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これが、【眷属】に勝つための道筋ですわ・・・!


「うぐっ・・・!!」


左胸を貫かれたハルネだったが、すぐに鎖蛇らで360度全てを覆い尽くす魔力障壁を張り、何とか追撃を免れた。


すると喉の奥から熱いものがこみ上げてくると「ゴホッゴホッ」と血を吐き出し、すぐさま貫かれた左胸に手を当てながらもう片方の手でマジックポーチから回復ポーションを取り出すと、半分は飲み、残りの半分を貫かれた傷口へとぶっかける。


回復に伴う強烈な痛みが全身を襲うもなんとか堪え、ゆっくりと立ち上がった。

貫かれた激痛と、回復痛によって意識が朦朧とするも気をしっかり保ち、体勢を立て直す。


だがその時にはすでに自身が張っていたバリアは黒い光線を集中的に浴びており、無数にヒビが入っていていつ壊れてもおかしくない状況だった。


そのため、ハルネは立ち直ってすぐにバリアを解いて全力で回避行動を取りながら、比較的<黒い触手>が少ないエリアへと移動する。


「お母様・・・そろそろ、破られるわ・・・!」

「わかりましたわ。3秒数えて、ハルネの所まで一気に移動するのですわ!・・・可能な限り、移動しながら<黒い触手>たちを減らしながら行きますわよ!」

「オーケー・・・・!」


そしてレイラとフィリオラは、互いに顔を合わせながら3秒一緒に数える。


「「・・・3、・・・2、・・・1!」」


1と言い終えた直後、フィリオラは張っていた魔力障壁を解くと同時に駆け出していく。


フィリオラは背中から竜翼を顕現させると、それを盾代わりに使いながら黒い光線を受け流しつつ、両手と竜腕の4本それぞれに魔力を溜めると次々に<黒い触手>へと白桃色に燃える魔力弾を連続して放ちながら移動していく。


レイラは全力で移動しつつ、<黒い触手>に自分の移動先を読ませないよう、<神速>を交えて不規則に動きながら次々と切り落としていく。


『弱いなぁ・・・、本当に人間どもは弱すぎるなぁ・・・。やはり我らを倒すことができるのはあの忌々しい神どもとその力を授かりし者どもだけだなぁ・・・。人間共の利用価値なんざ、【無垢なる魂】ぐらいしかないなぁ・・・。さっさと殺すかぁ・・・。』


そう呟くと真っ二つに割れていた状態からゆっくりと1つに合わさっていき、元の姿へと戻る。

そして、背中から生えた4本の触手を1つにまとめると巨大な螺旋状の槍へと姿を変える。


『これならあのバリアごと貫けるよねぇ・・・?』


ニヤリと笑い、その槍の矛先をゆっくりと定め始めた。

そんな【眷属】の様子を見たフィリオラが焦った様子で、それぞれ4つの腕に練っていた魔力の塊を一つにまとめる。


「させない・・・・!<竜の波動砲(ドラゴンブラスト)>!!」


フィリオラから放たれた波動はまるで強烈な光線のように【眷属】へと一直線に伸びていく。

螺旋状の槍を構えていた【眷属】は、フィリオラから放たれた波動砲の光に呑まれていく。


だが波動砲が消え、光が消えたそこには何事もなかったかのように螺旋状の槍を構えたままの【眷属】がそこにいた。


「無傷・・・!?」

『・・・あ~、君はドラゴンかぁ?くきききき!!なんと、なんと運の良い事か!』


そういうと、体内から何かを取り出し、見せびらかす様に見せたそれはどこかで見たことがある大きな魔石がくっついた白い装置だった。


『人間が作り出した”ガラクタ”がまさかこのように役に立つなんてなぁ!』

「まさかそれは・・・【竜殺しの瞳】!?」

『お前たちドラゴンを殺すために人間たちが作り出したんだっけぇ?くけけけけけ!!そのおかげで私はこのように無傷なわけだぁ!皮肉なものだよなぁ???結局、自分たちが撒いた種だというのに、巡り巡って私を助けてくれるアイテムになっているなんてねぇ??くけけけけけ!!!』

「なんであれが・・・なんでそんなものを、お前が持っているのよ・・・!!」


フィリオラが今まで見せたことのない怒りを露わにしていた。

フィーちゃんがあんなにも怒るなんて、それほどあの【竜殺しの瞳】っていうアイテムはまずいモノなのだろうか・・・?


でもあそこまで怒りを見せているんだ、壊した方がいいかもしれない。


そう思ったレイラは<神速>で一気に【眷属】との距離を縮め、フィリオラへ見せつける様に晒している【竜殺しの瞳】を奪い取ろうと、【竜殺しの瞳】を見せている触手を黒妖刀で切り落とす。


『ぎぃやああ!?な、なんだぁ・・・!?』

「取りましたわ・・・!!」


それと同時に【竜殺しの瞳】に触れようとした時、フィリオラが叫んだ。


「お母様!!それに触ったらだめ!!」

「!!」


その言葉にすぐさま反応し、受け取ろうとした手を抜群の反射神経で引っ込めると同時に黒妖刀の鞘を掴むとそのまま遠くの方へ打ち飛ばした。


「ホームランですわぁ!!」

『あああ!?何してくれてるのぉ~!?』


打ち出された【竜殺しの瞳】は放物線を描いて飛んでいき、フィリオラの近くへと落ちる。

だがすぐさまその辺りに生えていた黒い触手が集まっていき、そのまま黒い水たまりの中に溶ける。


【竜殺しの瞳】を沈めた黒い水たまりは徐々に【眷属】の本体へと近づいていく。


するとフィリオラは再度、4つの腕を用いて魔力を圧縮させていき、高密度になった魔力玉を【眷属】1点に向けて放つ。


巨大な波動砲となったそれはもう一度、【眷属】を包み込む。


『ぎゃあああぁぁぁあああ!?』


【眷属】から上がる悲鳴からして、今度はしっかりとダメージを与えている様だった。


ダメージが、入った・・・?


ジャステス公爵の攻撃はモノともしなかったのに、フィーちゃんの攻撃はあんなにも効いている。

【眷属】の体内には【竜殺しの瞳】を隠し持っていて、さっきの奴のセリフから照らし合わせると・・・。


「【ドラゴンマナ】が弱点・・・ってことですの?」


もしそうなら、【ドラゴンマナ】を持たないジャステス公爵の【究極技(アルティメットスキル)】を受けて物ともせず、フィーちゃんの攻撃にあんなにも悲鳴をあげるとなれば、辻褄があう・・・。


でももしそうならなぜわたくしの攻撃にもダメージを受けていたんですの?

いや、確か【眷属】は忌々しい神とその力を授かった者にしか倒せないなんて仰っておりましたわね・・・。


つまり、【ドラゴンマナ】を宿すドラゴンと、【フェアリーマナ】を宿すわたくしの2人しか奴に有効打がない・・・ということですわね。


そして今、フィーちゃんの攻撃を受けて大きく怯んでいる今こそ・・・!


「絶好の攻撃チャンスですわ!!」


そう叫ぶと同時に、全身の魔力を全て腕から黒妖刀へと流し込んでいく。

黒妖刀の鞘にはまるで無数の花々が浮かび上がり、ゆっくりと刀を抜くと刀身はなく、代わりに鞘の穴からは無数の花びらが飛び出してきた。


そして、レイラの周囲を、まるで踊っているかのように白い花びらが舞い上がっていく。


「神速一刀・・・・!<妖精の悪戯(フェアリアルダンス)>。」


周囲に舞い散る花びらがレイラの背中に集まり、それはまるで妖精の羽根のように形作ると一気に弾け、レイラを中心に大きな花びらの舞い風が吹き荒れる。


それと同時にレイラの姿は消え、その花びらは【眷属】を包み込む。


『な、なんだぁ・・・?これは・・・』


とその花びらに黒い手の指で触れようとした時、花びらに触れた指が切り落とされた。


『ひぎぃぃいいい・・・!?』


痛みに苦しんでいるのか、すぐさま手を引っ込めるが【眷属】の周りには白い花びらが無数に漂っており、花びらは次々と【眷属】に触れると同時に切り裂いていく。


その痛みに【眷属】の体がビクッと反応し、まるで【眷属】自身が躍っているかのように切り刻まれながら体をくねらせる。


『なんだこれぇ、なんだこれぇ・・・!?まさか、そんな馬鹿なぁ・・・!?これは【ドラゴンマナ】じゃないぃ・・・このジワジワいたぶるような痛みぃ・・・妖精どもの仕業かぁああ・・・!!』


と、突然【眷属】は怒りだし、螺旋状の槍が崩れ、そして体を小さく丸めると周囲に無差別に体から黒い棘を無数に突き出してきた。


その無差別な広範囲攻撃にはレイラも堪らず【眷属】から距離を取って離れるしかなかった。

花びらがレイラの姿を形作り、周囲に散って霧散すると同時に姿を現し、レイラは大きくため息を吐いた。


『くそ、くそ、くそ、くそぉ・・・!!またしても、またしても私の邪魔をするかぁ!羽虫共がぁ・・・!』


元の姿へと戻った【眷属】は狂ったように周囲へ無差別に、四本の大きな黒い触手から放たれる黒い光線を次々と放っていく。


「<氷結した巨壁(アイシクルウォール)>」


ベラドンナ卿はボロボロになりながらも、ジャステス公爵とミミアンを守るために大きな氷の壁を作り、奴の攻撃を防ぐ。


だが消耗しきった彼女の張った壁はあっさりと打ち砕かれそうになるが、そこへハルネが飛び込むように避難するとすぐさまベラドンナ卿に自分の魔力を注ぐ。


「ベラドンナ様、どうか私の魔力を・・・お使いください・・・!」

「ハルネ様・・・!」


ベラドンナ卿を通して流れていくハルネの魔力が、ボロボロになった氷の壁を更に強固なものへと作り上げ、完全に【眷属】の攻撃を防ぎきることに成功した。


奴の攻撃が止んだ後、周囲に飛び散った黒い水たまりはスライムのような姿へと変わり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら本体へと戻っていく。


そして全ての黒いスライムが本体に戻ったとき、レイラはある違和感を感じる。


「・・・さっきよりも体が少し小さいですわ。」


最初合った時の大きさから比べると、だいぶ体の大きさは縮んでいた。

そしてレイラは【眷属】の攻略法を見出していた。


そこへフィリオラが両翼を羽ばたかせながらレイラの所までやってきた。


「お母様、無事!?」

「わたくしは平気ですわ。フィーちゃん、少しいいかしら?」

「・・・何か考えがあるのね?ならっ!」


そういうとフィリオラはレイラを抱えるとそのまま飛び立ち、ハルネの所まで一気に跳躍した。


「ハルネ!」

「レイラお嬢様・・・!」


レイラは急いでハルネの状態を確認する。

左胸を貫通していた部分は服が破れて大きな穴が開いており、その肉体部分は大きな火傷痕のように生々しい生傷があった。


「一応応急処置は致しましたので問題ありません・・・。」

「もう、無茶ばかりして・・・!死んじゃったかと思ったんですわ・・・!!」

「もう、私がレイラお嬢様を置いて先に死ぬなんて、そんなもったいない事できません。もし死ぬときはレイラお嬢様の子供の乳母になってからじゃないと・・・」

「もう、こんな時に何を言っているんですの・・・!!」


顔を赤らめながらハルネを強く睨む。

だがそんな姿も可愛らしいと、ハルネは思わず笑ってしまった。


「うふふ。それよりもレイラお嬢様、その様子からして何か打開策でもあるんですね?」

「・・・ええ。【眷属(ヤツ)の弱点は【ドラゴンマナ】と、わたくしの持つ【フェアリーマナ】ですわ。だからその二つを用いた最大級の攻撃を奴に叩き込むことが出来れば【眷属】を倒せるかもしれませんですの。」

「でもお母様、【竜殺しの瞳】で私の攻撃は無力化されるわ。」

「なら、【眷属】の体を攻撃すればするほど、奴の体から黒い飛沫が飛んでいき、周囲のどこかに落ちますの。それを繰り返していけば、奴の体は小さくなってその体内に隠している【竜殺しの瞳】が浮かび上がってくるはず。それをわたくしがなんとかして奴の体から剥ぎ落しますわ。」

「なるほど・・・、お母様が【竜殺しの瞳】を剥いだその瞬間に叩き込めばいいわけね。」


だがそこでハルネが挙手しながら、1つの疑問をぶつける。


「ですがレイラお嬢様、【眷属】の体から落ちた黒い飛沫は<黒い水たまり>となってそこから奴の分身である<黒い触手>が生えてきます。あの体内に隠した【竜殺しの瞳】を見つけるまでそぎ落とすとなると、かなりの数の<黒い触手>が生まれる危険がありますが・・・。」

「・・・<黒い触手>の持つ攻撃は ”光線” か ”噛み付き” の2種類。近づけば噛み付き、離れれば光線が飛んできます。<黒い触手>は離れて光線を躱すよりも、近づいて噛み付かせた方が対処しやすいかと。光線は放たれてから瞬くよりも前に飛んできますから、躱す余裕がほとんどありませんので・・・。」


そういったベラドンナ卿の姿は奴らに黒い光線を放たれ、幾つか受けた後が生々しく残っている。


「なら、わたくしが<黒い触手>を相手にしますわ。ハルネ、あなたの体にも微かに【ドラゴンマナ】が流れているのはわかっておりますわね?それを持って奴に遠距離から攻撃をし続けてくださいまし。」

「それだとレイラお嬢様に大きな負担が・・・」

「大丈夫ですわ。わたくしの<神速>なら、奴が光線を放つ前に切り落とすことは簡単でしてよ?それに、ハルネ。あなたとの連携は、他の誰よりもわたくしが一番うまくできるって誇っていましてよ?」

「レイラお嬢様・・・。」


レイラの言葉に感銘を受けたハルネは意を決し、腰に携えていた鎖斧を抜く。


「フィーちゃん、あなたは力を温存して、ここぞって時に叩き込めるよういつでも準備をしててくださいまし。」

「わかったわ。・・・絶対に無理だけはしないで。」

「ええ、わかりました。」

「もちろんですわ。お母さんであるわたくしを信じてくださいまし?」

「・・・その言い方、いつか悪用しそうで怖いんだけど。」

「うふふ。それはどうかしら、ですわ。ベラドンナ卿、あなたはここで<氷結した巨壁>を張りながら2人を守ってくださいまし。」

「・・・わかりました。2人の事は命に代えてでも守ってみせましょう。」

「できればあなたも共に生還してもらいたいんですけど・・・。では、いきますわよ!」


レイラの掛け声で、今度こそ【眷属】に打ち勝つため、全員が行動に移した―――――。



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