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僕の口づけに・・・そんな価値があったのか・・・。


あれから数日が経ち、今日はついに<メナストフ港町>から出港する時を迎えた。

というのも、数日前に<メナストフ港町>の惨状をやっと知ったガヴェルド王が町復興のために幾人かの移住民たちと兵士らを派遣するという。


それらの集団が明日の昼頃に到着するとのことだ。

・・・正直、復興といっても町自体はそこまで破壊されているわけではない。


住民全員が一人残らず消え去っているため、今この町に必要なのは大工や兵士らよりもこの町を愛し、この町に住みたいと思える移住民たちではないだろうかと僕は思う。


<メナストフ港町>の他にも<レスウィードの町>の惨状に付いては耳に入っているはずなので、その内そっちの方にも人を送るとのことだ。


まあ王都事態、まだ復興の目途は立っていないのでその二つの町に人を送ること自体苦しい決断ではあっただろうが。


ただ、ここで2人の仲間と別れることになる。


「・・・それじゃあ、リヴィアメリア。エレオノーラをよろしく頼むぞ」

「任せて、ヨスミ様・・・。エレちゃんは私が責任を持って・・・必ず竜王国に連れて帰る・・・!」


そう。

リヴィアメリアとエレオノーラは竜王国に変えるため、ここで別れることとなったのだ。


実際、この旅の目的は奴隷として連れ去られたエレオノーラを竜王国へと返すために始めたものだった。


だが今回、その竜王国を守るために嵐と言う名の結界を国の周りに張っている守護竜ことリヴィアメリア本人がここにいるため、竜王国へ戻って結界の維持に努めるためにその存在が必要なのだ。


そして僕たちはその<嵐の結界>を乗り越えて竜王国へ入るために【機械帝国ドヴェルムンド】へ向かい、ドワーフらの技術が用いられた船を使って竜王国に入る予定だった。


だが今回、その必要がなくなったのでリヴィアメリア本人に安全に連れて帰ってもらうことになった。


「あ、あの・・・よ、ヨスミお父様・・・!!」

「ん?どうした?」


エレオノーラは全力で走っていき、ヨスミへと抱き着いた。

突然の彼女の行動にヨスミは吃驚しつつも、丁寧に語りかける。


「・・・本当にどうしたんだい?何かあったか?」

「その・・・ほ、本当に、ありがとうなのです・・・!私をここまで、連れてきてくれて・・・私を、助けてくれて・・本当に、ありがとうなのです・・・。」


ヨスミの胸元で泣きじゃくるエレオノーラを落ち着かせるように彼女の頭を優しく撫でる。


「いや、逆に僕は謝らなければならない・・・。本当なら君のいる竜王国まで連れていく予定だったが、安全に帰る手段があるならば迷うことなくその手段を選ぶ。何事も安全に、確実に帰れるのであればそれに越したことはないからね。それに・・・君の弟と母君のことも探さなければならない。まあその件については僕に任せてくれ。必ず見つけ出して竜王国に連れていく。約束する・・・。だから君はリヴィアメリアと共に安心して待っていてくれ。」

「・・・はいなのですっ!」


そしてエレオノーラは感極まったようでヨスミの頬に軽い口づけをし、顔を真っ赤にして顔を俯かせる。


そんな彼女の頭を優しく撫でた後、まるで親が子にするまじないのようにエレオノーラの額に口づけをするとそのままリヴィアメリアの元へと送り出した。


彼女は非常に顔を真っ赤にしながらも、とても幸せそうな表情を浮かべながらリヴィアメリアと会話している。


そんな様子を見ていたフィリオラはそっと隣でディアネスをあやすレイラの方を一瞥する。

彼女はそんなやり取りを見て居ながらも気にも留めない様子だった。


そんなフィリオラの様子に気付いたのか、目線はディアネスに向けたまま話し始める。


「可愛いモノじゃないですの。我が子の額にキスをするなんて、わたくしだって・・・ほら、ちゅっ」

「きゃっきゃっ!!」

「そういうもの・・・?そういうものかしら・・・。」


どこか不満そうな表情を浮かべているフィリオラに、レイラは思わず笑みをこぼした。


「うふふ・・・。あなたもあの人にキスされたいんですのね。」

「なっ・・・!?ちょ、ち、違うから・・・!べ、別にそんなんじゃないわよっ!?」

「自分の気持ちに素直になった方が気持ちが楽になりますわよ?」

「だから違うってばぁ!・・・もおっ!」


顔を真っ赤にしながらも、説得力の無い言葉を並べてそっぷを向くフィリオラ。


「・・・ねー、ハルネ。うちらは何を見せられてるんだろうね。」

「ささ、ミミアン様。もうすぐで支度し終わりますから大人しくしていてくださいね~。後、名前に愛称付け忘れてますよ~」

「いやー・・・無理っしょ。さすがに毎日惚気見せられるうちの身にもなってよ・・・ハルネっちはどうなのさ・・・?」

「私ですか?レイラお嬢様の恋路ですもの。とても微笑ましいです。」

「・・・。」


そんな彼女を見ながら準備を進めていくミミアンとハルネ。

そんな顔を真っ赤にするフィリオラを連れてレイラたちがヨスミの元までやってきた。


やってきたレイラたちを温かく迎い入れ、レイラの肩に優しく腕を回して抱き寄せる。


ふと、フィリオラの顔が真っ赤であることに気付いたヨスミはレイラの背中を優しく撫でた後にフィリオラの元へ近寄る。


「フィリオラ、どうしたんだ?顔が赤いぞ・・・?熱でもあるのか?」

「へ?あ、ちょ・・ち、ちが・・・っ!?」


先ほどレイラと話していたこともあって、ヨスミが心配そうに顔を近づけるほど彼女の紅潮がさらに赤みを増していく。


「うふふ、あなた。フィーちゃんはあなたがエレオノーラにしたことが羨ましいんですのよ。」

「ちょ、お母様ぁっ!?」

「・・・ああ、なるほど。」


と、ヨスミはフィリオラの頭を優しく撫でながら、前髪を優しくかき分ける。

艶っぽい彼女の頬はどんどん真っ赤に染まっていく。


「へ?あ、え、え??ま、まっ・・・」


彼女の制止も聞かず、というよりも気付かずにヨスミはフィリオラの額に優しく口付けした。

その瞬間、フィリオラの紅張はピークに達し、まるで火山が噴火したかのようにボンッという音が鳴り響き、彼女の頭からは湯気が立ち上っていた。


「これで・・・フィリオラ?」

「・・・・・・。」

「うふふ、まあまあ・・・。」

「あの子たちには毎日のようにしていたからな・・・。卵だったお前にもしていたが、こうしてきちんとしたのは初めてだよ。僕としても久々に大事な娘たちに愛情を表現できることを嬉しく思う。だからこれから・・・」

「しなくていいっ!こんなん何度もされたら私の心臓が耐え切れないわよっ!!」


フィリオラは声を荒げ、その場から離れた。

そんな姿を優しい瞳で見ていたレイラは思わず笑いをこぼしながら、彼女の後を追う。


『オジナー!私もー私もーなのー!』

「ん?僕でいいのかい?」


そういってハクアの頭にも優しく口付けをした。

ハクアは嬉しそうに宙へ飛び上がり、優雅に空を飛んでいた。


「・・・こんなことで喜んでくれるものか。」

『当たり前・・・!パパのキスを受けられる栄誉は・・・どの何よりも代えがたい幸福・・・!そして何よりも・・・愛を、直接感じられる・・・。最高・・・!』


ヨスミの傍で愉悦に浸るネレアンことバハムトイリア。

彼の周りを泳ぐように飛び回るバハムトイリアはこれからの旅路に付いていくこととなった。


「そういったものか?僕の愛情表現にそこまでの価値が・・・」

「ありますわっ!」

「あるに決まってるでしょ!?」

『ある・・・!』

「あいっ!」

「おおう・・・、そうか。」


レイラとフィリオラ、ネレアンの3人は息を合わせたかのように振り返り、力強くそう叫ぶ。

その圧倒的な圧にヨスミは気圧されてしまった。


「あなた・・・、もう少しご自身の立場という物を自覚なされたほうがよろしいですわ。」

「それには全く同意見よ。パパの寵愛を受けられることは、私含め全てのドラゴンが欲するものなの。それにあのキス一つで【ドラゴンマナ】は更なる覚醒を遂げ、更なる進化を迎えることだってあるの。・・・言ってる傍から、ほらっ」


そういって、とある方向を指さす。


そこには光に包まれるエレオノーラの姿があり、頭から生えていた角は2本から4本へ倍に増え、尾の長さは足元まで伸びていたのが更に伸びて彼女の身長並みの長さとなった。


また彼女の髪に混じって青白く光る髪の毛が混じるようになり、やがてそれは全体に広がると絶えず発光するようになった。


その発光はやがて髪全体から、毛先へと変化した。

そんな自身の変化にエレオノーラも驚きを隠せない様子だった。


「あれは・・・」

「【ハイ・ドラコニュート】・・・竜人から龍人へと変わったわ。」

「ハイ・・・ドラコニュート・・・、あれが・・・。」

「竜王国では竜人・・・【ドラコニュート】が一般的よ。【ハイ・ドラコニュート】なんて存在はほとんど存在しない稀人なのよ・・・。それなのにこうもあっさりと・・・」

「・・・まさか、僕が竜王国に言って、住民全員の額にキスしたら・・・」

「なっ!?なに馬鹿な事言ってんのよ!!!・・・はあ、おそらくパパが考えている通りの事になるわよ、絶対に。」

「まさか、ルーフェルースが急に喋れるようになったり、ミラが鳳凰のように姿を変えてありとあらゆる魔術を行使できるようになったのって・・・」

「おそらくそう・・・ってミラってばそんなことができるようになってんの!?」


逆に驚かされるフィリオラ。


実際、ミラは少し前に『鳳凰』と呼ばれる中国神話に出てくる伝説の霊鳥と崇められる存在になれるようになったことを喜々として見せてきたのだ。


その愛くるしい姿に何度かあの子の頭にキスしてあげたが・・・まさかあんなことができるようになっていた原因が僕だったとは。


『パパのキスは~・・・至福の味~・・・えへへ。』

「それについては同意よ・・・。初めてだったけど、あんなにも心地よいモノだとは思わなかったわ・・・。」

「あの人のキスは優しく、激しくて・・・とても濃密で、濃厚でしたわ・・・。」

「お母様は口でキスしてるのよね・・・。口だけじゃなくて・・・」

『・・・おかあさんってば、うらやましー』


3人はどこか尊敬のまなざしをレイラへと向けていた。

咲き誇ったようにドヤ顔をしているレイラだった。


でも一体どういう原理なんだ?

もし僕のキスで更なる進化を遂げるとなると、レイラはとんでもないことになっているはず・・・。


なのに彼女に変化は・・・

・・・ん?


その時、ヨスミの左目で見たレイラの状態に1つ違和感を感じた。


・・・見たこともない魔素が体内を巡っている。

まるで悪戯でもしているかのように所々現れては消えたりと・・・、まるで妖精のような挙動だな。


こんなマナにいつ変質したんだ・・・。


また、レイラと話す話題が増えたな。

でもそうなると・・・、やっぱり【ドラゴンマナ】が原因か。


僕の何かと【ドラゴンマナ】が共鳴して覚醒を促すこととなっている。

それがなんなのかはわからんが・・・、色々と調べる必要があるかもしれないな。


【ドラゴンマナ】と僕の関係性についても調べないといけない。


それにこの世界の事も・・・。

そして、あの子たちの事も・・・。


「そ、それじゃあヨスミ様・・・わ、私たちはそろそろ帰るのです・・・!」

「そうか。弟と母君は僕に任せて、どうか安心して待っていてくれ。必ず竜王国に遊びに行く。」

『もし寄るときは・・・わたしがお前に連絡を入れるから・・・』

「わかりました、バハムトイリア様。では・・・その、お父様・・・お、お元気で・・・っ!」

「ああ、リヴィアメリア。君も息災でな。必ず遊びに向かうからその時にまた一緒に遊ぼう。」

「・・・っ、はい!」


そしてリヴィアメリアは元の姿へと変わり、エレオノーラを連れて霧状に変わるとそのまま消え去った―――――。



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