顔の左側が爛れるけど、ハクアたんのためならばぁ・・・
うーん。とりあえず3体連れてはきたけど、どうしたもんか。
とりあえず体をバラバラに転移させて倒すこともできそうではあるけれど・・・。
と暴喰蟲の一体が突っ込んできた。
それを転移で移動して避け、その横っ腹に
「ハクアたん!」
『はーい!』
(ああ~・・・顔の左半分がじゅわぁ~って熱いんじゃ~・・・)
とヨスミの背に乗っていたハクアの口から白銀熱線が放たれ、周囲がその圧縮された光線の光で照らされ、焼けていき、その衝撃が突風となり、そして光線は暴喰蟲に直撃し、木々をなぎ倒しながら大きく吹き飛んでいった。
倒しきれてはいなかったが、重傷状態なのか痙攣させながら必死に起き上がろうとしていた。
だがそこへ樹木や大岩が大量に落下してきて、暴喰蟲を押し潰す。
そしてすぐさま転移でその場から移動すると、その直後に別の1体が突っ込んできていた。
止まらずにまた別の場所へ転移し、距離を取ると先ほどまでいた場所に猛毒針が無数に飛んできていた。
おいおい、連携してくるのか。
多分、この転移での移動を止めたら一気にやられそうだな。
1体は突っ込んできて、もう1体からは無数の猛毒針による投射が飛んでくる。
このまま時間を掛けるようなことはしたくはないけど。
まあ、なるべくハクアたんの攻撃によって倒してもらいたいからな~・・・。
とりあえず倒しやすいように・・・。
「ギュウ・・!?」
突っ込んできた暴喰蟲を避け、それと同時に暴喰蟲の足全てを転移させた。
おかげで暴喰蟲は受け身を一切取れず、そのまま地面を抉りながら転がっていく。
『くらえーなのー!』
(ああぁ~・・・、熱いんじゃ~・・・)
そこへハクアの先ほどよりも細く、更に圧縮された白銀熱線が甲高い金属音に似た音を発生させながら放たれる。
先ほどは暴喰蟲を貫通できず、直撃した際に無数に枝分かれするかのように飛び火し、周囲へ大きな被害を与えていたが、今回は見事に貫通し、一瞬にして貫通した部位から塵と化し、そのまま燃え尽きた。
「おおー!いいぞぉ!ハクアたん、よくやった!」
『えへへー!オジナーに褒められたのー!』きゃっきゃっ
ハクアの頭を優しく撫で、ハクアもとても気持ち良さそうにしていた。
本当にいい子だなあ、ハクアたんは・・。
さて、どうして僕が転移を使わずにこんな回りくどい事をしているのか。
どうにもこの世界には経験値によるレベルアップシステムがあると仮定されるからだ。
現にハクアが放つ白銀熱線の威力は最初の頃に比べて段違いになるほどになった。
んで、ハクアは白皇龍の娘。ってことはかなりの成長が見込めるダイヤの原石とも言える。
なのに、コボルドやゴブリンなんかの低ランク帯の魔物相手だとこういった変化はなかった。
つまりそれぞれのランク差が激しいと、入手できる経験値は限りなく1に近い。
故に、こうしてハクアたんのレベルアップのために相応しい敵を吟味していた。
でもやっぱり抵ランクの魔物ぐらいしか辺りに居なかったから、多少諦めてはいたけど・・・
まさかこういった事態に遭遇できるとは思わなかったため、大いに活用させてもらうことにする。
まあさすがに禍鬼虎相手にハクアたんじゃあ勝てなくはないけど、怪我させてしまうかもしれなかったからな。
もしもの時は僕が対処しやすい魔喰蟲にって思ってたけど、まさかこうなるとは。
異世界転生特有の、ステータスバーの表示とかはない。魔法があるならって思ったけど、実際にはそういった感じのシステムはないようだ。
まあ、僕自身が未だに冒険者ギルドで登録をしていないから見えていないだけの可能性もある。
本当なら明日、冒険者ギルドにでも行って色々と説明を受けてからやろうと思っていたが、状況が状況だ。
だから今できること、やれることはやっておいてから調べればいい。
『オジナー?どうしたのー?』
「ああ、いや。なんでもないよ。さあ、後一体だよ、ハクアたん!」
『うん!』
後は猛毒針を飛ばしてくる奴だけだが、さっきからその猛毒針が飛んでこない・・・。
ふと転移で上空の方へ移動して、周囲を見渡す。
少し離れた場所に魔喰蟲の死体を喰らっている暴喰蟲の姿が見えた。
「よし、ハクアたん。あそこにいる暴喰蟲へ向けて攻撃だ!」
『はーい!!』
(あぁ~・・・・)
再度、ハクアは胸の内にある熱と自らの魔力を溜め、(背中が熱くなってきた・・・)その魔力熱を首から口へ流し、口元で周囲の魔力と混ぜていき、それを圧縮、圧縮、圧縮し、赤から青へ、青から白へ、そして白から白銀へ輝き、放射されてからワンテンポ遅れてから重低音と金属音のような甲高い音が混じり合った音が周囲に轟き、目に見えない衝撃波が周囲に広がっていく。
一直線に伸びた一本の光線は周囲を一瞬にして焦土化させながら、暴喰蟲を貫通し、地面に触れるとそこを中心として周囲一帯を瞬時にドロドロに溶かし、大気に触れるとバチバチと火花が散り、連鎖反応が起き、そしてそれは巨大な爆発を引き起こした。
『ふふーん!』ドヤァ
「ハクアたん・・・さすがだぁ・・・・」(顔の左側が爛れるけど、ハクアたんのためならばぁ・・・)
『えへへ~!』
一番最大級の火力だなぁこれ・・・。
さすが魔王に仕えていた4皇龍のうちの一龍、白皇龍の娘ちゃんだぁあ・・・。
周囲に熱風が走り、森の木々を燃やしていく。
「よし、とりあえず3体処理できたし、フィリオラの方へ・・・」
「ちょっとヨスミ、あなた今度は一体何やらかした・・・ってなにその顔!?」
ふと隣を見ていたら、翼を顕現させて飛んでいたフィリオラがすんごい引き攣った表情を浮かべながら爆発が起きた場所を指さしながらそこにいた。
「ああ、これ大丈夫だから気にしなくていいよ・・・。それよりこれはハクアたんの頑張りが成した成果だよ!」
『えっへへー!わたしなのー!』
「は、ハクアちゃんがやったの・・・!?」
『うんっ!』
「・・・・・・・・・はああ~。」
何度目かの頭を大きく抱えながら、深くため息をつく。
「とりあえずこっちは対処できたから、フィリオラの掩護しに行こうとしてたんだ。」
「あー、こっちの方はもう大丈夫よ・・・。とりあえずアリスちゃんの掩護しにいくわよ・・・。あ、ハクアちゃん使うの禁止だからね」
「えー」
「えーじゃありません!いいですね!?」
敬語・・・あ、これガチ切れ寸前の奴や。
「ハイ、ワカリマシタ。」
「よろしい!それじゃあさっさと行くわよ!」
「はあ・・ぁああああ・・・!!」
黒鎌を大きく振りかぶり、暴喰蟲を切り裂こうとするが、寸での所で避けられ、猛毒針を飛ばしてくる。
黒鎌を回転させて全て弾き落とすと、黒鎌から両鉤爪へと形を変え、一気に距離を詰めながら双撃を繰り出す。
今度は全てが当たり、技を連携させながら回転させて引き裂きながら最後に蹴り飛ばした。
暴喰蟲は回転しながら吹き飛んでいき、木々を数本薙ぎ倒した後一気に飛び上がって猛毒針を飛ばしていく。
両鉤爪を振り回して叩き落とし、再度黒鎌に形を変え、大きく振りかぶりながら暴喰蟲へと投げ飛ばした。
回転しながら飛んでいき、黒鎌は横腹に深々と突き刺さった。
「ギュウウウ・・・!!!」
そのまま一気に距離を詰め黒鎌を強く握ると、抜きながら切り裂いた。
緑色の体液が飛び散りながら、吹き飛ばされていく。
だがすぐさまに体勢を立て直し、先ほどよりも多くの猛毒針を飛ばしながら距離を取る。
「にがさ、ない・・・!!」
黒鎌から今度は黒鎖へと形を変え、大きく伸びていく黒鎖が暴喰蟲の前足に巻き付き、手元へと引き寄せるとそのまま強烈な蹴りを繰り出し、遠くの方へ吹き飛ばした。
土煙があがり、姿が完全に覆われた。
「・・・これで、終わり・・。」
ゆっくりと近づいて止めを刺そうとした時、
「ギュウンッ・・・!!」
「な、・・・!?」
何の予兆もなく、土煙が一瞬にして晴れたと同時に暴喰蟲が突進してきた。
頭についていた角が腹部に刺さり、そのまま大岩や樹木を砕きながら吹き飛ばされ、そのまま頭を大きく振られ、黒い球体へと叩きつけられた。
「かはっ・・・」
油断、した・・・。
あそこまで、追い込んだからもう動けないと、思っていたのに・・・。
はやく、立ち上がらなきゃ・・・早く、はや、く・・・
ふと顔を上げると、すぐ目の前に猛毒針が迫っていた。
「あ・・・」
~ 今回現れたモンスター ~
竜種:暴喰蟲
脅威度:Aランク
生態:ありとあらゆるものを喰らい尽くし、また喰らった魔物の能力を自分の力にすることができる。
故に喰らった魔物が多ければ多いほど多彩な技を使うようになるので、見つけ次第すぐに討伐しなければ手に負えない存在となってしまうため、早急に手を打たねばならない。
また魔喰蟲とは違って、身体的能力は格段に上がり、また甲殻の防御力は更に硬質化しており、背中のみに生えていた毒針は猛毒の針と化し、また頭の方にも猛毒の角が生えている。
それにより、突進時の危険度が跳ね上がっており、もし直撃してしまえば、強烈な角による一撃に合わせ、猛毒によるデバフもついてくるので瀕死は免れないぞ!