表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/517

闇ギルドの定義


「あんたも呼ばれたのか?」


どこかの施設の地下部屋。

木箱が無造作に置かれ、それぞれの木箱に幾人かが座っていたり、寄りかかっていたりと数十人ほどが集まっていた。


「ああ。全員招集の命が掛かったからな。こうして全員・・・、カカラとバチラの姿が見えねえな?」

「たしかあの2人、ボスの命で動いてるって聞いたぜ?」

「だからといってボスの招集命令を無視する奴らじゃなかったはずだが・・・。」

「・・・みんな、いるな?」


扉が開き、中へ一人のローブ姿の人物が入ってきた。

フードを取ると、赤いショートヘアーの端麗な顔立ちの女性が姿を現した。


「皆、忙しい中すまないね。今日はお前たちに話すことがある。前にも話したが、あたしはとある女を拉致してくるように依頼を受け、カカラとバチラを送り込んだ。何人かは気付いているとは思うけど、この依頼は失敗した。」

「失敗って、返り討ちにあったってことか?その女に?」

「いやいや、一応あの2人はそんな簡単にやられる玉じゃねえはずだぞ?」

「ああ。あたしもそう思ってた。だがやり返されたことが問題じゃない。拉致する相手はヴィクトリア・エヴァージェンス。お前らも知ってる通り、数少ないAランク冒険者の1人だ。相手が相手だ、簡単にいけるとはあたしも思っちゃいなかった。だけどね、あの2人は死んだよ。」


死んだ、という言葉にその場にいた全員がどよめく。


「死んだって・・・、は?衛兵に連れていかれたとかじゃなくて?」

「いくら俺たちが[宵闇の瞳]の一員だからって、そんな・・・」

「・・・死んだ理由は?あのヴィクトリアが殺すはずがない。」

「そう、あのヴィクトリア嬢は甘ちゃんだ。たとえ返り討ちにしたとしても、それがどんな悪党でさえ殺さず、衛兵に突き出しているとんだお人良しさ。だが、あの2人は死んだ。それも無残に、惨たらしい死に方をしたそうだ。」

「そういえば、最近噂になっているヴィクトリアに返り討ちにあった2人が死んだって話・・・、確か首が溶けて頭が落っこちたって言う話だったが・・・。」


まさか・・・、そんな・・・!? などの小声が周囲からぼそぼそと聞こえ始めてくる。


「一体誰の依頼なんだ?ヴィクトリアがそんなこと出来るはずがねえ。」

「・・・ヘルマン伯爵と睨んでる。依頼を頼んできた奴は顔を隠してたから誰かは知らないが、ローブの隙間から見えた身なり、仕草、そして声、特徴的な話し方の訛り。それに当てはまる人物を探した結果、この町に密かに来ているヘルマン伯爵の執事と一致した。それに合わせてヘルマン伯爵に関する情報、それに関連するヴィクトリア・・・いや、エヴァージェンス家との関係について。あたしの調べた情報とアジータが持ってきた情報と照らし合わせて一致した。」


彼女の言葉には怒りの感情が見え隠れしていた。

そこに居た者たちも、眉をひそめ、何か思う所がある様子だった。


その時、アジータが彼女の影から現れると札のような何かを差し出した。


「・・・ボス、これは?」

「呪術を代わりに引き受ける”身代わり札”というモノだ。アタシらの友人にこういったことに詳しい奴がいてね。死んだ原因が呪術によるものだとあたしは睨んでる。だからこれは一応保険だよ、絶対に肌身離さず持っておきな。」

「ボス・・・!」


この子等はあたしの家族みたいなものだ。

すでに2人がやられた。これ以上は誰も殺らせない・・・。


それに、これは契約違反だ。

黙ってやられるあたしらじゃないのさ・・・。


「もしその札が破れたり焦げたり、そういった異常があったらすぐに言うんだよ?」

「「「「了解、ボス!」」」」

「さて、いくよあんたたち。あたしらの家族が殺された報いを受けさせにね。」


そういうとフードを被り、その場にいた全員を連れて部屋を出て行った。






「・・・なるほどね。」


その様子を転移窓で見ていたヨスミは、顎に手を添えて考え込む。

フィリオラは治癒魔法を掛け終わり、ヨスミの状態を確認していた。


鼻血は出なくなり、先ほどよりかは顔色も良くなったのを見て一安心する。


「何かわかったの?」

「色々とな。彼らは[宵闇の瞳]と呼ばれる組織で、これからあいつ等はヘルマン伯爵の所に行くみたいだ。アイツらはどうやらヘルマン伯爵の居場所も掴んでいるみたいだしな。」

「ふーん、[宵闇の瞳]ね・・・。」


フィリオラはどこか考え込むように目を閉じた。


「ん?フィリオラは[宵闇の瞳]について知っているのか?」

「まあね~・・・。今回、私はただの竜人としてヨスミたちに協力しているわけだし、少しだけ話すわ。あそこで喋っていた赤髪の子はデリオラ。あの子がまとめ上げている組織[宵闇の瞳]は数ある闇ギルドの中の1つで主に要人の拉致、または殺しを目的としているわ。規模はそこまで大きくはないけど、他の闇ギルドにはない特徴として各地を転々としていることね。一か所に長くとどまらないから足も付きにくいし、固定の依頼客ができないから、自らの派閥に抱え込むことも出来ないし、逆に[宵闇の瞳]に関する弱みも握れないから自分の思うように動かせないから、相手に取ってはやりにくいったらありゃしないわね。」


偶々ヘルマン伯爵がここに来たタイミングで[宵闇の瞳]の存在を知り、この依頼を出したのか。

それともヘルマン伯爵が奴らを追いかけてここに来たのか。


あるいは・・・、奴らがここに来る情報をどこから得たうえでヴィクトリアとカリエラをこの場所に飛ばし、[宵闇の瞳]に依頼を出す計画を練ったのか。


そもそも転送門での襲撃にヘルマン伯爵が関わっているかどうかさえまだわかっていない。

だが十中八九、何かしらの関わりがあるのは確かだ。


「人身売買は?」

「それはしないわね。基本、依頼されること以外は何もしないわ。たとえ、拉致した要人の依頼がキャンセルになって要人の価値がなくなった場合でも殺さずにそのまま逃がすほどにね。」

「・・・なんで闇ギルドなんかやってんだよ。」

「それは私も思ってるところよ・・・。」


互いにため息をついて頭を抱えた。

話を聞けば聞くほど、[宵闇の瞳]は闇ギルドとしては結構甘い組織なのだと認識した。


闇ギルドは本来、依頼されて犯罪に手を染めることもあるが基本的に自主的に犯罪を犯すことが多い。

殺人、窃盗、拉致、人身売買など、下手すれば賊と似たところがあるのでそこらの盗賊や山賊となんら変わらない。


でも[宵闇の瞳]は依頼のみに犯罪を犯し、何もない時には冒険者の依頼や日雇いの仕事で稼いでいるらしい。


しかも依頼の成功率の高さは他の闇ギルドとは違いってかなり高いらしく、それぞれのメンバーも精鋭揃いとのことらしい。


でも本当にフィリオラは色んな事を知っているな。

長く生き続けているから故に蓄積していった知識の功って奴だろうか。


まあ僕にとっては今の所、同でもいい事だから気にしないでおこう。


「とりあえず、皆を呼んで僕らも行こうか。」

「・・・そうね、いきましょ。さ、行くわよハクア。」

『お話終わったのー?』

「終わったよ~、ハクアたん。さ、体を動かしに行こうねー!」

『わーい!』


ヨスミの背にハクアが乗り、フィリオラと共に部屋を出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ