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これもまた、あり・・・なのか!

修正:フィオラ → フィリオラ


「・・・ねえ、夜澄ってば。ちょっと、聞いてる?」

「え?あ、うん・・・えっと、どうしたんだい?」

「この文献なんだけどさ」

「ん、何か見つけたのかい?」


ソファで様々な文献を漁っていた優里が何かを見つけたかのように文献の一文を指さして見せてきた。


~かつて人々は神と共にあった。神の恩寵にあやかり、人々は様々な力を扱えるようになり、押し寄せる災いから身を守っていた。~


「って一文があるのよ。神の恩寵にあやかり、人々は様々な力を~って部分なんだけど~・・・」

「あー、確かにそれはあるかもね。でもどうして~・・・」


文献にまつわる内容の解釈違いで意見を言い合い、お互いの考察を指摘し合い、無駄を削っていく。

僕たちはお互いにこういうことをして日々を過ごしていた。


今思えば、そんな日々が僕にとってとても暖かく幸せな日常であったのだと、そう何度も噛みしめる。


・・・つまり、これは夢ってことだ。

こんな幸せが今ここに存在するはずがないからね。


なら、これ以上のこの空間の名残惜しさに負けないうちに・・・。


「でね?私が思うにここはねー・・・」


・・・優里。


無意識のうちに手を伸ばし、優里の頬に触れていた。


「こう考えると・・・って、ん?夜澄ったらどうしたの?」

「・・・え?あ、いや・・・」


頼む、早く覚めてくれ・・・。

この空間がすでに心地よいものになっている・・・。


すでに記憶の思い出にいる優里が目の前に居るだけで、簡単に決意が揺らいでしまう。

本当に僕は、彼女に弱いんだなあ・・・。


だから、頼む。

早く目を覚ましてくれ・・・。頼む・・・、頼む・・・・・・・・・・。




「・・・はっ!?」


鼻をくすぐる食欲をそそるような美味しい匂いに体を起こし、辺りを見回す。

どうやらこの辺りはどこかの家屋の一室のようだ・・・。


この漂ってくる匂いはどうやら部屋の外から来ているみたいだな・・・。

ベッドから降りようとした時、腹部に走る痛みに立ち上がろうとしていた足にうまく力が入らず、もつれ、そのまま地面へ倒れてしまった。


その直後、どこからかドタバタと急いで何かが走ってくるような聞こえ、


「だ、大丈夫!?」


と叫びながら、部屋に一人の女性が飛び込んできた。


太腿まで伸びている白に近い銀色の長髪で、光に当たった部分は淡いピンク色に光っており、端正な顔立ちで左目の方に泣きホクロがより一層彼女の魅力に拍車をかけているほどだ。


また白い民族のような古めかしい衣装を身に纏い、さらに彼女の優雅さを際立たせていた。


きっと他の人が見れば美人であり、普通の男性ならば一目惚れでもするほどなのだろう。

彼女は倒れている僕を抱え、ベッドに寝かしつけた。


「まだ君の傷は完全に癒えてないんだから、もう少し横になってた方がいいよ。」

「ありがとう・・・。君は、えっと・・・」

「ああ、私はフィリオラだよ。」

「助かったよ、フィリオラさん。僕は夜澄だ。助けてくれてありがとう。」

「ヨスミ、さん・・・。」


ヨスミという名前を聞いて、一瞬フィリラの瞳が強く揺れ、何かに呆気に取られたかのように茫然としていた。


「・・・フィリオラさん?大丈夫かな?」

「え?あ、ああ・・・!ごめんなさい!なんでもないの、気にしないで!」

「そう?なら良いんだけど。もしよかったら今のこの状況について説明をお願いできるかな?」

「ええ。私がこの辺りを散歩していたら、 ”ヴェルウッドの森” の開けた場所で爆発音が聞こえたから気になってきてみたらあなたが大怪我して倒れてて、急いでうちまで運んできて治療したの。ある程度治ってはいると思うけど、調子はどう?」


確かあの時見えたシルエットは巨大な翼、長い首と尾、あの大きさにしては細身の巨体に枝分かれした美しい角を生やしたドラゴンだったはず・・・。

太陽を背にしていたから体色は真っ暗できちんと見えなかったけど、確かにあれはドラゴンだった・・・。


「大丈夫だよ。そういえば一つ聞きたいんだけど、僕が意識を失う前にドラゴンの姿を見たんだ。そのドラゴンは見たか?」

「え?見たわよ。というより」

「どんなドラゴンだった?種類は?体色は?瞳の色は?鱗は?甲殻は?どれほどの大きさだった?重さはどれぐらい?首、胴、尾、それぞれの比率は?」

「ああああ!そんな早口で連続して聞かないで!」


フィリオラの両肩を掴み、ぐわんぐわんと振り回しながら怒涛の勢いで質問攻めを喰らわされ、目を回して今にも気絶しそうになるが、何とか振り止まり、夜澄の質問苦をなんとな逃れた。


「はあ・・・はぁ・・・。ちょ、ちょっと待って、落ち着いて・・・」

「ああ、すみません。つい興奮してしまって・・・。」

「ふう・・・。それにヨスミさんが見たドラゴンって私の事ですし。」

「・・・はっ?」


ガシッ


再度、フィリオラの肩を再度がっしりと掴み、先ほどの恍惚な表情とは打って変わり、怒りや憤怒に満ちた狂気じみた目でフィオラを睨みつける。


「ヒッ・・・!?」

「フィリオラとか言ったか・・・? さっきの話、もういっぺん言ってみろ・・・」

「だ、だから・・・君が見た、ドラゴンは・・・私の、こと、だと思・・・ヒイッ!?」


捕まれる肩に更に力が加わっているようで、痛みがどんどん増していく。


「ほうほう・・・。そうかそうか。つまりあんたはドラゴニュート系のような竜人の種なのか?それとも擬人化みたいな感じでの成り立ちなのか?はたまた人間化みたいな状態になれる異次元の力とかか?あ?」

「痛い痛い痛い!これは魔法による人化の効力だよぉ・・・!」

「ま、魔法・・・だと!?いや、だが・・・これは・・・」


何かを悩むように、掴んでいた両肩を話し、ゆっくりと後退りする。


人と竜の融合・・・。

竜人、ドラゴニュートと呼ばれる種類。

人と竜の割合が4:6、または3:7が許容範囲ではあったが、目の前にいるフィオラは8:2でも9:1でもない。完全なる10:0の割合なのだ!フィリオラのどこにもドラゴンとしての要素は・・・あああああああ!!!


黄金色に光る瞳の動向が爬虫類や猫科特有の縦長の猫目・・・!

まるで太陽のように輝かんとする、一切の曇りもない・・・ああ、美しい・・・!


眼以外にドラゴンの特徴は俄然と見えないが、その瞳だけでも十分に素晴らしい。

今まで僕が抱いていたドラゴンの人化に対する価値観ががらんと変わってしまった。


「これもまた、あり・・・なのか!」


人の瞳をガン見しながら恍惚とした気持ち悪い表情をするヨスミに、


「うわぁ・・・。」


とドン引きせざるを得ないフィリオラだった。



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