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僕はまだアーマルの背に揺れながら移動したかった・・・っ!


「<幻影舞踏(ファントムダンス)>!」


穴に飛び込んでいったリオンハルトは演習場で見せた分身を見せ、その数はあの時に見せた時8体ではなく、12体という前よりも多くの分身を出現させ、這い上がってくる魔物たちへ殴りかかっていく。


「<空蹴(エアステップ)>!」


何もない空間を蹴ると落ちる軌道を変更し、まるで空を歩くように宙を移動しながら次々と己の拳を魔物たちへ叩き込んでいく。


「<幻影同調(シャドウボクシング)>!そして<拳波連衝撃(ストームフィスト)>!!」


一定間隔で空中を蹴り続けることでその場にホバリングしながら、分身体全員がリオンハルトと全く同じ動きを取りつつ、下層に向けて連続正拳突きを繰り出した。


その放たれた拳からは衝撃波が拳となって飛んでいき、本体含め13体から繰り出されるそれはまるで雨のように魔物たちへと降り注ぐ。


魔物たちへ降り注ぐ拳の衝撃波は、体のどこかに着弾すると爆弾のように破裂し、当たった体の周囲の肉をえぐり取りながら強烈な衝撃を与えていた。


・・・あんなのを僕に向けて飛ばしていたのか。

もし一つでも着弾していたら、体のどこかが吹き飛ばされていたぞ・・・。


下手したらそのまま死んでいたかもしれん。

全く、リオンハルト公子は手加減という言葉を知らなかったのだろうか。


「はははっ!まだまだだ!!」


絶え間なく降り注ぐリオンハルトの<拳波連衝撃>が次々と魔物たちの頭を、腕を、背中を、尻尾を吹き飛ばしていき、壁に張り付いている奴らを根こそぎ下層へと落としていく。


すると翼を生やした何かが無数に下層から飛び上がってきて来るのが見えた。


「リオンハルト公子!下から飛行型の奴がやってくるぞ!」

「なに!?この声はヨスミ殿か!こんなすぐ近くで声が聞こえるとは!一体どういった原理なんだ!」

「質問はいい!どうにも奴らの動きは他の奴らよりも機敏だ。」

「はははっ!機敏で飛行型だと!そんなことは俺にとって何の問題にもならん!」


そういってリオンハルト自身も飛び上がってくる飛行型の魔物を目視したようで、分身体は<空蹴>によって空を蹴り、一気に奴らとの距離を縮める。


そして飛行してくる何かを思いっきり殴りつけた瞬間、いやその直前と言った方がいいだろうか。

突如として体が赤く光りながら膨れ始め、その直後に分身体の拳が当たると同時に轟音と共に強烈な爆発が発生した。


その爆発によって分身体はものの見事に吹き飛ばされ、そのまま消失した。


「はははっ!なるほど!自爆持ちか!ならば近寄らなければいいだけの話だ!」


リオンハルトは直接殴ることはせず、先ほどと同じようにその場で空中を蹴りながらホバリングしつつ<拳波連衝撃>を分身体と共に放つ。


放たれた拳の衝撃波は飛行型の魔物たちに容赦なく降り注ぎ、次々と被弾しては強烈ば自爆をしていく。


その自爆は人一人ならば簡単にミンチに出来るほどの威力をもたらす為、リオンハルトのおかげでこちらまで飛び上がってくることはなく、なんとか抑え込むことに成功している。


「俺たちも加勢するぞ!おめえら!」


ドヴァたちも巨大な異様な形をしたボウガンを取り出すと、自分たちの兵だけでなく3階層の警備隊らを引き連れてくると配置に付き、飛行型へと狙いを定めてボウガンを連射していく。


「ドヴァ、右方向から急速接近する姿が見えた。目視でき次第そいつらを優先的に攻撃してくれ。フィリオラとハクアはその分手薄になった左側の奴らを撃ち落としてくれ。リオンハルト公子、壁から這い上がってくる奴らは他の皆に任せて、中央から飛び上がってくる自爆持ちの魔物を集中的に攻撃してくれ。」


ヨスミは皆に<転移窓>から手に入る情報を元に、仲間たちへ的確に指示を飛ばしていく。


リオンハルトはヨスミからの指示を受け、すぐさま射線に入らない位置を把握すると彼等の邪魔にならぬよう立ち回りを修正し、彼等の攻撃に合わせて<拳波連衝撃>を放っていく。


これらの攻撃が合わさり、4階層から上がってこようとする魔物たちは3層に上がることなく全てが撃ち落とされた。


最後の一体が血肉を弾け飛ばしながら爆発したのを確認し終え、リオンハルトは空を蹴って上がってくるとその豪快な笑い声を響かせながらヨスミ達の元へと戻ってくる。


「はははっ!他愛もない奴らだったな!」

「・・・ふむ。なんだかあっさりと終わったのが引っかかる。それに・・・」

「この状態じゃあよぉ、4階層はひでぇことになってそうだなぁ。」


後からゆっくりと歩きながらレギオンがその場に姿を現した。

穴に近づいてそーっと中を覗き込み、その熱気と舞い散る煤に軽く咳き込む。


「ゲホッゲホッ・・・。ったく、相当派手にやったみてぇだな。だがその割には被害は全然大したことはねえみてぇだが。」

「はははっ!それもヨスミ殿の指揮のおかげだ!あそこまで動きやすい戦いは今までになかったぞ!それに耳元に声が届くなんて芸当は本当に道化のようだな!」

「そりゃあどうも。だがまだ1体確実に倒せていない奴がいる。」

「それって火柱を放つ個体のことでしょ?」


フィリオラまでやってきて会話に加わる。


「奴らを撃ち落としながら警戒はしてたけど、やっぱり壁を登ってきている個体にはそんな奴いなかったわ。」

「・・・つまり、4階層から直接こっちを狙ってきたってことか?そんな奴がいるんじゃ、下に降りるなんて狙って撃ってください!なんていうもんだぞ!?おまけにあの火柱の火力からしてアーマルたちを一撃で絶命させるほどの威力だ。猶更降りるなんて自殺行為に等しいぞ!」


ドヴァがどこか焦りを感じさせながらそう叫ぶ。

急いで4階層に降り、王たちを救出しに行きたいのだろう。


なんせ現王は民たちに慕われている。

そんな大事な王様を失うわけにはいかないんだろうな。


「ドヴァ隊長!ご報告します!」


そこへ別のドワーフ兵が慌てて駆け込んできた。

どうやら下から逃げてきた者たちを介抱しつつ、下の状況についての情報を集めている様だった。


「4階層からの伝令役によると現在、デュガスノフ・アイアン・アクスフェル王の指示によって王宮の周りには対魔物用遮断防壁を起動させ、籠城しているとのことです!ただ魔物たちの攻撃も激しいらしく、長くは持ちそうにないとのことでした。そのため数名の兵士らを集めて決死隊を組み、こうして援軍を呼ぶためにここまで上がってきたとのことです!」

「そいつは今どこに!」


ドヴァが兵士にそう叫ぶが、肩を震わせながら俯き、悔しそうに返事を返す。


「・・・そのように報告をし終えるとそのまま亡くなりました。他の兵士たちは彼を上層へ上がらせるために身代わりになったようで、彼の手には兵士たちから託されたであろうプレートが握られていました!」

「くそっ・・・!!・・・わかった。彼を含め、その決死隊の兵士らの遺体を必ず見つけ出し、家族の元へと届けろ。また彼らの勇姿を現王へ必ず伝えるのだ!」

「はっ!」


ドヴァへ彼が握っていたとされる数枚のペンダントのようなプレートを渡すと、それをじっと見つめる。


「・・・救助に行きたいが、下から狙ってくる奴のせいで迂闊に降りる事なんて出来ぬ。ここで俺らが手間取っている間にも王様たちの身に危険が及んでいるというのに・・・!!」

「なら僕・・・」

「下の奴を何とかすれば降りられるんだろぉ?なら、ここは俺様の出番かなぁ?」


ヨスミが何かを言う前にレギオンが前に進み出た。

そして穴の方へと向かっていくと、手に握っていた何かを穴へと放り捨てた。


小さな肉塊のような何かだったそれはあっという間に見えなくなり、それを見届けたレギオンはこちらの方へと戻ってきた。


「これでもう大丈夫だぜぇ。後は少しだけ待ってれば下にいるヤツらは俺様の子分の餌になってるだろうよぉ。ついでに4階層で蔓延ってる奴らもついでになんとかしてくれるだろーさ。」


どこか得意げにレギオンはそう言い放つ。


「はははっ!ならば先に俺が下に降りよう!もし問題なさそうならば声を掛ける!」

「下から声を掛けるって、何百mなんて深さではありませんですのよ?」

「はははっ!問題ない!俺の声量を信じるがいい!」


そういってリオンハルトは穴へと向けて駆け出すとその勢いで飛び降りていった。

リオンハルトが飛び降りて数分後、穴に響き渡る彼の雄叫びが挙がった。


「どうやら大丈夫そうだぜぇ?そんじゃ、俺様は先に失礼するよ。」


そういってレギオンは穴の方へと歩いていくとそのまま軽く飛び降りていった。


「・・・本当に聞こえてきましたわ。」

「マジであのうっさい人間の声が聞こえてきたんだけど・・・・」

「さすが脳筋ね・・・。明らかに人の肺活量で出せる声量じゃないわよ絶対・・・。」

「脳筋はその全てを精神論でねじ伏せるからな・・・。まあ、彼の声が聞こえたってことは下はもう大丈夫なんだろう。」

「となりゃあさっそくアーマルに乗って穴を降りるぞ!」


ドヴァたちは急いでアーマルへと乗り込んでいく。

だがヨスミ達はアーマルに乗り込もうとしない様子に気が付いた。


「おい、ヨスミ!早くアーマルに乗れ!急いで下に降りなくては・・・」

「・・・あー、それなら大丈夫だ。」

「何言ってんだ!さっき飛び降りた2人はともかく、俺たちはアーマルに乗らなきゃ降りられないだろうが!」

「いや、それがそうでもないんだ。」

「何を言って――――る・・・あれ?」


ふと気が付けば、ドヴァたちが見ていた景色が一瞬にして変わり、周囲は先ほどまでいた町並みの風景から一気に煤と熱気、そして炎が燃え盛る崩壊した町中へと移動していた。


そしてすぐ近くには建物を飲み込むように巨大な肉塊の花のような遺物があり、その中心部はまるで無数の卵のような何かがあり、そのいくつかは破裂して中にいた何かはすでにこの場を後にしたようだ。


またこの肉花の近くには煤けた魔物の食い荒らされた死骸が無数に転がっていることに気が付いた。


恐らくこいつらが下から火柱を放射してきた魔物に違いない。

なんせ背中には2つの突起物のようなものがあり、その先端に穴が開いている。


この2本の筒状の突起物から火柱を放っていたのだろう。


「た、確かにここは4階層の王都ベルムフェドだ・・・!だがどうしてここに俺たちが?」

「僕の力だよ。今まではアーマルに乗って移動する楽しみを存分に味わいたくて使っていなかったけど、今はそんな状況じゃないしね。ごめんね、アーマルたち。君たちの仕事を奪う形になってしまって・・・」


ヨスミが申し訳なさそうにアーマルたちへ謝罪しながら優しく体を撫でる。

アーマル達も驚いた様子を見せてはいたが、「大丈夫だよ」と言ってくれているのかヨスミの体に顔を擦り付けた。


驚きを隠せないドヴァたちだったが、無理やり状況を受け入れるとアーマルに乗ったままボウガンを構える。


「ま、まあ詳しい話はあとだ!ヨスミのおかげで一瞬にして下に降りられたんだ!ヨスミ、済まないが俺たちは急いで陛下たちを助けに向かうぞ!」


ドヴァはアーマルの手綱を握りしめ、兵士らを連れてその場を後にした。


「とりあえず僕たちもその王様に会いに行こうか。」

「ええ、そうですわね。ルーシィ、ディアを守ってくれてありがとうですわ。ほーら、ディア。もう大丈夫ですわよ~・・・。」

「*****!」

「周囲の警戒は私にお任せを。」

「うちも何かあればすぐに動けるように注意しておくわ。」


ハルネは武器を抜き、【八傀螺旋ノ鎖蛇】を展開させると周囲を警戒し始める。

ミミアンはアーマルに乗らず、すぐに動けるような位置取りで辺りを見渡す。


フィリオラたちもアーマルに乗り込むと、手綱を引いた。


「それじゃあ出発しましょう。」

『しゅっぱーつ!なのー!』

『おー・・・!』


どうやらリオンハルトとレギオンはすでにこの場にはいないようだ。

とりあえず、気を付けながらドヴァの後を追いかけるとするか・・・―――――。



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