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僕の野宿に対する概念が壊れるんだけど・・・。


「レイラ、おかえり。少し遅かったのは、連れてきたその子たちが原因?」

「そうなのですわ。」


連れてきた子供たちはやせ細り、どこか具合が悪そうに顔色も青白い。


「どうか、僕たちの村を・・・助けて、ください・・・」

「私たちを、お母さんを助けて・・・」


その目は絶望に染まっており、小刻みに体が震えているのを見ると立っていることも結構限界と見える。

様子がおかしいと感じたのか、ヨスミはフィリオラに目配りを送り、フィリオラは子供たちへ駆け寄るとそのまま近くの椅子に座らせ、治癒魔法を掛け始めた。


「レイラ、とりあえず詳しい状況を説明してくれないかな?」

「わかったわ。・・・ごめんね、あなた様。体調が未だに優れないのに・・・。」

「大丈夫だ、心配してくれてありがとうレイラ。」


さて、レイラが話してくれた事情はこうだ。


ヨスミが示した方向へレイラ、ハルネ。後から合流したアリスとシロルティアと共に向かっていた。

少し進んだ先に規模は小さいが、川が流れているのを見つけ、近くまで来ると、ハルネは手で水を救い、水質を確かめていた。


アリスとシロルティアは周囲を警戒し、レイラは他に何か役に立つものを探していた時、近くの茂みにこちらの様子を窺う気配を察し、近づいてみるとこの子たちがその正体だったようだ。


詳しい事情を聞いても、精神状態が錯乱しているのか、助けてほしいの一点張りで話を真面に聞けない状況だと理解し、どうするべきか悩んでヨスミたちに相談することになったという。


「ふむ・・・。とりあえず、錯乱状態の相手には精神を落ち着かせない限りは真面な対話はできないから、その判断は正しい。よくやった。」

「えへへ・・・。」

「ヨスミ様・・・、川に流れていた水質について調べてみた結果なのですが・・・。」

「あの子たちの状態と何か関係があるのか?」

「可能性はあります・・・。あそこに流れていた川の水は汚染されているようで、毒素が含まれていました・・・。もしかしたらその水をあの子供たちが飲んでしまった可能性が高いです・・・。」


毒素を含んだ川の水、と。


近くの木々の根、土が汚染されているか、毒素を含んだ草木が周辺に生えているか。

それとも川の上流で毒を流している何かがあるか・・・。


ふとハルネの表情が若干曇っていることに気付き、


「ハルネ、ちょっと手を出してもらえるか?」

「は、はい・・・?」


ハルネは恐る恐る手を出すと、ヨスミはその手に軽く触れる。


「・・・あれ?」

「ありがとう、もういいよ。そろそろフィリオラの方を手伝ってやって欲しい」

「え?あ、はい。」


ハルネは突然、体調が軽くなったことに違和感を感じるも何が起きたのか理解できず、疑問の表情を浮かべながらフィリオラの元へと向かっていく。


「あなた様・・・?大丈夫ですの?」

「ああ、大丈夫だよ。」

「・・・あなた様?」

「・・・・だいじょうぶだよ?」

「・・・あなた様?」

「・・・・・。」

「・・・あまり無理をしないでっていったのに。ハルネが受けた毒ですか?」


なぜばれてるんだ。

これでもポーカーフェイスは得意なんだがな・・・。


だが実際にこれはきついな。


「そのようですわね。後で解毒ポーションを持ってきますわ。それまでどうか辛抱してくださいまし。」

「・・・助かるよ。」

「あなた様・・・ほら、横になってくださいまし。」


レイラの支えで再度また横になり、一息つく。


症状としては嘔吐、頭痛、腹痛に若干の熱っぽさ。風邪に近いものを感じるが・・・。

とりあえず、レイラが解毒ポーションを持ってくるまでは大人しくしておこうか。





「・・・あなた様、あなた様?起きてくださいまし」

「レイ、ラ・・・?」


レイラに支えられ、体を起こすと一瓶の紫色の液体が入ったポーションを手渡された。


「これが解毒ポーションですわ。ささ、ゆっくり飲んでくださいな。」

「ああ、助かるよ。」


瓶の蓋を開け、漂う薬草独特の臭いが鼻をつく。

瓶の縁に口を付け、ゆっくりとその液体を自らの身体に流し込んでいく。


飲んだ途端に体が一瞬にして軽くなった。


ほー、これがポーションの効果か。

即効性とはまた素晴らしい。


「おお、すごく楽になった。レイラ、本当に助かったよ。」

「よかったです・・・。あなた様、どうかこれ以上は無理しないでくださいね」

「わかった、善処するよ。」

「あの子たちの話は食事を終えてから、聞ける状態ならば聞いてみよう。」


気が付けば陽も落ちかかっているのか、空はオレンジ色に染まっていた。

すでにあのフィリオラは子供たちを落ち着かせ、ハルネは食事の準備に取り掛かっていた。


アリスとシロルティアは周囲を散策しながら辺りを警戒し、レイラはヨスミの傍を離れず、看病を続けていた。


「皆様、お食事の用意ができました。」

「・・・なあ、ハルネ。一つ聞きたい。」

「はい、なんでございましょう?」

「これらの食器等はわかる。だけどね? この長い机と椅子は一体どこから取り出したんだよ・・・!?」


そう、野宿には明らかにその場にそぐわない立派なテーブルクロスが敷かれた長机と人数分の椅子。

そして机を照らすロウソクの装飾品。


ここが野宿っていうことを覗けば、豪邸にある食堂の一室がそこにあるような感覚だった。


「どこの野宿でこんな豪邸並みの食卓が用意できるんだよ・・・。」

「これらは全てマジックバッグの中に入れてきてあります。」





「・・・あれ、食堂の家具一式はどこに?」

「ああ、気にしなくていいわ。ハルネの仕業だから。」


食堂の扉を開け、がらんとなった部屋を見て使用人たちが騒ぎ始めた。





・・・これ、絶対屋敷の家具そのまんま持ってきただろこれ。


「お嬢様を地べたに座らせて食事を取らせるなんてことはできません」

「・・・レイラ、確か君たちはBランク冒険者でパーティーを組んでいるんだったよね?野宿をするときはいつもこうなの?」

「・・・ええ。屋敷の家具を一式あのマジックバッグに用いれていつもこうなのよ・・・。」

「ねえ、まさかベッドも持ってきているわけじゃあ・・・」





「うそでしょ・・・!? お嬢様のベッドが、また無くなっているわぁああああ!?」

「お嬢様が冒険に出られるたび、いつもこうでしょう?そろそろ慣れたら・・・?」


叫ぶように驚く使用人を横目に呆れる様に作業を続けていた。





「・・・・。」

「僕の野宿に対する概念が壊れるんだけど・・・。」

「お嬢様を地べたに寝かせるわけにはいきませんので。」

「さすがレイラ公女様ってところかしらね。」


もう何も気にしないでおこう。


目の前に並べられた料理をただ無心に頂くことにした。



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