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オールドワン討伐戦 後編


突然の攻撃にうまく防御できず、真面に喰らってしまったオールドワン。

体勢を立て直そうとするも、すでに片翼は壊滅的な状況に陥り、動かすことさえままならない。


仕方なく海面へダイブしようとするが、前方から何か嫌な予感を感じ、咄嗟に体を捻る。

直後、避けそこなった尾が突然細切れに引き裂かれる。


空中で無理な体勢で回避行動に移ったため、変な体勢のまま海面へとダイブし、全身を強打した。

海中へ潜った後、しばらくの間痛みで動けずにいるところへ、突然体が持ちあげられていく。


必死にもがいて抵抗したが、そのまま海上へと持ち上げられ、空高く放り投げられた。


目線には<水の鞭>があったので、おそらくあの少女が原因なのだろう。

忌々しい、ことごとく邪魔ばかりしおって・・・!!


と怒りの念を込めた視線をジェシカへと向け、彼女に向けて何かを唱え始める。

だが背後からまたもやあの【魔素竜巻】がこちらに向かってやってくる。


目標をジェシカからすぐそこまで迫ってくる【魔素竜巻】へと変更し、圧縮した魔力の塊を打ち放つ。

すると【魔素竜巻】は突然軌道を変え、オールドワンから放たれた魔力の塊を避ける。


馬鹿な、竜巻が避けた?

突然軌道を変えて回避した【魔素竜巻】に驚愕していると、それはあっという間に衝突し、オールドワンの腹部を抉りながら通り過ぎていく。


しかしそれだけでは終わらなかった。

通り過ぎた【魔素竜巻】はまたもや軌道を変えてUターンし、再度オールドワンの体を貫く。


そして先ほどと同じようにUターンして貫き、また軌道を変えて貫き、それを何度も、何度も繰り返す。


オールドワンは徐々に腕や足がえぐり取られていき、オールドワンの大きさは物理的に小さくなっていった。


そしてある程度小さくなった時、【魔素竜巻】の中から何かが2つほど飛び出してきた。

どちらも黒いもので、よくわからない。


だが、その黒い2つは何をしようとしているのかすぐにわかった。


「・・・解放、<妖刀・白百合>。さあ、舞いなさい!」


黒妖刀の刀身に魔力を流し込むと、まるで白百合の花が咲き誇ったかのように全身に花びらの紋様が浮き出し、微かに光を帯び始める。


その花びらは次第に刀身から漏れ出し、レイラの周囲に無数の白い花びらが舞い上がり、黒妖刀を静かに構えると刀身に花びらが集まっていく。


先ほどまで真っ黒だった刀身は何物に染まらぬ純白に変わると突如として刀身としての形が崩れ、飛び散った破片は花びらへと変わっていく。


全ての刀身が花びらに変わった頃、レイラは静かに息を吐き捨てた。

そして、神経を研ぎ澄ませ、意識を集中する。


「・・・<神速・白百合の舞>!」


突如としてオールドワンの周囲に突如として白百合が割き始め、次の瞬間レイラの姿が消えた。

それと同時に体に激痛が走り、よく見ると深々と切り裂かれている。


だがそれだけでは終わらず、一閃、また一閃とオールドワンはレイラの目にも止まらぬ、まさに神速を持って斬られ続ける。


これは以前、スライムスタンピードでヨスミと共に共闘した時の戦い方にヒントを得て編み出した<新スキル>であり、周囲に咲き誇る白百合の花を足場にして跳躍し、そのまま斬りつけて別の白百合へ飛び、跳躍しては斬りつけて別の白百合へ飛んでいく。


足場にした白百合の花は花びらだけとなって華麗に散ると、それはやがて刀を持ったレイラの姿を模し始め、そして真っ白なレイラへと姿を変えて対象を一太刀入れて舞い散っていく。


つまり、レイラ本体が一太刀入れた後、対象の周囲の空間に咲いている白百合の花を足場に跳躍すると白百合の花は花びらを散らし、レイラの幻影を生み出してもう一太刀入れていく。


白百合の花はレイラの魔力に寄って生み出されたものであるが故、彼女の保有魔力量が高ければ高いほど、対象の周囲に白百合の花の数も増え、その分攻撃回数も増えていく。


今現在、オールドワンの周囲には10つの白百合が咲き誇り、10回の追加攻撃が入れられた。


これを<神速>を用いて放たれたが故に、常人には早すぎる動きから、まるで舞を踊っているように見えるという。


そして最後の一太刀が入れられると、最後の一撃として周囲に舞い散っている花びらが全て集まり、レイラの1.5倍ほどの大きさを持つ白レイラが出現し、オールドワンを真っすぐに白妖刀を振り下ろして、一太刀加えると消滅した。


体中を斬り刻まれ、悲鳴を上げるオールドワンに追撃と言わんばかりにミミアンの黒曜爪による2連撃が繰り出された。


「<黒曜爪2連撃(かみつき)>!!」


ジャステス公爵の攻撃に似たミミアンの攻撃はオールドワンへ噛み付くように両腕を交差させながら大きく切り裂いた。


例えどれほど硬い防御力をオールドワンがその身に宿していても、空間ごと切り裂かれるその攻撃の前では無意味で、いとも簡単に胴体は細切れにされ、頭部だけが残された。


そして止めと言わんばかりに、今まで魔力を練り続け、たった一発の<水弾>に込め続けていたジェシカは無気力に落下していくオールドワンの頭部目掛け、渾身の一撃を繰り出した。


「これで、最後・・・!お願い・・・、全てを貫け!<強化・水弾(ペネトレイトバレット)>!!」


鋭い回転が加わり、発射されたと同時にすごい衝撃波によってジェシカは体勢を崩して頭から落下するが、レスウィードの胸ヒレに受け止められる。


その発射速度は先ほど打っていた<水弾>の何倍もの速度を出しており、その回転によってその<強化水弾>の周囲が歪んで見える。


そしてそれはオールドワンの頭部を貫通すると、その衝撃波は頭部全体に広がり、頭部は勢いよく破裂した。


ミンチ状になったオールドワンだったそれは海に注がれ、もはや再生不可な状態となった。

そのまま自由落下するレイラとミミアンをルーフェルースは急いで掴み、背中へと乗せる。


「はあ・・・、はあ・・・。ぶ、ぶっつけ本番でしたけど、や、やりましたわぁ・・・!」

「で、でもさすがに終わった、んだよね・・・?」


ゆっくりと体を起こす。

体を再生してくる気配もなく、そもそも先ほどまで漂っていた嫌な気配が消えていることに気が付いた。


「おそらく、ですわ。」


ここでレイラに1つ不安が過る。

それじゃああの時見た未来は一体なんだったのだろうか。


こうしてオールドワンを倒すことができた。

これは紛れもない事実であるはずだ。


だとしたら、あの未来は、一体どれほど先の未来の光景だったの・・・?


「・・・レイラ、大丈夫?」


とふいにミミアンに声を掛けられた。

ハッと我に返り、笑みを剥ける。


「ごめん、なんでもないですわ。はあ・・・どっと疲れましたわぁ・・・。」

「うちも同じぃ~・・・。」


とルーフェルースの背の上に仰向けに倒れた。

ふと横目でジェシカたちの方へ視線を向けると、そこには水の結界に閉じ込めている黒い何かを必死に<浄化>させている姿が目に入る。


だが、どうにも様子がおかしい。


「・・・ルル、ジェシカの所に行ってくだしますかしら?」

「え?うん、わかった~。」

「どーしたの?何かあったん・・・?」

「わかりませんわ。ただ、ジェシカたちの様子がおかしいんですの。」

「え・・・?」


とミミアンもジェシカの状況に目を向ける。

どこか必死な表情を浮かべながら、レスウィードの張っている水の結界内へ魔法を掛け続けている様子が見える。


レイラたちを乗せたルーフェルースは急いでレスウィードの元へとやってくると、レイラ達が来たことに気付いたジェシカは涙を流しながら必死に叫ぶ!


「助けてください・・・!このままじゃレスウィードお父様が・・・!」


その時初めて、レスウィードは深手を負っていることに気が付く。


「え、うそ・・・。確かドラゴンには高い自然治癒能力があるはずですわ。大体の傷は時間が立てば直るはずですのに・・・!」


傷が癒える気配はなく、逆に徐々に傷が広がっているようにさえ見える。


「わかりません・・・!私の<癒しの水>を持ってしても回復できなくて・・・!」

「・・・恐らく、奴の攻撃によって受けた傷を癒すことは出来ないのだろう。以前、防御力と再生能力に特化しているはずの青皇様でさえも大いなる怪物と戦った際、その身に受けた傷を癒すのに数千年は掛けたのだ・・・。私のようなドラゴンでは間に合わぬのだろうな・・・。」

「そんな、それじゃ・・・」

「・・・ああ、私はここまでのようだ。だが、今は・・・!」


水の結界から抜け出そうと、結界内で蠢いているブラックサハギンらが目に入る。

レスウィードは結界を壊されないように【ドラゴンマナ】を結界へ優先して流しているため、治癒能力が間に合わなくなっているのだろう。


「奴らを結界外へ出してはならぬ・・・。奴らを生み出している【黒い海】が外に漏れ出てしまえば、また海は汚染され、そこからまた奴らが有象無象に生み出されていく・・・。それだけは避けねばならない・・・!」

「光属性に、適性があれば・・・もっと、もっと早く【黒い海】を浄化できたはず、なのにぃ・・・!」

「ジェシカ、しっかりしなさい・・・!」


でも、どうしたらいい?

あの大規模な【黒い海】をどう処理すればいい・・・?


あの結界内で生み出され続けているブラックサハギンの数はもう手に負えない。

公爵軍の人たちと一緒ならなんとかなるかもしれないけど、被害は免れないだろう。


どうしたら・・・どうすれば・・・!!


―――お母様、私を出して!


突然、脳内に響くフィリオラの声。


―――早く!!


レイラは迷わず、自分の内に感じるフィリオラの気配に意識を集中させ、それを外に取り出すイメージでフィリオラを体外に召喚(生み出)した。


白い光に包まれながら、フィリオラはレイラたちの前に姿を現すとすぐさまレスウィードが張っていた水の結界を覆う様に白桃色の光の膜が張られていく。


その直後、限界だったのか水の結界にヒビが入り、消失していく。

だがすでにフィリオラが張った光の結界に阻まれ、外に漏れることはなかった。


そしてそのまま白い光に包まれていき、【黒い海】がジェシカの<浄化>よりも何十倍の速度で黒く染まっている海はどんどん消失していく。


元の海に戻っているわけではなく、文字通り、消失しているのだ。

それに合わせ、ブラックサハギンも白い光に包まれ、悲鳴を上げながら消えていく。


そしてものの数分で、【黒い海】は完全に消失し、それと同時にフィリオラはその場に倒れ、レスウィードも倒れそうになるが、ミラがレスウィードの角を掴み、必死に羽ばたく。


「ぴぃーっ・・・!!」

「と、とりあえずレスウィードをどうにか海岸まで移動させなきゃ・・・!」


ジェシカはルーフェルースの背中に移動させられ、レスウィードの胴体を抱える様に腕を回し、そのまま海岸へと向かって飛行していった―――――。



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