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新たなる冒険の始まり


皆さま、こんにちわ。

レイラお嬢様の専属メイド、ハルネです。


私たちは今、エフェストルを出て3日が経過致しました。

何事もなく順調に旅路は進んでおります。


途中、野盗や魔物などに襲われる事案もありましたが、空からついて来てくれている疾蛇竜があっという間に蹴散らしてくれるので、私たちの消耗はほとんどありません。


疾蛇竜(ほんにん)曰く、ただ遊んでいただけだそうだ。

ただじゃれていただけで簡単に死ぬなんて、さすが生ける災害と呼ばれし魔物です。


そしてFランクだったヨスミ様とアリス様、シロルティア様の冒険者結晶は完全に光り、Eランク昇格試験を受ける資格を得られることになり、カーインデルトに着いたらさっそく試験を受けるご様子。


あの方々であれば、問題なく昇級できるとは思いますので大丈夫だとは思いますが・・・。


さて、ここで一つヴァレンタイン公国の首都”カーインデルト”についてのお話を少し致しましょう。


ヴァレンタイン公爵家の本邸である城が建っており、カーインデルトの冒険者ギルドは実力主義ばかりの猛者が集う町でございます。


領地戦の際は冒険者ギルドへの援軍としての依頼も出すほどなので、見た目や雰囲気に舐められたら色々と突っかかってくるめんどくさい連中でもあります。


まあ、実力は確かではありますけどね。


実際、何度か領地戦にも参加して武勇を上げてくれている方々がいらっしゃいます。

そして何よりもカーインデルトの冒険者ギルドは他の国よりもAランク冒険者が所属している数は最多とされております。


またヴァレンタイン公国が所有する銀聖騎士団(セイクリッドナイツ)は、1人1人の騎士が持つ戦闘能力はいわばAランク冒険者に近いと言われ、他国が所有する騎士団よりも随一の戦闘力を誇ります。


領地戦において常勝無敗で、一度たりとも負けたことがありません。

故にどの国もヴァレンタイン公国に領地戦を挑むことはなくなり、容易に手出ししてこなくなりました。


言葉の裏を返せば、表立って手が出せなくなったので裏からバレない様に手を出すことが増えたという事になりますが・・・。


ただ、そんなの関係なしに表立って手を出してきている家門が一つあります。

それがアファタル・デネブ・カースティン公爵様で御座います。


アファタル公爵様が仕えている皇族の方々は、外交問題に発展してしまうのを防ぐために後処理に忙しく、彼らからの工作等は未だされておりません。


それだけが救いでしょうか。


ともあれ、今から私たちが向かうカーインデルトという町はそんなところです。

その町ではどんな出会いが、どんな出来事が待っているのか未知ではありますが、正直にいって私自身とても楽しみなところではありますね・・・。


お待たせいたしました。

これから私たちの物語をお見せいたしましょう。


どうぞ楽しんでいただければ幸いです・・・。






「ねえ、ヨスミ。」


乗っている馬車に揺られながら、近くに座っている男へと呼びかける。

ヨスミと呼ばれた男は、白銀の幼竜とじゃれながら返事を返す。


「どうした?カーインデルトが見えたか?」

『見えたのー?』

「ええ。あの冥闇と言われた真っ黒に染まる霊城・・・”カーインデルト城”が見えてきたわ。」


フィリオラが指を差した先に見える、光を吸い込むような真っ黒な城がそこにあった。

そこから広がる城下町は活気が盛んなようで、彼方此方に鍛冶屋工房が並び、伸びた煙突からは常に煙が絶えず上がっていた。


その下に広がる下町は人々の交流が盛んで、遠くからでもその交流市場の大きさは目を見張るものがある。


「あれが、レイラたちの住む家・・・か。」

「ええ、懐かしいですわ。大体3か月振りでしょうか。」

「確か、カーインデルトを出た目的は、各村々の視察とステウラン村の収穫祭に参加するためだったんだよね?」

「そうですわ。この公国にある全ての村を視察するために出たのですわ。これは公務であり、息抜きの1つなのですわ。」

「全ての村って・・・、ヴェルウッドの村にも行ったのか?」


そういえば、確かレイラと出会った時も僕たちがヴェルウッドの村からステウラン村に向かう道中だった。

つまりすでにヴェルウッドの村の視察を終えて、ステウラン村に向かっていた最中だったってことか。


「ええ。最後の視察先がヴェルウッドの村だったんですの。そこで竜母様・・・、フィー様に今までの視察したことを報告し、終えた先で収穫祭を控えたステウラン村に向かっていたところだったのですのよ。」

「そうだったのか。」


それにしても全ての村と町に視察って、かなり時間がかかってるはず。

さっきレイラも家に帰るのは3か月ぶりって言っていたし・・・。


「公務って、大変なんだな。」

「視察事態はそこまで大変ではないのですわ。ただ一番大変なのはやはり領地戦ですわね。主に掛かる物資や費用、住民の避難、領地戦で傷を負った者たちへの負債や死んだ兵士の家族への賠償、領地戦後の防衛対策など・・・。やることも考えることも多いですわ。」


領地戦とはいっても、やってることは戦争となんら変わりないからか。

常勝無敗とまで言われているけど、被害がないってわけじゃないからな・・・。


「だからこそのこの視察はわたくしにとっては息抜きにもなってるんですの。」

「なるほどね。軍事公国だからこその悩みみたいなものか。」

「まー、わたくしのお父様は戦うことが大好きな人ですから、この政策はわたくしが無理やり入れたんですけどね。じゃなきゃ、年がら年中ずっと戦い続ける御仁ですわ。」


つまりは戦闘狂ってことかいな・・・。


一行を乗せた馬車は談笑しながら数刻が経ち、カーインデルトの下町にある城門にたどり着いた。

道中で馬車に乗せてくれた御者はそのまま城門内へと入っていった。


残されたヨスミたちは、門の兵士たちに通行の許可をもらうために歩み寄っていく。


「・・・ん?お嬢様じゃないっすか!」

「おお、お嬢!視察はもう終わったんですかい?」

「フィーグ、ペンデ。調子はよさそうですわね。」


陽気な感じで接してくる2人の兵士はレイラと知り合いなのか、とても会話が弾んでいた。


「ところでお嬢、そちらの方々は・・・。」

「ええ、紹介するわ。わたくしの旅仲間で、フィー様、アリスちゃんにシロ様。そしてこの方は・・・その、わたくしの旦那様ですわ・・・ぽっ」


顔を赤らめながら紹介をしてくれるレイラの様子に、兵士たちの表情が次第に変わっていく。


「お、おおおおおおお・・・」

「お嬢が・・・」


「「お嬢が男を連れて帰ってきたぁぁぁああああ!!!」」


そう叫びながら兵士たちは詰所の中へと入っていった。



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