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取り逃がしましたわ・・・!!!!


「お前は竜母・・・!なぜ罪人を庇う・・・ぎゃぁああーっ!?」

「私はいつだって、私の大事なモノを守るために戦ってきたの。あの時だってそう・・・。なのにそれをあんたたちが勝手に解釈して、その思想を私に押し付けるんじゃないわよ・・・!!」


「正義の執行人と呼ばれしフォートリア公爵閣下の令嬢がなぜ我らの前を立ち塞ぐというのか!我々は同じ獣人、同志ではないか・・・ぐわぁぁあああ!?!?」

「いやいや、明らかおかしいっしょ!?あんたらの上官が下した任務がおかしいってどうして気付けないかなぁ??それにうちも親友に殺されたくないし?それに~、うちが正義っしょ!!」


各方面で2人が暴れている様子が、地響きを通じて感じられる。

それから1時間も経たないうちに、鳴り響いていた爆発音は収まった。


そして何事もなかったかのようにフィリオラとミミアンは屋敷の玄関ホールへと戻ってきた。


「フィリオラ様、ミミアン様。お疲れ様でございます。」

「あれ?ハルネがどうしてここに?」

「なにかあったの?」

「一応警備をしておりました。この子たちのおかげでこの屋敷の全方位を死角なく見渡すことができますので。」


そういって、ハルネの腰から8体の<鎖蛇(オロチ)>が姿を現した。

ふとここでフィリオラは以前見た時よりも4倍ほどの大きさ、そして太くなったことに気が付く。


「・・・大きくなったわね。」

「はい。レイラお嬢様と共に毎日時間があれば鍛錬を行っております故。」

「え、でもレイラのことも世話してるんでしょ?時間なんてあるの?」

「はい。この子等はいわば、もう一人の私という立ち位置です。ですので、主人格である私が眠りに付いている間に別の<鎖蛇>の意識が私の体を操り、行動することが可能で御座います。もちろん、その間は私自身として行動できますので、実質睡眠を必要とすることはなくなりました。」

「・・・なにそれ」


つまり、ハルネが眠りに付いた時、自身の意識はアンパン〇ン方式で<鎖蛇>の意識と交換されるため、睡眠を必要としない体になったということだ。


それで十分に睡眠をとった主人格の意識を戻せば元通りになるわけで、そもそも<鎖蛇>の意識は主人格をベースに構築されているので、全ての<鎖蛇>の意識が主人格と言っても変わりないという。


「いやいや、体の負担は大きいと思うけど?!」

「その辺りは体を動かさず、休息しながら出来る鍛錬を行っておりますので問題ありません。」

「それにしたって人間やめてない?それ」

「まあ、実際ハルネの体は<森塞蛇(フォレストドレイク)>の血と【ドラゴンマナ】が微かに混じり合っているからできる所業なんでしょうね。でも絶対に常人が真似したらダメな事はわかるけど・・・。」

「メイドたるもの、これぐらい出来て当然でございます。」

「そんなことができるのはあなただけだからね??全国のメイド様に謝りなさい??」


などと会話をしていると、上の階からお風呂上りと思われるレイラがゆっくりと降りてきた。


「あら、もう戻ってきたんですのね。大事ないですの?」

「ええ、お母様。私たちなら大丈夫よ。」

「マジよゆー!」

「そう、それはよかったですわ。」

「それで?この後はどうするのかしら?」


少し考えこむ様子を見せるレイラ。


「まずはあの人の傷が完全に回復したのを機に、さっさとこの国から出るつもりですわ。元々、エレオノーラを竜王国へ還すためにこの旅を始めたんですもの。バハちゃんにもきちんと顔合わせもできましたし。」

「それにしたって、すんごい大きな冒険にはなったよね~・・・。王城が陥落したり、【眷属】と死闘を繰り広げたり・・・。」

「そうね・・・。ただエレオノーラを返すだけなのに、随分と寄り道した気がするわ。」

「でもそっか。レイラの旦那様が回復したらこの国を出て行っちゃうんだ・・・。」

「ミミアン・・・。」


どこか寂しそうな表情を浮かべるミミアンを抱き寄せ、頭を撫でる。

ミミアンもレイラに腕を回して抱き着き、甘んじてレイラの頭なでなでを享受していた。


「なんなら、ミミアン。あなたも一緒に来るかしら?」

「んー・・・。行ってみたいって気持ちはあるよ?でも、パパがあの状態だし、今この国は大変な状態だし・・・。だから、いけない。」

「そうですの・・・。公爵令嬢としての自覚が出てきたって所かしら?」

「ちょっとー、それどーいう意味さー?」

「だってあなたの今までの行動を振り返ってごらんくださいまし?あれとあれ、あれのどこに公爵令嬢としての振る舞いがあったと思いますの?」

「もー、そんな意地悪言う悪い子にはお仕置きしかないっしょ・・・!!」

「ちょ、あなた・・・!?それは、反則・・・あははははは!!」


なんてお互い抱き合いながら、揶揄い合う2人。

そんな2人を見ていたフィリオラは苦笑交じりの笑みを浮かべた。


それからしばらくして、ミミアンとフィリオラは汗を流すために湯浴みへ向かっていった。

ハルネにミミアンを手伝うように頼み、3人は浴室のある部屋へと向かっていった。


1人残ったレイラは玄関を出て、屋敷の外に出る。

少し離れた場所で静かに佇む【古獣の王】を眺めながら、この国で起きたこれまでの事を振り返っていた。


そして今回のこの騒動。

ガヴェルド王が率いてきた傭兵団たちの派閥争い。


手あたり次第になりふり構わず、色んな手を回して功績を上げようと躍起になっている。

しかもガヴェルド王には決して気付かれないように立ち回っているからなお質が悪い。


そしてガヴェルド王自身も何らかの目的を持ってわたくしたちに話を聞きたがっている。

そればかりに固執しているせいで、自分の部下がやらかしている事態に気が付いていない。


「・・・あんな様子じゃ、帝王の器として全然ダメダメですわ・・・。あんなのがこの国を引っ張るだなんて、目も当てられませんですの・・・、はあ・・・。」


レイラはこめかみを摘まみながら頭を抱える。


「だからこそ、フォートリア公爵家の苦労が目に浮かびますわ。他の公爵家の方々は恐らく、あの黒い化け物になり果ててしまっているでしょうし・・・。ガヴェルド王を支持する他の貴族を取り込んで事態の収拾・・・なんてわたくしが考えていても仕方がありませんですわ。」


でも、ミミアンがとても心配ですわ。

この国に残していってしまってもいいのか。


・・・あの人ならば二つ返事で許してくれるのが目に浮かびますわ。


「こうなったら・・・」


とそこでふと違和感を感じ、周囲を注意深く見渡す。

だが周囲には特に変わった物は見当たらなかった。


「気のせい・・・ですの?でも・・・」


とここで首筋に何か嫌な予感がして、咄嗟に後ろの方へ体を仰け反すと先ほどまでいた場所に何か空を切る音が耳に入った。


それと同時に違和感を強く感じる場所に体を反らした勢いを利用してサマーソルトを繰り出す。


「がはっ!?」


蹴り上げた足に確かな手ごたえを感じ、その瞬間蹴り上げた足に全力で力を込めると一気に振り上げる。


何かが砕けたような感触が足先から伝わり、そのまま体を捻って()()()()()()の空間へ回し蹴りを繰り出した。


「ぐえぇっ・・・!?」


柔らかい肉とゴリッという固い何かを叩き折る手ごたえを感じた。

そして、ドンッドンッ!と何かが跳ねた音の後、向こうの壁に何かが叩きつけられ、壁が崩壊する。


「ちょっとお母様!?大丈夫!?」

「今の音はなに!?」


その音に気が付いたフィリオラとミミアンが屋敷から出てきた。


2人ともまだシャワーを浴びていた最中だったようで服は着ているものの、フィリオラの髪や体は濡れたままで着ていた服に肌が張り付き、うっすらと服越しに艶やかな肌が見えていた。


ミミアンに至ってはあんなにフワフワモコモコな体毛は水に濡れてぺたっとなった黒曜毛が体に張り付き、今まで見えていなかった雌の体のラインがはっきりと見えていた。


「気を付けてくださいまし、目に見えぬ何かがいますわ!」

「ふーん・・・、なるほど。」


とレイラからの警告を受け、ミミアンは間髪入れずに何もない場所をその黒曜爪で切り裂く。


「ぎゃあああああっ!?」


突然悲鳴が上がると同時に赤い血飛沫が何もない空間から吹き出した。

何かがドサッと倒れた音と同時に、地面に突如として全身を黒布で覆い隠す、明らかに怪しい何かが姿を現した。


「なぜ、我々の姿が見える・・・!?」

「これでもうちはねー、狼獣人なんだよねー。例え姿が見えなくなったとしても?うちの鼻は決して誤魔化せないよー。そーれっ!」

「ばかな・・・ぎゃぁぁああ!?」


確かにそこには何もいない。

だが何の迷いもなくミミアンは虚空を切り裂き、血飛沫が何もない空間から舞い散る。


「くそっ、ここは引くぞ・・・!」

「私があんた達を逃がすと思って?<魔法解除(アンチマジック)>!」


フィリオラの手から粒子状の光の波を発生させ、周囲一帯の魔法効果を無力化させる。

すると、その影響を受けた黒布の襲撃者たちが姿を現した。


全員で4人。

すかさず竜尾を顕現させると、4人まとめて絡めとるとそのまま地面へ叩き付けた。


「がはっ・・・!?」

「やられ、た・・・!」

「しく、った・・・」

「ぐふっ・・・!?」


そのまま4人とも気絶し、誰一人逃さずに捕まえることができた。


「ふう、これで全員かしら?」

「みたいね。それにしたってどうしていきなり・・・」

「・・・あー、1人取り逃したっぽい?」

「え?でも確かにこれで・・・あっ」


そこで初めて、レイラが一番最初に壁の方へ蹴り飛ばした存在を思い出した。

急いで確認しに向かうが・・・


「・・・逃げられましたわ。」


そこにはただ崩れ崩壊した壁だけがあった。






森の中を全速力で走り抜ける黒布の襲撃者。


くそっ、くそっ・・・!


まさか我らの隠密術が見破られるとは・・・!

これでも我らの隠密術を初見で見破れた者はいなかった・・・!


なのにあの女、我の攻撃を寸での所で避けるばかりか、顎と腹部に強烈な蹴りの反撃をお見舞いしてくるとは・・・!


おかげで顎を砕かれ、真面に会話さえできなくなってしまったがために仲間への連絡が出来ぬ。

それに・・・走るたびに腹部に響く激痛・・・。


これは、顎だけじゃなく、あばらも何本か折れている可能性がある・・・

今はまず後方にいる仲間へ連絡を・・・っ!?


と全速力で走っていた黒布の襲撃者だったが、突然全身を貫く悪寒に咄嗟にその場で跳躍すると、ほんの少し先・・・跳躍しなければ通過していたその場所に青白い棒が何本か突き刺さる。


な、なんだ・・・!?

あのまま進んでいたらあの奇怪な棒にぶつかっていた・・・?


いや、あの現れ方・・・我の体に突き刺さっていた?

・・・いやいや、馬鹿な!


一体どこから・・・!?

くそっ、まずは周囲を警戒し、我に攻撃した人物の居場所を特て―――――。



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