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そうだな。その仮説が合っているといいな。


「事情は大体わかった。わかったが・・・、そうだな。その仮説が合っているといいな。」

「・・・?どういうことですの?」


ヨスミに向けられた視線は、いつもとは違って哀れみのような悲しみの感情が感じられる。


なぜそんな泣きそうな瞳でわたくしのことを見つめてくるのかしら・・・。。

それにわたくしの仮説が()()()()()()()()()だなんて、一体どういうことですの・・・?


「あなた様・・・?」

「大丈夫だよ。とりあえず、水堕蛇(ヒュドラ)をどうするか。少しばかり様子を見させてもらいたい。」

「・・・わかりましたですの。」

「ヨスミ・・・。」


あなた様は一体何を危惧しておいでですの・・・?


レイラの胸の片隅に小さな不安を覚えたまま、ヨスミたちは教会の外に出ると教会のすぐそこにアリスたちがいた。


「2人とも、外の様子はどうだった?」

「なにも、なかっ・・た・・・。」

『そうだな。気になるようなものは感じ取れなかったな・・・。』

「そうか・・・。ちなみに違和感とかはなかったか?」

『・・・ん?違和感か、そうだな・・・。あっちの方でそのようなモノを感じ取ったかと思えば、すぐに消えたため、気のせいだろうというようなことはあったぞ。』

「(あっちの方だな?)わかった。それじゃあ湖へと向かって実際の様子を見てみようか。」


そういうとまたレイラに聖域の展開を頼み、先ほどと同じ陣形を保ったまま湖の方へと向かう。





数十分後、多少なりと整備された獣道を抜け進んでいった先は、巨大な湖が広がる土地だった。


確かにここ周辺の霧の濃さは中々にひどい。

少し吸い込んだだけでも喉が、肺が悲鳴を上げていることがわかる。


「これほどですの・・・?」

「レイラ、絶対にそのマスクを取ったらだめだよ?」

「でもあなた様は・・・」

「大丈夫、転移窓の応用で、口元に転移窓を別の場所を吸って、そこの空気を取り込んでいるようにしているから。」

「器用な事をするのね、ヨスミ。」

「転移窓をやってる際にふと思いついてね。前々から練習はしてたんだ。」

「でもあまり使いすぎて倒れるようなことがあったらだめですわよ?」

「ああ、その時はすぐにマスクをつけるよ。」


あなた様はとても我慢強いですから・・・きっと辛くなっても無理してしまうのですわ。

わたくし的にはあまりそういったことをしてほしくはないのですけれど・・・。


まあそんなこといってもなかなか取り入れてもらえないのが悲しいですわ。


とそこに湖の真ん中の方で黒い影のようなものが見え、一本の首の長い影が姿を現す。

だが、それにしては若干様子がおかしい。


確か、水堕蛇は4つ首・・・、でも1つ首しかありませんわ。

それに何やらとても苦しそうにしているのは・・・


「・・・レイラの仮説であってほしかった。」ボソッ

「あなた様?今何か・・・」


1つ首のそれはヨスミたちの存在に気付いた様子で、赤い瞳がこちらを向く。

するとそのまま一気にこっちに近づいてきた。


「シャアア・・・・!」

「こっちに気付きましたわ!」

「とりあえず、戦闘形態をとって武器を構えて。」


ヨスミの一言に全員が臨戦態勢を取り、岸から離れてその魔物の上陸を待つ。


陸に上がってきたその魔物は体長が約15mもあり、1つ首の根元を見ると3つの首が斬り落とされた後が残っており、体中は切り傷だからけで、胸元に大きな傷を負っていた。


残っていた首もボロボロで、左目は深く切られ、目を閉じていた。

弱々しい声でこちらに威嚇をするその様子はとても見ていて痛々しい。


やはりすでに他の冒険者パーティーと戦闘し、手負いとなった水堕蛇なのですわ。

これならわたくしたちでもなんとか倒せるかもしれませんわね・・・。


・・・・でも、それはヨスミ様が望まぬ展開なのでしょうね。

ならわたくしは討伐ではない、別の解決を見いだせばなりませんけれど・・・


「どうすればいいのかしら・・・」

「大丈夫、レイラ。ここは僕に任せて。」


レイラに向けられた、優しく微笑むヨスミの瞳。

だがその微笑みにチラつく憎悪にも似た強い憎しみの感情。


ヨスミはゆっくりと水堕蛇の方へと歩いていく。

牙を見せ、必死に威嚇を向ける水堕蛇だったが、次第に落ち着いていき、そしてとうとう苦しそうに呻いた後にズシンと力無く長い首が地面に倒れ込んだ。


「・・・痛かっただろうな。」


倒れている水堕蛇の頭を優しく撫で、とても辛そうな瞳を向けていた。

それがなんだか胸がきゅっとなって、レイラは胸を押さえる。


「あなた様・・・。」

「どう、して・・・。あの水堕蛇がこんなに大人しく・・・」

「・・・さすがヨスミね。」

「おとな、しい・・・」

『これはまた珍妙な・・・』


ハルネは若干驚きの声を上げていた。

フィリオラは若干、どこか納得している様子を見せていた。

アリスとシロルティアは若干驚きつつ、たえず警戒態勢を取っていた。


ヨスミの瞳が冷たいモノに変わり、一度に何十個の転移窓を展開した。


「あ、あなた様!? そんな力を一気に使ったらまた・・・!どこを探しておられるのですか?わたくしめに教えてくださいまし!」


レイラに詰め寄られ、ヨスミはふと我に返り、頭痛に襲われたかのように頭を抑える。


「まったくもう!怒りに我を忘れるなんて・・・、ほら、深呼吸してくださいませ!」

「すぅー・・・はぁー・・・」

「ヨスミ、何かわかったことがあるなら教えて。」

「・・・湖の底のどこかに異質な物が置かれていると、思う。そして、あっちの森の茂みのどこかに同じような異質な物が、あると、思う・・・。ただ、そっちは多分誰かが見張ってると思うから、気を付けて。」

「わかりましたわ。ハルネ、アリス様とシロルティア様を連れてあっちの茂みを散策してくださいませ。フィー様は湖をお願いできますか?」

「ええ、任せて。」

「ですがお嬢様の護衛は・・・」

「わたくしなら大丈夫ですわ。ですからお願いしますわ。」

「・・・わかりました。」

「いく、の・・、ママ・・・。」

『気を付けろ、何かおかしいぞ・・・。』


ヨスミとレイラを残し、他の仲間たちはそれぞれ支持された方へと散っていった。


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