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あの人に、わたくしの実力を認めさせるのですわ・・・!


そういえば、あのマリアンヌとかいう姫さんから取り上げた【竜誕計画(プロジェクトドラゴン)】と呼んでいた物・・・。


確か僕はあれらを全て処分したはず。

なのにどうしてあの姫さんが持っていたのか・・・。


と自分の手元に小さなボロボロの箱を<転移>させた。

ゆっくりと開けるとそこにはほとんどが焼け崩れ、ボロボロになった紙片が幾つかと、何かしらの板のようなものが入っているのがわかった。


じろじろと見る物に興味を惹かれたのか、ジェシカとバハムトイリアがヨスミへ声を掛ける。


「お爺様?その手に持っている木箱のようなものには何が入っているのですか?」

「ん?あー・・・なんといえばいいか。一言で言うならば、僕が過去に生み出したとある装置に関する情報かな。」

『・・・っ!本当に、残ってたの・・・?』

「ああ、そうみたいだよ。」


バハムトイリアは何かに気が付いたかのように顔を青ざめながらヨスミへ問いかけ、それに静かに頷く。


一体何の話をしているのだろう?と疑問を浮かべていたが、2人の様子を見ている内に今朝話していた話を思い出した。


「・・・【竜誕計画】とかいう物に関するものなんですね。」

「ああ、そうだよ。といっても、その装置に関する情報が述べられた紙の一部、小さな紙片が数枚入っているだけだ。」

「それをマリアンヌとかいう方は大事に持っていたんですね・・・。」


なんでそんなものを大事に持っているだなんて理解できません!なんて表情を浮かべているジェシカの頭を優しく撫でる。


「でもまあこの紙片だけじゃ書かれている内容は意味を成さないし、そもそもこの文字を解読できる存在はこの世界にはまずいないだろう。どうやらこの大陸で使われている言語と、この紙片に掛かれている言語は全く持って違うようだからね。」


そもそも【竜誕計画】に関する情報は、あの施設の端末に全て保存されている。

ここにある【竜誕計画】に関する内容がしたためられている紙片は最初期に作られたものだ。


というのも・・・この紙片に掛かれている文字、これを書いたのは他でもなく―――優里だからだ。


優里の書く文字は癖が強く、まるで文字を躍らせるように文字と文字を繋げて書き綴る癖があるからこれを読み解ける人は僕を除けばまずいないと考えられる。


故に僕は納得ができた。


なぜ【竜誕計画】に関するモノが、あの施設の専用端末に全て保存され、それを確実に僕たちは処分したはずなのにこうして残ってしまっているのか。


一番最初、まだ僕と優里が結婚さえしていなかった時期に用意されたものだからだ。

それ故に、僕は優里と更なる絆を深めるきっかけとなった、最初期の【竜誕計画】の資料を無意識に残してしまったのだろう。


アイツとの絆を、燃やしたくはなかった。

それに・・・これはある意味で優里と交わした恋文のようなものだった。


互いにどんなドラゴンを作りたいか。

どんな姿のドラゴンを描いたか。


どんな特徴のドラゴンを好むか、どんな個性あるドラゴンを癖とするのか。


生み出したらどうしたいか。

作り出したらどう接したいか。


そういったお互いの、ドラゴンに対する愛の交換。


故に、僕は決めたのだ。

一番初めに作るドラゴンは優里の大好きな性癖(ようそ)をこれでもかと詰め込んだ子にしようと。


そして生まれたのがアナスタシアだ。

もう一匹、ネレアンも優里の性癖がかなり盛り込まれたドラゴンである。


ちなみにメラウスとヘリスティアは僕の性癖がぶち込まれたドラゴンだ。

そしてフィリオラは、優里と僕のそれぞれの性癖を入れた存在である。


それぞれの性癖がぶち込まれたドラゴンであるが故に、生まれてきた子たちを見ながら僕の心に空いた大きな穴は痛みという悲鳴を発した。


お前が望むドラゴンがあんなにも元気に遊んでいるのに、僕の傍には君がいない。

この喜びをお前と分かち合えない事が、何よりも苦痛であった。


それは今もなお、癒えることのない傷跡として心に残り続けている。

まあそれはレイラのおかげで大分マシにはなった。


『パパ、それ燃やす・・・?』

「・・・いいや、これは直接関係のない内容だ。だから誰の手に渡っていたとしても悪用はできないよ。それに、これは僕にとって大事なモノでもあるから、大切に保管しておくよ。」

『わかった・・・。』

「だがこれはダメだ。」


そうして手に取ったのは鍵。


「・・・ただの鉄の板切れですか?」


だが何も事情を知らぬ者が見ればただの細長い板にしか見えない。


『うそ・・・、なんでそれが・・・』


だがネレアンはすぐに気づいたようだ。


これは、鍵だ。

ドラゴンの卵を生み出すためにヨスミが長い年月を掛けて作り出した、まさに叡智の結晶そのもの。


全人類の技術者、研究員らが集まっても作り出すことができなかった、神の所業とさえ言わしめた機械装置・・・。


母なる竜の胎盤(エキドナ)】・・・、ギリシア神話に登場する神の名で僕はそう呼んでいる。


その名前通り、【母なる竜の胎盤】は次々とドラゴンを現世へ産み落としてくれた。

僕は5体目を産み落とした後、自身の年齢を考え、また誰かに悪用されないために破棄することに決めた。


これは、【母なる竜の胎盤】を起動するための『鍵』なのだ。

といっても、起動するためには4つの『鍵』が必要で、その内の1つに過ぎない。


またそれぞれの『鍵』には生体認証による起動が必要な為、まずは『鍵』そのものを生体認証に登録された人物によって起動状態にさせないといけない。


その上で適切な場所に差し込まなければ起動しない。


そして『鍵』に登録された生体認証はもちろん、僕だ。

僕がこの『鍵』を起動させなければ、そこらへんに転がっているアイアンインゴットと全然変わらないだろう。


だが先ほども申した通り、僕はアナスタシアたちと共に『鍵』ごと【母なる竜の胎盤】を破壊した。


一般的な爆薬では傷1つ付かないためにお手製の特殊な爆弾を作り出し、【母なる竜の胎盤】を作った際に利用した素材を使って実験したところ、見事木端微塵に破壊されたのを確認できたから、ありったけの爆弾を設置し、アナスタシアのブレスによる起動で施設ごと消滅させた。


・・・消滅させたはずだった。

なのに、僕の目の前に『鍵』の1つがこうして残存している。


破壊しきれなかった、のだろうか。

だが確かにこの目で消滅したことを確認した。


「・・・わからないなあ、本当に。」

『ねえ、パパ。それどうするの・・・?』

「そうだなあ・・・。どうしようか・・・。」

「それって、そんなに危ないモノなんですか・・・?」

「まあね。とりあえず、虚空にでも放り込んでおくよ。」


手に持っていた『鍵』を<転移>によって消し去った。


そう、この鍵は世に出てはいけない物であることは確かなのだから。

あの虚空の中に入れておけば、誰の手に渡ることは決してあり得ない。


そして僕の目的が必然とまた一つ増える事となった。


「でもまずは体の傷を癒さないとなあ・・・。」

「そうですわよ、あなた。まずはその傷を完全に癒すことに専念してくださいまし」

「あ、お婆様!」


そう言いながら部屋に入ってきたレイラ。

ジェシカが嬉しそうにベッドから降りて、レイラの方へと向かっていった。


嬉しそうに抱き着くと、ジェシカの頭を愛おしそうに優しく撫でていると、そこへルーシィが恐る恐る部屋に入ってきた。


「ルーシィ、起きたのですね。おはようですわ。」

「*****。********?」

「ルーシィちゃん、今度からは気を付けないとだめですよ。」

「あら?何かあったんですの?」

「え?あ、えと・・・ルーシィちゃんったら寝ぼけてたみたいで・・・お爺様が起きている時に素っ裸で部屋に入ってきていたんです・・・。」

「あら・・・」


とジロッとヨスミの方を見るレイラ。

だがヨスミは変に恥ずかしそうにしている様子を見せていない事から、そもそも気にしていないことがわかった。


女性の体に興味を持ってくれるのは、わたくしの体だけ・・・ということですの?

それはそれでわたくし・・・うへ、うへへ・・・あ、い、いけませんわ!


こんな子たちの前で、はしたない顔を見せるわけには・・・!


「・・・!」


・・・レイラがメチャクチャ睨んでくる。

え、やっぱりその子の裸を見てしまったことがいけなかったか???


確かに僕は見てしまったが、発育の良い身体を見てしまったが!

僕が興味あるのはレイラ、お前だけなんだよ・・・!


そこをどうか分かっておくれ・・・!

僕は、レイラしか見えていないんだ・・・!!!


「・・・・」ションボリ

「・・・??」


ヨスミ様が、すごくしょんぼりしておりますわ?

え・・・、まさかルーシィのこの発育の良い身体が見たかった・・・ということですの?


そういうことですの・・・!?


「・・・・・」

「・・・・・!!」

「ふぅ~、いい湯だったわ・・・って、え?なにこの空気・・・」


とフィリオラが部屋に入ってきた途端、部屋の雰囲気に顔をしかめる。


「ちょっとお母様?ヨスミを睨んでどうしたのよ・・・?あまりにも睨みつけられていてあの人、思いっきりションボリしているじゃない。」

「・・・だってぇ」


とレイラの話を聞き、その後ヨスミの話を聞いたフィリオラは大きなため息を吐いた後、もう一度レイラへ彼の気持ちをそのままそっくり伝えた所・・・


「あああああ、ごめんなさいですわぁぁあ!!」


とヨスミに泣きついた。






それから数日が経ち、ヨスミの傷が9割ほど回復した頃、久々に手合わせすることになったレイラとヨスミ。


その様子を心配そうに見守っているフィリオラたち。


「ねえ、リオラっち。ヨスミってドンぐらい強いの?」

「んー?そうね~・・・、この場にいる全員一瞬で殺されるぐらいには強いわよ?」

「うっそ・・・、うちの黒曜毛を貫通できるほどの痛みを与えてくれるってわけ!?」

「ええ。というか、ヨスミの前ではありとあらゆる防御は無意味だと思いなさい。」

「・・・じゃあダメじゃん。痛みを感じれない戦いなんてきょーみないわ。」

「あなたどこまで痛みに貪欲なのよ・・・」


なんて呆れているフィリオラを余所に、ヨスミとレイラの間に流れる空気はどんどんと張りつめていく。


そんな中、ふとヨスミの口が開いた。


「レイラ、君がAランク冒険者になって、初めてのちゃんとした手合わせだね。」

「そういえばそうですわね・・・。今までは見てもらっていただけだったり、時間が無かったり・・・あなたが眠りについたりして・・・」

「ああ、泣かないでくれ・・・。悪かった、僕が悪かったから・・・!」


と慌てるヨスミを見てレイラは悪戯な笑みを浮かべ、それを見たヨスミは何かを察したかのようにあははと乾いた笑いが口から出た。


「うふふ・・・、とても可愛いですわ、ヨスミ。」

「全く・・・僕の愛しの嫁は悪戯好きと来たか。今度からは君の悪戯に耐えられるよう精神を鍛えないといけないな。」

「なら、いっぱい揶揄わせていただきますわよ?」

「どんとこいだ。」

「うふふ。では・・・参りますわ!」


それを機にレイラとヨスミの戦いが始まった―――――。



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