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暗躍の始まり


ヨスミとベベラオの手合わせを見て滾ったのか、レイラたちはそれぞれ模擬戦をやりだし、それを訓練場の近くにあるベンチに座りながらそれらを眺めていた。


そこへ両手に飲み物を持ってやってきたベベラオが隣に座りながら片方を差し出してくる。

軽く礼を言った後にそれを受け取り、軽く喉に流し込むとレモンの酸味が程よく疲れた体に染みわたる。


「しっかしよぉ、旦那。なんで旦那ほどの実力者がFランクなんだ?」

「冒険者登録したのがつい最近だからね。」

「なるほどねぇ。でもそんな短期間ですでにFランクたあ、その調子で行けばあっという間にAランクにでも行くんじゃないんですかねぇ?」

「どうだろうね。冒険者のランクというのはただただ実力だけが全てじゃない気がするよ。」

「ほーん。旦那はもう冒険者のランク査定についての心髄っていうのか?それについてはもう気付いてるみたいっすねえ。」


手に持つ飲み物をガッと煽り、一気に胃へと流し込むとくはぁーっ!と気持ち良さそうに呻る。


「確かに実力だけじゃあ冒険者のランクは上がらねえ。依頼の内容によって結晶に溜まる光帯(ポイント)は違う。確かにただひたすら魔物討伐していくだけでもランクはあがるが、実は簡単な魔物討伐の光帯はかなり低い。」

「そうなのか。魔物の複数討伐とかはそこまで高くないのか?」

「ああ。複数討伐なんざ特に光帯はとても低い。だからこそ、意外と効率的に見たら最悪なんだ。」


なるほどな。

確かにステウラン村でやっていた警備の依頼を達成した際の光帯の増加はかなりデカかった。


Fランクに上がった後にゴブリンとコボルトを使って検証した際にかなりの数を殺したが、3分の1も光帯は増加しなかったっけ。

だがツーリン村の出来事を解決した時はその時よりも7割も増えた。


「そうだ。今、旦那が思った事で合ってるぜ。討伐依頼よりも人命に関する依頼の方が稼げるってもんだ。まあそれだけでもCランクで打ち止めになる。そういった依頼はCランクまでしかねえからな。Bランクには討伐依頼しかないし、何より実力を持たぬ者にはBランクに上がる資格はねえ。ただAランクに上がれば依頼の種類は元に戻るって感じだな。」


討伐依頼と、人命救助の依頼。

そのどちらか片方だけをやり続けてもだめということか。


討伐依頼だけやっていても、ランク昇級は時間がかかり、人命救助の依頼だけやり続けてもCランク止まりとなる。


「ただな。たった一人だけ、魔物討伐だけでSランク冒険者にたった5年で、しかも22歳という最年少で上り詰めた奴が1人だけいるんだ。」

「・・・グスタフ公爵様か。」

「その通りだ!あの人は本当に化け物染みた強さを持ってるんだぜ!」


22歳ってことは、17歳で冒険者になってそこから5年ってことか。


17歳で5年かけてSランク冒険者・・・。

本当に化け物染みてんなー・・・。


僕もこんな転移(ちから)を持ってはいるけど、それだけでランク上げようにも時間はかかりそうだな。


「あの人の戦い方は異質だ・・・。さすがの俺でも太刀打ちできる・・・というか真面に立っていることさえできる未来が見えねぇんだわ・・・。あれは・・・人じゃねえよ。人が成せる業じゃねえ・・・。あの人と領地戦を何度も共に戦い抜いてはいるが、あんなの戦いじゃなくてただの殺戮だ。」


そう話すベベラオの手はわずかに震えていた。

顔は笑ってはいたがわずかに冷や汗をかいていたから、相当な恐怖を抱いている様子が伺える。


「だからこそ何度も思うぜ、あの人が味方でよかったってよ・・・。」


ベベラオが話す人物像(恐怖公)と、実際に僕があった時の人物像(親バカ)が余りにも違いすぎて困惑してしまう。


「さて、俺はそろそろ戻るわ。御嬢・・・レイラお嬢様たちもそろそろ終わってる頃だろうよ。旦那ぁ、1ついいかい?」

「なんだ?」

「・・・レイラお嬢様を、どうかよろしく頼む。事情はすでに聞いてるんだろ?俺たちもレイラお嬢様の悲しんでる顔なんざ見たくねえんだわ。だから、幸せにしてやってくれ。」

「頼まれるまでもないさ。その誓いをあの人の前に建てるためにここまで来たんだ。」

「そうかい!旦那になら、大丈夫そうだ!」


そういってベベラオは自らの拳をヨスミへと突き出した。

それを見て、自分の決意を込め、その拳に応えるように自らも握り拳で合わせた。


ヨスミはどこか、ベベラオに対して友情に近いモノを感じた。

ベベラオはそのまま笑顔でその場を後にし、レイラたちの方へと顔を向ける。


レイラとハルネ。アリスとシロルティアはそれぞれ相手を交互に変えながら何度も手合わせを続けていた。


そう、日が暮れるその時まで・・・。






「ねえ、今何時だと思ってるわけ?一応私がグーちゃんの所に報告してきたからもうすぐでお迎えがくるとは思うんだけど、だからといって限度ってものがあるんじゃない?結局ヨスミ、あんたまで混ざってたし。」

『お腹ペコペコなのー!』


お怒り心頭なハクアとフィリオラが正座してシュンとしているヨスミ達に説教をかましていた。

気が付けば陽は完全に落ち、薄く照らす月光が辺りを照らしていた。


「・・・申し訳ない。みんなの戦いを見ていたらつい、な。」

「だってぇ・・・、ここまで白熱するとは思わなかったんですもん・・・。」

「私もここまで熱くなるとは思いませんでした・・・。申し訳ありません。」

「たのし、かった・・・。」

『すまないな、フィリオラよ。私もつい楽しくなってしまってな・・・。』


確かにベベラオは戻った後、ボーっとレイラたちの手合わせを見ていたがアリスとの手合わせを終えたレイラがヨスミを誘った事で、そこからは時間を忘れてずっと戦い合っていた。


誰も止める者がいなくなったことで、このような事態へと陥ってしまったのだ。


それからは迎えに来てくれたヴァレンタイン公爵家の馬車に乗り、数十分かけてあの夜に溶けたように真っ黒なデカい城前の大門までやってきた。


すでに執事が門前に立っており、到着したヨスミ達を中へ案内する。

玄関の大扉を開けると、整列された大勢のメイドによるお出迎えに圧巻を覚えた。


メイドに案内され、各々が各部屋に通されていく。

その部屋は明らかに広すぎる故、部屋・・・と呼ぶには狭くはなく、まるで豪邸のリビングのような大きめの広さに外とは違って、白と黄色で装飾された豪華な家具類で揃わられていた。


「ではヨスミ様、もし何か入用で御座いましたらそちらのハンドベルを揺らしてください。そちらは我が家で開発した魔道具でして無音では御座いますが、メイドや使用人にのみ聞こえる音が鳴り響くので真夜中に鳴らしても他の片の迷惑にはなりませんのでご安心ください。それでは・・・。」


そういって、メイドは頭を下げて部屋を出た。

残されたヨスミはとりあえず、窓の傍まで寄ると窓越しからの景色を眺めてみる。


城下に広がる町々は未だ灯りは灯り、人々は行き交う。

それは昼と変わらず、これは活気に満ちている証拠だ。


あそこまで人々は生き生きしているというのは、グスタフ公爵の手腕が良いということだ。


「こういう眺めも良いもんだな・・・、ん?あれは・・・」


ふと、下町の方で必死に走っている少女、その後に続く数人の男たちの光景が見えた。


なんか訳ありかな?

よくもまあこの首都でああいったことをしようとするもんだなー。


そう眺めていると少女が転び、追っていた男たちが少女に群がり、そのまま拘束して裏路地へと連れて行く様子が伺えた。


・・・ふむ。とりあえず事情を見てみるか。


転移窓を広げ、少女の置かれた状況を覗いてみた。


「いやぁ!離してぇ!」

「やっと見つけたぞ・・・。いいからこい!」

「クオンタ侯爵様がおめえをお待ちだ!ったく、逃げ出しやがって・・・!!」


会話と身なりからすると彼女は娼婦か?

こういったことは娼館じゃあよくある問題ごとの1つだ。


わざわざ僕が出る幕じゃない・・・


「ここでてめぇに逃げられたら、あのくそ公女の身代わりをまた探さないといけねぇじゃねえか!」

「くそ公女って誰の事だ?」

「ああ?んなもん、この国の公女、レイラ・フォン・ヴァレンタイン公女の事に決まって・・・って、てめぇは誰・・・ぎゃああああああ!!」


突如として、その場にいた男たちの両膝と両肘に細長い棒が突き刺さり、強烈な激痛にその場で動けなくなり、地面へと倒れた。


「そこの女、静かにそこで大人しくしていろ。そうすればお前には何もしない。」

「ひいっ・・・?!」


少女に向けられた鋭い眼光に全身を恐怖で支配され、小さく震えながら縮こまる。


「んで、おめえらの知っているその計画について話してもらうぞ。俺はそこまで甘くないからな・・・。」


どこからかその手には、自分たちに突き刺さっている棒と同じものが握られていた。

その棒からは恐ろしいほどの殺気が込められており、男たちは痛みと恐怖で意識を失った。


「・・・ちっ、女。僕と一緒に来るんだ。逃げようなどと思うな?」

「は、はいぃ・・・!!」


ヨスミはその場で気絶した男3人と少女を連れ、その場から姿を消した。




【冒険者ランクについて】


ランク:S、A,B,C,D,E,F,G

Sが一番最高ランクであり、Gが誰もが必ず通る最初のランク。


一般的にはSランクが最上位とされており、魔物にも同様のランク付けがされているが、魔物にのみSランクを超えるUランクと呼ばれるランクが存在する。


Gランク:警備(主に村での門番など)と素材採取(主に自然界に存在する薬草や果実など)、生態調査

Fランク:ゴブリンやコボルトなどの小型の魔物討伐、町の門番、配達

Eランク:小型魔物の集落に関する討伐や墓地の魔物の討伐(アンデッド系)、生態調査

Dランク:野盗(山賊や盗賊、海賊など)の討伐

Cランク:中型魔物の討伐、大規模の野盗討伐、生態調査

Bランク:中型魔物の複数討伐、賞金首となった魔物の討伐、領地戦の参加条件

Aランク:中型魔物の単独、複数討伐、大型魔物の討伐、冒険者狩りの討伐、闇ギルドの討伐、生態調査

Sランク:大型魔物の単独、複数討伐。


主に依頼分けはこのようになっており、依頼は自分と同じランクとその1個下のランクの依頼を受けることができる。

例えば、Bランクの場合だとCランクとBランクの依頼を受注することができる。

ただし例外として人々から依頼されたものに関してはランク関係なく受けることができるが、高ランクで受ける場合、光帯の下方補正(最大10%)される。


*討伐依頼の光帯は1~5%。複数討伐依頼になると0.1~0.5%

*人からの依頼の光帯は15~30%


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