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互いのために己の力を尽くすべし、ですわ


「ぽ、ポートさぁあん!!」


突き飛ばされ、尻餅をついていたメリアが状況を把握し、急いで立ち上がってポートの方へ向かおうとするもすぐにハルネの鎖蛇に捕まり、持ち上げられるとそのまま全力疾走で離れの塔へと向かっていく。


「離して!まだポートさんがぁ!!」

「いけません、リヴィアメリア様。諦めてくださいませ。あれではもう救出は不可能です。」

「だって、私を助けるために私を突き飛ばして・・・だめ、だめだって・・・ポートさぁあん!!ポートさぁあああん!!」


泣き喚きながらジタバタするも、鎖蛇の拘束はしっかりしているようでびくともしない。

一番先に付いたルナフォートは扉を開けようとするが鍵が掛かっている様だった。


「鍵が・・・!」

「退いてー!!」


そこへミミアンが両爪を持って扉を切り刻むと扉はばらばらとなって崩れ落ちた。


「気を付けて!入口を通るときはしゃがんで通って!急いでたから上の方には空間斬撃があるから!」


そういうとミミアンは四足歩行となって入口の下半分を通る。

それに習い、ルナフォートもしゃがんで華麗に潜り抜ける。


ハルネはエレオノーラに追いつくと彼女もまた鎖蛇で掴むと、残りの鎖蛇を使って移動速度を落とすことなく器用に下半分を潜り抜ける。


その後にエレオノーラとリヴィアメリアも鎖蛇をもって下部分をくぐらせ、最後尾にいたレイラはただ一人ポートが埋もれている方を見る。


「・・・ポート様!!今、あなたが示した真の勇気に、わたくしは必ず報いることを今ここで誓いますわ・・・!」


レイラはそう叫び、後方へ跳躍すると同時に<神速>を持って開放廊下を一閃。

すると支えきれなくなった開放廊下は徐々にズレていき、崩壊していく。


どんどん崩れ落ちていく廊下が迫りながら、レイラは駆け出す。

駆ける足場が崩れていくも、抜群の体幹で姿勢を崩すことはなく、そのままスピードを上げると体勢を一気に下げ、そのまま下半身全体を地面に滑らす様に入口を潜り抜け、それと同時に道は完全に途絶えた。


レイラを追いかけてきた【貪り歩く者】らは崩壊に巻き込まれ、次々と落下していき、完全に崩壊してしまってからはこちらに視線を向け、唸り声を上げる。


「レイラお嬢様、お見事で御座いました。」


地面に座り込んだまま、王城の方へと振り向いて様子を見ていたレイラにハルネは手を差し伸べる。

その手に気付き、レイラは伸ばされた手を掴んで立ち上がる。


「・・・彼が見せてくれた勇姿に比べれば、まだまだですわ。」


ハルネの賞賛を素直に受け入れられず、咄嗟に目を逸らしてしまった。

そんなレイラの様子を見て、ポートがいた場所を見やる。


鎖蛇に捕まれたままのリヴィアメリアは未だに泣きじゃくり、先に降ろしたエレオノーラへとそっと降ろしてやる。


そのままエレオノーラに抱き着き、胸元で涙を流すリヴィアメリアの様子から、彼女にとってポートという新兵の存在がどれほど支えになっていたか、理解させられる。


人間体を取っているが、見た目は10歳未満に見える彼女はフィリオラと同じように古龍に近い存在ではあるが、まだ精神的部分は子供なのだろう。


あんな恐ろしい環境に無理やり連れてこられ、痛い思いを何度もさせられる中、彼女を必死に励ましてくれたポートというお兄さん的存在が自分を庇って死んでしまったのだ、無理もない・・・。


「登っていくわよ。」


そんな雰囲気をガラリと壊すように、ルナフォートが落ち込む彼らに声を掛ける。


「・・・ええ、行きましょう。ここで立ち止まっている暇なんてありませんわ。」

「はい。ポート様のためにも、私たちは進み続けなければなりません。」

「・・・そーだね。いこ、みんな。」

「うううぅう・・・」

「ここは私に任せてなのです・・・。ささ、メリア様・・・一緒に行くのです・・・。」


そしてルナフォートを先頭に階段を登っていく。

道中には見張りはおらず、一行は重い空気の中、ものの数分で最上階まで階段を上がってきた。


目の前には木と鉄で作られた牢獄の扉があり、無数の鎖が扉の施錠の役割を果たしているようで無数に繋がれている。


ルナフォートはドアノブに触れると、突如として膨張し、パンッという音を立てて施錠部分ごと破壊した。


解錠された扉、ドアノブがあった場所の穴に手を掛け、扉を開く。

中には無数の鎖に繋がれたボロボロの老人が項垂れる様に椅子に座っている。


そして扉を開けて入ってきた者らに気付いたようで、目線だけが向けられる。


「先帝様・・・、ご存命で何よりでございます。」

「ふむ・・・、ルナフォート。ということは主ら、フォートリア家の者らか。」

「そーだよ、おじいちゃん。チョー久しぶりだね。」


とそこへミミアンが前に出てきて先帝の前に姿を現した。

彼女の姿を見た先帝は思わず顔をミミアンへ向け、酷く驚いた様子を見せていた。


「おおお・・・!まさか、ミミアンか!これはまた大きくなったのう・・・。」

「・・・うん。うち、大きくなったんだよ。でも結構おじいちゃんとは何度も会ってるんだけど、覚えてない?」

「・・・ふぉっふぉっ、情けない事にの・・・。ワシの記憶にあるのは、8歳の誕生日、お主が見せた天使のような笑みを見た時じゃ。」

「そんな・・・そんな時からずっと・・・」


何度も会っているはずのミミアンの姿を、先帝は知らないという。

彼の最期の記憶にある姿は赤ん坊ということは、それ以降にゲセドラによって洗脳スキルを受けてしまったということだ。


それまで築いてきた思い出は全て、ゲセドラの洗脳による影響を受け、指示された行動でもたらされた物だと知ったミミアンの瞳には激しい憎悪の感情が渦巻き始める。


「よせ、ミミアン・・・。お前がそんな瞳を持つでない・・・。お前は、元気いっぱいな笑顔が良く似合う子じゃ・・・。」

「・・・おじいちゃん。今、出してあげるからね・・・」


そういってミミアンは牢の扉を切り裂こうとしたが、ルナフォートに止められる。

そしてルナフォートは牢の扉に触れると、またもや大きく膨張して歪むと鍵としての機能が失われ、軽く力を入れれば簡単に開くようになった。


そういって、ミミアンは堪らずに牢へと入るとすぐさま先帝に飛びつきながら抱きしめる。

それを優しく受け止め、彼女の頭をそっと撫で、その度に先帝を抱きしめる腕に力が入る。


まるで孫を抱きしめるお爺ちゃんのようで、2人はとても仲がよかったのだろう。

ミミアンは繋がれた鎖を切り裂いて、自由にさせる。


「これで逃げられるよ、おじいちゃん。」

「・・・じゃが、ワシはまだ逃げるわけにはいかぬのじゃよ。」

「それって、下種猫のせいだよね・・・?」

「下種猫か・・・。ふぉっふぉっ、確かにその表現は的を射て妙じゃな。一体どこで育て方を間違えてしまったのか・・・。あの子があのような暴挙に出てしまったのも、全てワシの責任じゃ。」

「そんなことない!下種猫の行動の責任はおじいちゃんじゃなく、アイツに取らせるべきだから!」


声を荒げながら先帝の言葉に異を唱える。

それを受け、優しい笑みを浮かべながらミミアンの頭を優しく撫で始めた。


「子の責任は親が取るべきものじゃ。これは絶対の理でもある。子がのびのびと己を磨き、成長するには決して欠かせぬことなのじゃよ。まあ、やり過ぎた場合は他の誰でもない、親が怒るべきではあるのじゃが、ワシはあの子を止めることができんかった・・・。親失格じゃよ。故に、ワシは今度こそ、あの子を止めねばならぬ、この身を持ってのう・・・。」

「ならば我らの目的も同様です。今回のゲセドラ王子殿下の暴挙を止めるため、ここまで来ました。どうかお供させてください。」

「・・・うむ。」


先帝のはゆっくりと起き上がり、腕や足の枷から伸びた鎖を引き摺りながら、牢を出ていく。

その後に続いてミミアンらも牢を出てレイラたちの待つ場所へと向かう。


先帝らと共に出てきた2人を見て安堵し、レイラとハルネは頭を下げる。


「先帝王様にご挨拶を申し上げます。わたくしはレイラ・フォン・ヴァレンタイン。ヴァレンタイン公爵家ですわ。そしてわたくしの隣に居るメイドはわたくし専属メイドのハルネですの。どうぞ宜しくお願い致しますわ。」

「・・・うむ。レイラ、君の話はミミアンから良く聞いておった。といっても、初めて友人が出来たと報告してくれた部分しかわしにはわからぬが、ミミアンが君を見る瞳、逆もまたしかり、それらを見ればお互いがどれほど大切にしているかわかるのう。あの子の友達になってくれて感謝する。これからもあの子を宜しくのう・・・。」


そう挨拶を言い残し、先帝は伸びた鎖を拳に巻き付ける。


「すみません、先帝様。下の足場なのですがここに来る途中で魔物らの襲撃を受け、やむを得ず斬り崩してしまい、残っておりません。」

「なんと、あれを斬ったと申すか!ふぉっふぉっふぉっ!なんとも豪快な子じゃな。よいよい、許す!道がなければ、民を率いる帝王として、やるべきことはたった一つじゃ。」


そういって、腰を落とし、鎖を巻いた拳に力を込めていく。


「民に安寧を導くための道がないのなら、帝王である我がするべきは、この拳で新たなる道を切り開く!!」


その掛け声と共に一切の乱れ、迷いのない正拳突きが壁に繰り出されると、その衝撃で壁が吹き飛んでいき、重々しい足音を鳴らしながら開けた壁穴から外へ飛び出すと、巻いていない鎖を向かいの王城へと伸ばし、別の塔へと巻き付かせるとそのまま鎖を引っ張って向こう側へと飛び移っていった。


「・・・あれ、先帝様は?」

「おじいちゃんは道を作りにいったよー。少し待てば、うちらが進むべき道が出来るから待ってて。」


ミミアンがそういうと同時に、どこからかともなく巨大な廊下が上空から降ってくると塔と王城の間にぴったりと挟まるようにハマった。


その際、向こう側にも大きな穴が開き、ミミアンの宣言通り、目の前に王城へ戻るための道が出来上がった。


少しして先帝が空から降りてくるとミミアンらの方を向く。


「では向かおう。我が愚息の元へ。」


そして先帝はミミアンらを率いて王城へ戻っていった。

恐ろしい怪物らが無数にひしめき合う悪魔の巣の中へ・・・―――――。



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