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内気な竜人の申告


あれから数日が経過し、毎朝のようにどうするべきか話し合いという名の会議が行われていたが、こんなことのために貴重な時間を潰していいのかとなり、結局レイラたちがゲセドラ王子を詰めることになった。


あれ?タイレンペラーに侵入して情報収集するって話だったんじゃ?

なんて疑問が上がったが、レイラの無言の圧でゲセドラ王子を問い詰めればわかるだろうということになり、結果として時間が押していることもあって、渋々その辺りを頼むことになった。


ジャステス公爵はその港町の方へと向かい、【古獣の王】を監視することにし、もし活動が再開されて本土に向かってくるようであれば防衛のために戦うことになった。


「そういえば、1ついいかしら?」

「・・・ん?」


とレイラはとある地図を取り出す。

そこには獣帝国タイレンペラーとその周辺国が示された小規模なものだった。


そしてレイラはとある部分を指さす。


「わたくしたちが向かおうとしていた港町はこちらですわよね?」


と獣帝国の最先端部分を指さす。


「うむ。」

「それで話では確か、この港町の先に島があってそこで【古獣の王】が目覚めたと仰ってましたが、地図にはそのような島はありませんわ。」

「ああ、そうだ。【古獣の王】はその存在なだけに、外部の者らに知られてはいけない極秘情報なのだよ。我らが獣人を守護する神獣はまさか、我らを殺すために存在すると分かれば、他国の奴らは【古獣の王】を目覚めさせるだろう。故に、それは意図的に消されているのだ。不自然な空間があるように感じられるのもそのせいだ。」


確かにここに島があったかのような、不思議な広がりがあった。

元々ここに島が存在していたかのような・・・。


そりゃあ島の存在を消すはずである。


【古獣の王】という存在は命ではなく、魂を守護しているが故に魂さえ無事に輪廻の輪へ還すことが出来るなら、たとえそれが生きている命であっても魂の方を優先させるという。


そんな存在を復活させてしまえば、獣人たちには甚大なる被害に繋がり、下手をすればそのまま滅亡しかねないが故に容易に口に出来ない、獣人たちの間での禁忌なのだろう。


「先ほども申したが、本来【古獣の王】という存在は禁忌とされ、たとえヴァレンタイン公国の者らであっても知られてはならぬ情報だ。だが今回は特例が故に、我から情報を開示した。この事はこの場に居る者にしか知り得ないことが故、決して外では口に出さぬようお願いしたい。この国を出る際は記憶処理を行う必要があるが、そうなるとここで過ごした記憶もろとも消し去る必要があるが故、この国の外ではどうか他言無用でお願いしたい・・・。」

「・・・わかりましたわ。いいわね、ユリア。」

「もちろんです!記憶処理でジェシカのこと、忘れたくないですから!」

「ユリアお姉様・・・!」


潤んだ瞳でユリアの事をじっと見つめる。

ジェシカに関しては獣人の血が入っている影響か、他国で【古獣の王】に関して話そうとすると本能的に口を閉ざしてしまうので、記憶処理を行う必要がないらしい。


こうして話し合いは終わり、みんなは部屋の外に出る。

長い廊下を歩き、ヨスミの部屋に戻ると中に見覚えのある人物がただじっとお辞儀をしながらレイラの事を待っていた。


「ハルネ・・・!」


レイラは思わず駆け出し、ハルネに抱き着いた。

ハルネは飛び込んできたレイラを優しく受け止め、彼女もまた嬉しそうにはにかんだ。


「はい、レイラお嬢様。ハルネ、ただいま帰還致しました。」

「遅すぎですわ・・・!なんでもっと早く帰ってきてくださらなかったんですの・・・!」

「申し訳ございません・・・。剣翁竜(グディン)様から託された物が余りにも重くて・・・乗せてもらった船が何度も転覆しかけたりと乗船に許可が降りなくなってしまい・・・。なので仕方がないので海を歩いて・・・」

「・・・え、あなた。海の上を歩けるんですの!?」

「はい。この子たちのおかげで、ですけど。」


そういうと、ハルネの腰から8頭の鎖蛇が伸びてきてレイラの方を見る。

以前見た時よりも2周りほど大きく、そして太くなっている彼等を見てレイラは思わず驚いてしまった。


「ハルネ、この子たち・・・以前よりも大きくなっておりませんこと?」

「おかげさまで。託された物を持って運搬しているとなぜか頻繁に魔物たちに襲われるようになりまして・・・。それはもう朝昼夜構わず・・・。だからといってずっと起きているわけにもいかないので、私が就寝する際、この子等を具現化させて周囲を見張らせておりました。おかげで【自動迎撃(オートアタック)】という(スキル)を習得し、私を中心に一定の範囲内にいる魔物を自動で狩るようになりましたら、このように・・・。」

「【自動迎撃】・・・なんだかすごそうなスキルですわね。」

「それよりも、レイラお嬢様こそ、なんだか以前よりも凛々しく、更にお美しく感じられますよ。」

「逞しくなったといった方がいいかもしれないわ・・・。とりあえず、こっちにきて!」


そうしてレイラはハルネの手をとり、ベランダへと出るとそこに設置されたテーブルにつく。


そこであの後、ハルネと別れた後にレイラの身に起きた出来事、レスウィードの町の事など、またハルネもレイラたちと別れてからその身に起きたことなど、互いの事について語り合っていた。


そんなこんなで話は盛り上がり、気が付けば時刻は夕方になっていた。


「・・・あら、もうこんな時間ですね。」

「あっという間ですわね・・・。でもまさかヨスミ様のことを知るドラゴン・・・確か、斧尾竜でしたかしら?その者たちと共に旅をしていたなんて。」

「私も驚きました。ヨスミ様と共に旅を続けていたのもあって、洗濯時に匂いが混ざってしまったのでしょう。おかげさまで敵対することなく、道中背中に乗せてくれました。」

「いいですわね・・・。そうですわ。空はルルちゃんに乗せてもらって、陸地はドミニクちゃんに乗せてもらおうかしら!」

「やめてください、レイラお嬢様。ドミニク様に乗って移動されますと、進路上の全てをなぎ倒してしまう危険性がございます。向こう側から馬車が来た場合、被害を受けるのは向こうだけなんです。」

「いい考えだと思いましたのに・・・。あ、それか竜騎馬の代わりに竜車を引いてもらうとか・・・」

「・・・それはありですね。突貫力、防御力、そして竜車という超重量級の物を引きながらも決して落ちることのない突進力・・・。竜騎馬は防御力はある程度あり、竜車を引くために2~4頭は必要になってきますが突貫力はないため、あっという間に囲まれて潰されてしまう危険性がありますからね・・・。」

「なら、この件が終わり次第ドミニクちゃん専用の竜車を作るよう、手配するのですわ!」

「かしこまりました。そのような文を送っておきます。」


こうして何故かお互いの冒険譚に関する話から、双角竜であるドミニク専用の竜車作成の話になってしまった。


その後、ハルネは急いでそういった内容を便箋に書き綴り、それを畳んで蝋で封をする。


「それでは便箋を出してきますので、失礼致します。」

「宜しくお願いね!」


そうしてハルネは部屋を出ていく。


「うふふ、どういう風になるのかしら・・・。すごく楽しみですわ!」


ベランダで、地平線に沈む夕陽を眺めながら色々な想像を膨らませていた。

するとそこにハルネと入れ違いにエレオノーラがレイラの元を訪れた。


「あ、レイラ様。こちらにいらしたんですね。」

「エレオノーラじゃない。あなたがわたくしの元に来るのは珍しいですわね?」

「もうすぐ夕食の時間だから、呼んできてとミミアン様にお願いされたのです・・・。」

「そうだったんですの。全く、あの子ったら自分で呼びに来ればいいのに・・・。」

「どうやらレイラ様の大切なドレスを引き裂いてしまった事を気になされているみたいなのです・・・」

「・・・なるほど、そういうことだったんですの。エレオノーラ、ありがとうですわ。」

「いえ、そんな・・・。」


ふとここでレイラはエレオノーラの様子がおかしい事に気が付いた。


「・・・何かわたくしにお話でもあるんですの?」

「え?・・・えと。」

「遠慮せずに話してくださってもいいんですのよ。」


何か歯切れの悪いような、言い出しづらいような、そんな雰囲気を感じる。


そして意を決したのか、エレオノーラはレイラの目を真っすぐ見る。

そんな彼女の真剣の眼差しを向けられ、思わずたじろいでしまった。


「あの!」

「は、はい!」

「えと!その・・・!」

「・・・。」

「・・・・・うう。」


必死に何かを言おうとして、でもうまく言葉に出来ないのか次第に顔を赤くしていき、そしてついには真っ赤になった顔を両手で覆い隠しながらその場にしゃがみ込んでしまう。


「え、エレオノーラ・・・?」

「ご、ごめんなさいなのです・・・。誰かに、相談ごとなんて、その、初めてなのです・・・。」

「ああもう、ほら・・・ゆっくり息を吸いなさいな・・・。」


レイラに促され、エレオノーラは呼吸を整えるべく、大きく深呼吸をした。

そしてようやっと落ち着いたのか、先ほどまでよりも落ち着いた様子を見せている。


「エレオノーラ、落ち着いたかしら?」

「ありがとうなのです・・・。ふぅ・・・。」

「それで、わたくしに話したい事って?」

「・・・信じられない話かもしれないのです。でも、どうか信じてもらいたいのです。」

「もちろんですわ。」


レイラからその話を聞き、再度意を決してレイラの瞳を見る。

そして次に語られた内容は、レイラにとって更に混乱を深めることになった。


「・・・私は竜王国にて、姫巫女という役割を担っていたのです。」

「姫巫女・・・。王族であることは以前教えていただきましたわね。でも巫女・・・ですの?」

「はい。私が住む竜王国の周りは巨大な嵐が吹き荒れており、他の種族の方々が用意に入れない様になっているのも知っておりますよね?」

「ええ。確か、竜人たちの境遇を憐れんだ一体のドラゴンが彼らを守るために・・・。まさか、そのドラゴンを進行する巫女様ってことかしら?」

「・・・はい。その通りなのです。代々、私の竜人種はかのドラゴン様に仕えてきました。だからわかるのです。その存在を、遠く離れていても、かのドラゴン様の存在を感じることができるのです。そして今・・・、何故かレイラ様が向かおうとしている王都タイレンペラーにて、かのドラゴン様であられる―――――リヴィアメリア様が感じられるのです。」



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