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あんな登場しておいて、ですの・・・!?


それから少しして無事<メナストフ港町>の入り口前に降り立ってレイラ一行。

ルーフェルースから降りて地面を歩き、門前までやってくる。


本来ならここには門兵らが入口に立ち、<メナストフ港町>に出入りする商人や冒険者、旅人などをしっかり監視し、または門の向こうからやってくる脅威をいち早く知らせたりとしていたんだろう。


<メナストフ港町>は唯一、エルフとドワーフの亜人らだけが治める国との交易を担っていた。

故に活気のある港町としてタイレンペラーやその他の周辺小国にはその名を知られていたはずだ。


・・・だが今のこの町は壊滅した。


住民は誰一人としておらず、建ち並ぶ住居や仕立て屋、パン屋や酒場などには荒らされた後もない。

何かと争った後も、それに抵抗した後も、何もない。


ただ、住民だけが消えて居なくなっている。

そしてその原因をレイラたちは知っている。


だがおかしな点は、死体すらないということ。

こればかりは知り得ぬものだった。


だがレイラとフィリオラは予想はしていた。

とある人物の仕業であると。


口に出す必要もない。

こんなことが出来るのはあの者しかいないと、信じているからだ。


誰もいない町の中を歩いていく。

・・・いや、この町出身で生き残りがたった一人だけいる。


この町に建てられた屋敷で働くメイドだ。

彼女だけは助け出し、そして無事に事態を終息を迎えた。


彼女だけがこの町を記憶し、この町のありし姿を心にとどめている唯一の人物。

確か名前は・・・


「・・・あれ?」

「どーしたの?」

「ねえ、ミミアン。覚えているかしら?屋敷で一緒に逃げたメイドのこと。」

「メイド?あー・・・」


と確かに何かを思い出したが、すぐに何かを忘れてしまったそんな表情を浮かべている。


「あれ、確かにいたはずなのに・・・名前が、思い出せない。」

「どうしたんですか?御2人とも。」


そこへジェシカが軽快な足取りでやってきた。


「ジェシカ、あなたも全てが終わって入れるようになって駆け付けてきたときにメイドを1人見まして?」

「えと、あ!確かにメイドが1人だけいたような記憶が・・・でも・・あれ?」

「・・・ジェシカも思い出せないわけね。でもどうして・・・」

「あのメイド、もしかして幽霊・・・あっ」

「!?!?!?!?!?」

「お、お婆様・・・?」


ミミアンがぼそりと幽霊という言葉を呟いた瞬間、酷く怯えたような反応を見せるレイラ。

ハルネとディアネスが急いでレイラの元に駆け寄り、ハルネは背中を摩り、ディアネスはレイラに抱き着いて頭をよしよししていた。


そんな初めての様子を見て驚きを隠せないジェシカにミミアンは説明を続ける。


「実はレイラはね、幽霊とかそういった類の魔物は苦手なんだ~。」

「お婆様にも苦手とされる魔物がいらっしゃるのですね・・・」

「そうみたい。前にレイラ自身が言ってたことなんだけど、幼少期に奴隷で過ごしていた時、雇われていたクソ野郎に精神を更にすり減らすために幽霊などの怖い話を聞かせ、恐怖で夜眠れなくさせてたみたいなんだよね~。さらには白い布を被ったり、本物の幽霊を連れてきて夜以降に子供のレイラを何度も驚かしてトラウマを植え付けたんだって。」

「ひどい・・・」

「*****」


怖がる理由が意外と重めなことにジェシカは思わず眉を顰める。

ジェシカは首をかしげているルーシィに先ほどミミアンが話してくれた内容を説明し、ルーシィ自身も怒りを露わにしていた。


「お昼には肉体を傷つけられ、夜には恐怖で精神を徐々にすり減らしていった結果、今でも幽霊の話を聞くとああいう風にその時の記憶が蘇ってしまうみたいでああなっちゃうんだよね・・・。あ~、もううちの馬鹿!本当に迂闊だった。」


そういってミミアンはレイラの所までやってきてしゃがみ、レイラの手を握りながら優しく語り掛ける。


「ごめんね、レイラ。うちも油断してた・・・。」

「だ、大丈夫・・・ですの・・・。で、でも確かに、あのメイド・・・に関してはは・・・そそそそう考えざるをええないい・・・ですわよね。」


何とかして話そうとするも、顎が震えるほど恐怖を露わにするレイラの様子にジェシカもすぐに傍までやってくると彼女を安心させるかのように腰に抱き着いた。


それに習い、ルーシィもレイラの所まで飛翔し、そのまま胸元へ飛び込む。


「ミミアン様、お気を付けください。レイラお嬢様は未だに・・・」

「うん、うちも悪かったよ・・・。」

「お婆様・・・。」

「***。」

「まーま・・・。」

「わ、わたくくくしししなら、大丈夫ででですわわ・・・。」


レイラが落ち着きを見せるまで暫く時間が掛かり、近くの広場に置いてあった石の長椅子に座らされ、少しの間介抱されることとなった。


それから数十分の時間を得て ようやく落ち着きを取り戻したレイラを連れ、目的地である<メナストフ港町>の港にやってきた。


すぐ目の前の海には只管沈黙を貫く【古獣の王】の巨大な姿があり、その傍らには自らの兄を悲しげな瞳で見つめるリヴィアメリアの姿があった。


リヴィアメリアもこちらに向かってやってくるレイラ達に気付き、ゆっくりと立ち上がるとレイラたちの方へ向けて歩いてきた。


「みんな、きたの。」

「ええ、約束でしたもの。」

「・・・【悪魔】まで一緒にいるなんて思わなかったけど。」

「ああ、この子はルーシィ。新しい旅の仲間で、わたくしの新たな家族ですわ。」

「******、****************。」


ルーシィはレイラの真似事か、腰を落とし、自らの翼を摘まんで小さく持ち上げ、頭を静かに下げた。


「・・・そう、君のような【悪魔】もいたんだね。私はリヴィアメリア。気軽にメリアと呼んで。」

「***・・・、***********!」

「そうそう。レイラ様をどうかよろしくね。」


何か意気投合したようで、2人はがっしりと握手を交わしていた。


レイラは誰かを探しているかのようで周囲を見渡していた。

そんな彼女の様子に気付いたメリアはレイラに声を掛ける。


「ヨスミ様なら、まだ来ていない。」

「そんな・・・」

「あの首輪、思ったよりも強い魔道具みたい。外すのすごく苦労してた。」

「・・・あの首輪が原因ですのね。確かにあの首輪を外すにはその首を嵌めた術者の<解除呪文>が必要ですわ。もし術者を殺してしまえば永遠に解除できぬまま・・・ですもの。」

「こういったのって、掛けた奴を殺せば解呪されるのが鉄板なのにねー。」

「だから下手に手を出すことができないのが難点なのですわ・・・。」


ここに来れば会えると信じてきましたのに・・・。

ヨスミ、あなたは今どこにいらっしゃるんですの・・・?


そんな悲しみを表情に出しながら酷く落胆していると、それを慰めるかのようにミミアンがレイラの背中を摩る。


「それで、【青皇龍】はいずこですの?」

「【バハムトイリア】様なら・・・ほら、あそこに。」


メリアは海の方を指さす。

だがそこには何もいなかった。


「・・・何もいませんですわ?」

「いるよ。よく目を凝らしてみてみて。」


そう言われ、レイラ一同はメリアが指を差す方向を注視してみる。


その瞳に映るは一面に広がる海と揺れる水面。

だがふと何かしらの違和感を感じた。


確か<メナストフ港町>からは【古獣の王】を封印していた島や、他の孤島などが少なからず見えるはず。


だが地平線に見えるは何もない、ただ真っ白の霧に包まれているかのように・・・。


その時、目の前に広がる白い空間に横に広がる一つの亀裂が目についた。

その亀裂はゆっくりと開かれ、更に薄い膜のような何かがそっと亀裂の内側に左から右へと仕舞われ、そしてついにその巨大な竜眼が姿を現し、周囲をギョロッと見回す様に蠢き、その視線はレイラへと注がれることとなった。


つまり、【青皇龍バハムトイリア】はずっとそこにいたのだ。

巨大すぎて、何も見えなくなっていたのはレイラたちだった。


その後、膜が現れ、瞼が閉じられるとゴゴゴゴゴゴという轟音が周囲を鳴り響き、その巨大すぎる頭が海から姿を現した。


その視界全てに【青皇龍】の顔すら収めることができない。

大気を震わす【青皇龍】の深呼吸に海が荒れ始める。


これが、これこそが・・・【青皇龍バハムトイリア】!


「お、大き、すぎますわ・・・!?」

「こんな存在が、今までこの広大な海に、眠っていただなんて・・・」

「あ・・・、そ、空に・・・空に・・・!?」


レイラたちはその圧倒的存在に驚きを隠せず、ハルネは若干の恐怖さえ感じていた。

だがジェシカとディアネスは目をキラキラさせて【青皇龍】の事を見つめていた。


顔の全体図をその視界に全て納めるころには、上空遥か高い位置まで顔を持ち上げるとゆっくりとレイラたちにその巨大すぎる顔を近づけてきた。


その時、レイラは【青皇龍】の額に付けられた巨大な引っ掻き傷のような痕が目についた。

よく見れば額だけじゃなく、その首?胴体?らしい部分にも大きな傷跡、そしてヒレと思わしき部位の片方は半分に切り落とされている。


恐らくあれが【怪物】と呼ばれる存在に付けられた傷。

それらの傷を癒すために今まで眠り続けていたのだ。


だがそれでもなお、その体に残る痛々しい傷跡を見てどこか親近感を覚える。


『わぁ~・・・、【女王竜(ドラゴンクイーン)】だぁ~・・・、本当にいたんだぁ~・・・。』


大気を震わす【青皇龍バハムトイリア】の一声。

一言発するたびに突風が吹き荒れ、吹き飛ばされそうになる。


「【青皇龍】様!もう少し抑えて!」

『あぁ~・・・、ごめんなさいぃ~・・・』


と【青皇龍】はレイラたちに謝罪を入れると静かに目を瞑る。

すると途端に眩い光に包まれ、その眩しさにレイラたちは手を掲げて目を庇う。


光が収まり、次に目を開いた時にはそこに先ほどまで視界いっぱいに広がる巨大な古龍は居なくなっており、その10分の1のサイズにまで縮んだ【青皇龍】がいた。


・・・それでも【古獣の王】を軽く凌駕するほどの巨体ではあるわけだが。


『えと、その、あの・・・ふぇぇえ・・・』


そして急に涙目になると【古獣の王】の後ろに隠れる。

が、巨体過ぎるが故に全然隠れてはいなかったわけだが・・・。


「ところでなんで【バハムトイリア】はあんな顔を真っ赤にしながら隠れてるんですの?」

「【青皇龍】様はその・・・、一言で言うならば極度の人見知りなの・・・。」

「・・・え?」

「うっそマジ?」

「あんな巨体を持ちながら・・・?!」

「人見知り、なんですか・・・???」

「・・・****?」


その場にいた全員が、リヴィアメリアから語られた驚愕な事実に思わず口に出して驚いてしまった―――――。



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