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レイラ公女とのお手合わせ


「これで以上になります。どうか命を大事に、冒険者ライフをお過ごしください。」


渡された白結晶のネックレスを首からぶら下げ、手に取って見てみる。


これで僕も冒険者か。

あのステータスウィンドウのようなものが出てきたからてっきり、ステータスみたいなものも表示されるかと思ってはいたが、別にそんなことはなかったな。


高ランク冒険者は貴族絡みのいざこざもあるみたいだし、出来れば冒険者ランクは上げないで置いた方がいいかもな。そもそも僕はステータスバーがあるかもしれないと冒険者になっただけだし、そこまで冒険者へのあこがれとかはない。


依頼書の中に竜種(ドラゴンタイプ)の討伐依頼があったりでもしたら・・・、いや、あるんだろうな。


僕の最後の目標は、ドラゴンが安心して暮らせるドラゴンのドラゴンによるドラゴンのための楽園作りだからな。


・・・・いや、逆だ。

依頼書にドラゴン討伐依頼があれば、そこに赴いて討伐するんじゃなくて楽園に誘えばいいんじゃないか?

貴族に絡まれたら逃げるか、最悪貴族全員殺してしまえばいいだろうし。


「・・・やることは決まったな。」

「・・・ヨスミ様!登録は無事に済みましたの?」

「ああ、全ての手続きは済ませてきたよ。さて、次はどこに行こうか。」

「せっかくですし、ヨスミ様?わたくしとお手合わせお願いできませんか?」

「レイラと?君も冒険者登録してあるのか?」

「ええ。我がヴァレンタイン公爵家は成人を迎えた者から冒険者登録をし、己の鍛錬、修行という名目で冒険者のランクアップを目指しているのですわ。」


驚いたな。てっきり公爵家の方々は鉱山やらサロンやらそういった方面ばかりに神経注いでいると思っていたが、ヴァレンタイン公爵家は戦闘系・・・、軍事公爵家の方だったか。


まあ、あのグスタフ公爵閣下は明らかに尋常じゃない雰囲気を漂わせていたからな・・・。


「そうなのか。ちなみにレイラのランクはどれぐらいなのだ?」

「わたくしはBランクなのですわ。」


Bランクっていうと、フォードも確かBランクだって話だったな。

この歳でBランクとは、かなりの逸材ってことか・・・。


「・・・どうして僕と手合わせを?僕は御覧の通り、非力だよ。力もないし、剣だって握ったこともないんだよ?」

「ですがヨスミ様は昨日の戦いで目まぐるしい活躍をしたとお父様からお聞き致しましたわ。それに我が家訓の中に、”一方のみで他人を評価してはいけない。”とあります。冒険者ランクが低い御方であっても、そのうちに眠る実力は決して同じものだと思ってはいけないという教訓ですわ。現にヨスミ様の実力はBランク以上だと思いますわ。」

「そこまで見込んでくれるのか・・・。わかった。それで、手合わせはどういった形式とする?」

「うーん・・・。そうですわね。ならシンプルに相手に一撃を入れた方が勝ちということでどうかしら?」

「能力の使用は?」

「もちろんありでいきますわ。」





ギルドの裏にある訓練所にやってきたヨスミとレイラは互いに木剣を構え、対峙する。

ヨスミは慣れない木剣を不格好に構えているのに対し、レイラの構えは寸分違わぬ隙のない構えでまっすぐに剣先をヨスミへ向ける。


「・・・素人で見ても、レイラの構えは美しいな。」

「へぁあ!?い、いいいい、いきなり何を言うんですの!?」


その言葉で大きく隙が生まれ、動きがブレまくるレイラの姿につい笑ってしまった。


「あっはは。すまない、そこまで姿勢が乱れるとは思っていなかった。別にそんな意図はなかったんだけどね。」

「ま、全くもう・・・!ふぅー・・・。」


息を整え、再度木剣を構え直す。

先ほどとは打って変わり、その瞳に宿す冷酷な雰囲気に、以前にも同じような瞳を向けられたことを思い出した。


ああ、あの父にしてこの娘ありってことか。

あの時のグスタフ公爵閣下と目が合った際に感じたこの震え・・・。


「では、行きますわ・・・!」

「ああ、いつでも。」


次の瞬間、レイラは瞬き一回で懐にまで距離を詰めてきていた。

勢いを殺さず、木剣を横振りし、それは完全にヨスミの胴体を捉えていた・・・はずだった。


「なっ・・・」


斬ったと思ったのにそこにはすでにいなくなっており、背後に気配を感じ、体を回転させて気配の成る方へ斬りつけるが、そこにもヨスミの姿はなく、空を切った。


2回連続で空を切ったことで、すぐさま木剣に魔力を纏わせて死角になっていた方へ薙ぎ払うように剣撃を飛ばした。

だがそれさえも手ごたえを感じなかった。


「・・・くっ!」


ふと背後から気配を感じ、振り向きながら剣を構えると丁度そこへヨスミの軽い一撃が入る。

防がれ、大きく弾かれたヨスミの攻撃後の隙を見逃さずに、そこへ一撃入れようと木剣を突こうと繰り出すが、やはりそれも避けられてしまい、ヨスミは連続して後方へ移動して距離を取る。


「<身体強化(フィジカルブースト)>!」


体全体に魔力が巡り、より固く、より強く、そしてより早く、先ほどは打って変わり、ヨスミの転移に迫る速度で距離を詰めると強力な連撃をお見舞いするが、それを全て転移によって避けていく。


連撃を避けきり、次の攻撃を繰り出そうとした時、急にヨスミと距離が離れていた。


「なんで・・・!?」


驚くのも束の間、すぐに距離を詰めようとするが、詰める度に距離が離される。

ヨスミが距離を取っているのではなく、自分自身が元の場所に戻らされていることに気付いたレイラは、手をかざし


「<火炎槍(フレイムランス)>!」


熱を帯び、燃え上がる魔力が槍の形を成し、ヨスミへ向けて一直線に伸びていく。

だが気が付くとヨスミではなく自分自身へ向けて飛んできていた。


「なっ・・・!?」


木剣に魔力を纏わせて、飛んできた火炎槍を叩き落とすと爆発が起き、爆風に仰がれていると煙を突っ切って木剣がレイラに向けて突っ込んできた。

完全に隙を突かれたところだったが、何とか剣を振り上げてそれを防いだ。


剣を振りかぶり、煙を払うと一瞬見えた人影に向けて身体強化し、剣を低く持って一気に距離を詰める。

そして完全に煙が張れ、目の前に居るのがヨスミだとはっきりわかり、魔力を木剣に込めるとそのまま横へ薙ぎ払う。


だがそれを寸での所で距離が届かなかった。


(うそっ、わたくしが木剣の間合いを見誤ったの・・・!?)


次の一手に映ろうとした時、レイナの頭上にこつんと何かが当たり、地面に転がる。

何が起きたのか理解できず、何が落ちたのか地面を見ると、そこには木剣が転がっていた。


ヨスミは優しい笑みを浮かべたまま、硬直しているレイラを見下ろす。


「僕の勝ち、でいいかな?」

「・・・・ええ。私の負けですわ!」


姿勢を正し、木剣を収めるとヨスミの方へ向き直り、満面の笑顔で言い放った。


「いやはや危なかったよ。僕の攻撃は真面に通せないし、レイラの攻撃も防げないから避けることに精いっぱいだったよ。」

「ヨスミ様は本当にお早かったですわ。わたくしのスキルを持ってしても全然追いつけませんでした・・・。でもまさか、飛んできた木剣の落下地点に誘導させるなんて。最後の最後でまさかわたくしが間合いを読み誤るなんて、まだまだ未熟ですわ。」

「そんなことはないさ。僕は剣術の心得が一切ないからこんなことでしか勝ち筋はなかったんだ。まあスキルの扱い次第でレイラももっと強くなると思うぞ。イメージを膨らませて、戦術の幅を広げるといい。」

「はい・・・っ!」


誘導・・・。上空へ飛ばされた木剣をレイラの頭上へ転移させただけなんだけどね。


実際、開幕と同時にレイラの持っている木剣を頭上へ転移させて落とすだけでもよかったと思うけど、たぶん落ちてきたところを防がれただろうし、完全に意識を木剣から失わせるしか勝ち目はなかったんだよな。


本当にレイラは強いな。これからが楽しみだ。



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