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僕は少女に見覚えはないが、少女は僕に見覚えがあるようだ。


どこか懐かしい夢をみた。

アナスタシアと初めて空を飛ぶ夢だ。


飛行自体は問題なかったが、初めて人を乗せての飛行だったために重量バランスがうまく取れず、不安定な飛行となっていた。


何度も何度も墜落し、その度に何度も何度も飛び上がり、徐々にバランスを掴んでいった。

夕暮れ時には完璧に飛行できるようになり、その時の達成感は一際大きいモノだった。


それに習って他の子たちも飛び方の練習を続けていた。

アナスタシアが飛翔し、まるでお手本のように丁寧に飛ぶ姿を見せていた。


そんな光景を僕は眺めていた。


本当に幸せだった。

僕に訪れた2回目の幸福だった。


「あなた・・・」


ふと背後から呼ばれ、後ろを振り向くとそこには微笑むレイラが手を差し伸べていた。

僕は迷わずその手を取ると、視界が真っ白に染まっていった。






「あなた・・・起きてくださいな。そろそろ朝ですわ。」


愛しい声が耳を擽る。

その声を聞くだけで安らぎを得、再度深い眠りに襲われる。


「早く起きないと、大変な事になってしまいますわよ?」


ああ、それもいいかもな。

レイラにならなんだって・・・


『おきろーなのー!』

「ごっふうううっっ!?」


ハクアミサイルが腹部へと直撃し、悶絶の中で違う意味で眠りにつきそうになっていた。


「だから言いましたのに・・・。ほら、ハクアちゃん。こちらへいらっしゃいな。」


そういってハクアを抱き上げ、自分の膝上に乗せる。


「ぉ、おは・・ょ・・・ぅ・・・」

「おはようですわ、あなた。良い夢を見ていたようですわね。」

『オジナー!おはよーなの!』


ふと夢の中で、レイラが出てきてくれた事に意識・・・したかったが、それよりもハクアミサイルによる余波に未だ苦しんでいた。


「・・・意外とダメージは大きかったみたいね。」

『どんどん威力は高くなるのー!』

「うぐ・・・うぐぅ・・・だ、だいじょ・・・ぶ・・・」


レイラは痛みを安らぐようにと背中を摩り、5分後には痛みも引いたのか、なんとか上半身を起こすまでに痛みは引いた。


「いい朝だね・・・。」

「・・・そうねー。」

『えへへー、満天の空なのー!』

「それはそうとあなたにお客さんよ?」

「ん?僕にお客、・・・あー。」

「・・・どうやら心当たりがあるようですわね。」


どうやらユリアは覚悟を決めたようだな。

昨晩はただの怯えている女の子だったが、自分の運命を掴み取るために、その一歩を踏み出したか。


意外と根性あったんだな。


「そうか。あの子は門を叩いたか。」

「金印を持っていたの。わたくしが以前にあなたに託したあの金印を。なぜあの子があなたにあげた金印を持っているのか、事情は教えてくれるんですわよね?」


そうだよね。

以前僕が渡した金印を持った子供が突然、門を叩いてやってきたとなったら気になるのは当然だ。


「・・・昨晩、ちょっとね。不幸な子がいて、力を求めていたからその道を示しただけだよ。」


・・・嘘は言っていない。

そう、大事な部分だけは思いっきり端折っただけで、()()()は言っていないな!


「それで、あの子は今どうしているんだ?」

「あの子はね、力を求めているわ。私の御父様に。それで弟子になったわ。」

「ほー、お義父さんに・・・・は?はああああああああああああ?!」


マジか!

ユリアは掴み取ったのか、その運命の一端を。


できるかどうか、その確率はほんのわずかだったってのに。

そうか・・・、後はあの子次第だ。


「あなた、どこか嬉しそうね。」

「そう見えるか?」

「ええ、わたくしにはわかるわ。その瞳を見れば、ね。」


表情じゃなくて、瞳で感じ取れるとかすごいな・・・。

僕はわからなかったけど、僕は嬉しかったのか。


「僕の抱く感情は全部、レイラに捧げていると決めてたからわからなかったよ。」

「ほえっ!?あ、え・・・えと、はひぃ・・・」


レイラは顔を真っ赤にし、ベッドに顔を埋める。


ああもうくっそかわいい。


どんだけそういう言葉に弱いんだよ、ほんとにもう可愛すぎる。

そんなレイラの頭を撫でるのはもう日課になってしまっているな・・・。


この撫で心地も最高なんだよな・・・。

髪はさらさらしてるし、フワフワしてるし、撫でる頭の大きさも丁度いい・・・。


「ううぅぅ・・・、揶揄わないでくださいですのぉ・・・!」

「あはは。こんなこと、レイラにだけだよ。」

「はうー!!!」

『御2人とも仲良しなのー!混ぜてなのー!』

「おお、よしよし!ハクアたんもおいでごっふううう!?」


本日2度目のハクアミサイルがヨスミの横腹に直撃し、そのまま壁際にまで吹き飛ばされた。

壁に深くめり込み、瓦礫に埋もれていった。


「あれ?あなた・・・あ、あなたー!?」

『えへへへ~!!』


本日3度寝を迎えたヨスミだった。






動けなくなったヨスミのために、部屋へ食事が運ばれてきた。

テーブルに並べられた食事を取り、皿が片づけられた。


「それで、あなたは今日はどうするんですの?」

「んー、そうだな。とりあえずユリアの様子でも見に行くよ。」

「・・・すでにあなたは名前を知っているのですわね。その、わたくしも一緒に見に行ってもよろしいかしら・・・?」

「そうだね、一緒にいこう。レイラ、もしよかったらその後にこの首都を案内してくれるか?」

「もちろんですわ!それじゃあわたくしは一旦部屋に戻って着替えてきますわ!」


そういうと、レイラは嬉しそうに部屋を出て行った。


部屋を出て行ったレイラの後ろ姿を見送り、用意された着物のような民族衣装を着る。

その後、今まで来ていたローブに魔力を込めると長羽織へと姿を変え、肩に掛けた。


羽織の裏にブラックリリーを全て収納して出かける準備を終え、鏡で見るとまさに江戸時代でみた武士の成りそのものだった。


「ハクアたん、おいで!」

『なのー!』


ハクアは肩に捕まると、ヨスミと共に部屋を出ていく。

使用人に案内され、レイラの部屋へと向かっていく。


すると部屋の外にはすでにレイラが準備を整えて待っていた。


「あなた!その、どう・・・かしら?」


青い花が散りばめられた黒い着物、裏地は赤く、それがその艶しい黒髪を更に印象付けていた。

その立ち姿には気品がただよい、その立ち振る舞いはまさに妖艶めかしく、とても美しかった。


「・・・ああ、すごく綺麗だよ。」

「え、えへへへ・・・!」

『お姉ちゃん綺麗なのー!』


ヨスミはレイラへ手をそっと差し出す。


「さあ、行こうか。」

「エスコート、お願いですの!」


2人は腕を組み、ユリアが訓練しているであろう、訓練場へと足を赴いた。

訓練場に近づくにつれ、金属同士がぶつかり合うような音が聞こえてきた。


・・・は?え、あの子いきなり木剣じゃなくて普通の剣を握って訓練してるの?


そんな不安が胸を過りつつ、扉を開けて中に入るとそこには銀聖騎士団の騎士たちに紛れて稽古をしているユリア・・・、あれ?


そこに見えたのは銀髪の長髪を束ね、ポニーテールの髪型をし、その瞳は真紅に染まっていた。

明らかにユリアとそっくりの少女がではあるが、髪色が違うその少女は真剣な表情で剣を握ってグスタフ公爵に打ち込んでいた。


その後、ヨスミの姿を見つけた彼女の表情が一変して笑顔になり、大きく手を振りながら呼びかけてきた。


「あ、ヨスミお兄ちゃーん!!!」


・・・・誰だアイツ。



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