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それも<フィリオラブレス>・・・なんですの。


「<身体強化(フィジカルブースト)>・・・、<魔力強化(マジカルブースト)>・・・。ではいきます!」


自分自身に強化魔法を掛け終えると、意を決して<氷結した巨壁>から飛び出す。

それと同時に全方位に飛び散った黒い水たまりから生えた<黒い触手>から、無数の<黒い光線>が放たれる。


『そこにいたかぁ・・・!さっさと死ねぇ!』


そこへ更に【眷属】の本体から極太光線が放たれるもそれを寸での所で避けながら、反撃とばかりに鎖蛇の口から【ドラゴンマナ】を込めた<竜の吐息(ドラゴンブレス)>を放つ。


極太光線を放っているがために避けることはできず、そのまま体の側面へ直撃した。


『いだぁぁぁあああ!?貴様は人間だろうがぁ・・・!?なんで ”竜の力” を保持しているんだぁ・・・!?』

「ちょっとしたご縁がありまして、お借りしているのです。」

『おかしいだろぉ・・・!?人間共の裏切りで、竜族は人間を深く憎んでいたはずだぞぉ・・・!?なんで人間なんかに手を貸していやがるぅ・・・!』

「そうですね・・・。でも、私は許されたみたいですので!」

『くそがぁ・・・!!だが忘れてはいないよなぁ・・・!私には【竜殺しの瞳】があるのだぁ・・・!貴様の攻撃は無意味なんだぞぉ・・・!?』

「もちろん、存じ上げております。でも気になるじゃないですか。一体どれほど耐えられるか・・・。あなたはどこまで耐えられましょうか・・・?」

『やれるものならば、やってみせろ人間がぁ・・・!!!』


【眷属】は狂ったように暴れ始め、背中に生えた4本の触手からも<黒い光線>がハルネに向けて放たれるも、自らの両手と6体の鎖蛇の口から練られた魔力の塊をバリアに変え、周囲に生えた無数の<黒い触手>や本体から放たれる<黒い光線>をなんとか受け流しながら、残りの2体の鎖蛇から<竜の吐息>を放ち、反撃していく。


明らかに【眷属】らの方の手数が多いにもかかわらず、ここまで大々的にハルネが立ち回れている原因はたった一つ。


「<神速>・・・!」


ハルネが【眷属】の本体を攻撃するたびに、周囲に飛び散っていく黒い飛沫は天井や地に付着すると同時にそこから<黒い触手>が生えてくる。


だが奴らが攻撃をしようと触手の先端が裂け、<黒い光線>を放とうとした次の瞬間、決して捉えられぬ神のような速度を持って移動しながら、<黒い触手>を一刀両断し、更には根元を切り取って宙に浮かすと同時に強力な斬撃によって、黒い水たまりをその衝撃によって細切れに消し飛ばす。


周囲に存在する<黒い触手>らを次々と処理していき、またハルネの攻撃によって飛び散った黒い飛沫がどこかに定着する前に空中で消し飛ばしていく。


そのおかげでハルネへ降り注がれる攻撃は徐々に少なくなっていき、今では6体の鎖蛇が攻撃の方へと回すことができた。


『なぁぜだ・・・!なぜ、私の攻撃が効かぬ・・・!私の圧倒的弾幕の中で生き残れるはずが・・・、いや、私の弾幕が、薄くなっている・・・?!ばかな、何をやっているのだ・・・!?』


と視線をハルネから周囲に付着させた<黒い触手>の方を見ると、明らかにその数が減っていた。


『馬鹿な・・・!?一体いつ、こんなにも減らされて・・・・っ!!』


そこにレイラが次々と<黒い触手>を処理して回っているところを発見した。


『またしても・・・またしても羽虫の分際でぇ・・・私の邪魔をするかぁ!!』


とレイラの方へ本体からの極太光線を放とうとするが、突如顔面を貫いた<竜の吐息>によって攻撃が中断させられた。


『ああああああああ!!!私の顔がぁ・・・私の宝物がぁあ・・・!!』

「よそ見をしていた罰です。あなたのお相手は私なのを忘れましたか?」


相手を挑発するように告げ、もう一度同じ場所へ攻撃を繰り出す。

だが今度は黒い手で白い破片らを覆い隠し、ハルネの攻撃を防ぐ。


『調子にのるなよぉ・・・!!人間風情がぁ・・・!!』


ハルネは胸騒ぎを感じ、咄嗟に攻撃に回していた鎖蛇を全て防衛へと回し、高密度の魔力で練られた魔法障壁を張る。


直後、【眷属】の体が二つに大きく裂け、その間から黒い塊が出現するとどんどん大きくなっていき、その黒い塊から膨らむように広がりながら湾曲した無数の黒い光線が放たれ、それらの光線はハルネとレイラへそれぞれ伸びていく。


レイラへまっすぐと伸びてくる<黒い光線>を回避しようと跳躍するも、それに合わせて<黒い光線>もレイラの方へ曲がっていく。


「追尾機能付きですの・・・!?」


次々と自分へ迫ってくる<黒い光線>を黒妖刀で次々と受け流そうとするが、迫ってくる数があまりにも多く、また一つ一つを受け流す度に腕にかかる負担も多かったことから、なるべく避けるように回避行動を取っていた。


だが追尾してくる<黒い光線>は避けても避けてもその軌道を曲げてどこまでも追ってくる。


「質の悪いストーカー・・・ですわっ!」


レイラは必死に迫ってくる<黒い光線>を全て、魔力で包み込んだ黒妖刀を持って斬り伏せていく。

一つ一つ斬る度に腕にかかる負担が増えていき、やがて刀を握る手の力が弱まっていく。


(まずいですわ・・・。毎日鍛錬していたとはいえ、わたくしの刀を扱う技術はまだまだ半人前ですわ。今は力だけで無理やり誤魔化しているだけ・・・。このまま腕に負担がかかり過ぎたら、刀で何も切れなくなってしまうのですわ・・・。)


そして自分を追尾してきた<黒い光線>を全て受け流すと、すでに息が上がっていた。

だがそれを【眷属】に悟られてしまえば、集中的に攻撃されてしまうだろう。


そんなレイラの様子を感じ取ったハルネは防御に回していた鎖蛇を全て攻撃に回すと、【眷属】を攻撃する頻度を増やし、ほぼ捨て身の状態で<竜の吐息>を放っていく。


「さっさと死に晒しなさいな・・・!!」

『ぎいぃぃぃいいいい・・・!!人間風情がぁ・・・!!』


レイラからハルネへとターゲットが変わり、その攻撃の矛先が全てハルネへと降り注がれる。

だが防御を捨てて、全てを攻撃に回しているので回避するしかなく、またその圧倒的手数に回避行動だけでは全てを避けることはできない。


「ぐぅっ・・・!!」


ハルネの体は無慈悲なる攻撃に晒され、メイド服は焼かれ、肉を貫き、骨を砕いていく。


だがそれでも、限界が近いレイラにこれ以上負担を掛けてしまえば、自分が攻撃して【竜殺しの瞳】をなんとかさらけ出すことに成功できたとしても、レイラが十分な力を発揮できずに作戦が失敗する可能性が高まってしまう。


(私は、こんなところで・・・死ねないのです・・・!レイラお嬢様と・・・ヨスミ様の子である・・・ディア様を、・・・また2人の間に生まれた子を、私の手で育てるまでは・・・!!)


もはや意地と気合だけだった。


全身を次々と貫いていく<黒い光線>、その激痛に何度も何度も意識が飛びそうになるもここで自分が気絶したらそれこそレイラが立てた作戦は失敗に終わる。


それだけは・・・、それだけはこれまでずっと彼女の傍に寄り添ってきたレイラの【専属メイド】として・・・


「許されないわ・・・っ!!!」


全身を巡る魔力を全て込め、腰から抜いた2対の鎖斧へと注ぐ。

それぞれ4体の鎖蛇はまるで竜翼のようにハルネの背中から広がると力強く羽ばたき、一気に距離を詰める。


『ばかめぇ・・・!何度も【ドラゴンマナ】を含めた攻撃をしてこようが、私には一切ダメージが入らない事を、なぜ理解しないのだぁ・・・!?』


【眷属】は完全に油断していた。

その瞬間を、ハルネは心の底から待っていた。


攻撃してこいと言わんばかりに、自ら首を差し出すその瞬間を。


何度も何度も【ドラゴンマナ】による<竜の吐息>を浴びせ続け、ダメージを与えられなくとも決してその攻撃の手を緩めず、あたかも自分はそれしか攻撃手段がないと、奴に思わせるために・・・。


「ならば、討たせていただきましょう。あなたの首を・・・。」


抜いた鎖斧を合わせ、鎖を螺旋状に巻き付けて長柄状の斧槍の形状に変えた。


そしてハルネが展開した鎖蛇の翼からは【ドラゴンマナ】だけが放出していき、それを原動力にして、その速度を一気に上げる。


それと同時に斧槍を構えたまま大きく体を捻り、人が出していい速度を軽く超えた超高速により一気に縮め、その超高速と体の回転も加えた繰り出される、純粋なる【マナ】を纏わせた鎖斧の一撃。


「<処断の一撃(クビカリ)>!」


それは確実に【眷属】の白い破片状の仮面に叩き込まれた強烈な一撃は、一瞬にして【眷属】の頭をミンチ状へと吹き飛ばし、白い破片もバラバラに飛び散っていく。


またその一撃は頭だけじゃなく、上半身を形作っていた黒い液状体も吹き飛ばした。

それと同時に、吹き飛んだ部分の断面に【竜殺しの瞳】が再度姿を現した。


『アアアアアアアア!?』

「今、です・・・レイラ、お嬢・・・さ、ま・・・・・」


ハルネはそのまま止まる気力は残っておらず、その勢いを止めることができないまま吹き飛んでいく。


鎖蛇を形成していた【ドラゴンマナ】も、この一撃を喰らわせるために全て放出したために枯渇したせいか、維持できなくなった鎖蛇はただの鎖へと戻り、ハルネの体をその衝撃から守ることもできない。


あのまま壁に激突すれば、いくらハルネだろうが無事じゃすまないだろう。

だからといってここでハルネが決死の思いで作り出した絶好のチャンスを逃してしまえば、彼女の決死の思いに泥を塗ることになる。


「ハルネの馬鹿・・・バカ、ばかぁ・・・・!大馬鹿ものですわぁ・・・!!」


助けにいけないことに無念さを感じながらも、その瞬間に全てを掛ける。


【幻想眼】を発動させ、全身の魔力を【フェアリーマナ】へと変換させる。

そして、震える足や腕に鞭を入れるように再度力を込め、限界を超えるべく叫んだ。


「<神速ぅ>・・・!!!」


叫んだのも束の間、レイラの姿が消えると同時にその場にはレイラの<神速>によって発生した強烈な衝撃波が<黒い触手>もろとも吹き飛ばす。


次の刹那、【眷属】の体の断面から見えていた【竜殺しの瞳】は斬り抜かれ、奴の体から完全に引き剥がされた。


そしてそのまま刀の反り部分で【竜殺しの瞳】を打ちだした。

放物線を描き、【竜殺しの瞳】は回転しながら飛んでいく。


「フィーちゃあん・・・!!!」

「お母様・・・!!」


フィリオラは叫んでいた。

一体何を叫んでいるのだろう・・・?


ハルネの決死の思いで【竜殺しの瞳】を体内からさらけ出し、それをわたくしが斬りとってからそのまま打ち出したはず。


レイラはふと打ち出した【竜殺しの瞳】の方へと視線を向ける。


「・・・え?」

『ざぁんねん・・・!』


そこにはすでに下半身部分から大きく伸びた黒い液体がもう一度【竜殺しの瞳】を取り込みかけており、またそんなレイラをあざ笑うかのように【眷属】の顔があった。


そのままレイラの首を絞めあげ、そのまま体や手足も動けないように触手で縛り上げる。


胸や腰のラインといった、体の節々を強調させるような、嫌らしい縛り方をし、舐め回す様に虚無の穴となっている目で苦しそうに悶えるレイラを見つめる。


「ぐっ・・・!」

『最初から私の狙いはお前なんだよぉ・・・。竜の力は【竜殺しの瞳(これ)】のおかげで一切効かないわけだぁ・・・。ただの人間の攻撃もダメージを受ける事はなぁい・・・。まあ、あそこまで体を吹き飛ばされたのは吃驚したがねぇ・・・?でもどうせ、狙いは【竜殺しの瞳(これ)】だったんだろぅ・・・?なら、ある程度消耗させてから隙をみせてぇ・・・それに食らいつく瞬間を狙えばぁ・・・ほぉら、こんな簡単に一番の脅威であるお前が釣れるってわけだぁ・・・!』

「がぁ・・・っ!?」


そんな・・・読まれて、いたんですの・・・?

そこまで、頭が回る知恵を・・・持ち合わせていたんですの・・・?


だめですわ・・・、ああ・・・せっかく剥いだ【竜殺しの瞳】が・・・取り込まれて・・・あれ?


『では羽虫の力を受け継ぐ人間よぉ・・・、このまま私の養分と・・・あれ?』


その時、レイラと【眷属】は気づいた。

そこに見えていたはずの【竜殺しの瞳】がいつの間にか消えていたことに。


そしてレイラの体を縛り上げていたはずの触手は何もない空間を掴んでおり、レイラ自身はフィリオラの傍で横たわっていた。


『・・・は?なぜ羽虫はどこにいったぁ・・・?いや、それよりも【竜殺しの瞳】はどこにいったぁ・・・?』

「<白桃聖焔砲花(フィリオラブレス)>!!!」


すかさずそこへ、10つの魔法陣がまっすぐ【眷属】へと伸び、フィリオラの口は喉まで避け、そこから心臓が露わになっている。


両手、竜腕、両足、竜脚、そして尾と竜翼全てを使い、体を地面に固定させた状態で、フィリオラの心臓から放たれた超高密度に圧縮された純度100%の【ドラゴンマナ】によって放たれたブレスは、展開している魔法陣を通過するごとに更に肥大化していき、その威力によって全力で体を固定しているにも関わらず、フィリオラの体は徐々に後退している。


そして最後の魔法陣を通過した瞬間、魔法陣の大崎の5倍もの巨大な光線となって、【眷属】を包み込むとそのまま壁ごと貫いた。


疲労が限界を迎え、意識が朦朧とする中、レイラはフィリオラの攻撃を見ながら意識は暗転した。

その時、フィリオラへとある感情を抱かずにはいられなかった――――――。



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