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そんな、だめ・・だめですわ・・・!!!


それからレイラたちはその一室で暫く休憩をしながら今後について色々と話し合っていた。

もちろん、ルーシィも連れていくためにジェシカにお願いしてその会話の通訳、またはルーシィの意見を通訳してもらっていた。


どれほど時間が経ったのだろうか。

話し合いは気が付けばただの雑談へと変わり、これまでの旅の話をルーシィへと聞かせていた。


そんなとき、突然近くで轟音が響き、建物全体が微かに揺れた。


「一体どうしたんですの?」

「わかりません。」

「・・・テキ。」


雑談の中で教えてもらった言葉の中で、レイラたちにもわかるような言葉をルーシィが発する。


「敵・・・?まさか、ルーシィの故郷を滅ぼした他の【悪魔(デモン)】ですの?」

「チガ、ウ。デモ、テキ。」

「とりあえず、外の様子を確認しましょう。ルーシィ様、どこかから外の様子が確認できる場所はございますか?」

「ン、コッチ。」


ルーシィはレイラたちを連れて部屋を出る。


朝に通ってきた通路を戻り、巨大な花の根が敷き詰められた通路の前までやってくると、その中を通るわけでもなく、その横にある崩れかけた階段を登っていく。


するとその遺跡の最上階に到達し、微かに開かれた扉の間を通り抜けると、屋上にやってきた。

周囲にそびえ立つ巨木よりも高い建物の屋上と言うこともあり、なかなかの絶景が広がっている。


レイラはその景色に見惚れてしまうも、すぐにここに来た目的を思い出し、気づかれぬ様にそっと下の様子を確認する。


巨大な花の隙間から見えたのは【悪魔】のような存在ではなく・・・


「ガヴェルド王の率いていた兵士たちですわ。もうここまで・・・」


以前の王都タイレンペラーでの戦いを終え、王都内をパトロールしていたガヴェルド王らと一緒に居た兵士らが陣を展開していた。


「わたくしたちの居場所がもうバレているんですの・・・?」

「・・・どうでしょう?それにしても早すぎますので彼等は恐らくこの遺跡の攻略かと。今現在、王都タイレンペラーは色々な場面で物資が不足しております。なので未だに未攻略の古代遺跡を攻略し、その資材などを復興に当てる算段なのでしょう。」

「ということは・・・」

「ダメ・・・!」


ルーシィが警告してくれていた崩壊した入り口から、兵士らは遺跡内へ突入しようとしていた。


そして数十人の兵士らが隊列を組み、崩壊した入り口内へと入っていく。


直後、聞き慣れない連続した破裂音のような甲高い音が響き、その穴から子蜘蛛が散るように兵士たちが悲鳴を上げながら穴から出てくる。


だが穴から放たれた大量の光線に次々と貫かれ、兵士たちは絶命していく。


盾を構えた兵士や、魔法障壁を張って防衛していた兵士たちはその光線を防ぐことができず、盾や魔法障壁を貫通して兵士たちを無情にも貫いていく。


それを見ていたルーシィは彼らを助けようと焦った様子で、建物内へと戻ろうとした。


「ルーシィ、どこにいくんですの??」

「タスケ、イク。ミンナ、シヌ。ダメ。」

「ルーシィ・・・。」


ルーシィは今の彼等の状況を詳しくは知らない。

だからこそ、ルーシィは純粋なる善意で彼らを助けようと向かおうとしている。


そんな子に、彼等を見捨てた方がいいと告げるべきか?

何も知らない子供にそんな言葉を投げかけてもいいのだろうか?


だが実際、ルーシィを止めなければ手遅れになることは確かだ。

ならば・・・


「・・・わたくしも行きますわ。」

「レイラお嬢様?!」

「お婆様!?」


案の定、ジェシカとレイラは驚いた様子を見せる。

ただし、ディアネスはレイラがそういうと分かっていたかのように嬉しそうに頷いていた。


「キテ」


ルーシィはレイラへとそう告げるとルーシィは背中の両翼を広げ、屋上から飛翔する。


レイラもルーシィの後に続いて、屋上から跳躍すると、建物の側面から生えた巨大な花の花弁や突き出した根を足場にして降りていく。


レイラが地面に降り立った頃にはすでにその場は地獄絵図と化していた。


辺り一面には兵士らの死体が転がっており、生き残った者らも腕や脚が吹き飛ばされていたり、体のどこかを貫かれて今にも死にそうな瀕死の重体となっている兵士たちが床に転がっていた。


そんな状況を見ていた時、ルーシィがレイラに体当たりをかます。

直後、先ほどまでレイラが立っていた場所に兵士らの命を簡単に奪ったであろう連続した光線が次々と通り過ぎていく。


そして狙いはすでにレイラに定まっているようで、その連続で発射されている光線はレイラの方へと迫る。


レイラは急いで体勢を立て直すと、そのままの勢いで駆け出し、全力で回避行動を取る。


防御するのは無意味であると先ほど屋上の方で確認していたため、ここは受け流すよりも全力で逃げながら回避した方がいいと直感で判断した。


「<神速>!」


レイラは自身への狙いを定めさせないために目にも止まらぬ速さを維持したまま複雑に移動していく。

その状態を維持したまま、この攻撃を繰り出している元凶を探ってみると、あの崩壊した入り口の中に何かが潜んでいるのがわかった。


「ハルネ!あの入り口内に攻撃を集中してくださいましぃ!」


レイラは叫び、屋上から飛び降りていたハルネはその言葉を受け、【八傀螺旋ノ鎖蛇】が展開され、8体の<鎖蛇>が出現すると、空中から崩壊した入り口の中へ8つの極太光線が放たれる。


ハルネの攻撃はその入り口内に潜む敵に直撃したかどうかはわからないが、レイラを狙って放っていた連続した光線は止まり、巨大な爆発が巻き起こる。


ハルネは落下しながらなおもその爆発しているところで攻撃を続け、地面に降り立つ頃にはその爆発は外にまで発生し、それによって崩壊した入り口の広さは倍の大きさにまで穴が広がっていた。


「・・・やった、んですの?」

「マダ」


ルーシィは未だに爆発によって巻き上がる煙の中をじっと睨みつけていた。

そしてルーシィが言った通り、煙をかき分けて帝王の間で見たあの白いゴーレムと同じような何かが姿を現した。


若干違うとすれば、その形状は球体ではなく、まるで蟲の様な造形をしていたことだ。


もっと詳しく言えば、サソリのような造形で、尾の先には細い筒が円形を組むように設置されており、そこから連続した光線が発射されているようだった。


「あの尾を壊せば・・・!」


レイラは古代ゴーレムの尾へ攻撃を仕掛ける。

が、レイラの振り抜いた黒妖刀の斬撃は弾かれてしまった。


「か、堅いですわ・・・!?」

「レイラお嬢様!」


攻撃が弾かれ、大きな隙を見せてしまったレイラに迫る古代ゴーレムの鋏。

レイラは体を捻り、迫ってきた鋏の挟撃を無理やり躱すとそれを蹴飛ばして一気に距離を取る。


空中で数回転した後に地面に着地するも、尾の先に付いていた無数の筒が回転を始め、筒の奥が微かに光始めた。


回避が、間に合わない・・・!

そう思ったのも束の間、上空からルーシィが死角をついて古代ゴーレムの尾に自らの爪を振り下ろした。


―――ガキィィイイインッ!


切り落とすことはできなかったが、射撃の軌道をレイラからずらすことに成功し、レイラの体を光線が貫くことはなかった。


標的をレイラからルーシィに変更したのか、体の向きをルーシィへと変える。


「させませんですの!」


レイラはすぐさま動き、<神速>で古代ゴーレムの視界から消えるとその側面から強烈な蹴りを繰り出した。


―――ゴオオオォォォオオオン!!!


完全に不覚を突かれ、また斬撃よりも打撃が有効だったようでそのまま大きく吹き飛ばされ、転がっていく。


古代ゴーレムが体勢を立て直さないうちにハルネの8つの<鎖蛇>から練られた高密度に圧縮された魔力の塊が放たれ、回避行動もとれない古代ゴーレムはまともにその身に受けることになった。


巨大な爆発が起き、そこに追撃と言わんばかりに巨大な水の塊が上空から落ちてきた。


「<ウォーターハンマー>!」


ジェシカの放つ<水魔法>による攻撃、上空から降ってきた数十トンもの水の質量が古代ゴーレムを押し潰す。


「<ウォーターウィップ>!」


そして続けざまに周囲に広がる水から無数に伸びる水の鞭が古代ゴーレムの体や脚、尾などに絡みついて動きを制限する。


先ほど<ウォーターハンマー>によって押し潰され、体中の彼方此方が変形してしまっており、真面に身動きが出来ない状況だったこともあって、完全に動きが封じられることとなった。


「・・・・********!!!」


そこへルーシィが古代ゴーレムにとどめを刺そうと両翼を広げて飛翔すると一気に距離を縮める。

彼女の両手から伸びた赤い爪に魔力が纏い始め、正確に古代ゴーレムの頭と思わしき部分に赤い爪が振り下ろされた・・・はずだった。


「・・・カハッ!?」


ルーシーの背中に衝撃が走り、それと同時に激痛が全身を襲い、喉の奥から何かがこみ上げてきたものを吐き出す。


「ルーシィ!!」


ルーシィは攻撃を振り下ろされる直前、その背中に矢に討たれてしまう。

自身の速度も相まってそのまま地面に衝突するかと思ったが、<神速>で移動してきたレイラに受け止められた。


「ルーシィ!しっかりするんですの!」

「ゥ・・・ァ・・・」

「お婆様!私に任せてください・・・!」


とそこへジェシカがやってきてルーシィへ<治癒魔法>を掛けようとするも、ジェシカが握っていた長杖が矢で射抜かれてしまい、真っ二つに折られてしまった。


「そんなっ・・・!?え、きゃあっ!!」


そして続けざまにジェシカに無数の矢が放たれるが、ジェシカを包み込むように魔法障壁が展開され、矢を防ぐ。


それはディアネスが無意識に展開した魔法だったようで、ディアネスの瞳が光り輝いている。

ディアネスはそのまま宙を漂いながらレイラの所まで降り立つと、苦しそうに呻くルーシィを見て<治癒魔法>を掛け始めた。


後からやってきたハルネは急いで、ルーシィの背中に刺さった矢を慎重に抜くとすぐさまポーションを傷口へと掛ける。


レイラはハルネとジェシカにルーシィとディアネスを託し、静かに立ち上がる。

その瞳には怒りが宿り、憤怒の感情をコントロールできないのか、瞳からレイラの魔力が漏れ始め、まるで炎のように揺らめいていた。


そしてレイラは矢を射ってきた者たちを強く睨み、疑問をぶつけた。


「・・・なぜ、攻撃してきたんですの?わたくしたちはあなた方を助けるためにこうして助けに入ったんですのよ!?」


そう。

ルーシィを射抜き、さらにはジェシカにも矢を射ったのは先ほどルーシィが全力で助けようとしていた兵士たちだった。


将軍と思わしき人物はゆっくりと前に出てくると、ニヤニヤしながらレイラの方を見下す様に睨む。


「それには感謝している。だがお前たちにアレを壊されては困るのだよ。あれは王都を復興するために必要であるからなぁ。だから攻撃させてもらったのだよ。それに・・・」


将軍は静かに腰に携えていた剣を抜き放ち、レイラへと剣先を向ける。


「お前たち・・・大罪人を匿い、逃亡の手助けをしたとして指名手配された者らだろう?まさかこんなところで見つけられるとはな・・・。これも我がガヴェルド王のためだ。大人しく投降すれば苦しませたりはせぬ。まあ、少なくとも我は手を出したりはせぬ。だが・・・。」

「・・・・。」


将軍の号令で、背後に控えていた弓兵らが一斉に弓を引き、狙いをレイラたちに定める。


「我が兵士らには強要できぬのでな・・・。」


レイラの手は震えていた。

恐怖のためか?それとも怒りのためか?


今怒りのままに<神速>で奴らを斬り殺しても、あの数の矢を全て防ぎきることはできない・・・。


それにあの矢には恐らく特殊な加工が施されている。

矢じりには刻印のような何かが刻まれており、微かに魔力の波動を感じる。


何もわからない状態でもしあの矢を放たれ、わたくしの対処ができない代物だったら間違いなくハルネたちは・・・。


いや、何時からわたくしはここまで臆病になったんですの?

もし放たれたら・・・ではなく、そもそも矢を放つ前に全ての弓兵を無力化してしまえばいいのですわ・・・!!


「・・・<神速>!」


一瞬にしてレイラの姿が消える。


「やはりそう動くよなあ・・・!」


だが<神速>で動くレイラを将軍は何の迷いもなく蹴り飛ばした。


「がはっ・・・!?」


なんで・・・?


どうして、わたくしの<神速>に・・・見えているんですの?

わたくしの速さに、追いついて・・・


いや、違いますわ・・・。


「わたくしが、遅くなった・・・?」

「御明察。我が力は自身の周囲の空間の速度を自由自在に操るスキルを得意としておる。事前情報として令嬢は目にも止まらぬ速さで行動すると聞かされておってな。」

「そんな・・・」

「大人しく投降してくれればよかったが、仕方があるまい。弓兵、放て。」

「ま、待って・・・!!」


だがレイラの必死の叫びも虚しく将軍の号令は下され、待機していた弓兵からハルネたちに向けて矢が放たれる。


それら全てを叩き落とそうと再度<神速>で行動しようにも、明らかに動きが遅い。


「だ、だめぇ・・・!!!」


レイラはハルネたちに手を伸ばした。

その背後から無数の矢がハルネたちを覆い隠す。


涙で視界が霞み、最悪の結果が脳裏に過り、膝から崩れ落ちた。

だが次に聞こえてきたのはハルネたちの悲鳴ではなく、


「・・・な、なぜ、だ・・・!?」


ハッと我に返り、振り返ってみると弓兵や将軍の体には無数の矢が突き刺さっており、次々とその場に倒れていく光景だった――――――。



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