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そんなに僕はレイラや皆に対して過保護なんだろうか・・・?


「焔の輝き、烈火の炎神の化身であられる我らが王よ!このドヴァが<ゴルディオン港町>より馳せ参じました!」

『・・・うむ、入るがよい。』


どこからか響き渡る重々しい声、そして重厚な鉄扉が轟音と共に開かれた。

中からは煌びやかな光が差し込み、思わず手をかざして光を遮る。


目が慣れてきたころ、その強烈な光の正体は天井で激しく燃え盛る超巨大な魔石だった。

ただし熱気は一切感じず、その熱気は天井に空いてある穴に流れて行っているようだ。


「【炎神の心臓】を見るのは初めてか?」


その圧倒的な存在感に唖然としていると、ヨスミたちの元へゆっくりと歩いてやってきたのはいかにも王と言わんばかりの威厳と6つの豪華な装飾で結び目があるドワーフが1人やってきた。


「陛下!ご無事で御座いましたか・・・!」

「うむ。ワシは大事ない。じゃが妻と娘が酷く怯えてのう、部屋に閉じこもったまま出てこなくなってしもうたわい・・・。まあワシも、奴らに対抗するための武器を何日も徹夜で槌を振り続けたせいか、腰が痛くてかなわん。全く、王としての責務をこなしているせいか、体が鈍って鈍って仕方がないわい・・・」

「何をおっしゃいますか、陛下!まだまだ現役ではないですか!陛下の製造してくれた武器のおかげで兵士らの被害も少ないと聞きますぞ・・・!」

「まだまだあんなもんじゃないわい!少し前であれば一晩あればあの武器程度、100本は朝飯前じゃぞ!」


・・・確かに最初見た時は王の威厳を感じられたんだが、今はただの鍛冶屋のオッサンにしか見えねえ。


まあこのドワーフという種族は自らを率いる王を、己の実力だけじゃなく鍛冶の技術力まで条件に加えているからなー、仕方ないっちゃ仕方ないわけだが。


それにしても、このちっこい王がこの国の王様なんだよな・・・。

その実力は全ドワーフの中で頂点に立ち、尚且つこの王が作り出す武器はどのドワーフたちよりも一級品、いやそれ以上ってことだよな。


「<機械帝国ドヴェルムンド>を照らす烈火の炎、デュガスノフ・アイアン・アクスフェル王にご挨拶を申し上げます。」


レイラが前に出てきて、華麗なカーテシ―を決めながら頭と腰を下げる。


「うむ。令嬢はヴァレンタイン公国の姫殿じゃな。」

「わたくしのことをご存知・・・なんですの?」

「まあのう。この国で王となってからは外にも出れず退屈でのう。外の世界には興味があるんじゃよ。故にこういったものを作り出してワシの目となって外の世界を見て回っておるんじゃ。」


そういって懐から精巧に作られた鳥のような置物を取り出すと、突如として動き始め、翼を広げると周囲を飛び回り始める。


「あれは、一体・・・?」

「ワシが作った『鳥の眼(スズメ)』じゃよ。ワシの魔力と繋がっておってのう、あそこのテーブルにある魔道具を用いて自由自在に飛び回らせることができるんじゃ。そしてなんといってもこの『鳥の眼』の瞳となっておるこれは特殊な魔石がはめ込まれておる。この『鳥の眼』が見た景色をそのまま記録し、ワシの魔力を流すことでその映像を見ることができるんじゃよ。」

「まさかそんなものがあるだなんて・・・。」

「おかげでお主らの旅は少し前からじっくり見させてもらっておったわい。故にこうしてお主らと直に会えるこの日を楽しみにしておった。」


そういって現王はヨスミの前にやってくると自らの手を差し出す。

ヨスミはとりあえず現王の手を取って握り返し、握手を交わした。


「ぬははは!映像で見ていてはわからんかったが、お主・・・その内にとんでもなく悍ましい者らを飼っておるのう!」

「・・・。」


そしてその現王はただ握手を交わしただけで、ヨスミを見透かすようにそう笑いながら言い放つ。

言われたヨスミはただ笑顔を崩さず、何も返事を返さなかった。


そのヨスミの様子に他の仲間たちはどこか冷や汗を流した。


「なぜ、そう感じられたのですか?」

「なぜってそりゃあワシが王じゃからな!なんて理由じゃお主は納得はせまい?」

「そうですね。」

「ここで立ち話もなんじゃし、あっちに座って少し話さぬかのう?」

「・・・ええ、わかりました。」


ヨスミの口調が変わっていることに気付いたネレアンはガタガタと怯えたような様子を見せる。


(・・・イリアちゃんが、怖がっている?ということは、ヨスミ様は・・・怒っているということですの?)


そんなネレアンの様子を訝し気に見つめていたレイラはふとヨスミの方へ視線を落とす。

確かにその表情は笑顔を保ったままではあるが、微かに開かれた眼の隙間から覗く瞳を覗いた瞬間、背筋がぞわっとする感覚に襲われる。


それはレイラだけじゃなく、フィリオラとハクアも同様のようだった。


その後、ヨスミたちは現王に案内され、応接間のような場所へと通されるとそこに座り、後から入ってきた現王がとても豪華なソファへと座り、何か考え込むような仕草を見せながら語り始めた。


「お主が納得できる理由を上げるとするならば・・・、そうじゃな。ワシがこの国の王となってその洗礼の儀にて王としての使命を知ったとき、ワシの内に新たな力が生まれたんじゃ。主ら・・・【眷属】という奴らと戦っておるな?」


現王から告げられた【眷属】という言葉に一瞬、眉が微かに動く。


「ふははは!そう警戒するでない!言うて変な話ではないじゃろう?なんせかつてワシらの先祖が封じ込めた【炎の化身】はいう間でもなく【眷属】じゃしのう。」

「・・・やはりそうだったか。」

「うむ。そしてその正体を教えてくれたのは他でもない、赤皇龍ファティロメア様じゃった。」


その瞬間、ヨスミがこれまでにないほどの反応を見せ、現王は思わず笑ってしまった。


「ふははは!赤皇龍ファティロメア様の名を挙げた時の方が一番反応するとはのう!ちなみにあの魔石をくれたのも赤皇龍ファティロメア様だという話じゃ。」

「あれが・・・」

「通りで懐かしいマナを感じるはずね。それにしてもあれほどのお宝を赤お兄様が渡すなんて・・・」

「なあに、取引をしたんじゃよ。この国から火が消えればワシらは何も作れぬただの小人じゃ。じゃがあの【炎神の心臓】が炎を灯す限り、ワシらは己の敵を屠る武器を作れる、一つしかない命を守る鎧を作れる、愛する者を魅了するアクセサリーを作れるんじゃ。そして先祖代々、この国を治めてきた歴代の王はのう、年に1度は赤皇龍ファティロメア様のためにたった一つの贈り物を作り上げるんじゃ。それがワシらドワーフらと赤皇龍ファティロメア様と交わした契約よ。」

「あー、なるほどね。それなら納得だわ。」

「まあ最も、美しい娘を差し出せなんて条件であるならばワシらには無理じゃからのう!ふははは!」

「赤お兄様は生物としての美しさよりも黄金や美しい造形物の方が好きみたいだったからね。」


フィリオラの納得している様子を見るからに、ヘリスティアはドラゴン特有の宝物に溺れているようだな。


美しいものを愛するのがドラゴンのよくある特性の1つだ。

その性質を組み込んだのが僕のヘリスティア。


これまで童話や物語に登場してきた宝物庫の番人としてのドラゴンをモチーフにした子だ。

有名なファンタジー映画ではまさに黄金の山に埋もれた赤き竜と小人たちの奮闘を描いたストーリーなんかは本当に傑作だったな・・・。


「ファティロメア様から【眷属】について色々と教えられ、ワシが王となってその使命を受け継いだ時、その封印の効果が薄くなっていると分かり、近いうちに再び復活してしまうことがわかった。故にワシはより多くの【眷属】に関する情報を集めておったんじゃ。それにより、獣帝国タイレンペラーのとある港町で起きた事件に【眷属】が関わっていることがわかった。じゃが、調査しようにも変な結界が張られておるし、魂を失った獣人らが狂ったように襲い掛かっているしで近寄れんかった。じゃがそんなときにお主らが現れ、それと同時に魂を失いし狂人らの姿が一人残らず消え失せたんじゃ。ワシはその機会を逃さず、無理やり結界内へと『鳥の眼(この子)』をねじ込ませ、調査を開始。そして巨大な獣の体内に潜む【眷属】らと戦うレイラ嬢たちを見つけたんじゃ。」

「あの時、あの場にいたんですの・・・??でも鳥の姿なんてあの時はどこにも・・・」


レイラの疑問に答えるかのように『鳥の眼』をテーブルの上に置くと、まるで本物の鳥のような動作を取り始める。


その時、突如として周りの景色に同化するようにその姿が透明になった。


「き、消えた・・・!?」

「いや、目に見えなくなっただけっぽい。オイルのような臭いは変わらずそこから感じるよ。」

「なるほど、<透明化>って奴か。」

「うむ!周りの景色に同化して姿を一時的に消すことができるんじゃ!わしはこれに<ステルス>なんて名前で呼んでおる。その構造は簡単じゃ。<光属性>の魔石を組み込み、魔力回路に<光属性>の魔力を行き渡らせた後、<光魔法>の初級で習う魔法の1つ<反射>を応用してのう。自身に降り注ぐ光を反射させるのではなく、反転させてむしろ透過させることで形の輪郭をぼやかし、また光を透過しつつ周囲の景色をその身で反射させることでその体に周囲の景色を映しだすことでここまで透明化させることに成功したわけじゃ!どうじゃ、すごいじゃろう!」

「少し前にわたくしたちを襲った襲撃者たちもこのように周囲と同化して視認しずらかったですけどこれは本当に何も見えませんですわ・・・!」


・・・なるほど、これは驚いた。


ドワーフだからといってもその技術力は凄まじい進歩を感じられる。

この中世な時代で、ステルスなんて機能を持つ装備が作られるとは。


事実、僕の元居た世界ではステルス技術が完成されたのは僕が30代の頃だった。

その時には世界各地で行われていた戦争で己の眼で見るのは何かしらの機具を通してのものだったからだ。


レーダー機、暗視ゴーグルや熱音探知機など、己の目視で敵の姿を直接見るなんてことはほとんどなかった。


その理由として己の姿を透明にする必要があったのは” 人間の眼 "ではなく、” 機械の眼 ”だったからだ。

それゆえに人々はありとあらゆる機械から通してみる己の姿を消すための技術が最優先で開発されたのだ。


そして機械の眼が誰も映さなくなった頃、人々はようやく己の眼で相手を見るようになったのだ。


それなのに、この時代ですでにこれほどのステルス技術が生まれるとは・・・。


「ああ、驚いたよ。ここまでの透過率を持つ技術力を見るのは久々だ。」

「なぬ・・・!?久々じゃと・・・、ならばこれよりももっと透明になれる技術は存在するのか?!」


驚きを隠せない現王を横目に、テーブルの上に乗った『鳥の眼』を手に取り、手の平の上に乗せる。


「微かに浮き出た輪郭、よく見ればわかるほどの周囲の景色とのズレからしてもここまでのステルス技術はすごいと思う。でも、僕の知る限りだとありとあらゆる眼にその姿は決して捉えることは敵わないほどにね。あ、申し訳ないけどこれに関しての情報は持ち合わせていないから追及しても申し訳ないが答えられないよ」


監視カメラにも、熱源反応にも映らず、サーマルモニターでもレーザーでさえ透過させてしまっていた。


だが当時の僕の体に流れていた未知のエネルギー、その感応にはばっちり見えていたわけだけど。


「なんじゃ・・・。是が非でも吐かせようかと思ったんじゃが、残念じゃな。とりあえず、このステルスのおかげで他の魔物たちからは襲われることなく、レイラ嬢たちの戦いをじっくりと観察させてもらったんじゃ。なんなら見てみるかの?」

「ああ、見てみたい。」

「だめ!パ・・・ヨスミには絶対に見せないで!」

「そ、そうですわ!絶対にわたくしの旦那様には見せてはいけませんですの!」


と真っ先に即答したのはヨスミだった。

だがそれを否定するかのようにフィリオラとレイラが全力でそれを否定する。


「なぜだ、どうして2人は止めるんだ・・・?」

「ヨスミ、あなたお母様が転んでけがを負った際にその地面をえぐり取って<転移>で見知らぬところへ飛ばしたことがあったでしょうが!もしあんなのを見たら【眷属】全員根絶やしにする勢いで無理するに決まってるじゃないの!」

「わたくしを大事に思ってくださるそのお気持ちは大変うれしいですわ!でも、それであなたが無理をして前みたく、死んだように眠りに付いてしまうなんてことが起きればわたくし・・・わたくし・・・!」

「だーじにおもうの、だめなの?」

「いーい?ディアっち。人はそれを『過保護』っていうのよ?」

「かほごー?かほご、だめ?」

「過保護してパパが倒れたらディアっちはどう思う?」

「・・・っ!だーめぇ!ぱぁぱ、だめぇー!」


言葉巧みにディアを味方につけたレイラたちにより、僕はその映像を見ることは叶わなかった・・・――――――。



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