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むしゃくしゃしてついやってしまったのですわ

修正前:あ~くさいですわ~

修正後:あ~、くっさいですわ~


先帝は迷うことなく、一直線にゲセドラが居ると思われる帝王の間へと進んでいく。

道中、失敗作たちによる襲撃はあったが左腕の枷に繋がれた鎖を伸ばして敵を掴み、一気に引いて目の前まで持ってくると鎖を巻き付けた拳で全力を持ってぶん殴る。


殴られた部分が一瞬にしてミンチとなり、その衝撃によって打撃を打ち込まれた部位を中心に吹き飛ばされて絶命していく。


中には上半身がそのまま吹き飛ばされてしまった個体さえもいる。

また鎖をそのまま鞭のように振り回して次々と敵を切り裂いていく。


たった1人で失敗作共を次々と薙ぎ倒していき、後続に続く者らのために道を切り開いていく様は、まさに ” 帝 王 ” であった。


「たった一人であの数の失敗作たちをいなしておりますわ・・・」

「お主らは決して、手を出すでないぞ。奴らは通常の攻撃なぞ通じん。」

「そんな・・・、でも先帝様の攻撃は通じているように見えますけど・・・」

「ふぉっふぉっ、ワシは特別じゃからな。それに、まだまだ現役、じゃっ!!」

「グォオオオオオ・・・・」


レイラとルナフォートの問いかけに曖昧な返答を返しながらも、失敗作らの攻撃を淡々と対処していく。


背後からは小型ゴーレムらが追撃してこようとするが、ハルネの【自動迎撃(オートアタック)】によって次々と破壊されていく。


更に小型ゴーレムに紛れて襲い掛かってくる失敗作は、突如伸びてきた鎖に巻き付かれ、そのまま先帝の元まで引っ張られると一撃必殺の拳で吹き飛ばされる。


まるで後頭部に目でもついているのかと思うほどの反応速度を見せた。


「・・・なるほど、こんな実力を持つ相手には正攻法は通じないから洗脳なんて手段に出たわけですわ。」

「おじいちゃんは正面からぶつかれば、誰にも負けないと思う!」

「ほんと、ゲセドラ王子は卑怯な御方なのです・・・。」

「まあそうしなければならないほどの強大な相手だったって思えば、先帝様の実力のすごさは際立ちますわ。」


そんなことを話しながら、気が付けば帝王の間に続く大きな扉前にやってきた。

先帝は躊躇なく扉に手を掛け、ゆっくりと押し開いていく。


徐々に見えてくる帝王の間。


その部屋の中心に浮かぶ大きな白い球体。

恐らくこれが小型ゴーレムの親玉であるとわかる。


その本体の周囲を回るように3つの輪を意識して小型ゴーレムが規則的に回っている。


そして部屋に入ってきた先帝らの存在を認識するとゆっくりと振り向いた。

その球体の中心には大きな赤い魔石がギラリと睨みを聞かせ、周囲を回っていた小型ゴーレムの動きが制止する。


「・・・あれが、ゲセドラ王子が乗ってきたっていう白いゴーレム。」

「忘れもしない・・・、あれが仲間たちを・・・!!」

「ふむ・・・。」


などと上空に居る白いゴーレムを見ていて気付くのが遅れたのか、ゲセドラ軍の兵士らが槍を構えて一斉に取り囲むように陣形を組んできた。


その中の1人が手を叩きながら、ゆっくりと隊列が割れていき、1人の上官らしい兵士がゲスな笑みを浮かべながら歩いてきた。


「おー、なんと。これは先帝様、それに・・・ああー、我らがプリンセス!あのクズと逃げ出したと聞いた時はどうしたものかと思っていましたが、いやあ私らの元に戻ってきてくれるとは・・・!ん?クズの姿が見当たらない・・・ということは、ふふ、ふははははっ!そうですか、死にましたか!」

「・・・ッッ!!!」


リヴィアメリアは怒りを露わにし、奴に攻撃しようとするもエレオノーラに抱き着かれ、すぐにハッと我に返る。


「そのまま攻撃してきてもよかったのに。まあ、その際は上にいる【竜狩りの自動戦闘兵器(ゴーレム)】によってすこーしばかり痛い目に合っていましたけどねぇ。まあ、私としては?そのまま大人しく私の元に来てくれればそれでいいんですけどね?」

「ふざけないで・・・!!」

「これも、我らの殿下のために・・・。して、見慣れぬ方々がいらっしゃるようですが・・・一体何用ですかな?」


そう言いながら、レイラ達の方を見る。

その瞳から感じるは、身の毛もよだついやらしい視線。


「・・・いや、そこの黒髪の女は知っている。ムルンコール港町ではどうやら私の弟が世話になったようで。」

「・・・まさか、あんたっ」


そう言いながら被っていた兜を脱ぐ。

中からはハイエナの獣人が姿を現した。


「あの後、あなた方を捕まえることに失敗した弟は失敗の責を受けるため、ボスに死刑にされたんですよ・・・。それを聞いた時、私がどれほど怒り、狂ったか・・・。まさかここで弟の仇を取れるとは思いませんでしたねえ!」

「・・・ねえ、レイラ。あんたたち、ムルンコールで何やらかしたの・・・??」

「アイツの弟が所属していた組織に捕まりそうになったからその仕返しをしただけですわ。アイツらが勝手に仕掛けてきて、わたくしたちは何も悪くないですわ。あなた、勝手に弟の仇とかほざいていらっしゃいますけど、そもそもあの町の腐敗は深刻なレベルで酷いモノでしてよ?そんな中、殺す殺されるで仇だのなんだの言ってられるなんて、あなたはよっぽどの自己中でどうしようもないクズですこと。ほんと、器の小さい雄なんて、見苦しすぎて見てられるものではなくってよ??そんなことにこだわりすぎるから乳臭すぎて、あなたの吐く息の臭さったらどぶ以下すぎて傍に近寄りたくもありませんですの!あ~くっさいですわ~!」

「うっわ~・・・。久々に聞いたわ、レイラの ” 淑女さま ”・・・」

「・・・・・・・・・。」


完全に相手を煽るような言葉を選んで話すレイラ。

やがて蔑んだ瞳を向け、扇子で口元を隠しながらも、見下す笑みを浮かべているのは明らかだった。


「あら、そこで黙りこくって返す言葉もないってことは図星ですの?まあこれは大変ですわ!この場にいる全員が、あなたは器の小さい、見苦しい姿を晒した、乳臭い臭いを漂わす、どーしようもないほどの雄であることが肯定されてしまいましたわ!もしここで反論でもしてくるのならば、より一層わたくしの言葉は真実味を帯びてしまいますわね?つまり、あなたはどうあがいてもこの場にいる誰よりも下に見られる哀れな雄ですわ!それこそ、新兵で己の雄としての勇姿を見せたポート様なんて足元にも及ばないほどの哀れな雄。もういっそ、生まれてくるところからやり直した方があなたのためではなくって??おーっほっほっほっほっ!」

「・・・・・・・・。」

「これだからレイラとは口で喧嘩したくないんだよね・・・。」

「ひえぇ・・・」

「ブルブル・・・」

「レイラお嬢様、残りは下種猫様のために残しておきましょう。」

「あら、そうですわね。まだまだあなたに言いたいことはありますけど、これ以上告げたら、あなたの額に見える血管が切れて、今にも死んでしまいそうですもの。戦う前にあなたに死なれたら、もうどうしようもなくなってしまうところでしたわ。」

「・・・・・・・・・・・・・・ぶち殺すぅ!」


そういって、周りの兵士が呆気に取られている中、たった一人剣を抜いてレイラへと斬りかかる。

だが次の瞬間、視点が反転しており、次の瞬間、体中に伝わる衝撃に息が詰まる。


気が付けば、彼は地面に倒れており、右腕が熱く感じたために腕を上げると切り落とされていることに気が付き、その瞬間激痛が右腕全体に広がる。


「ああああああああ!?!?」

「ほんと、弟が弟なら、兄も兄・・・ですわ。」


そう言いながら、カチンと鍔と鞘がぶつかり合う音が響き渡る。

どうやら誰に目にも捉えられぬ速度で黒妖刀を抜き、突っ込んできたハイエナの獣人の剣を握っていた右腕を切り落としたようだった。


「ぐああああああ・・・!!!な、何をしているぅ・・・!殺せぇ!!」


彼はそう号令をかけるが、誰一人として動こうとしない。


「何をしていやがる・・・!!命令違反は死刑に処すぞぉ・・・!!」

「・・・動けません。動きたくありません・・・!!」

「攻撃しようと、動けば・・・先帝様に・・・」


そう、彼等は全員、先帝を前にして動けずにいたのだ。

彼を抑えていた精神支配はなくなり、彼の動きを制限させていた牢獄から出てきている彼を止められるものはこの場にはいない。


故に、彼等は悟ってしまったのだあ。

今動けば、あの左腕に握られた鎖に引き裂かれ、右手に巻かれた鎖による拳で粉砕されると。


数はこちらが圧倒しているはずなのに、数なんて問題ではないと先帝自身が証明してしまっている。


蛇に睨まれた蛙のように、誰一人として動くことができず、冷や汗だけが代わりに額から流れ、滴り落ちていた。


そんな兵士らを見て、先帝は静かに頷く。


「良きかな。己と相手との力量の差を見極め、無謀な攻撃に出てこないとは。お主らは優秀な兵士よ。」

「・・・・・先帝陛下に、降伏致します。」

「うむ。」


そういって、兵士たちは槍を収め、跪く。


「何をやっている・・・!お前らが跪く相手はあの老い耄れじゃなく、ゲセドラ王子殿下、ただ一人だろうがあ!!」

「・・・洗脳か、あるいは妄信か。どちらにせよ、あの様子じゃ救うことは叶わぬ、か。」

「なに、を・・・」


と突然、視界が宙を飛んでいることに気が付く。


(あれ・・・なんで空を飛んでいるんだ・・・?それに、あれは俺の、から、だ・・・・・・・・??)


ボトッと生々しい音を立てて地面に落ち、力無く倒れた体。

伸ばした鎖を引き戻し、左腕に巻き付ける。


「して、愚息はどこにおる?」

「・・・・それが」


とその瞬間、その兵士の頭上から光線に貫かれ、一瞬にして絶命した。

上を見ると制止した小型ゴーレムの1体から放たれた光線のようで、他の小型ゴーレムらも光線を放つ準備に入っていた。


すぐさま先ほどの光線が降り注ぐと察知した先帝は左腕に巻き付けた鎖を高速回転させ、兵士らの前に飛び出す。


直後、先帝の予見通り、小型ゴーレムから無数の光線が放たれ、まるで鉄砲雨のように兵士含め、レイラたちにも降り注ぐ。


ハルネとリヴィアメリアが急いで魔法障壁を張ろうとするが、

「【ドラゴンマナ】を使って障壁を張っちゃダメ!!」

突如部屋全体に響く、誰かの声。


その声を受け、すぐさまレイラが闇魔法を発動させた。


「影よ、我らを覆い隠し、かの者の攻撃から守り給え・・・<闇影障壁(シャドウカーテン)>!」


レイラたちを覆い隠す様に地面から揺らめく影布が出現し、小型ゴーレムらの光線を吸収するように影布に遮られ、攻撃を防いでいく。


攻撃が止み、影布は地面に溶ける様に消滅する。

兵士らに多少なりと被害を受けていたがどれも軽傷だった。


だが・・・


「ぐぬぅ・・・」

「お、おじいちゃん!!」


ミミアンは叫んだ。


兵士らを庇うために前に出て鎖を回転させるように振り回し、即席の盾で防ぎきった先帝の体や腕、足にはいくつもの穴が開いており、瀕死の重体だった―――――。



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