たちは観念したのか、大人しくなったが黒いローブの人物だけは魔杖を手に取り、何かを呟いていた。
「はあ・・・。僕は言ったからね。」
「・・・え、あれ杖がない・・・がああああああああああ!?」
手に持っていた魔杖が突然消え、その直後に脹脛と太ももを貫通して地面に突き刺さる楔が現れた。
あまりの痛みに耐えかねたのか、そのまま気を失った。
衛兵がたどり着く前にブラックリリーを回収し、やってきた衛兵に状況を説明し、黒いローブの人物に関しては息子からグスタフ公爵様への探し物だと告げておいた。
お義父様ならばこの意味をわかってくれるはずだ。
今僕がこいつに尋問したいのは山々だが、そんなことよりも僕は大事な嫁とのデートがしたい・・・。
後のことは任せます、お義父様。
『レイラ、今からアナベラと入れ替わるから彼女にそう伝えてくれ。』
レイラにそう転移窓による通信で告げた後、アナベラと入れ替わるように転移し、レイラの元へと戻った。
僕だけじゃなく、アナベラからの証言も必要になるからね。
あの時僕はアナベラと位置を入れ替える様に転移した。
僕が彼らを無力化させている間はレイラの傍にアナベラを安全のために送ったのだ。
あの男はきっと、身代わりがいなくなったことを受けてすぐにアナベラを標的に変更するだろうと思っていたからね。
「ただいま。」
「おかえりなさい、あなた。うふふ・・・アナベラったら、いきなり転移させられて吃驚してましたの。あ、わたくしが状況について話しておきましたからもう大丈夫ですわ。」
「そうか。ありがとう、レイラ。」
「いいえ、お礼を言うのはわたくしの方ですわ。それに後でちゃんと色んな意味で礼をしたいので落ち着いたころに訪ねてきてほしいって言ってましたわ。」
あー、これ若干根に持たれてるな。
いきなり見ず知らずの高い場所に転移させられたら、そりゃあ驚くわな・・・。
・・・きちんと後で謝っておこう。




