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衣装替え・・・してみたかったのですわ


それから何時間か経った後、再び荷台は止まる。

恐らく目的地である王都タイレンペラーに到着したのだろう。


外でルナフォートが何かしら話をしているようで、しばらく会話が続ていた。

その後、地響きが鳴っていることから鉄門がゆっくりと開いているのだろう。


地響きが収まった頃、荷台はまた動き始める。


「・・・どうやら王都内には入れたようですわね。」

「これからどうすればいいのです?きっとこの荷台は王城まで行かないと思うなのです・・・。」

「変装は必須ね。ゲセドラ王子にはすでに私たちの姿は知られているもの。」

「というと思って!!」


と木箱の中にあったクローゼットを開くとそこには様々な衣装や変装に必要な小道具が並べられていた。


「ただの村じゃないからねー!こういった事態を想定して、用意してたりするんだよね!」

「あら、これはヴァレンタイン公国の民族衣装もありますわね。・・・この悪趣味な衣装は皇国ダーヴィンヘルトのものかしら。」

「ふーん・・・、まあタイレンペラーで良く着られてる服装の方がいいんじゃない?」

「となるとこちらになります。」


とハルネが提示した衣装は、布の面積が非常に少ない衣装を示す。

獣人らは主に体毛によって肌は隠されているため、要所要所を美しい装飾品が付いた鮮やかな布に覆われているだけといった感じで、服装の見た目にはあまりこだわっていない。


また戦闘服であるフルアーマーも、全てを覆っているわけではなく、要所要所を金属製プレートで覆っている状態で、まさにヴァイキングアーマーのようなものが近いといった方がいいだろう。


そうなると必然的に、レイラとハルネの衣装は踊り子の様に露出の高いモノになった。

ハルネはまだいいが、レイラは体中にある傷痕がどうしても目を引いてしまうため、踊り子のような衣装の上から大きな布を羽織り、全身をすっぽり隠すような容姿となった。


・・・明らかに見た目は怪しい。

だが、レイラが纏っているそのローブには隠遁の印が刻まれており、レイラの気配は絶たれ、まるでその辺を漂う空気と同じ存在になったおかげで、よっぽどのことが起きない限り、レイラの存在を感知する者はいないだろう。


そして最後にレイラとハルネは自身が人間であることがバレないために、ミミアンから仮面を渡される。


これを付けている間、周囲からは付けている仮面と同じ種族の獣人に見えるようになるとのことだ。


レイラは真っ黒な猫を模した仮面。ハルネは白い柴犬を模した仮面を渡された。


「・・・語尾もニャーとか付けた方がいいんですのにゃ?」

「レイラお嬢様、別に語尾まで仮面と同じようにしなくてもよろしいかとワン。」

「そうだよ、レイラ。ハルネっち。さすがに語尾に鳴き声をつけるような獣人は大抵ただのぶりっ子か、不審者しかいないからね?普通に。」

「残念ですニャ」

「残念ですワン」


明らかにからかう様に語尾を付けて話す2人。

そんなレイラたちを余所に、フィリオラはエレオノーラに狐のお面を渡す。


「はい、エレオノーラ。竜人はさすがに目立っちゃうからね。」

「ありがとうなのです・・・。フィリオラ様は?」

「私は別に必要ないわよ?」


そういうと、フィリオラは自らの人間体が徐々に変化していき、あっという間に白い猫の獣人の姿へと変わった。


「す、すごいなのです・・・!」

「人化の魔法は何も人間だけに変化する者じゃないからね。人間、亜人、なんでもござれ。」

「・・・私も覚えられるのです?」

「んー、かなりの魔力操作の技術を求められるけど、頑張れば出来るようになると思うわよ?」

「練習するのです・・・!」


何故か妙にやる気を見せるエレオノーラに、フィリオラは思わず苦笑した。

そうして一同は準備を終え、待機していると荷台はまた停止する。


どうやら目的地にたどり着いたようだ。

荷台に積まれた荷物を動かしているようで、レイラたちが入っている木箱もどうやら運ばれているようだ。


暫くして木箱はどこかに置かれると、足音が遠ざかっていく。

少しの間を置いて、木箱が漁られ、でっぱりにはめ込まれていた木の板が外され、あのおっとりとした笑みを浮かべるルナフォートが顔を覗かせる。


「みんな~、お待たせ。目的地の王都タイレンペラーに到着よ~。ほら、早く上がってきてね~」


ハルネは鎖蛇を出すと、傍で倒れていた梯子を掴み、先ほど木の板を嵌めこんでいたでっぱりに、梯子を嵌める。


そしてしっかりと固定されていることを確認すると、

「では皆さま、どうぞお上がりくださいませ。」

とレイラたちに梯子を上るように促す。


まず先にレイラが梯子を上り、木箱の入口付近まで来ると人一人が通れるほどの広さに羽織っていたローブが軽く引っ掛かり、無理やり引っ張ると腰から端まで破けてしまった。


ちらりと見えるレイラの生足が、ローブで身を包むレイラに色気を作り出す。

だがこの程度では、ローブに刻まれた隠遁の印の効果は消えることはないようだ。


「・・・あら?それは隠遁のローブね~?でもそんな生足をちらつかせるような色っぽいデザインじゃなかったような~?」

「アレンジしてみましたの。これで機動性が増して動きやすくなりましたわ。どう?すごく素敵になったのではなくて?」

「そうね~、次からは隠遁のローブのデザインも、そんな感じにしてみようかしらね~。まあ、隠遁のローブだから誰も見てくれないけど~。」


と続いてミミアン、エレオノーラ、フィリオラと続き、最後にハルネが梯子を使わず、鎖蛇を使って浮遊するかのように上がってきた。


「・・・あら、レイラお嬢様。その衣装・・とても素敵でございます!」

「うふふ、そうでしょう?」

「それじゃあみんな~、急いで建物内に入ってね~」


ルナフォートは隣に建っている建物の裏口の扉を開き、レイラたちを手招きする。


ここはどうやら宿屋のようで、ここを運営している獣人たちはルナフォートの部下のようだった。

宿屋を運営している主人らに案内され、部屋の奥に通されるとルナフォートは近くの本棚まで行くと各段に並べられた本の中から迷うことなく一冊ずつ押し込んでいく。


そして最後に一冊の本を取り出して中を開くと中身はくり抜かれており、その中には紋章のような物が取り付けられており、それを捻ると本を閉じ、元会った場所に戻す。


すると部屋の奥側の一角、床部分が開くと階段が姿を現した。


「ささ、急いでいきますよ~。」


ルナフォートは階段を下りていき、レイラたちもその後に続く。


「・・・ここもルナフォートのスキルで拡張されているんですの?」

「そうですよ~。といっても、この通路だけだけどね~。最後の仕掛けは私が解かないと発動しないのよ~。それにもし私以外の誰かが床扉を開くことは合ってもね~、活動拠点への道はすごく狭いままで~、一見道なんてない様に見えるから行き止まりだと勘違いするのよね~。」

「なるほどですの。だから王都タイレンペラーに拠点を置けているわけですわね。」

「そういうこと~。さ、着いたわよ~」


レイラたちの前に現れたのは重々しい扉。

その中心にはフォートリア公爵家の紋章が刻まれている。


ルナフォートは懐から紋章が入った鍵を取り出し、鍵穴に入れて回すと重い音を立てながらゆっくりと開く。


その扉の先に広がっていたのは、まさに隠れ家そのものといった内装だった。


部屋の中心部には大きなテーブルが設置され、その中央には世界地図のようなものが広がっており、っまた左右、中央に部屋が通じる扉が設置されている。


右の通路の先は武器庫のようで、様々な剣や刺突剣(レイピア)、大剣などの武器が置かれており、その奥には訓練所のような広場が広がっている。


反対側の通路の先には寛ぐための広場となっているようで、ソファや本棚などが設置されており、またその先には就寝するための部屋に通じる扉が幾つか見える。


そして中央の通路の先は捕えた要人を閉じ込めておくための牢獄があるという。

部屋の中心にあるテーブルに着くと、ルナフォートは今まで閉じていた瞳を静かに開く。


「・・・さて、ここなら話が漏れる心配もないから詳しい話を聞かせて。」


明らかに先ほどまでおっとり口調だったルナフォートはいなくなり、目の前に居るのはただ依頼を遂行するためだけに存在する一流の兵士そのものだった。


ワオキズの村でその片鱗らしきものは見ていたが、改めてみるルナフォートの変容ぶりには驚きを隠せない


部屋の中央にあるカラミアート大陸を示す地図を持って、ミミアンはルナフォートに詳しい説明をしだした。


数日前に【古獣の王】が目覚めたこと、今【古獣の王】はこの島から一歩も出ていない状況であること、またその島に住む獣人らは全滅している可能性が高いことなど。


ミミアンが差した場所は何もない海域が広がっているだけだったが、ミミアンの持っていた印籠が光り出すとその地図上に1つの島が映し出された。


またいつその島から【古獣の王】が本土に向けて移動してもおかしくないこと、そしてそのためにフォートリア公爵家の当主であるジャステス公爵自身が対応していること・・・。


「・・・殿下は何を考えておられるの!【古獣の王】の恐ろしさは代々伝えられてきたはずなのに・・・!」


そんなジャステス公爵に思わず怒りを露わにしているルナフォート。

その後、湧き上がる怒りを何とか沈め、大きく深呼吸をして気持ちを静めた。


「・・・ふう。それで、【古獣の王】が目覚めた原因の候補にゲセドラ王子が上がっているということね。」

「【古獣の王】が眠る場所を知る人は王家の者、そして一部の獣人らにだけ。それに帰ってきたゲセドラ王子の様子がおかしいという噂も聞いたし。実際、下剋上まで起こして洗脳が解かれた先帝様率いる正規軍を返り討ちにして王座についたイカれ猫だし・・・。今の下種猫は何をやらかしていてもおかしくないよ。」

「・・・確かに。あの日、禍々しい気配を漂わせる白くて丸い何かに乗って帰ってきたゲセドラ王子は突然、町の住民たちを殺し始めたわ。確かにゲセドラ王子は色々と問題は起こしていたけど、町の住民たちには一切手を出してこなかったの。なのにいきなりの住民らを虐殺。何かしらゲセドラ王子の身に何かあったのだけは確か。」


その時、ルナフォートの瞳からは強い怒りと憎しみが感じられる。

恐らくその時に部下の何人かが殺されたのだろう・・・。


レイラは話題を変えて気持ちを鎮静化する意味も込め、ここで自身が持つもう一つの情報を提示することにした。


「・・・あの、よろしいかしら。」

「ん、レイラ嬢。いかがなされました?」


返事をするルナフォートの瞳からは先ほどまで感じられた強い念は収まっているように感じられた。


「先日、エレオノーラから相談を受けましたの。その時の内容は、エレオノーラは姫巫女という特殊な地位にいる存在で、島の守護竜とされるドラゴンと通じているらしいのですわ。遠く離れていても、守護竜の存在を感知できるそうなんですの。そしてその守護竜は何故か、ここ王都タイレンペラーから感じるらしいのですわ。」

「はあ!?」


とここで声を上げたのは他の誰でもない、フィリオラだった―――――。



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