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な、なんじゃこりゃああああああ・・・!?


「な、なんじゃこりゃああああああ・・・!?」


突然なくなった腕から血が噴き出し、それを必死に抑えようとするが、


「・・・あれ?右腕まで?!ばかな・・・、俺の、俺の両腕がどおして”無い”んだよぉ・・・・・うわぁあ!?」


と突如、宙に浮いた感覚があったと同時に地面へ倒れ、今度は両足が無くなっていた。

何が何だかわからず、ただただ悲鳴を上げる事しかできなかった。


だが、


「ああああああああああああああああああ」


と、最後に頭が消えたことでその襲撃者は完全に息絶えたことが誰にでも理解できた。

いきなり目の前で自分の仲間に起きた奇妙で悲惨な結末に、恐怖を抱くには時間はそうかからなかった。


「な、なんなんだ!? 一体、何が起こって」


と両腕、両足、そして最後に頭と消え、1人、また1人同じように襲撃者だけが死んでいく。

標的が襲撃者だけだとわかり、恐怖に支配され、武器を放り出してその場から逃げ出そうとするが、誰一人として逃れることができず、そして最後の1人になった。


その頃にはもう、恐怖で完全に精神が壊れ、気絶していた。


「一体・・・何が・・・」

「とりあえずこれで大丈夫そうだ。」


と、銀聖騎士の1人がふと横を見るとそこに見知らぬ男が立っていた。


「な、・・・!?き、貴殿は誰だ・・・!?」


と突然現れた男に警戒するが、


「ああ、いきなりで驚かせてしまったね。申し訳ない。一応、あそこの荷馬車に搭乗している者で、仲間たちと共に旅をしていたんだけど、この惨状が目に入ったから、助太刀に来たんだ。」

「なんと、そういうことだったのですか。御助力、感謝いたします。しかしこれは・・・ちと、惨いですな。」

「そうかな?あの襲撃者たちは武器に毒を仕込んでいたみたいだったし、手段なんて選んでる余裕はないと思うけどね。」

「う、うむ・・・。確かにそれはそうだが・・・」

「それにこういったやり方は相手に恐怖心を植え付けるのには効果的だし、こういう風に恐怖で精神が壊れ、気絶し、無傷で敵を簡単に捕縛できる方法なんだ。そこに転がってる奴を起こしてこの襲撃の顛末を聞き出せばいいよ。」

「ふむ・・・、そうですな。御助力、感謝する。して、貴殿の名は?」


うーん、出来る限り関わり合いたくないんだけどなあ。

それにこの騎士の爺さん、あそこの女の子たちに対してお嬢様~だと言ってたし、銀聖騎士団なんてたいそうな名前が付いている騎士団が付いている貴族なんて、絶対に上級貴族以上だと思ってもいい。


「いや、別に名乗るほどのものじゃないよ。」

「お願いします、見知らぬ旅人よ。」


と少女がメイドを連れて、ヨスミの元へやってきた。


うわぁー・・・、こりゃあ、もうだめかなー。


「此度は私たちの命を救ってくれた事、感謝致します。私の名前は」


あー、聞きたくない。聞きたくないよー・・・。


「グスタフ・フォン・ヴァレンタイン公爵の娘の、レイラ・フォン・ヴァレンタインと申します。以後、お見知りおきを。」


見事なカーテシ―だこと・・・。はあ、こりゃあもうだめだ。逃げられないわ。

はあ、仕方ない。


「僕の名前はヨスミと申します。僕はただのしがない旅人、こういった礼儀作法に疎い故に失礼があった際はどうかご容赦ください。」

「構いませんわ。そう、ヨスミ様っていうのね。よろしければ、フードを取って顔を見せていただけませんか・・・?」

「・・・」


はぁー・・・。


ヨスミは観念したかのようにフードを取り、その顔を露わにした。

澄んだ黒髪、ルビーの様に真紅な瞳、凛とした輪郭に整った顔立ち。


「赤い、瞳・・・まるで、この世のものではないみたい・・・。」


その言葉を聞いて、初めてレイラ公女と目が合う。


大体16歳前後だろうか。

きりっとした鼻、凛としたコバルトブルーの澄んだ瞳、年齢にそぐわない落ち着いた表情。

幼いながらも、その立ち振る舞いはまさに公女そのものだった。


そしてこの反応からしてこの色の瞳は、たぶん周りの人らに良く思われないんだろう。

以前の冒険者たちはこういったことに関しては全然気にしないタイプだからそこまで気にされなかったんだろうが、そもそもこの瞳を見られてなかったか・・・。


「あまり見ないで頂けるとありがたいです。」

「・・・あ、失礼致しました。」


・・・ん?若干、顔が赤い、か?いや、気のせいか。


「あの・・・、ヨスミ様・・・?よろしければ、今回の事に関してお礼を差し上げたいのですが・・・」

「いえ、結構です。」

「・・・へ?いえ、そんな・・・!」

「レイラ公女様、まだ安心なされないでください。いつまた襲撃者が襲ってくるやもわかりません。今は僕にお礼をすることよりもまずは銀聖騎士団の方々と合流し、安全な場所に避難する方が最善でしょう。」

「で、でも・・・」

「お嬢様ぁー!そろそろ行かないとなりません!」

「・・・わかりました。ヨスミ様。今回の件のお礼はまた後日させていただきますので、こちらをどうかお持ちください。」


とメイドが鷲が2本の剣を掴む紋章が刻まれた金印のようなものを差し出した。

さすがにこれまで断ると面倒なことになりそうだな。


ヨスミは差し出されたその金印を受け取り、


「ではヨスミ様、またお会い致しましょう。絶対に!いいですか?絶対に、ですからね!」

「はい、レイラ公女様・・・。」


レイラ公女はメイドと共に馬車に戻ると、銀聖騎士団と共にその場を後に去っていった。

ヨスミはその後ろ姿をものっそいめんどくさそうな表情を浮かべながら見送っていた。


「ヨスミー、大丈夫ー?」


後からフィリオラたちを乗せた荷馬車がやってきて、こちらの方に顔を覗かせていた。


「・・・はあ、大丈夫。とりあえず目下の嵐は過ぎ去った。僕たちもステウランの村へ行こうか、はあ・・・。」

「ものすごくため息ついてるけど、本当に大丈夫なの?」

「・・・はあ。大丈夫だよ。はあ・・・。」


ヨスミは荷馬車の中へ”移動”すると、荷馬車もまたステウランの村へ向けて出発した。


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