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徐々に変わっていくもの


「竜滅島が消えたことで、ドラゴンたちに課せられていた制限は全てが消えたといってもいいわ。竜滅島が消えただけじゃなく、世界に漂っていた竜滅花の花粉ごと。いや、極論から言えばこの世界から竜滅に関するそのものが消えたといっても過言じゃない。」

「竜滅に関する・・・」

「そのもの・・・?」


フィリオラが語るそれはつまり、この世界から一つの存在を丸ごと消し去ったという事。

それが一体どれほどのことなのか理解するのにはさほど時間は掛からなかった。


だがフィリオラが考える重要な点はそこではないようだ。


「そして私が問題視しているのが一つ。これによっておね・・・、四皇龍たちが収めている四天大陸に棲む魔物たち・・・主にドラゴンたちの活動期に入る可能性があるわ。」

「・・・つまり四天大陸の方からドラゴンたちがやってくるってことですの?」

「おそらく、だけどね。まあ四皇龍たちが見張っているから大きな動きとかはしないとは思うけど・・・。」


そう言い終えたフィリオラはグラスに注がれたワインを軽く口に含み、喉を潤す。


「それに四天大陸からそういった存在が来ないように私が今まで見張っていたけど、今はこうしてヨスミの旅に同行しているし、その代わりに黒お姉様の一番のお気に入りを貸してもらったとはいえ、何が起きるかわからないから注意が必要よ。」

「黒お姉様ってぇ~、黒皇龍ってことかしらぁ~?しかもその一番のお気に入りってぇ~・・・まさか黒狼龍様のことぉ~?」

「そういえば、黒曜狼と黒狼龍って近い存在なんでしたっけ?」


レイラはふとユティスが黒狼龍の事を敬称を付けて話すことに疑問を感じた。

そして以前、学んでいた内容の一部が脳裏に過る。


帰ってきた答えはレイラの予想通りのものだった。


「そうよぉ~。昔ぃ~、私たちの祖先様である巨狼(フェンリル)様から2種類の狼たちに別れてねぇ~、白銀狼にぃ~、黒曜狼の2種類ぃ~。黒狼龍様はぁ~黒曜狼の中で一番の巨狼様の血を色濃く受けてぇ~、黒皇龍様の加護を授かって進化した存在だって言われているわぁ~。私は白銀狼だから違うけどぉ~、私の旦那様とぉ~、ミミアンちゃんにとっては英雄的存在なのよぉ~。」


そう話すユティス公爵夫人。

ふとミミアンの方を見ると目をキラキラと輝かせて興奮している様子だった。


「ちょっとミミアン、少し落ち着きなさいよ・・・」

「そんなん無理に決まってるっしょ!黒狼龍様だよ?!童話でしか聞いたことのない存在がまさか実在して、しかも隣国にいるなんてぇ・・・!ねえ、ママ!会いに行ってもいいかな?!」

「そのうちねぇ~。あの人と一緒に行きましょぉ~。」


よく見るとミミアンだけじゃなく、ユティス公爵夫人までどこかウキウキな様子だった。

とここにエレオノーラがそっと小声でレイラへと声を掛けてくる。


「あの、レイラ様・・・」

「あら、どうかしたの?」

「その、御2人ともどうしてあんなにウキウキしていらっしゃるのです・・・?竜種が祖先にいるのですよ? 私たちならともかく、竜人以外の亜人からしたら嫌がりそうなのです・・・。でもお二人はあんなに喜んでいるみたいなのです・・・。」

「ああ、そのことね。」


竜王国としては自分たち以外の全ての亜人たちからは嫌われていると思っているだけ会って、自分たちの祖先の中に竜種がいたことをあんなにも祝福するような言動は理解できないようだった。


それを理解したレイラはエレオノーラへ優しく語り掛ける。


「わたくしたち人間含めて、全ての亜人たちがあなた達ドラゴンという存在を嫌っているわけではないことをどうかわかってもらいたいですわ。現に人間であるわたくしだって、あなたのことは嫌っておりませんもの。むしろ可愛いと思っておりますわ。」


そういってエレオノーラの頬に手を添える。

エレオノーラの肌の感触を確かめる様に、指先で優しくなぞるように撫でた。


そんなレイラのスキンシップに恥じらうかのように顔が赤面していく。


「まあ、きっとあの人の影響が大きいこともあるのでしょうけどね。それらを踏まえた上で、ドラゴンを嫌っているのは主に人間たち。まあ昔に一度ドラゴンたちによって滅亡しかけたことがあるからですわね。それに加え、人間たちと勇魔大戦を共にした亜人たちですわ。その中にはタイレンペラー獣帝国の先帝様の先祖がいらっしゃりますわね。」

「え、じゃあ白銀狼と黒曜狼は・・・」

「勇魔大戦には参戦しておりませんでしたわ。理由は定かではありませんが、黒皇龍様が治める大陸に元々住んでいて、後からやってきた黒皇龍様がボロボロになったまま眠りについている巨狼の存在を見つけ、巨狼の事を救ったと黒大陸の歴史にて学びましたわ。・・・今思えば、どうして黒皇龍が見つけた時にはすでにボロボロだったのかわかりませんでしたけど、あなたの仰っていた怪物・・・恐らくその怪物たちと戦っていたから、勇魔大戦に参加できなかったんじゃないかしら?故に、自分を救ってくれた黒皇龍の事に恩を感じ、絶対なる忠誠心を捧げたのではなくて?」

「・・・だから、黒狼龍様は英雄だということなのですね。ありがとうなのです、レイラ様。」


エレオノーラは何か納得がいったように頷いた後、笑顔を浮かべてレイラへと礼を述べた。

それを受けて笑顔で返し、頬に添えていた手を離す。


「誰だって、自分を命からがら救ってくれた恩人を敬いますもの。そんな恩人の姿に近づけたのなら、その喜びようはきっと大きいモノですわ。」


そう、わたくしもあの人のように・・・。

闇に遣っていたわたくしを救いあげてくれたヨスミ様、その力になれるなら、その力に近づけるのならわたくしだって・・・。


「ともあれ、要人に越したことはないわ。四天大陸だけじゃなく、このカラミアート大陸に棲むドラゴンたちに課せられていた制限も解かれ、100%に近い実力を発揮することができるようになったから、これから色んな事が変わっていくわ。特に冒険者ギルドで選定された魔物図鑑に登録されているドラゴンたちの評価が全て変わるから、これから色んな事故がおきるはず・・・。」


そう不安そうに話すフィリオラ。


だがフィリオラの悪い予感は的中し、竜滅島が消失した以降からドラゴンたちの強さが3~5割ほど同化し、更には今まで使わなかった特別な力や特殊スキルなどといった新たな力を行使するようになり、これにより今まで一番弱く、冒険者の初心者として相手するにはふさわしいとされていたGランク級の【ワンドラコ】というドラゴンはその性能の引き上げによってEランクという2ランクアップという階級アップを成し遂げ、多くのGランク冒険者たちが命を落とす悲惨な事件が起こる。


実際にはこの話だけに留まらず、全ランクでこういった事故によって命を落とす冒険者たちが増加し始め、冒険者ギルドは一時活動の停止処置を行い、高ランク帯による各ランク帯のドラゴンたちの選定のし直しが急遽行われることになる。


また低ランク帯のドラゴンたちは他の魔物たちによって狩られる側だったドラゴンたちが逆に狩る側に周り、生態系にもかなりの影響を及ぼし、結果として根本的な生態系のバランス崩壊が起きてしまったところも出てくるようになった。


・・・が、これはもう少し先の話であり、今はまだそのほんの前触れが見え隠れしている程度に過ぎない。。


「それは危険ですわね・・・。」

「そうねぇ~・・・、今すぐに冒険者ギルドに打診してぇ~、色々と手を打ってもらった方がいいわねぇ~。」


そういうとユティスはメイドを何人か呼び寄せ、彼女らに何かを話すとメイドたちはそのまま姿を消した。


「ハルネ、今すぐにわたくしたちもお父様にこの事をお伝えしますわ。」

「そういうと思いまして、すでに必要な便箋を用意致しました。」

「さすがハルネ、用意がいいですわ。」

「有難うございます。」


そういうと、お盆の上に乗せられた便箋を差し出す。

すでに宛先が書かれており、また内容も先ほどフィリオラが話していたものの大半が掛かれているようで、レイラが記入すべき点は名前の部分だけとなった。


レイラはその便箋を受け取ると、筆を手に取って空欄部分となっているところに自分の名前を記入していく。


その後、食卓に置いてあったキャンドルで蝋を溶かし、便箋に封をするとハルネへと渡した。


「お父様ならすぐに事態を把握して手を打ってくるはずですわ。」

「ええ、当主様ならきっと・・・。では行って参ります。」


そう言い残し、ハルネは演習場を後にした―――――。



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