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事前確認だけはしっかりしよう。僕との約束だ・・・!


<機械帝国>、一見国土はそこまで広くない変わりになぜ何千年という歴史が続けられてきたのか。

その真実は恐らく・・・


「・・・<機械帝国>なんて名ばかりの、これはまさに<地下帝国>と称した方がいいかもな。」


そう、海底洞窟から<ゴルディオン港町>へと入り、地上ではなくその下、地下に広がる帝国。

そして地上とは違って掘れば掘るほど国土は広がっていく。


まあ海面に当たることもあるだろうし、地層やプレートらの問題もあるだろうがそこをカバーするかのように金属プレートのような巨壁に覆われている。


また地下帝国であるが故に光源の問題もあるが、活火山を有する大陸とのことでそこら彼処にマグマの地脈がまるで蜘蛛の巣のように天井を覆い尽くしている。


空と太陽、雲がない代わりにたっぷりの魔素を含む特殊なマグマが代わりに辺りを照らしている。


だがこれだと夜が来ない。

年がら年中ずっとマグマの地脈が光り輝いているからだ。


またマグマの熱で周囲の熱は平均50~60度以上に達しているという。

だが町中に入るとそんな熱は感じさせないほどまでに過ごしやすい環境だった。


というのも冷気を含む魔石が町の至る所に設置されており、周囲の温度を下げているとのことだ。

また夜の時間帯になると、町全体を覆う結界が光を遮断するような仕組みらしく、住民たちは平穏に眠りに付けているという。


僕たちはアーマルというドラゴンの騎獣に跨り、天井から地表にまで続く巨大な柱を降りていた。

そう、エレベーターとかいう移動手段はないため、町の至る所には各階層に繋がる道として内側が空洞となっている巨大な柱が何本か設置されており、その空洞内をアーマルを用いて移動している。


途中途中に休憩場となる巨大な足場が設置され、そこで一休みできる構図となっている。


階層は全部で6層別れており、<機械帝国ドヴェルムンド>があるのは4層目。

1~3層目は主に居住や商業施設などが存在しており、4層目は王族や元老院が住む層となっている。


5層目は主に防衛施設が主に配置されており、主に兵士らの訓練施設や鍛冶生産施設などが点在しているとのことだ。


そして今6層目は開発段階の最中だとドヴァは話してくれた。

6層目の開発が無事終えた時に<機械帝国ドヴェルムンド>を移し替え、4層目には新たに居住区の増設と食物の生産施設を建設する予定だと。


ただ一つここで問題が起きているらしく、6層目では見たこともない魔物たちが出現するそうで冒険者たちや兵士らはそれらの鎮圧に手こずっているために思うように開発が進まないという。


そして何より、現王が6層目の開発に対して反対の意を示しているらしく、6層開発は難航しているそうだ。


5層目が防衛施設のみ存在する理由は恐らく6層から魔物たちが挙がってくることを考慮しているのだろう。


そして僕たちは今二日目にしてようやく2層目に降り立ったところで、アーマル達を休ませるためにドヴァら兵士たちが利用している巨大な宿屋へとやってきていた。


「驚いたな・・・、地下を掘り進め、居住区を広げているのはわかっていたが息苦しさが感じられない・・・。地表は活火山の噴出する有毒ガスに覆われているという話だったからてっきり地下にもそういったガスの影響があるものとばかり・・・」

「そりゃああれのおかげよ。」


ドヴァはヨスミの疑問を晴らす様にとある方向を指さす。

そこには壁に埋め込まれた何かの装置と思わしき巨大な壁のようなものが見えていた。


「全ての階層が繋がっている主柱『ダーコクバシム』。そして他の主柱よりも何十倍もデカいんだ。俺にはよくわからんが、なんでもマグマの熱を動力に半永久的に動くとされてるみてえで中には何重にも回転するプレートが埋まっているらしい。それで外の空気を取り込んで浄化し、各階層に送り込んでるんだとよ。」

「・・・仕組みを理解していないということはあれだけはドワーフたちが作ったものじゃないってことか?」

「その通りだ。なんでも勇魔大戦が起こる遥かずっと昔に作られた超技術?とかなんとか言ってたな・・・。あれのおかげで俺たちは地下にこうして住むことができる。あれを中心に9階層までは掘り進めるんだと。ほんと、すげぇよな昔の超技術って奴はよぉ・・・。」


そう話すドヴァはどこか子供のようにワクワクした目でその巨壁を見ていた。

巨壁のように見えているあれは埋め込まれた巨大な柱の一部ってことらしく、あの柱を中心にドワーフが住む世界が広がっているらしい。


以前は地下の覇権を握るために<機械帝国ドヴェルムンド>の他にも6か国の様々なドワーフの国が存在していたそうだが魔物たちの襲撃に加え、地震や地殻変動によって地没してしまった国がいくつかあるらしく、今存在しているのが<ドヴェルムンド>の他にも<アスケロン王国>と<マートレス大国>の3つだけが残ったそうだ。


今は3つの国同士が協力し合い、それぞれ『採掘』、『生産』、そして『武力』の3つを担当している。


<ドヴェルムンド>は『武力』に当てはめられるだろう。

<アスケロン>は5階層ほどの深さと『生産』を担い、<マートレス>は4階層の深さと『採掘』を担っている。


『採掘』を担う<マートレス>が4階層と一番深くないのには理由があり、かつて9階層まで存在していたそうだが魔物たちの襲撃と大きな地震によって4階層まで撤退せざるを得ない状況に追い込まれたそうだ。


5階層分の消失は<マートレス大国>にとってかなりの損失で、その兵力と武器や防具の生産技術も撤退した階層に置き去りにされたこともあり、大国なんて名前はすでに過去の栄光と化している。


過去の栄光に縋りついていた<マートレス>の王族たちは4層にまで撤退することになったとしても態度は変わらず、無理難題を振り撒いていたらしいが、少し前に新たな王が即位してまず真っ先に行ったことがこれまで王族たちが縋り付いていた王権の撤廃だった。


それから3国の同盟まで結びつけてしまったほどの政策に、歴代の賢王と称されるようになった。

その後、生き残った3か国はそれぞれの階層を開拓しながら協力関係を築き上げた・・・。


「とまあ、これらがドワーフたちに伝えられてきた歴史だ。まあこれも俺が覚えているかぎりの内容だから足りてねえ部分はあると思うがな。」


宿屋の食事処、テーブルについたヨスミたちは食事を取りながら、ドヴァにこの国のことに関して色々と教えてもらっていた。


「なるほど・・・。ちなみに今は亡き3か国は今どうなっているんだ?」

「今は他の国々に避難民として受け入れられて生活しているよ。今もなお埋もれた国を取り戻そうと、生き残った王族たちが紛争しているらしいがな。まあ詳しいことはわからん。」

「確かにそんな話をしてたわねー・・・。まあうまくいっていないみたいだけど。」

「そういや姐さんは交流があったんだったか?」

「まあねー。まあ、あの子たちは不便だとは思うわよ。」


そう言いながら、フィリオラはホカホカの芋にトロットロになったチーズを掛けると美味しそうに齧りついた。


その後、樽コップに入ったミードを口の中に流し込み、美味しそうな笑みを浮かべていた。


「でも驚きましたわ。わたくしたちにはドワーフの国は<機械帝国ドヴェルムンド>だけだと思っておりましたから・・・。まさか他にも2つの国があっただなんて・・・」

「そりゃあ仕方ねえよ!第1層は全ての国に繋がっているとはいえ、国の外の奴らと代表で交流することになったのが俺たちの国<ドヴェルムンド>だったからなあ。まあその理由も<ゴルディオン港町>と一番近い穴にあったのが俺らの国だったってだけなんだがな!がーっはははは!」

「まあ、単純な理由なんですのね・・・。」

「まっ、俺らもまんざらでもなかったって話だしなあ!」


食事は進み、それぞれひと段落していると建物が大きく揺れる。


「地震・・・?」

「ここ最近増えてるが、火山の活動が活発になっているんだ。もしかしたら近いうちに噴火するかもしれねえな!」

「噴火・・・、それで何かしら影響とかはあるのか?」

「まあ今みたいに地震が頻繁に起きるようになることと、後は暫く外との交流ができなくなるってことだな。死の灰が降り注ぎ、マグマとガスが地表だけじゃなくてその周囲の海にまで漂い始めるからなあ。」


そりゃあ確かに外に出られる状態じゃないね・・・。


「ちなみにどれぐらいの期間続くんだ?」

「まあ短くて半年・・・、長くて数年か。まあ俺らにとっては関係ねえ話だけどな!がーっはははは!」

「うへ~・・・、半年間も地下に閉じ込められるとかマジきつそー・・・」


とてもだるそうに言い放つミミアン。

彼女は出された肉料理にかぶりつきながら話を聞いていた。


彼女を無理やり連れて来てからはずっとこんな調子だ。


以前のような元気もなく、いつも気怠そうな感じでボーっとしている。

その瞳はどこか悲し気だ。


恐らく、故郷に置いてきた両親のことが心配なのだろう。

未だに獣帝国には悪い噂が絶えず飛び交っている。


ゲセドラ王子の脅威は亡くなり、フォートリア公爵家を潰す脅威はなくなった。

だからといってフォートリア公爵家を敵視している勢力がいなくなったわけじゃない。


そして現当主であるジャステス公爵は両腕を失ってしまった。

最高戦力だった父がそんな状態となってしまい、また【百獣の王牙】であるミミアンが離れたことで実質フォートリア公爵家は弱体化したと言える。


「ミミアン、そんな令嬢らしからぬ食べ方をしてはいけませんですわ。」

「べーつにいいじゃん・・・。」

「全く・・・、ほら、大人しくしていなさいですわ。」


レイラはそっとハンカチを取り出すと、口の周りを汚したミミアンを優しく拭う。

ミミアンはどこか恥ずかしそうにしながらも甘んじてレイラの行為を身に受けている。


彼女自身、フォートリア公爵家を心配しながらも新たに見れる外の世界に連れ出してくれたレイラのことは邪険にできないのだろう。


そんな複雑な心境を胸に抱え、家の事を考えると素直に旅を楽しめないことにミミアンはどうすればいいのか決断できないようだった。


「はぁ・・・。」


これで何度目のため息だろう。

レイラはそんなミミアンの様子を眺めては心配そうにしていた。


「まぁま・・・?」

「あ、あら、ディア・・・。どうしたんですの?」

「げんき、ない・・・?」

「ディア・・・。わたくしなら平気ですわ。」


ディアネスをあやしながらも、レイラは心配そうな瞳をミミアンへ向ける。


・・・はあ、これじゃあレイラの心情が下がりっぱなしで体にもよくないな。

仕方ない・・・。


「ミミアン。」


ミミアンの前にやってきて彼女に声を掛ける。

気怠そうにヨスミの方へ視線を向け、返事を返した。


「ん?なーに・・・?」

「家の事が心配か?それとも両親が心配か?」

「りょーほーよ。当たり前でしょ・・・。正義の執行人として名高いうちの家は色んな貴族連中からは敵対視されてるわけ。その筆頭だったのがあの下種猫だったんだけど・・・、あいつがいなくなったからって他の勢力が大人しくしているわけじゃない。むしろ、両腕を失ったパパの状態を知れば、喜々として行動に移すはず。それも陰険なやり方で・・・。だからパパがある程度回復するまではうちが表立ってその敵意を受けるつもりだったのに・・・。」

「そうか・・・。でも、安心してくれ。」

「安心してくれって・・・、何を安心すればいいのさ?」

「君のご両親の無事だよ。もし何が起きても2人は・・・いや、フォートリア公爵家は誰一人危害を加えられたりはしない。」

「・・・なんでそんなことが言えるの!海を渡ってうちらは今ドワーフ王国に来ているのに、ここから何ができるって言うのよ!!」

「例えば、こんなこととか?」


そういって、ミミアンの目の前にユティス公爵の膝枕を堪能するジャステス公爵のあられもない状態の2人が姿を現した。


「よしよしぃ~・・・え?」

「もっと癒してくれぇ・・・はっ!」

「パパ・・・?ママ・・・?」


・・・先に<転移窓>で2人の状態を確認するべきだったな。

明らかに見てはいけない物を見てしまったミミアンの茫然としている姿を見ながら、ヨスミは深く後悔した・・・――――――



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