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本当に災難でしたわね・・・


その後、レイラたちを追いかけてきたミミアンにこれまでの出来事を話し、状況を確認させた。


「ふ~ん・・・、なるほどね~。そのむちゃんこ可愛い美少女ちゃんがルーシィでぇ、しかもあの【悪魔】とかいうむっちゃ嫌われてる種族でぇ、さらにさらにぃ?まだ8歳の子供で善悪の区別も付けられない純粋無垢なる子供だから今からきちんと教育出来ればぁ?本来の【悪魔】のような破壊の化身みたいな存在になることはないってこと?マジでうける!wwwwwwww・・・・とでもいうと思った????」

「ええ、あなたなら。」

「ちょっと?!うちのことどんな風に見てんのさ!?」

「能天気でお調子者で人懐っこくて世話焼きで曲がったことが嫌いな明らかにギャル?なんて性格とは真反対に位置する・・・」

「もーいい!もーいいから!!」


と無理やりレイラの口を慌てて塞ぎ、一息つく。


「それにしてもあのでっかい建物が古代遺跡?そしてあそこで動けなくなっているのが遺跡から出てきたゴーレム・・・。そしてあの惨状があのゴーレムの攻撃の余波って事ね?」


そういって振り向いた方向は、あの古代ゴーレムが発射した攻撃によって生み出された惨状。

木々や大地はあの光線の熱量によって炎すら生み出せぬほどまでにドロドロに溶解し、その余波で灰と化した草木、小動物はあの光線を目に下だけでその目が焼け落ち、苦しそうにもがいている。


そんな光景が一直線上に海の果てまで続いているのだ。

そして影響を受けたのは小動物だけではないようだった。


「・・・ねえ、レイラ。」

「なんですの?」

「なんか向こうから来てんだけど?」


ミミアンの指さす方、光線の影響でくり抜かれたかのように溶解した焦土の道の先、怒り狂った巨大な何かが全速力でやってきてた。


そしてそれはすぐにドラゴンだと分かった。

巨大な翼には穴が開いており、体の所々にも小さな穴のような傷が付いていた。


だが何よりも特徴的だったのが頭から生えた氷のような結晶角から生えた花、そしてその体を覆う鱗はまるで花弁のように白く透き通っており、あの傷さえなければとても美しいとさえ思っただろう。


「あれは・・・【雹花竜(フロルストドラゴン)】?!なんでこんなところに・・・!」


いち早く反応したのがハルネだった。

ハルネが急いで臨戦態勢を取ろうとするが体の傷は未だに完全に癒えておらず、満足に動かせない。


いや、ハルネだけではなく、ジェシカも自身の持っていた長杖は折られ、ディアネスも初めて自身で魔法のような何かを使った反動のためか、ぐったりとしている。


わたくし自身もあのティガール将軍との戦闘で負った傷で満足に黒妖刀も振るえない。

ドラゴンだから出来るだけ対話に臨みたいけど、あれはどう見ても怒りで我を失っていますわ・・・。


とレイラたちを庇う様にミミアンが前に出る。


「待って、ミミアン!」

「だーめ、さすがにあんたたちは満身創痍でしょ?まあレイラの手前、あれはドラゴンみたいだしなるべく殺さないようにはしてみる。」

「ミミアン・・・。」


実際、彼女自身も傷が癒えたばかりとはいえ、病み上がりな状況だ。

コンディションは良いとは言えない。


そんな状態でまともに手加減なんて真似も難しいはず・・・。


『母上殿、我が出よう。あの者を知っておる。』

(え?ベオちゃん・・・あの子を知っているんですの?)

『うむ。少し前に色々と縁が合ってな。』

(・・・わかりましたわ。)


「ミミアン、ベオちゃんに任せてわたくしたちを守ってくださいまし。」

「ベオちゃん・・・あー、百足竜(デスサイズ)のこと?ベオっちならなんとなるってこと?」

「ええ、彼が大丈夫だと言っていますわ。」

「おっけー、それじゃうちは全力でレイラたちを守るっしょ」


そういってミミアンは数歩下がる。


レイラの腹部が光り、魔法陣が展開されるとそこから百足竜ことベオルグが姿を現し、その後小さくしていた体の大きさを元の半分の大きさへと戻した。


久々に見たベオルグの体には傷1つ付いておらず、銀色に輝く鋭利な鎌が太陽光を反射していかに切れ味が鋭いかを明白にさせていた。


『ふむ・・・、半分とは言え久々の成体であるな。』

「今まで無理させてごめんなさいですわ。」

『母上殿が謝る必要はない。吾輩が好きにやっていたことだけのこと。暫くはまたその刀の鞘の装飾品として母上殿と共に居ようかの。だが、まずは・・・。』


そういって先ほどまでレイラへ向けていた笑みはスゥーッと消え去り、真顔となったベオルグはこちらに向かってくる雹花竜の方を見る。


先ほどまで光線でドロドロに溶解されていたが、雹花竜が通り過ぎた後には氷結していた。

そしてよく見ると雹花竜の体からは冷気と思われる霧が漂っており、周囲を凍らせている。


光線によって溶解したところが、雹花竜によって急激に冷やされたことで凍らされた地面にヒビが入っていき、音を立てて次々と割れていく。


割れた氷を2又に沸かれた尾が掴むとそれをベオルグへと投げつけた。

だが飛んできた氷塊はベオルグの体を傷つけるどころか、その鋭利状の甲殻によっていとも簡単に切り裂かれ、粉々に刻まれた。


『久しいな、ベアトリーチェ。』

「ギャアァァアオオオオ!!」

『全く、怒りに我を忘れおってからに・・・。まあ我もそんなこと言えた口ではないんだがな。』


雹花竜は迷わずベオルグへ冷気を圧縮させた吐息(ブレス)を吐き出してきた。

それを受け止めながらゆっくりとベアトリーチェと呼んだ雹花竜へと近づいていく。


雹花竜の周囲を漂っていた冷気が塊を生み出し、それをベオルグへと発射させる。

次々と飛んでいく氷塊を、鎌となった無数の足を軽く動かすことで全てを切り刻み、受け流していく。


『確かにお主は自身の美を自慢にしていたな・・・。それが今や哀れな姿になったものよ。』

「ッッッ・・・!!!」

『だがな、怒りを向ける相手を、貴様は間違えたっ!!』


雹花竜の吐息を全て受け止めながらベオルグの攻撃範囲内に入った途端、体をくねらせて鞭のように雹花竜へと巻き付いた。


「ギャアァァアアアア!!?」


全身が刃と化している百足竜の胴体は、ただ巻き付いただけでも十分に対象の体を切り刻むことができる。


雹花竜の体も無残に切り刻まれ、その激痛で悲鳴を上げる。

だが切り刻んだ傷口から強烈な冷気が漏れ、ベオルグの体を凍結させていく。


『さっさと目を覚まさんか、このバカ者が!!』


そんなことに一切気にも留めず、巻き付いた雹花竜の体をそのまま持ち上げ、地面に叩き落とした。

叩き落とされた衝撃と、全身を切り刻む鋭利状の甲殻によって2重のダメージが入る。


叩きつけた後、ベオルグはそのまま別の方向へ投げ捨てた。


雹花竜の体から流れる血が一瞬にして氷結し、鋭い棘となってベオルグに降りかかるがそれら全ては簡単に切り刻まれ、ベオルグは無傷のまま雹花竜に完勝した。


『こんなものか。』


今になってやっと、レイラとミミアンはベオルグの実力を実感する。


今まではベオルグの活躍をきちんと目に出来ず、また襲撃の際にはディアネスらを守らせるために防衛に当たらせていたこともあってきちんと戦わせることはしなかった。


だが今回、ベオルグがきちんと戦っている姿を見てその容姿にとても感動した様子を見せるレイラ。


「ああ、我が子がこんなにも立派に戦う姿を見た時に感じるこの気持ち・・・これが、『親心』なんですわ!!」

「いやいや大げさすぎでしょ・・・。でも確かにベオっちはすごかったよ。雹花竜の攻撃なんて全然気にも留めない感じ。」

『こんなもんでよいか。母上殿、今ならばアヤツは母上殿の言葉に耳を傾けるやもしれん。』

「わかりましたわ。ミミアン、どうか付き添ってくれる?」

「はいはーい。」


そうしてレイラはミミアンと共にベオルグに吹き飛ばされた場所へ向かっていく。


氷結した地面を歩く度、カキィンという甲高い音が周囲に響き渡る。

その音は明らかにこの森からは決して聞こえたりはしない異音でもあった。


そんな綺麗な足音を周囲に響かせながら歩き続けて数分、徐々に冷気が強まっていく気配を感じ、この先に雹花竜がいると確信した。


そしてついに2人はなぎ倒された木々の上に横たわる雹花竜のお労しい姿を見つける。


最初に見た美しい姿とは裏腹に、見るも無残に切り刻まれ、その透き通るような雹花鱗は赤く染まり、痛々しい傷跡からは今なお流血し、地面には凍った竜血がまるで花を咲かせるかのように凍っていた。


レイラは急いで雹花竜の元に駆け寄り、負った傷に対して<治癒魔法>を掛け始める。


『・・・<回復魔法>にして。』

「え?」


すると突然レイラへ話しかけてきた雹花竜ことベアトリーチェ。


「でも<回復魔法>は・・・」

『傷痕が残るのは嫌なの・・・だからお願い。わらわのことは気にせず、<回復魔法>を掛けてちょうだい・・・。』

「・・・わかりましたわ。」


レイラはミミアンと共に<治癒魔法>ではなく、<回復魔法>を慎重に掛ける。

見る見るうちに傷口が塞がっていくが、それと同時に激痛がベアトリーチェに襲い掛かる。


平気な顔をしているが、やせ我慢をしているのは明白だ。

慎重に<回復魔法>を掛け始めて数分、全ての傷口は塞がり、最初に見た時のあの美しい姿に戻っていた。


だが翼に空いた大穴は塞ぎきることはできなかった。


「・・・ごめんなさいですわ。これ以上やると<オーバーヒール>になってあなたの体が持ちませんですの・・・。」

『いいえ、あなた様が謝る必要はありません。わらわが怒り狂ってあのベオ爺に無意味に突っ込んでしまったせいで負う必要のない傷を負い、それによって一番治したかった部位を成せなくなったわらわの責任・・・。でもここまで綺麗に治してくれて感謝致します。』

「ベオ爺・・・やっぱりベオちゃんとは知り合いですの?」

『・・・そうですわね。傲慢だった若き日のわらわにお灸を据えてくれた恩師かしらね・・・。』


そう語るベアトリーチェはどこか遠い日を見るかのように天を仰ぐ。


『そして怒りに支配されていたとはいえ、わらわにとって大事な存在に敵対行動をしてしまったこと、深くお詫び致しますわ・・・。』

「いいえ、そんな綺麗な体ですもの。傷つけられたらわたくしだって怒りが沸き上がってきてしまいますわ。」

『そうですよね!?この透き通った体に傷を付けられたんですよ!?そもそもわらわはただ日光浴をしていただけなのに突然・・・あああああああ、今思い出しただけでもぉぉおおお・・・!!』


・・・どうやらこの子は一癖、いえ、二癖もある子のようですわね。

なんて、自分の体がどれほど美しいのか熱弁するベアトリーチェを横目にそう感じるレイラだった―――――。



~ 今回現れたモンスター ~


竜種:雹花竜(フロルストドラゴン)

脅威度:ランク不明

生態:頭からは氷角が生え、雪の結晶のような花が咲いている。

また体全体は花弁のような透き通るほどの青白い竜鱗に覆われ、甲殻の隙間からは触れたものを一瞬にして凍結させるほどの冷気を吐き出している。

尻尾は二又に別れており、その尾先には氷柱のような特殊な棘があり、その棘を介して魔術を行使することができる。

そしてなんといっても揺らめくオーロラのような薄い竜翼は見る者を圧倒させ、その美しさに誰もが目を奪われる。

彼女は白皇龍に作られた一番最初の個体だと言われており、勇魔大戦ではその冷気を持って【眷属】たちを次々と絶対零度に晒し、決して解けぬ氷像へと変えたという。

性格は基本的には温厚だとは入れているが実際はただ無関心なだけであり、自分が美しいと思ったものにしか興味が出ないだけである。

故に白皇龍が治める白銀に染まった<ヴァイターナル大陸>は非常に気に入っており、そこに引き籠るようになった。

基本、彼女は自由奔放主義で白皇龍の緊急時を除いて召集の際にも出向かず基本的に自由気ままに過ごしてはいたが先日に全てのドラゴンに対して流れてきた【偉大なる父の恩寵】を受け、興味を持ったためにヨスミ達のいる獣帝国に向かう事となった。

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