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どうしてこうも幸せな時間は続かないんですの?


「あ、お爺様、お婆様!御2人ともおはようございます!」


そう言って食堂の前で挨拶をしながら駆け寄ってくるジェシカの姿が見え、廊下の向こうから腕を組み、互いの体を密着させながらやってきたレイラたちは温かく彼女を迎い入れる。


「おはようですわ、ジェシカ。よく眠れまして?」

「おはよう、ジェシカ・・・。」

「はい!それはとてもいい夢が見られました!・・・ところで、お婆様のお肌がとても艶々になってて、それに比べてお爺様はなんだかげっそりとなされているような?大丈夫ですか?」

「あはは・・・、僕なら大丈夫だよ・・・。」

「うふふ、さあジェシカ。食堂に入りましょう?」

「え?あ、はい!あ、ディア様は?」

「あの子ならハクアたちと一緒にまだ寝ているよ・・・。」

「そうでしたか!」


そういってジェシカはヨスミとレイラの手を握り、3人揃って食堂の中へと入っていった。

ヨスミとレイラはお風呂で交えた後、更にベッドに戻るとそのまま一晩中続けていたのだ。


レイラが言った、体力にだけは自身があるという言葉は一切の偽りはなく、ヨスミもまた神から作られた体が故に多少なりと体力はあるはずだったのだが、どうやら彼女の方が若干勝っていたようだ。


極限まで絞り尽くされてもなおお互いがお互いを求め合う純粋な愛の営みは、たった一夜という短い時間では足りなかったのだろう。


その後、食堂で食事を終えたレイラたちは3人共にレイラの部屋へと戻ると、すでに起きていたディアネスはミラと共に遊んでいた。


だが一つ変わった点とすれば・・・


「ディア・・・、翼が生えて・・・!?」

「あい!」


そう、ディアの背中から小さな竜翼が生えていたのだ。

ただ右翼は黒く、左翼は白くそれぞれ染まっていた。


そしてディアはすでに竜翼による飛行のやり方はすでにマスターしているようで、ミラと共に部屋の中を自由自在に飛び回っていた。


部屋に入ってきたレイラたちに気付いたディアネスはヨスミへミサイル化のように突っ込んでいき、そのままヨスミの腹部へ直撃し、呻き声を上げながら共に吹き飛んでいった。


『オジナー!レイラー!おかえりなの!』

「こんにちわ、ハクアちゃん!ミラちゃん!」

『ジェシカ!こんにちわなの!』

「ぴぃっ!」


3人はとても楽しそうにはしゃぎ、レイラは吹き飛んでいったヨスミとディアネスの元へと向かう。


「あなた、無事ですの?」

「ふっ・・・、久々な気がするよ、この感じ。ハクアミサイルに負けない良い一撃だったぞ、ディア。」

「やったぁー!」

「あなたったら・・・。ほら、わたくしの手を取ってくださいまし。」


ディアを優しく抱きながら頭を撫で、差し出されたレイラの手を取って立ち上がる。

そんな和気あいあいとした時間を過ごしていた時、部屋をノックする音が響く。


「誰かしら・・・?」

「さあ、僕が出るよ。」

「いいえ、わたくしが出ますわ。この部屋はわたくしの部屋ですもの。」

「そうかい?それじゃあお願いするよ。僕はディアたちの相手をしているから。」


そういってヨスミはディアと共にジェシカたちの方へと向かっていった。

レイラは壁に掛けられた鏡に映る自分を見ながら身だしなみを整え、扉の前に立つ。


「はい、どちら様ですの?」

「エレオノーラなのです~。御2人にお話があってきたのです。今お時間よろしいなのです?」

「あら、エレオノーラ。ええ、もちろんですわ。ただわたくしたちの他にもジェシカやハクアちゃんたちがいらっしゃるの。大丈夫ですの?」

「・・・はい、大丈夫なのです。」

「わかったのですわ。さあ、お入りなさいですの。」


そういって扉を開くとそこにはエレオノーラの他に、リヴィアメリアが傍に立っていた。

だが彼女の表情はとても芳しくない。


部屋に通された2人に気付いたヨスミたちは何やらただならぬ気配を感じ、場が静まり返る。


2人はそのままソファに座らされ、その対面にレイラとヨスミに座った。

ジェシカはヨスミから託されたディアを優しく抱きながらベッドに腰掛け、事の展開を見守っている。


「それで、そんな重々しい雰囲気を出しながら一体どうしたんですの?」

「あの・・・」

「エレちゃん、ここからは私が話すから。」

「あ、はいなのです・・・。」

「さて、話と言うのは私の兄であるメナスお兄様の件についてなの。【眷属】との戦いで負った傷があまりにも深くて傷を治そうにも回復が間に合わないとわかったの。」

「・・・つまりこのままだと【古獣の王】は死んでしまうってことですの?」

「そういうことになる。そしてもし私とメナスお兄様に命を落としかねないほどの危機に見舞われた時、私たちを生み出した主様が目を覚ます様になっているの。」

「あなた達を生み出した、主・・・?」

「そう。あなた達の言葉で置き換えるなら・・・【青皇龍】。」


その名を口に出した瞬間、その場の空気が完全に凍り付いた。

ただ1人を除いて。


「まさか、そんな・・・」

「私たちは主様に生み出されたからわかる。あの御方が目を覚ましたのが・・・。」

「それは本当か!?」


リヴィアメリアに食いかかる勢いで彼女に迫る。

その目は真剣さを通り越して、完全に狂気に満ちていた。


「え?あ、はい・・・。主様から声が脳内に流れてきたんです。」


” 今から行くね。だからもう少しだけ耐えて ”


「・・・どうやら君たちを案じているようだね。」

「はい。メナスお兄様が死んでしまえば、半身である私も連動して死んでしまいますから。そうなった場合、【怪物】や【眷属】への対抗手段を失ってしまうことになるの。だから主様に直接治してもら」

「パパぁー!青お姉様がここにくるわ!!」

「うことにな、って・・・」


突然窓が開け放たれ、病室から慌てて抜け出したかのような格好で姿を現したフィリオラ。

フィリオラの登場に全員の視線が注がれる中、彼女もレイラの部屋の雰囲気から全てを察していたようだ。


「・・・たった今、メリアから話を聞いたところだよ。ところでフィリオラ、君は一体何をしているんだ?」

「え?あ、えと・・・いや・・・その、ね?」

「フィーちゃん?確かあなたは絶対安静って言われていなかったかしらぁ・・・?」


と心配そうにフィリオラを見ているヨスミの横で、笑顔を浮かべたまま徐々に般若の顔へと変わるレイラの変貌にフィリオラは我慢してきたために全身に走る痛みも相まって、冷や汗が溢れ出す。


「えとぉ・・・そのぉ・・・お、お母様ぁ?ひゅあっ!?」


突然フィリオラの体が浮かんだと思った次の瞬間、彼女はレイラのベッドに寝かされていた。

そしてそのまま布団に包まれ、ロープで縛られていた。


その横でジェシカがフィリオラを包んでいる布団をポンポンッとあやす様に叩いた。


「そこで安静にしていてくださいまし。もし無理にでもその布団から抜け出そうとしたら・・・その時は容赦致しませんわ。」

「は、はい・・・!」

「さて、話の続きを御願いできるか?」

「え?はい。メナスお兄様を治療すべく、目を覚ました青皇龍様が今現在、回復のために眠っている<メナストフ港町>に向かってきているみたい。」

「いつ頃に来るかわかるか?」

「1~2時間後には到着していると思う。」

「・・・これは大事になりますわ。」


そういってレイラは立ち上がり、部屋を出ていこうとする。


「レイラ?ユティス公爵夫人らにも知らせに?」

「そうですわ。いくらドラゴンへの偏見が少ない獣帝国とはいえ、四皇龍の存在は非常に恐れられているのは間違いないですの。青皇龍が突然、獣帝国に姿を現したとなれば、きっと獣帝国を滅ぼしに来たと勘違いしてしまいますわ。そうなれば・・・」

「・・・過去一大きな戦いが起こるかもしれないということか。」

「ええ。かもしれない、ではありませんの・・・、()()に起きますわ。」

「・・・わかった。ならば僕も協力するよ。君はユティス公爵夫人たちに。僕はガヴェルドらに伝えてくる。」


そういってヨスミも立ち上がった。


「え、大丈夫ですの・・・?」

「心配はいらないよ。彼らは僕に決して敵わないよ。エレオノーラ、君はレイラと共に。メリア、君は僕と一緒に来てガヴェルドに説明を頼む。」

「わかった。エレちゃん、どうかよろしくね。」

「は、はいなのです・・・!」

「ジェシカ。君はここでディアたちのことを頼むよ。」

「わ、わかりました・・・!」

「ぱぱぁ・・・?」


とても心配そうな表情を浮かべながら、ディアがヨスミの所に飛んでいく。

ディアを受け止め、そっと頭を撫でながらよしよしとあやしている。


「ここでジェシカお姉ちゃんと一緒に遊んでいて待っててくれ。すぐに戻るよ。」

「うう・・・、きをうけてぇ・・・」

「わかったよ。帰ったら一緒に甘いお菓子でも食べようか。」

「っ、うん!」


ヨスミはジェシカへディアを託し、レイラの元に向かうと軽くキスを交わす。

息をするように行われる惚気、まるでそれが日常的にやっているのではと思わせるほど自然に行われたため、その場にいた誰もが唖然としていた。


そしてそれはキスをされたレイラも同様だった。


「それじゃあまた後で会おう。」

「・・・え?あ、はいですの!気を付けて行ってきてくださいまし!」

「ああ。それじゃあメリア、行こうか。」

「わかった。」


そしてメリアを連れたヨスミは<転移>でその場から姿を消したのだった。

残されたレイラたちも気を取り直し、話を詰めていく。


「それじゃあエレオノーラ、一緒に行くのですわ。」

「はいなのです。」

「ジェシカ、あなたには色々と押し付けてしまってごめんなさいですの。」


ジェシカへ謝罪をしながら歩み寄り、ベッドに腰掛けるジェシカの目線に合わせてしゃがみ込んだ。

だがジェシカはレイラの手を握り、笑顔を向けた。


「大丈夫です、お婆様!私、お婆様たちの役に立てるならどんなことだって頑張ります!」

「ありがとう・・・、ジェシカ。あなたのような孫娘を持ててわたくし、とても幸せですわ。」


そういってレイラの背中を押す。

そしてレイラはジェシカの腕に抱かれているディアのほっぺに手を添え、その額に軽くキスをすると微笑んだ。


「ディア、すぐに戻りますわ。それまでみんなと遊んでいてくださいまし」

「ママ、いってらっちゃい!」

「ええ、行ってきますわ。」


そしてレイラもエレオノーラと共に部屋を出ると、ユティス公爵夫人がいるであろうジャステス公爵の寝室へと向かった―――――。



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