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妹より優れたなんとやら・・・?ですわ


家の中に案内されたレイラ一行。

大きな広間に通され、用意されていたテーブルに各々席に着く。


するとルナフォートは飲み物を持ってくるとそれぞれレイラたちに出して自分の席に着いた。


「それで~、ミミアンちゃんたちはどういった理由でこちらに~?」

「王都タイレンペラーに侵入して、ゲセドラ王子を問い詰めないといけなくなったんよ・・・。」

「あら~、それはどうして~?」

「先日に、【古獣の王】が目を覚まして・・・」

「【古獣の王】・・・!?」


とあからさまに焦り、恐怖といった感情が浮かび上がり、すぐさま開けていた窓を閉じてカーテンを閉じる。


「・・・詳しく話して。」


余裕がなくなったのか、先ほどまでおっとりとしていた口調は消えてしまっている。

そしてミミアンは【古獣の王】に関して現状わかっていることを説明する。


腕を組みながら静かに聞いていたルナフォートだったが、最後まで聞き終えると親指の爪をかじりながら、―――チッ!と大きく舌打ちを鳴らした。


「なるほど・・・。にわかには信じがたい話だけど、ミミアンちゃんがその印籠を持ってまでここに居るってことは恐らく本当のことなんでしょう。はあ、どうしてそんなことに・・・。」

「はっきりとした原因はまだわかってなくてさ・・・。」

「だから来たって事ね・・・。もしこの騒動を起こしたのがあんのクズ猫なら、八つ裂きにしても足りないわ・・・。」


大きくため息を吐いた後、いつもの様子に戻り、表情に笑みが戻る。


「話はわかりましたわ~。それじゃあ私たちは、あなた達が王都タイレンペラーに侵入できるよう手引きしてあげればいいわけね~。」

「そういうことっ。どお?できそ?」

「問題ないわ~。王都タイレンペラーには私たちの仲間も何人かいるのよ~。それじゃあさっそく準備しましょ~。」

「・・・ルナフォートさんも一緒にいくんですの?」


その時、ルナフォートも準備し始めたことにレイラは疑問を投げる。


「そうですよ~。今のこの話は他の部下たちにも話せる内容じゃないしね~。状況を知る私一人で十分よ~」

「確かにそうですわね・・・。」

「レイラ、安心して!これでも姉のラナフォートより強いんだよ?」

「うふふ~、ちょっとだけね~。」


そう話すが、あの眼を見てしまった以上、只モノじゃないとわかっていたがまさか姉のラナフォートよりも強いという話に驚きを隠せない。


「これでも私~、数少ない【百獣の王牙(レオンファング)】持ちなのよ~。」


そういって、胸元からぶら下げていた傷だらけの牙を見せる。

元はどうやらライオンの牙のようだが、傷が付き過ぎてもはや何の牙なのか検討が付きにくい。


だがそれでも、その牙に刻まれているライオンの紋様は、その牙は本物であると裏付けていた。

つまり、彼女はこの国で数少ないS級冒険者の1人ということだ。


ミミアンも【百獣の王牙】持ちではあるが、彼女が持ち歩く牙はまだ真新しい。

故に、彼女は【百獣の王牙】を授かってからかなりの年月が経っていることがわかる。


「・・・今度、お手合わせお願いしたいですわ。」

「うふふ~、いつでも相手になってあ・げ・る。それじゃあ、行きましょ~。」


そしてルナフォートに連れられ、家を出るとそのまま牛舎へと案内される。

そこにはヴァレンタイン公国でもよく見られた白と黒の模様、そして頭には一本の螺旋状になっている角が特徴的な一角牛が ”ムォ~” と鳴き声を上げながら餌入れに入れられている干し草を貪っていた。


そしてそのまま牛舎の奥にある倉庫のような所まで来ると、空の木箱が一つだけ積まれた荷台があった。


「では皆さんには~、この空の木箱に入ってもらいますよ~。」

「・・・この木箱に全員をいれるんですの?」

「はい~。この木箱は一見、なんの変哲もない木箱に見えるけどね~、底の方に空間拡張を施した魔法陣が刻まれてるの~。だから、実際は中の大きさはね~、この牛舎の倉庫と同じぐらいの広さがあるから安心して~。」

「そんな魔法陣があるなんて、知りませんでしたわ・・・」

「仕方ないわ~。これ、私のスキルを応用しているの~。これを知ってるのはお姉ちゃんと~、私が仕えているフォートリア公爵家の当主様と奥様ぁ~、それとミミアンちゃんだけなのよ~。だからこの子とは内密に、ね~?」


口元に人差し指を当てながら、静かに微笑む。

だがその瞳は相も変わらずに一切笑っておらず、冷たい視線が感じられた。


この国の機密的情報をどんどん聞かされ、だんだんと帰れるのかと若干不安を感じるレイラだったが、毅然とした態度で微笑み返しながら、

「もちろんですわ。」

と返答を返す。


それを見たルナフォートは一瞬、吃驚したような表情を浮かべるがすぐさま笑みを浮かべる。

彼女は一体なぜそのような態度を取ったのか、レイラは一瞬疑問が浮かぶがルナフォートはすぐさま木箱の所まで案内するために離れ、浮かび上がった疑問はすぐに消えた。


少し離れた位置から見ていたがためによくわからなかったが、木箱の中を見ると梯子のような物が付いており、荷台に上るとその梯子を掴みながら小さな木箱の中に入っていく。


中に入ると、ルナフォートの話した通りで中の空間は先ほどいた牛舎の倉庫と同じほどの広さを持っており、よく見ると一通りの家具は揃っているようだ。


「・・・ある意味でこういった隠れ家的な所は幾つかありそうですわね。」

「あるわよ~?い~っぱいね~。」


揶揄う様に笑みを浮かべながら木箱の外で笑うルナフォート。

全員が入ったと同時に、梯子は取り外される。


「それじゃあ今から王都タイレンペラーに向かうわよ~。一応この木箱の上にね~、偽装のために物が置かれるから~、静かにしててね~。」

「ええ、もちろんですわ。それじゃあよろしく頼みますわ。」


そうして、梯子を引っ掛けていたでっぱりに板を嵌め、完全に蓋をされた状態になった。

その後、上の方でゴロゴロと物音がするので嵌めた木の板の上に偽装用の物を敷き詰めているのだろうとわかった。


そしてテーブルの上に備え付けられていたロウソクが微かに灯り、暗かった木箱内に微かな光が周囲を照らす。


その後、次々と何かが荷台に積まれているようで、ルナフォートの指示や村人らの声が聞こえてきた。

そして一角牛の泣き声が聞こえたと同時に微かに荷台が振動し始めたため、動き出したのだろうと分かる。


そんな中、フィリオラは地面に刻まれた魔法陣を見ながら感賞するかのように話し始めた。


「まさかこんな便利なスキルがあっただなんて・・・。」

「空間拡張・・・。これはルナフォート様のスキルの応用だと仰っていたのです。本来は別の使い方で、【百獣の王牙】にまで上り詰めたのですね。」


そこへエレオノーラもやってくると、フィリオラと同じように魔法陣を見ながら驚愕している様子だった。


「そういえばルナフォートって【百獣の王牙】持ちですわよね?ミミアン、あなたルナフォートがどれぐらいの実力なのか教えていただきたいわ。」

「・・・うーん。ルナフォートが【百獣の王牙】になって長いって事と、姉のラナフォートよりも強いこと。あと、うちはまだルナフォートとは戦ったことがないけど、これだけは言える。ルナフォートとは絶対に戦いたくない・・・。」


苦笑いをしながら言葉を濁すミミアン。

微かに冷や汗を流していることから、ミミアンはルナフォートが戦っているところを見たことがあるのだろう。


そして彼女とは戦いたくないと言っていたこともあり、相当エグイ戦い方をしているのかと勘ぐってしまう。


「でもミミアン、あなたの黒曜毛は並大抵の事じゃ傷1つ付かないじゃないですの。・・・まさかそれを上回るほどの強さが?」

「ううん。ルナフォートはうちに傷をつけることはできないと思う。」

「・・・ならどうしてそんな、戦いたくない、だなんて表現したの?傷を付けられないなら大丈夫じゃない?」

「・・・うーん、まあうちに()()()()()()()()()()、ルナフォートを圧倒できると思う。でも、ルナフォートによって何かしらの傷を負ったら、その時点で無理。絶対に棄権する!」


そう話すミミアンの表情は酷く真剣で、どこか怯えていた。


あのマゾヒストであるミミアンが、ほんの小さな傷を負っただけで勝負を投げ出すとなると、一体ルナフォートは何をしてくるのか・・・。


ミミアンは彼女の戦い方は特殊過ぎて、今後の戦いに支障を来たすという理由でこれ以上は語ることはなかった。


きっとミミアン自身もあまり思い出したくないことでもあるのだろう。


そんなことを話していると突然、荷台が止まったようだ。

外でルナフォートの声が聞こえ、誰かと何かを話しているようだ。


その後、また動き始めたようで振動が伝わってくる。


「多分、ワオキズの村を出たんだろーね。外の門番たちに何か指示を出してたみたいだから。」

「そのようなのです。暫く村を留守にすること、もし何かあれば村を焼き捨てて別の隠れ村へ避難すること、とか色々とお話されていたのです。」

「エレオノーラ、あなた耳がいいんですのね?」

「えっへん、なのです。」

「つまりエレオノーラの前では内緒話は全部筒抜けってこと?そんなのひきょーじゃん!」


なんて談笑していると、突然荷台が止まったようだ。

まだ王都タイレンペラーに付くまではもう少し掛かるはず、なのになぜここで急に止まってしまったのか。


確認しようにも、声を出して状況を聞こうとすれば怪しまれ、木箱の中を探られてしまう可能性がある。


故に外の状況が気になりつつも、じっと身をひそめる。


「***です~。これか********、*****なので~、邪魔******」


何やらルナフォートは誰かと会話しているようだ。

会話の内容は全て聞き取れなかったものの、あまり良い雰囲気でないことだけはわかる。


「*****!****だよ!てめ******、*********だと!?」

「だって~、あ***********、******なんで********。」

「調子*****・・・・・・・・・ぎゃああああああああ!!」


そして突如として聞こえてきた悲鳴。

ルナフォートと見知らぬ誰からの交渉は決裂したようだ。


その後、またルナフォートは誰かと話をしており、そして荷台がまた動き出した。

すると鎧同士がこすれるような音が周囲から無数に聞こえ、どうやらこの荷台はどこかの集団の間を縫って移動しているようだ。



そしてその後、何も聞こえなくなった時、どうやらその集団の間を抜けたようで、ルナフォートは密かに、そしてはっきりとこう呟いた。


「兄が兄なら、弟もまた弟ですね~・・・。」



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