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僕の新しい戦い方”完全盤面操作”


「本当になんてことをしてくれたんだ・・・!自らの領地運営さえ疎かにするほど、私たちを拉致し、ヴァレンタイン公爵家を陥れる事がそんなに重要なことなのか・・・!!」


ヴィクトリアは怒りのあまり、何かを壊したような衝撃音が聞こえる。


「僕は貴族という生き物に対してはかなりの偏見を持っているけど、これこそ貴族という生き物だと改めて思うよ。自己的で、己の利益のみを追求し、自らの権威が貶められるようなことを決して許さない。人間としての醜い部分を凝縮したような肉塊だとね。」

「それはさすがに言いすぎな気がするよ~・・・。まあ、間違ってないけどさー・・・?」


瞼を閉じたまま千里眼を発動・・・・

真っ暗闇が広がる視界に3Dマッピングのような視界が広がっていく。


・・・できるみたいだね。

しかも普通に脳への負担ももちろん・・・、いや、色彩情報が白と黒の2色だけなのと、人を形成する各パーツはまるで3Dモデルのような最低限の情報体になっているからそれだけで十分にやりやすい。


ただ、この状態だと【看破】は発動しないみたいだ。

さすがにあの情報体だと色々と足りないか。


んー、これでもカリエラの素顔が診れないのが残念だ。


「ヴィア、そしてカリエラ・・・」

「あ、僕のことはリラって呼んで!リラは僕の愛称なんだっ」

「ならばリラ、ヴィアと共に町の方へ応援に。アリスとシロルティアはレイラの援護を。」

「わかった。ヨスミ殿はどうするのだ?」

「僕はあともう少しだけここで休んでいるよ。レイラにも言われてしまったからね。だから僕はここでみんなの活躍を信じて待っているよ。」

「そうか・・・。ではまた後で会おう。」

「じゃあね、よすみん!助けてくれたお礼に後でご飯驕らせてよ!」


そういって、ヴィクトリアとカリエラは急いで町の方へと走っていく。


「ヨスミ・・・、ひとりで、だいじょ、うぶ・・・?」

「僕は大丈夫だよ。だからどうか僕の大事な嫁さんを助けてやってくれ。」

「・・・ん、まかせ、て・・。」

『任せてくれればいい。そこでゆっくりと休んでてくれ。』


そういうとアリスとシロルティアは西側の方へと向けて駆けていく。

残されたヨスミは仰向けになり、吹き抜ける風をその身に感じていた。


千里眼で見える全地形スキャニングによる3D地図生成(マッピング)で得られる情報は限られており、例えば壁の裏にゴブリンがいる仮定で、そのゴブリン相手には直接転移による攻撃はできない。

かといって千里眼で一度、壁の向こう側にいるゴブリンの存在を認知すれば転移による干渉が可能になる。


ただし、その状態では千里眼の能力の1つである看破は発動されない。

また目の前に居た状態で、自らの目を閉じた状態で発動した千里眼でも看破は発動しない。


つまり看破という能力は、この目で直接相手を視認しなければ効果は発動できないらしい。


生命探知は、千里眼を発動した際に設定した範囲内にいれば無条件に投影される。

ただし、小さな昆虫や空を飛ぶ鳥など、極端に言えば空気中に漂う微生物でさえ、ありとあらゆる生命体全てを投影するため、意識してしまうと逆に何一つ見えなくなってしまう。


だがこれは無意識に見たい物だけを選別し、不必要なものは脳内から削除し、視界から消す。

それらの情報の有無はそれまで見ていた記憶によって選別され、また記憶の取りこぼしによる”見落とし”はあるかどうかはまだわからない。


だが絶対的な条件としては、殺意や敵意を持ってこちらにそれらの意識を向けているかどうかだ。


つまり、僕にとって”敵対存在(エネミー)”と判断された生命体が映るということだ。

まだまだ検証が必要だな、これは・・・。


それぞれの発動条件、効果、影響範囲、転移との区別化に関する検証はまだまだこれからだが、大体知りたいことはわかった。


「さて、十分に休めたかな。そろそろレイラを・・・大事な嫁さんを助けに行くとしようか。」


今までずっと閉じていた瞳をゆっくりと開く。


虹色に光るその左目の瞳に映るは、無数に重なり合う魔法陣、町の惨状、未だに地下から溢れ出てくるおびただしい数のスライム。そして、それを相手に善戦するレイラの演舞と、金色に光る右目とコバルトブルーの左目、左右違う色にとても印象的に見えた。


一瞬にして脳への負荷が高まり、鈍い頭痛が響く。


「はー・・・、そろそろこの頭痛にも慣れないとなー・・・。まあ、すでに地形を把握している場所であれば千里眼よりかは転移窓の方が比較的負担が少ないってのもわかったしな。まあ建物内の構造把握は出来ていないから、その辺りには転移の影響範囲外になるけど・・・。まあ大丈夫だろう。」


そう呟いた後、今までの倍の数の転移窓を展開し、町全域に合わせ、西側の廃屋を中心とした全域をカバーするように転移窓で覆う。


「さて、人命救助と正しい人員配置・・・、そして戦闘掩護でもしようか。」


そう、転移窓を使えるようになってからずっと考えてきた僕のもう一つの戦術。


完全盤面操作(オールオペレーション)


転移窓で見えた、住民たちを襲おうとしているスライムを別の場所へと転移させる。

またスライムの攻撃が当たる直前の衛兵たちを別の安全な場所に転移させ、体勢を立て直させる。


冒険者の攻撃を確実に当てられる場所にスライムを転移させ、撃破させていく。

そういった操作を転移窓を通じて、次々とこなしていく。


またレイラへの干渉は最小限にとどめ、明らかにマズイ状態やどうしても攻撃がかわせない状況のみレイラへの転移干渉を行う。

一瞬、転移窓越しにその瞳を向けられたが、僕の仕業だとわかると緊張していたその表情は安堵の表情に変わり、


『わたくしを守ってくださいね、あなた。』


満面の笑顔でそう呟き、その動きはよりキレを増した。


いやー、さすがにレイラのあの動きを目で追うのはキツイ。

本当に早くなったな・・・、その期待には全力で応えないとな。


レイラの動きに集中し、またその傍らで町への被害状況を最小限に抑えるために冒険者、衛兵、住民、スライムの状況を把握してそれぞれに衛兵と冒険者には攻撃支援、住民たちの避難、スライムの誘導。

それら全てを同時に行う。


龍誕計画を行っていた時に、複数の研究を同時に行う複数同時処理(マルチタスク)の処理速度は随一だった。

あの速度をもって研究を行わなければ、数世代は掛かっていただろうな・・・。


それにあの頃の僕はかなりの高齢で、老いによる脳処理速度低下もあって、今以上に処理速度は遅かった。


だが今の僕は全盛期に近い健康体だ。

あの頃に比べて、今の僕が持つ複数同時処理は3倍・・・。


「これぐらいの複数同時処理なんて造作もないってことだ。」


まあ、複数の能力を発動したままで完全盤面操作までするとなると脳への負荷はかなり高いから長時間は出来ないのが欠点だな・・・。



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