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母としての覚悟


突然、ヨスミが目の前で光り出したと思ったら急に収まり、直後、目や鼻、耳や口から大量の血が流れ出し、そのまま意識を失ってその場に崩れ落ちた。


「あなたぁーっ!!」


レイラが急いで支えようとしたが直前まで泣き崩れていたためか、一瞬力が入らず、なんとか立ち上がって手を伸ばそうとした時に足が縺れさせて転んでしまい、レイラの伸ばした手が届くことはなく、ヨスミは頭から地面へ崩れ落ちた後だった。


急いで体をもう一度起こし、震える足に力を入れてヨスミを抱き上げる。


「ああ・・・あああ・・・」

「レイラちゃん!茫然としてないで早くヨスミに治癒魔法を・・・!」


フィリオラに言われてハッと我に返り、抱いているヨスミの頭に手を置いて魔力を集中させる。

癒しの波動、治癒魔法をヨスミに掛けるが、何の反応も見せない。


「だめ・・・だめ・・・っ!」

「集中して!」


そこにフィリオラまでやってきて2人がかりで治癒魔法を掛ける。


だが回復している気配すら見せない。

流れ出す血は止まらず、顔色がどんどん白くなっていく。


「いや・・・だめ・・・だめぇーっ!」

「許さない・・・、2回もあなたを失うなんて、絶対に私が許さない・・・!!」


フィリオラは手を広げ、正常になったばかりの魔力回路に全力で集中し、活性化させていく。

体を流れる魔力の密度が徐々に高まっていき、自らを構成している人間体が崩れていく。


本体である龍体が徐々に露わになっていき、人間体と龍体のごちゃまぜとなったキメラ体に変わっていく。


今まで以上に純度が高まった高密度な魔力・・・【ドラゴンマナ】が魔力回路を巡っていく。

直後、フィリオラから発せられる魔力が、高純度【ドラゴンマナ】へと変化していき、ヨスミの体を覆っていく。


だが、それでもヨスミの状態は変わらなかった。

2人の全力を持ってして掛け続けた治癒魔法は、虚しく終わった。


「・・・そん、な。いや・・・いやだ・・・これじゃ・・・私、姉さんたちに・・・私・・・」

「・・・まだ、ですわ。」

「えっ・・・?」


フィリオラは絶望を浮かべていたが、レイラだけは諦めていなかった。


「あの時、ヨスミ様は信じて待っていてくれと、仰っておりましたわ・・・。ヨスミ様は、わたくしやあの子を置いて、1人で勝手に、死んでしまうような・・・そんなダメな父親では、ありませんわ・・・っ!なんの算段もなしに、こんなことをする人じゃありません・・・っ!まずはここから出て休めるところに避難しますわよ!ハルネっ!」


ハルネは気を引き締め直し、フィリオラから預けられたディアネスを抱きしめ、腰に差している鎖斧に付いた鎖に魔力が通い、1本だった鎖が4本へと別れる。


「・・・【8傀ヨスミが目の前で光り出したと思ったら急に収まり、直後、目や鼻、耳や口から大量の血が流れ出し、そのまま意識を失ってその場に崩れ落ちた。


「あなたぁーっ!!」


レイラが急いで支えようとしたが直前まで泣き崩れていたためか、一瞬力が入らず、なんとか立ち上がって手を伸ばそうとした時に足が縺れさせて転んでしまい、レイラの伸ばした手が届くことはなく、ヨスミは頭から地面へ崩れ落ちた後だった。


急いで体をもう一度起こし、震える足に力を入れてヨスミを抱き上げる。


「ああ・・・あああ・・・」

「レイラちゃん!茫然として内で早くヨスミに治癒魔法を・・・!」


フィリオラに言われてハッと我に返り、抱いているヨスミの頭に手を置いて魔力を集中させる。

癒しの波動、治癒魔法をヨスミに掛けるが、何の反応も見せない。


「だめ・・・だめ・・・っ!」

「集中して!」


そこにフィリオラまでやってきて2人がかりで治癒魔法を掛ける。


だが回復している気配すら見せない。

流れ出す血は止まらず、顔色がどんどん白くなっていく。


「いや・・・だめ・・・だめぇーっ!」

「許さない・・・、2回もあなたを失うなんて、絶対に私が許さない・・・!!」


フィリオラは手を広げ、正常になったばかりの魔力回路に全力で集中し、活性化させていく。

体を流れる魔力の密度が徐々に高まっていき、自らを構成している人間体が崩れていく。


本体である龍体が徐々に露わになっていき、人間体と龍体のごちゃまぜとなったキメラ体に変わっていく。


今まで以上に純度が高まった高密度な魔力・・・【ドラゴンマナ】が魔力回路を巡っていく。

直後、フィリオラから発せられる魔力が、高純度【ドラゴンマナ】へと変化していき、ヨスミの体を覆っていく。


だが、それでもヨスミの状態は変わらなかった。

2人の全力を持ってして掛け続けた治癒魔法は、虚しく終わった。


「・・・そん、な。いや・・・いやだ・・・これじゃ・・・私、白姉様たちに・・・私・・・」

「・・・まだ、ですわ。」

「えっ・・・?」


フィリオラは絶望を浮かべていたが、レイラだけは諦めていなかった。


「あの時、ヨスミ様は信じて待っていてくれと、仰っておりましたわ・・・。ヨスミ様は、わたくしやあの子を置いて、1人で勝手に、死んでしまうような・・・そんなダメな父親では、ありませんわ・・・っ!なんの算段もなしに、こんなことをする人じゃありません・・・っ!まずはここから出て休めるところに避難しますわよ!ハルネっ!」


ハルネは気を引き締め直し、フィリオラから預けられたディアネスを抱きしめ、腰に差している鎖斧に付いた鎖に魔力が通い、1本だった鎖が4本へと別れる。


「・・・【八傀螺旋ノ鎖蛇(ヤマタノオロチ)】。」


それぞれが4本に別れた、計8本の鎖の纏っている魔力がまるで蛇のように形を成し、未だに意識を失ったままのエレオノーラとハクアに巻き付くと、優しく持ち上げる。


「これが、ハルネの【覚醒技(オーバースキル)】・・・。」

「はい。鎖斧に付いた鎖が4本にそれぞれ別れ、計8本の鎖蛇となって私の自由がママに、思いのままに動いてくれるのです。更にそれぞれが独自の意思を持ち、私の意志を介して動いてくれるので、9つの脳と18個の目を持っていることになります。なので、本体の私が処理しきれない事、意識出来ない部分、死角を全て補ってくれるので実質私に隙はありません。エレオノーラ様とハクア様に割いた鎖蛇、余った鎖蛇は周囲を警戒してくださるので私にお任せください。」


自らの意志を持った8体の蛇・・・、その頭脳はハルネを介しているから知能もかなり高い・・・。

さらには自由自在に動いてくれるから、実質そこには9人のハルネがいるということになる。


それに魔力を纏っているということは、今後のハルネの実力が、保有魔力量と魔力操作技術が上がれば、より強力な個体へと進化するということ。


今はまだ大体1mの長さに7~8cmほどの太さである鎖蛇だが更に大きく、そして賢くなる。


3体の鎖蛇はエレオノーラを、2体の鎖蛇はハクアを抱き上げ、1体の鎖蛇は揺り籠の様に丸くなってディアネスが入る。


残りの2本は周囲を警戒するかのように辺りを見回していた。

レイラはヨスミをそのまま抱き上げ、なんとか立ち上がる。


「ごめん、みんな。先に行っててくれない?」

「フィー様・・・?」

「今の私、人間体に戻すのに時間がかかりそうで・・・、人間体に戻り次第、後から追いかけるわ。」

「・・・わかりましたわ。でもわたくしたちの場所はお分かりに?」

「ええ、私がヨスミ・・・、いえ。もういいわ。パパの匂いを間違えるはずないもの。」

「わかりましたわ。必ずきてくださいまし。フィー様のパパであるこの人が目を覚ました時、あなたが傍に居なかったら悲しい思いをしますもの。」

「・・・もちろんよ。そっちこそ、パパをこれ以上傷つけたら許さないわよ?」

「うふふ、望むところですわっ!」


そういってレイラは皆を連れて洞窟を出て行った。

未だに人間体へ体を戻せず、キメラ体となった体を軽く動かして見る。


さっきまではあんなにも苦しく、指一本、尻尾の先まで、何を動かすにしても激痛が走り、酷い倦怠感に襲われ、吐き気や頭痛などの体調不良に酷く悩まされていたが、そういった状態異常が消えた。


無くなったのではなく、文字通り消え去った。

竜滅香の匂いを嗅いだことと、使われたことで周囲に広がり、薄まったとはいえドラゴンには致命的なダメージを与える成分が分布されたこともあり、常に肌を突き刺すような痛みや感覚があった。


だがそれさえもない。

意識を集中し、周囲から感じる感覚を極限まで高めても、微かにこの大陸を覆っていた竜滅花の花粉が完全になくなり、それによって縛られていた体への重しも完全に消えている。


つまり、竜滅花によって縛られていた足枷から完全に解き放たれたという事。

その原因となったのは恐らく、いやきっとヨスミの・・・パパの仕業だろう。


竜滅香に関する話を聞いていた時のパパの表情は酷く怖かった。

あの光、あの状態、私の<大いなる竜母の祈り>に匹敵する高純度の【ドラゴンマナ】による治癒魔法とレイラの治癒魔法、2重掛けを持ってしても治せなかったこと。


そもそも治る気配すら見せないほどの重体・・・。


恐らく、この大陸に漂う竜滅花の花粉や臭いの成分・・・もしかしたらこの世界中から竜滅花に関する存在そのものを消し去ったのではないか。


もしそんなことをすれば、そんなことを可能にするのなら、パパの体に一体どれほどの重負荷がかかったというのだろうか。


下手すれば脳が焼き切れて死んでいる可能性だってある。

以前の竜樹根の時でさえ、瘴気だけを別の場所に転移させたときは酷い重体になったのに。


それ以上に酷く辛い、苦しい瀕死の重体になるってわかっていたはずなのに・・・。

ディアネスだけじゃない、私たちドラゴンのために躊躇なくその力を使った。


白姉様たちから聞いていた通り、どこまでもドラゴンのためならその身を簡単に犠牲にする。

いくらドラゴンが好きだからって、まさかここまでするなんて思っていなかった・・・。


ただの、比喩表現かと思ってた・・・。


でも、片鱗は確かに何度かあったはず。

なのに私はそれを無視していた・・・。


だから、止められなかった・・・。

私がもっとパパの愛の重さに真正面から向き合えていれば・・・。


でも、もしここで私がパパを止めたとしてもディアが死んでいた・・・。

結果として、こうなることが正解だったのか私にはわからない・・・。


「・・・ああー、もうっ!こんなくよくよしたの何時ぶりよ・・・!今はくよくよしている場合じゃないわ。さっさと体の状態を戻して、人間体に戻ってレイラちゃんを追いかけないと!」


そういうと、自らの体の内に意識を集中させる。

体中を巡る高純度の【ドラゴンマナ】を中和させ、耐え切れずにボロボロになった魔力回路を修復させていく。


「・・・次、レイラちゃんに会った時、”お義母さん”って呼んだ方がいいのかしら?―――――。」



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