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オールドワン討伐戦 前編


ジェシカを乗せたレスウィードはものすごい速度で移動しながら、オールドワンへと突撃を掛けて行く。

道中、足元に居たであろうブラックサハギンらの数を少しでも減らそうとひき殺しながら海へと入っていく。


それに合わせ、ジェシカの魔法が光り出し、レスウィードの体全体が光に包まれる。


その状態でレスウィードから放たれた水の塊は高速で回転しながらオールドワンへと向かっていく。

それに対抗するかのようにオールドワンも魔力の塊を作り出してそれを投擲した。


双方が繰り出した攻撃がぶつかり、大きな爆発が起こる。

互いの攻撃は相殺されたかと思いきや、巻き上がった魔素の煙の中からレスウィードが放った水塊だけは何事もなく現れ、オールドワンの体に着弾すると破裂し、その勢いで着弾した部分は大きく抉れ、飛び散った水しぶきは体に穴を開ける。


その一撃に大きく怯むも、遠距離戦は不利だとすぐに悟ったオールドワンは体勢を立て直し、レスウィードへ駆け出した。


近づけまいと、連続して海の水を利用して水塊を作り出し、回転を加えさせてオールドワンへ向けて発射する。


それら全てを両腕で防御態勢を取りながら突っ込んでいき、腕を負傷しながらもそのままレスウィードとの距離を一気に縮めると、その勢いでレスウィードを殴ろうとしたが、ジェシカが今までにないほどの大きな<水の鞭>で片足を縛り、堪らずオールドワンはそのまま転倒する。


海の中へとダイブするように倒れたオールドワンへ向けて自らの尻尾を鞭のようにしならせて鋭い強打を繰り出した。


ある程度尾で打ちのめし、そのままオールドワンの首を絞めようと伸ばすと突然伸びてきた両腕がレスウィードの尾を掴まれてしまい、そのまま力任せに引っ張られ、ジェシカと一緒に振り回された後、遠くの方へと放り投げられた。


海面を打ちながら、海へ沈んでいくがすぐさま体勢を立て直そうとするが、オールドワンから追撃と言わんばかりにいくつもの魔力の塊が投擲されており、レスウィードの周囲に落ちながら爆発を起こし、そして幾つかの塊はレスウィードの体に直撃する。


周囲を轟かせる轟音を鳴らしながら魔素の煙に全身が隠れ、オールドワンは確かに感じるその手応えに勝利を確信したが次の瞬間、煙を突き破りながら圧縮された水線が放たれ、急いで防御態勢を取ろうと腕を上げたオールドワンだったがその腕を貫通し、そのまま体を貫通するほどの強烈な一撃に悲鳴のような声を上げながら仰向けに転倒した。


魔素の煙が晴れ、中から薄い水の膜が全体を包むレスウィードらの姿が現れた。

ジェシカの張った結界がオールドワンの攻撃を防いだようだ。


オールドワンの攻撃は全てを防ぎ、またレスウィードの攻撃はオールドワンを圧倒している。


防戦一方なオールドワンはそのまま海の中へと潜っていった。

その後を追う様にレスウィードも潜ると、逃げていくオールドワンの後を追う。






「<黒曜爪双撃(かみつき)>!」


顎に見立てた両腕を広げ、噛み付くように黒曜爪の手甲を交差させる。


それはブラックサハギンだけでなく空間も切り裂かれ、それは徐々に広がっていき、それに触れたブラックサハギンは次々と全身が切り刻まれていく。


ブラックサハギンたちは反撃しようとジャステス公爵へ攻撃をしかけようとするが、

「ワオオオオォォォォオオオオオン・・・!!」

遠くから聞こえてくる狼の美しい遠吠えを聞いた直後、突如として全身から力が抜けるような脱力感に襲われ、持っていた武器が持てなくなり、飛び上がったまま何もできずに地面へと落ちていく。


急いで立ち上がろうとするが足にうまく力が入らず、もたついていると公爵軍の兵士らによって剣が首に突き立てられ、そのまま絶命していく。


また先ほどの遠吠えを聞いた兵士たちの動きにキレが増し、ブラックサハギンらの攻撃を的確に防ぎ、受け流し、避け、反撃していく。


だが中でも一番の活躍を見せていたのはレイラで、その右目には<王眼>を宿しながら次々とブラックサハギンらを斬り伏せていく。


ブラックサハギンは背後からレイラを攻撃しようとするが突然姿を消したかと思えば、周囲のブラックサハギンらの首は全て落とされていた。


そしてまた別のブラックサハギンを次々と斬り殺しながら移動し、遠くの方で兵士らが押されているのを見ては<神速>を使って一気に駆けつけながらその進路上に居るブラックサハギンらを斬り伏せていき、兵士らを助太刀するとまた別の所へと、絶え間なく動き続ける。


ミミアンはその戦闘スタイルからして、敵陣のど真ん中に突っ込んでいき、ブラックサハギンらを斬り裂きながら空間斬撃のトラップを次々と作っていき、襲ってきた奴らは目に見えにくい空間斬撃に次々と振れてしまい、体が切り刻まれていく。


故に、ミミアンを止めることができず、近づくこともできない。

また自ら設置した空間斬撃の罠をしっかりと把握しているため、それを利用して追い込まれるような立ち回りで相手を罠に誘い、そのまま空間斬撃に触れさせて引き裂いたりしていた。


父であるジャステス公爵のように、引き裂いた空間を爪に引っ掛けて飛ばしたりなんて芸当は出来ないが、それ故にそれを罠として最大限に利用した戦闘スタイルは文字通り、他者を一切寄り付かせないほどの高い攻撃性能をもたらした。


ただこれは味方に対しても大きな被害をもたらすが故に、ミミアンはこういった遊撃隊のような立ち回りをするようになった。


ただし、敵陣のど真ん中であるがゆえにもし危機に陥ってしまった場合、誰も助けに行くことができない。


また自身が張った空間斬撃の罠のせいで、助けに来た味方も迂闊に近づくこともできないため、この立ち回りはまさに命がけなものであった。


ただミミアンは痛みを欲し、自らを傷つけてくれる存在を求めて自発的にこのような立ち回りを率先して行うが故に、周りからは愛称としてこう呼ばれるようになった。


―――――【イカれた狂犬(マゾ)】、と。


・・・実はこの愛称、本人としてはあまり気に入っていないようで度々修正しようとしたが全て無駄に終わっているのはここだけの話だ。


レイラとミミアンの活躍で、味方兵士らに大きな被害は出ず、ブラックサハギンの勢力をどんどん押していく。


ジャステス公爵は兵士らが戦いやすいように不規則な動きを見せるブラックサハギンらを片っ端から潰していき、またその背後ではユティス公爵夫人の咆哮が戦場に響き渡り、味方を強化し、敵を弱体化させていく。


兵士らの数を圧倒するブラックサハギンを相手に善戦しており、また士気も落ちることなく向上し続け、その戦いっぷりは凄まじいモノだった。


だがここでレイラは違和感を覚える。


「・・・減りませんわ。」


これだけブラックサハギンらを殺し続けても、勢いが減るどころか、逆に増す一方で、絶え間なく海から出現し続ける奴らに底が見えない。


そして徐々に自軍らに疲れが見え始めるようになり、それは被害に直結していった。


「ぐわぁあぁああ・・・!!」


所々から兵士らの悲鳴が上がり、ブラックサハギンらに取り囲まれながら無数の黒槍に何度も貫かれて死んでいく。


それはまるで火の手があるかのように徐々に自軍に広がっていく。


レイラも出来る限り兵士らを救助しながらブラックサハギンを斬り殺していくが、どんどん間に合わなくなってきた。


「終わりが・・・、全然見えないのですわ・・・。このままじゃ敵陣のど真ん中で戦い続けているあの子が危ないですわ・・・!」


とミミアンの援護に行こうとしたが背後から兵士らの悲鳴が聞こえ、彼等を助けるために<神速>で向かい、周囲のブラックサハギンらを斬り殺して味方の退路を作って退却を支援していく。


「これじゃああの子を助けに行けませんわ・・・!」


そしてレイラの読みは当たり、敵陣のど真ん中で暴れまくるミミアンの顔には疲労が少しずつ見え始めていた。


徐々に視野が狭まっていき、誤って空間斬撃の罠があまり張られていない場所へと移動してしまい、その合間から投擲された黒槍がミミアンの足をかすめてしまうが、黒曜毛によって防がれ、傷をつけることはなかった。


「あぶなっ・・・?!」


急いで気を持ち直し、ブラックサハギンらを殺しながら同時に空間斬撃の罠を作り出していく。

そういった不注意が増え始め、そしてとうとうミミアンの足を掴まれてしまい、彼女は思わずその場に転倒してしまった。


その背後から、いくつもの黒槍がミミアンの体を貫こうと突き立てられるが黒曜毛に弾かれる。

だがその衝撃はダイレクトに体に伝わり、徐々にダメージとして蓄積していく。


「うっ、うっ・・・!?や、やめて・・・い”っ・・・!もう、やめてっ、・・・てば!!」


と尾を振り回して周囲のブラックサハギンをなぎ倒し、すぐさま体を起こして足を掴んでいた手を切り裂いて獣走行でその場から急いで離れた。


警戒するように周囲を威嚇し、また周囲のブラックサハギンを黒曜爪で引き裂きながら空間斬撃の罠を張ろうとするが、奴らの物量に徐々に押され始める。


これはやばいと判断したミミアンは一度、味方の陣地まで撤退することにして急いで撤退しようとしたが一体のブラックサハギンがミミアンへ突撃してきた。


だが事前に張られた空間斬撃に触れ、引き裂かれて絶命するが、その時に体から飛び散った体液がミミアンの顔にふりかかってしまい、思わず瞼を閉じる。


その瞬間、自分が張った空間斬撃に肩が触れてしまい、大きく裂けてしまった。


「まずっ・・・?!」


痛みに思わず足がもたれ、その場に転倒してしまった。

その隙を逃さないと、無数のブラックサハギンらがミミアンの手足を抑えてしまう。


また先ほどと同じように何度も黒槍を突き立てられるが、その刃がミミアンの体を貫くことはなかった。


必死にブラックサハギンらの拘束から逃れようと手足に力を入れようとするが、痛みに邪魔されてうまく力が入らない。


「これは、これで心地よい痛みだけど、違う・・・違うんだよね・・・!それにこのままじゃまずいってのもわかる・・・!ああ、もう離せっ・・・てーの!」


その時、ミミアンの顔目掛けて黒槍を構えるブラックサハギンらの姿に気が付いた。


「さ、さすがにそれはやばいって・・・!?」


そして黒槍は振り下ろされ、頭を強打され一瞬意識が飛びそうになるがすぐに意識を取り戻す。

だが攻撃する手は緩まず、何度も頭を強打する黒槍の攻撃で次第に意識が朦朧とし始めた。


ブラックサハギンたちはミミアンに攻撃が通じていると分かり、頭を集中的に攻撃し始める。

そして止めと言わんばかりに黒槍を大きく振り上げるブラックサハギンたちだったが、突然動きが止まった。


そしてミミアンを取り囲んでいたブラックサハギンたちは一斉に倒れる。


一体何が起きたのか、と上半身を起こし、空を見上げるとそこには一羽の美しい真っ黒に染まった鳥が空を羽ばたいている姿が見える。


そしてその鳥の首からは見覚えのある首飾りが陽光に照らされて輝いているのが見えた―――――。





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