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だ、だんだんと重みが増していくね・・・


「ちょっとパパ!」


そう怒鳴り込みながら部屋に入ってきたのはフィリオラとエレオノーラを連れたリヴィアメリアの3名だった。


「どうした三人とも。改まって・・・」

「どうしたもこうしたも、いきなりエレオノーラが中央広場に現れたことに説明してよ。すっごく吃驚したんだから!」

「そういえば君がエレオノーラを送り出したんだったっけ?」

「そうよ。だから色々と聞きたいことがあるのに・・・ほら!」


そういってエレオノーラの方を指さした。


ヨスミとレイラは2人でエレオノーラの方を見てみると笑顔のまま固まっているかのように微動だにしない彼女の姿に気が付いた。


どうやらあの時ヨスミが見たのはヨスミの<転移>が来ることを信じ、笑顔のまま立っていた・・・のではなくただ単純に笑顔を浮かべたまま気絶・・・いや、そうじゃないな。


ヨスミはエレオノーラの近くに寄り、状態を確かめる。

その時、レイラもエレオノーラの傍までやってきてじっと見つめるとその原因を知っているようでヨスミへ説明するように話す。


「これは<石化>と呼ばれる状態異常に掛かっておりますわね。」

「<石化>・・・だが言う割には石に変わっていないように見えるが・・・」

「石に・・・?いえ、<石化>は文字通り、石のように固まってしまう事を意味しますわ。あなたのいう石その物に変わってしまうようなものは恐らく・・・【バジリスクフィア】や【ヘルドゥーサ】などが放つ攻撃を浴びた者がなる<石像化>の事を指しているかと思いますわ。」


<石化>とは違うのか。


ファンタジー世界では有名な状態異常の1つだった気がするが・・・

何事もその通りではないということなんだな~・・・。


「それで、これはどう治せばいい?魔法で解呪したり、解毒ポーションなんかあったりはするのか?」

「ええ、概ねその通りで合っていますわ。後は掛けた術者を倒・・・に解いてもらうか、ですわね。」


・・・ん?


今、何か言い淀んだような気がするけど・・・。

あのまま言い続けた言葉は・・・術者を倒せばいい、だろうか。


別にそのまま言ってくれてもよかったんだがな・・・。

まあ、僕の能力を使わせまいと気を利かせてくれたんだろうな。


ほんと、可愛いヤツめ!


「ふーん、術者に解かせた方が一番確実なんだな?」

「そうですわね。魔法の解呪にも、それぞれ術者特有の波長・・・<魔紋>がありますから、それに近い波長で解かないといけませんし、ポーションは症状の緩和と自然回復するまでの時間短縮が主な効果ですわ。だからもしそれまでに体が持たなかったりする場合もあるので、緊急性を求められるときは術者に直接解いてもらう方が―――」

「―――れの術であのクソトカゲは<石化>してるから遠くには・・・はっ?」

「え?」

「なっ・・・!」

「ということでその術者を連れてきた。」


フィリオラとリヴィアメリアが驚きを見せている一方、レイラだけが黒妖刀を抜いて突然姿を現した獣人の兵士の首元に刀身を当てて動きを拘束した。


「・・・え、お母様はこれを予知してたの?」

「この話を始めた時にはこの人なら・・・と思っていつでも対応できるようにしておいただけですわ。」

「うわぁ・・・パパへの信頼度がリミットブレイクしていらっしゃる・・・。」

「さすがレイラ様・・・。」


本当に僕の心を見透かしているようで驚きを隠せないよ。

それに、ここまで僕の絶対的な味方でいてくれる存在がいるということが、ここまで心の安寧をもたらすなんて思わなかった。


・・・まあ、今はまず僕はやらねばならぬことができた。


「お前・・・ドラゴンの事を、クソトカゲなんて名前で呼んだか?」

「ひ、ひぃっ!?」


ヨスミは全身から殺気と憤怒のオーラを纏いながら兵士に近づき、奴の首元を掴む。

その場の雰囲気が一瞬にして凍てつくように静まり返り、フィリオラとレイラがしまったっ!みたいな顔をしていた。


リヴィアメリアは初めて見るヨスミの激怒する姿に、思わずエレオノーラを抱えながらその場に膝から崩れ落ちてしまった。


「ちょちょちょ!パパ、落ち着いて!」

「あなた!」


刀身を首に当てていたレイラも慌てて刀を鞘へ納刀し、ヨスミを抑えようとしがみ付く。


「もう一度、聞く。お前、今エレオノーラを、クソトカゲなんて言葉で、侮蔑したか?」

「く、クソトカゲに、クソトカゲとい、言って、な、何が悪いんだよぉ・・・!?ど、ドラゴンな、なんて・・・ろ、ろくでもない、存在だ、だろうが・・・!!」

「あぁん・・・・??あなたぁ・・・今なんと仰いましたですのぉ・・・!?!?」


その言葉を受けて今度はレイラまでもがヨスミと同じように、いやヨスミよりも鋭い殺意と怒りを込めた視線を術者へと送る。


「ちょっとお母様まで!?やめてよ!2人がブチギレられたら手が付けられないから!!ちょっとリヴィアメリア!あんたも手伝いなさい!!」

「・・・え、あ、うんっ」


そしてリヴィアメリアも加わって術者へメンチを切りながら、今にも殺しかねんとするヨスミとレイラの2人を抑え込もうとするが、初めて触れるヨスミの殺気と怒りにリヴィアメリアはタジタジとなっており、体中を恐怖で震わせていた。


なんとか気を保ちながら2人を抑えようとしていたリヴィアメリアだったが、とうとう限界を迎えたのか、そのまま静かに気を失った。


「ちょっとリヴィアメリア!しっかりしなさい!!あんたが気を失ったら、収拾がつけられなくなるじゃないのぉ!!」

「あなたの毛皮で作ったコートはさぞ温かいんでしょうねぇ・・・!!」

「ドラゴンに対して侮蔑や差別的な意識鹿ないその脳クズはもはや不要だよなぁ・・・?!」

「ひぃぃいあああああ!?」

「なんであんたが悲鳴上げてんのよぉ!!上げたいのは私なのよぉ!!悲鳴上げるならなんで2人を煽るようなことを言ったのよぉおお!!!」


・・・一方その頃、突然広場に現れたエレオノーラを連れて屋敷へ入っていったフィリオラたちを見送ったネレアンたち。


だがすぐさま、屋敷の様子がおかしい事に気が付いたジェシカは様子を見に行こうとしたがハルネの<鎖蛇(オロチ)>に制止させられた。


「は、ハルネ・・・?」

「ジェシカ様、今あそこに行ってはなりません。」

「え?で、でも・・・」

『なんかパパが・・・凄く怒ってる感情・・・流れ込んでくるんだけど・・・こ、このヒリヒリした感じ・・・は、初めて・・・っ』


ネレアン・・・バハムトイリアは体をくねらせ、何か愉悦した表情を浮かべていた。


「し、師匠さま・・・?」

『えへへへ・・・パパのこの感情は初めて・・・新鮮だぁ・・・!』


そんなバハムトイリアの様子にどこか既視感を覚え、そっとミミアンの方を見る。


「・・・・。」

「・・・え?なんでうちを見るの?ねえ、ジェシカっち?なんでうちをそんな目で見るの!?」

「さ、皆さま。あそこで起きている事態が収拾・・・―――お茶会を続けましょう。」

「今放棄したよね!?収拾しないことを察知したよねハルネっち!?ってかお茶会してる場合じゃないっしょ!?」

『あ、やっと見つけたのー!』


とそこへ一体の白く美しい幼竜が空から舞い降りた・・・。






「あなたぁ・・・死ぬ覚悟は・・・って、あら?」


今にも殺気で殺されかけている術者ではあったが、ふと何者かの気配を感じ、窓の外を見る。


ヨスミもそれに気づいたようで一度気持ちを落ち着かせた後、エレオノーラを左目を通して何かを見た後に術者の方を見ると先ほどまで恐怖でビビっていた術者が一瞬にして石のように固まり、微動だにしなくなった。


直後、エレオノーラは大きく息を吸い込みながらゲホゲホッと咳き込み始めた。


フィリオラは突然、苦しそうに咳込み始めたエレオノーラを見て驚き、逆に先ほどまで泣きわめき始めた術者が静かになったのを見て何かを察したのか、大きくため息を吐きながら術者を離した。


その後、一先ず苦しそうにしているエレオノーラへ<治癒魔法>を掛けながら介抱し、外から感じる懐かしい気配へ目線を向ける。


窓からやってきたそれは超高速でヨスミの腹部へと飛んでいった。


『オジナぁー!!!』

「ハクア!?ひさしぶふうっ!?」


なんとか目を覚ましたリヴィアメリアは、目の前でいきなりハクアミサイルを腹部に受けて吹き飛んでいくヨスミと一瞬、目が合った。


「・・・え?あ、・・・え???」


そのままヨスミを突き飛ばしながらそのまま壁を破壊しながら瓦礫に埋もれた。


「ちょ、ちょっと・・・え?」

「ああ、起きたのね。大丈夫よ。いつもの光景だから今のうちに慣れる事よ。」

「は??これが、いつものこと・・・!?え、普通の人間なら死んでる・・・え?え?」


土煙が晴れた時、気絶しかけているヨスミに全力で甘えるハクアの姿が見えた。


『オジナー!オジナぁー!』

「おっ、お・・・おぉ・・・あ、・・・おぉ・・・」


意識朦朧としている中、抱き着いてきたハクアの頭を震える手で撫でていたが、とうとう限界を迎え、頭を撫でていた手がそのままガクッと力無く落ちた。


「ねえ、本当にあれ大丈夫なの・・・!?」

「・・・あー、今回は打ち所が悪いかも?」

「ヨスミさまぁ!?」


リヴィアメリアは急いで瓦礫で力無く倒れるヨスミの元へ駆けつけると急いで<治癒魔法>を掛け始めた。


だがハクアはそんなのお構いなしと言わんばかりにヨスミに自分の体を擦り付け、全力で甘えていた。


「・・・あれでもハクアの重さはゆうに80kg以上はあるはずなんだけどね。そんなハクアが体の上に乗っかった状態でも平気そうなのがパパらしいわ・・・。」

「あの人はどんな大きさのドラゴンが乗っかろうともご褒美として受け取りますわね・・・」

「ゲホッゲホッ・・・い、一体ここは・・・ど、どこなのです・・・??」

「あ、エレオノーラ。気が付きましたわね。」


ここでやっと意識を取り戻したエレオノーラは、フィリオラからつい先ほどまでの経緯を話され、壁が崩壊している方を見て色々と納得したようだった―――――。



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