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今からこいつら全員殺すから待っててね。


「他のみんなはどうする?」

「私はこの町の町長さんにでも挨拶しにいくわ。久々に来たし。」

「わかった。それじゃあまた後でな。」


そういうと、フィリオラはフードを深くかぶり、人ごみの中へと消えていった。

残されたアリスたちは何か考え事をした後、


「わたし、は・・ぼうけん、しゃ・・・登録、できるか、確認してく、る・・」

『ついでに私も行くつもりだ。なあに、アリスの従魔として振舞えば問題はないだろう。』

「そうだね。登録で来たならまた教えてくれ。一緒に依頼をこなしてランクアップしていこう。」


はーい、と返事を返し、アリスを乗せたシロルティアはゆっくりと冒険者ギルドへと向けて歩みを進めていった。


「それじゃあ僕たちも行こうか。いいかい?ハクアたん。もし美味しそうな食べものとかあったら遠慮なくいいなさい。僕が買ってあげるからね。」

『ありがとうなのー!でも、ハルネお姉ちゃんの所にいくのー!デートの邪魔はしないレディーなの!』


そういってハクアはヨスミからハルネへと移り、ハルネによって背負われた。


「ハクアちゃん・・・。」

「じゃあ一緒に手を繋ごう、レイラ。」

「!!よ、喜んで・・・!」

「・・・。(・・・頑張ってくださいね、お嬢様!)」


ヨスミはレイラの手を取り、指を絡ませるようにそっと握ると互いに見つめ合う。

その光景を全てを無にした表情で見守るハルネと共に町の中へ、宿屋に向けて出発した。





「オーク肉の串焼きだぉー!絶品だよー!」

「鬼蜘蛛の糸で作られた高級布だよー!どうかねー?」

「ほらほら~今日も新鮮な野菜が入ったよ~!」


様々な人や獣人が出店を出し、声を上げて客を呼び込んでいる。

いわゆる”市場”という場所にやってきたヨスミたちは宿屋に行く前に、こちらで買い物でもしようとヨスミの提案により、市場へと赴いていた。


肉の焼けた匂い、生肉独特な臭み、ハーブの香りに、香水のような甘い香り。そして人や獣人の行き交う臭いなど、市場では様々な匂いが混じり合っていた。


市場の臭いが複雑であれば複座であるほど、活気づいているとされていて、実際ヨスミたちが入った市場は絶えず人とすれ違い、笑い声が聞こえてくる。


そんな光景にヨスミは周囲の出店に注意しながらレイラの歩幅に合わせてゆっくりと進んでいく。

案内すると言っていた本人は、キョロキョロと色々な出店を見みているその表情はとても明るかった。


「わぁ~、前来た時よりもっと大きくなっておりますわ!」

「最後にお嬢様と共に訪れたのが半年以上ですからね。」

「そうなのか。それじゃあ案内をしてもらうというよりも、一緒にこの市場を散策しようか。」

「はいですわ!」


そうしてヨスミたちは色んな出店を見て回り、ハクアが肉串焼きに気を取られ、レイラたちがそちらの方へ気が向いている最中、ふとヨスミは黒い櫛に赤い宝玉が付いており、白い彼岸花のような花が特徴の装飾品が飾られている一本のかんざしを見つけ、それを手に取る。


「お?おにーさん、お目が高いね。そのかんざしに付いた宝石は実は魔石でね・・・!実はその魔石の中に1つの魔法を記憶することができる力を持っていてな?今その宝玉に記憶されている魔法は光の超級魔法”聖なる光の加護”でさあ!」

「ふーん・・・、それで聖なる光の加護はどんな効果なんだ?」

「へい、自らに災厄が降りかかる際、それを打ち消す奇跡を起こすっていう魔法でさあ。」

「なかなかすごいのが掛かっているんだね・・・。」

「しかもその白い花は異国の、一部の地域でしか咲かない特殊な花で作られているんでさ。なんでも魔物除けの効果を持つとかなんとか。」


彼岸花を知らないのか。しかも異国の花ってことはここでは咲かない花だからかなり希少なはず。

それにこの白い彼岸花は・・・。


「買った。いくらだ?」

「へい、まいどぉ!」


白い彼岸花のかんざしの代金を払い、それを持ってレイラたちの方へ向かおうとすると、肉串焼きの出店前にいるはずのレイラたちの姿が見えなかった。

はぐれてしまったのかと思い、周囲の上空に転移窓を展開し、居場所を探してみた。





「この辺りで待っていれば大丈夫ですわ。」

『ごめんなさいなのー・・・。』

「ハクアちゃんは何も悪くないわ。よしよし。」


ハクアの願いを受け、肉串焼きを買って落ち着いた場所で食べようと人混みを抜け、少し開けた人通りの少ない広場へと移動していた。

噴水前にあるベンチのような石に腰を落ち着かせ、ヨスミと逸れた原因が自分の聖だと責めるハクアを宥めながら、周囲を見渡してみる。


「ヨスミ様ならあっという間に探してくれますわ。それよりせっかく買ったんですもの。先に頂きましょうか、ね?ハクアちゃん」

『ありがとうなの・・・わかったの!』


ハクアはハルネの膝の上で肉串焼きに付いた肉の塊にかぶりつき、串から外して美味しそうに食していた。


『んー!おいしいのー!』

「それはよかったわ。ほら、ハルネも食べなさいな。」

「お嬢様は食べないのですか?」

「私はヨスミ様と一緒に食べたいから待ちますわ!」

「・・・ならお言葉に甘えて。」


ハルネは自分の肉串焼きを丁寧に食べ、レイラはその様子を嬉しそうに見守っていた。


「ねえねえ、お嬢さんにお姉さん?いやー、可愛いねぇ?」

「俺らさあ、今暇なんだわ。良かったら俺たちと遊ばない?」

「良い所につれていってやるぜぇ?そこで俺たちと良いコトでもしようぜ?そんな食べものよりもはまっちまうかもよ?」


そこへ3人のいかにもな男たちがゲスい笑みを浮かべながらレイラたちへ近づいてきた。

レイラとハルネの全身を舐める様に見つめてくるその視線に、レイラは嫌悪の瞳を向ける。


「失せなさい、あなたたち。今なら見なかったことにしてあげますわ。」

「んだよ、嬢ちゃん。そんな邪険に扱わなくてもいいだろぉ?」

「お嬢様には手を出させません。下がりなさい。」

『グルルゥー・・・悪い人間なのー・・・!』


ハルネは動きやすい様に、ローブを開き、武器に手を置く。


「おいおい、俺らとやり合おうっての?それにあんた・・・良い身体してるじゃねえかよ」

「そんな身体見せつけられちゃあ、誘ってるも同然だよなあ?」

「あなたたち・・・!!」

「おおっと、動くんじゃねえぞ?」


とレイラとハルネは気が付けば体の自由が奪われたかのように動けなくなっているのに気づく。


「キヒヒ、そうそう、大人しく俺たちと一緒に来ればいいんだ。」

「な、ぜ・・・!?」

『うご、かないの・・・』

「こ、れは・・・!」

「いいねえ、やわらけぇ!」

「さわ、らないで・・・!」

「おじょう、さま・・・!どう、して・・うごけ、ないの・・!!」

「さあてなあ?そんじゃ、行こう・・・」

「お前たち、何をしている。」


するとそこに鮮やかな黄金色の長髪をなびかせ、白銀色の鎧に身を包む、明らかに高貴な見た目の凛々しい女性騎士が姿を現した。


「んだてめぇ?おめえも俺たちの仲間になりたいってか?」

「鎧で隠れてはいるがてめえもいいもんもってんじゃねぇか!」

「数が増えれば楽しめる回数も増えるってもんよ!」

「救えないクズ共だな、見るに堪えん・・・ん、これは。」


と金髪の女性騎士も突然動けなくなったことに気が付いた。


「ぎゃーっはっはっ!これでてめぇも俺たちの言いなりだ。」

「・・・この程度か。」


と突然金髪の女性騎士にいつの間にか貼られていたであろう薄い魔力膜が割れ、はじけ飛んだ。


「なっ!?うそだろ・・・、なんで俺の<人形縛り>が効かねえ・・・?!」

「残念だったな。その程度の魔法が私に効くと思っていたか?」

「ちっ、めんどくせえな・・・おいおめえら!」


と3人の他に物陰から6人の男たちが姿を現した。

それぞれ斧や剣を持って、誰もが醜い笑みを浮かべたまま。


「人通りの少ない広場とはいえ、こんなに大胆な・・・。良いだろう、この私、ヴィクトリア・エヴァージェンスが相手しよう。ただで死ぬと思うな・・・」


そう言いながら、背中に背負っていた大剣を手に取り、構える。


「てめぇら!やっちま・・・!?」


と声を掛け、男たちが一斉に飛び掛かろうとした時だった。

ヴィクトリアと名乗った女性騎士の前で不可解な事が起こる。


瞬きの一瞬、その一瞬で全ての男たちの手に握られていた武器が無くなっているかと思えば足元に突き刺さっており、男たちの二の腕と太ももに地面から伸びた長い楔のような何かが突き刺さっていて動けなくなっていた。


それと同時に彼女たちを庇う様に一人の黒いローブを身に纏い、赤い瞳が光る男が目の前に姿を現した。


「遅れてごめんね、レイラ。ハルネとハクアたんも怖い思いをさせてしまったね。」


その瞳には信じられないほどの憎悪が込められており、そして彼から発せられた重い言葉にヴィクトリアの全身を強烈な悪寒が走った。


「今からこいつら全員殺すから待っててね。」


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あーあ。やっちゃったね。
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